移住者インタビュー

楢葉での農業も暮らしも、ワクワクが止まりません!

2023年9月5日
楢葉町
  • ふくしま12職場見学
  • 農林漁業
株式会社福島しろはとファームさま01

福島県楢葉町でサツマイモの生産を行う株式会社福島しろはとファーム(以下、福島しろはとファーム)。ここで生産されたサツマイモは白ハトグループの中でスイーツに加工され、全国に流通しています。今年新卒で入社した只野寿喜(としき)さんに、農業に興味を持ったきっかけから現在のお仕事、仕事のやりがい、そして地域での暮らしについてお話を伺いました。

おじいちゃんの畑とアサガオの記憶

——そもそも、只野さんが農業生産法人に興味を持ったのはどうしてだったんですか?

僕は宮城県出身で、高校、大学は愛知県で過ごしました。ちょっと経歴が変わっているんですが、お坊さんになる予定だったんです。小学生の時に参加した地域の座禅会がきっかけで仏教の道に進み、高校は修行をしながら通い、大学の時はもう僧侶として働いていました。卒業後は別のお寺に転職する予定で、何件か声をかけていただいていたんですが、4年生の11月ごろになり「なんか違うぞ」と。

例えばみんなの前でお経を読んでも、僕があまりにも若いので「そんなんで供養できるのか」と言われたこともあって、歳を重ねてからの方がいいのかなと思ったこともありました。また、社会の流れとして信仰が薄れてきていること、お寺離れが進んでいることを不安に感じていたという部分もありました。「じゃあ他に好きなことなんだろう?」と自分のこれまでを振り返り、ピンと来たのが“農業”だったんです。

株式会社福島しろはとファーム様02

おじいちゃんが農家で、宮城県大崎市でお米や野菜を作っていました。僕が小学3年生の頃に亡くなったので、本当に小さい頃の記憶なんですが、畑仕事を手伝ったのが楽しかったんですよね。「ここの列の大きいピーマンをとってこいー」と言われて畑に入っていって、自分で収穫して、おばあちゃんが待ってる作業小屋まで持っていく。おばあちゃんが袋詰めをして、おじいちゃんと僕でそれを直売所に持って行って並べる。夕方になったら売れ残りを回収しに行くんですが、全部売り切れてると嬉しくて。そこまでの一連の流れが全部楽しかったですね。

それから、小学校の花壇でアサガオを育てたのもすごく印象に残ってるんです。みんなでタネをまいて、水をやって……。アサガオが毎日毎日少しずつ成長して様子が変わっていくんですよ。それを見るのが楽しくて。「俺のが一番デカくなったぞー!」なんて言って、みんなで競い合っていました。今の仕事でも感じますが、“成長を見る”ことが多分好きなんだと思います。

——とはいえ農業だ!と気づいたのが大学4年生。周りの人たちはもう就活も終わってますよね?

そうなんです。遅くても夏頃には終わってましたね。僕は一度「これをやりたい!」と思ったら突っ走っちゃうタイプなので、卒業は迫っていましたが農業を仕事にすることに決めました。友達に話したら、農業ができる就職先を10件ぐらい調べてきてくれて、その中にあったのが福島しろはとファームでした。白ハトグループはさつまいもの生産から加工、販売まで手掛けていて事業規模が大きいこと、地元である宮城県に近いこと、それから僕が「世界一ウマい」と思っている大学芋をつくっている会社だということもあって、すぐに応募を決めました。

株式会社福島しろはとファーム様03
ぐんぐん茎を伸ばし葉を広げるサツマイモ

ここでの暮らしは、全部良い!

——楢葉町で働くということに関して、不安な気持ちはなかったんですか?

その心配はまったくないですね。人が生活している場所なので、特に福島だからどう、ということはなかったです。

僕は小学4年生のときに宮城で震災を経験しています。大崎市は津波の被害はありませんでしたが、震災直後に津波の被災地域にも行って、瓦礫だらけのめちゃくちゃになった景色も見ました。楢葉町もそんな状態だったんだろうなと思うと、あんな状態から畑に戻して、サツマイモを育てて……って、本当にとんでもないことですよ。父が運送関係の仕事をしていて、しばらくは被災地の現場にプレハブを運んでいました。その手伝いがてら避難指示解除前の楢葉町にも来たことがあります。当時、このあたりは本当に何もなくて、車の窓も開けちゃいけないと言われていた。そんな状態がここまできた。ここで働くことで、復興に関われるのは嬉しいことです。

株式会社福島しろはとファーム様04

——現在のお仕事内容を教えてください。

例えば昨日だと、朝7時に始業して、草刈り部隊と土づくり部隊に分かれて仕事をしました。僕は草刈り部隊で、パートさん5人と一緒に畑の畔周りの草刈りをしました。暑いので休憩を挟みながら仕事をして、夕方は事務作業。日々、生育状況の記録を取っているのでその報告をしたり、翌日の計画を立てたり、パートさんたちのシフトを作ったりしています。

一緒に仕事をするパートさんたちはだいたい30〜50代の方が多いです。みんな自分より年上だし農業の経験も長いので、「みんなに負けないように仕事しよう!」とやってきたんですが、おかげでいろんな技術が身につきました。年上の方と話が合わないということもないですね。僕はお酒好きなのでお酒の話で盛り上がったりしています。年上の方と話すのは好きだし得意です。お坊さん時代の経験が生きているかもしれません(笑)。

——仕事をしていて、やりがいを感じるのはどんなときですか?

今日はここからここまで作業をやるぞと決めて、夕方にバシッと終わった時ですかね。特に苗を植える作業は、早くても霜にあたるし、遅くてもタイミングを逃すので、計画通りに終わらせるために毎日頭をひねらせました。1ヶ月間かけて終わったときはすごく達成感がありました。それから、サツマイモの苗がみるみる成長して葉っぱがワサワサ増えてきれいに並んでいるのを見ると感動します。これから初めての収穫期も迎えますし、ワクワクが止まらないですね!

最初は先輩方に教えられた作業を教えられたようにやるだけだったんですが、慣れてくるといつの間にか「どうすればもっと上手く除草ができるのかなー」とか「どうすればこの作業はもっと楽にできるかなー」って考えるようになってるんです。自分で改善点を見つけたり、段取りを組んだりするのも楽しいです。

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楢葉町の岩沢海水浴場

——只野さんはいわき市に移住、楢葉町で働いていますがこちらに来て良かったことはなんですか?

全部が良いです!地域性っていうんですかね、都会では挨拶しても無視されるんですが、こっちでは車で道を譲ると会釈をしてくれるんです。散歩してても「どうも」って頭を下げると「どうも」って返してくれますし。「なんだこのあったかい町は!」と思いました。畑作業をしている人に「何作ってるんですかー」って話しかけると、「これ持ってげ、持ってげ」ってたくさん野菜をいただくこともあります。

そうだ!この辺りってサーフィンもできるんですよ。今はまだサーフボードをレンタルしているんですが、そろそろ買おうかなと思っていて。家から会社に来るまでに海水浴場の横を通るので、朝5時とか6時にサーフィンをして、それから働く。そんなライフスタイルが叶うのもこの地域の魅力だと思います。


■株式会社福島しろはとファーム
大阪に本社を置き、創業74年を迎える「白ハト食品工業株式会社」。グループ会社(白ハトグループ)でサツマイモの生産、サツマイモスイーツの製造、自社店舗やコンビニ・スーパーでの販売を行う。2017年、楢葉町でサツマイモの試験栽培を開始、2019年に株式会社福島しろはとファームを設立。2020年国内最大規模のサツマイモ貯蔵施設「楢葉おいも熟成蔵」が完成。サツマイモの苗生産、周辺農家への苗の販売、サツマイモ生産、貯蔵を行う。
https://www.shirohato.com/FUKUSHIMA_NARAHA/

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只野寿喜(としき) さん

2000年生まれ、宮城県大崎市出身。祖父は米と野菜を育てる専業農家、父は兼業農家だった。僧侶になるため高校から愛知県へ。大学卒業後、2023年3月に研修生として福島しろはとファームへ入社し、7月から正社員となった。農作業、作業の工程管理、パート従業員のシフト管理などを行う。いわき市在住。

取材日:7月31日
取材・文・写真:成影沙紀