INTERVIEW先輩就農者の声
川俣町栽培農作物 アンスリウム など
“花を作る”のその先へ。
さらに先へ。
2017年3月に避難指示が解除された川俣町山木屋(やまきや)地区。そのおよそ1年後にこの地でアンスリウム栽培をスタートさせた谷口豪樹(ごうき)さん(35)。2021年には(株)smile farmを設立し、現在は観光農園や体験農園などお花の栽培に留まらない多角的な経営をしています。地元は埼玉、実家は非農家、元サラリーマンの谷口さんが農業に感じる魅力、谷口さんが描くこれからの川俣の姿を伺いました。
2030年、農業を子どものなりたい職業トップ5に
若い人を巻き込みたいっていうのはなぜでしょう?
川俣町は総人口に対する65歳以上が占める割合が41%を超えていて、高齢化が問題になっている地域です。うちでは県内の農業高校など、年間100人ぐらい学生さんたちの見学の受け入れをしていますが、そういう子たちに必ず「将来の夢トップ5の中に農業っていう選択肢は入ってますか?」と聞くんです。全然入らないですね。数%しかないです。福島という農業県でトップ5に入らないのは寂しい。農業の魅力が伝わってないんだと思います。でも、今子どもたちのなりたい職業の上位にランクインしているyoutuberやeスポーツプレーヤーも、8年前には入っていませんでした。だったら農業も8年後、2030年までにトップ5に入れられるんじゃないか。入れるために頑張っていきたいです。
川俣町で農業をするということを考えている人に伝えたいメッセージはありますか?
先日、就農を考えている人向けのツアーの受け入れをしたんですよ。参加者の皆さんが記入したアンケートを見せてもらったんですが、「どれくらいの面積で農業をやりたいと思っていますか」「農業でどのくらい収入を得たいですか」「どのくらい経費がかかると思いますか」っていう質問項目を全部埋めている人は一人もいませんでした。たぶん、情報が足りていないんだと思います。
普通、転職するときって年収いくら、休みは何日って条件を決めて探すのに、農業となると途端にそれができなくなる。そんな基本的な条件が分からなかったらそりゃあ就農は難しく感じるだろうなと思いました。まずはうちの体験農園で農業をやってみてもいいし、僕たち農家に聞いてくれてもいいので、イメージを具体化するところからじゃないでしょうか。条件のいい農地から埋まっていくので、農業は早い者勝ちだと思います。一度耕作放棄地になってしまったら農地として蘇らせるのに時間がかかってしまう。今使われている良い農地も継承する人がいない。「今がチャンスですよ!」と伝えたいですね。
取材日:11月16日
取材・文・写真:成影沙紀