移住者インタビュー

一人でも多くの方に笑顔で帰ってもらえるクリニックを目指す

2024年2月6日
  • JFAメディカルセンター整形外科クリニックの魅力
    体の不具合の発見・治療・リハビリを一貫して行える
  • 住まいがある富岡町と職場がある楢葉町の魅力
    海や緑が身近にあり心癒される環境が整っている
  • 今後の展望
    より多くの方にクリニックを知ってもらいたい

JFA(公益財団法人日本サッカー協会)の職員として小学生や障がい者向けに、夢を持つことの大切さやスポーツの普及・啓発に携わってきた中原 大さん。2022年、楢葉町にあるJFAメディカルセンター整形外科クリニック(以下、JFAメディカルセンター)に転勤となり、東京から福島に移住しました。

医療業界で働くのも地方で暮らすのも初めてだという中原さんに、JFAメディカルセンターや福島での暮らしぶりについて聞きました。

スポーツ医学の観点からアスリートや地域の方々をサポート

――JFAメディカルセンターとはどんな施設なのでしょうか。

JFAメディカルセンターは2009年に設立されました。当クリニックはJFAが運営しており、整形外科とリハビリテーション科があります。アスリートだけでなく地域の方々も利用でき、スポーツ医学の観点に基づいた医療を提供しています。

当クリニックの大きな強みは、体の不具合の原因の発見から、治療、リハビリまでの流れを一貫して行える点です。MRIを導入して体の不具合を正確に発見するとともに、その不具合を正しく改善する知識と技術をもった医師、理学療法士、スポーツ医学に特化したトレーナーが在籍し、回復までの道のりをサポートしています。

――東日本大震災後、メディカルセンターはしばらく休業されていたそうですね。

原発事故による避難指示によって休業を余儀なくされましたが、2021年3月から診療を再開することができました。現在は福島県出身のスタッフ、北海道や関西など全国から移住してきたスタッフなど、全部で13人が在籍しています。

――どのような業務を担当されていますか? また、仕事におけるやりがいを教えてください。

患者さんの応対やクリニックの会計管理、スタッフマネージメント、労務管理などを担当しています。リハビリテーション科の人手が足りないときは電気治療のサポートをすることもあります。患者さんから「ありがとう」と感謝の言葉をいただき、笑顔で帰っていただけると、やっぱりうれしいですし、それがやりがいにもなっています。

選択肢が少ないことで「足る」を知った

――どういった経緯でメディカルセンターに転勤されてきたのですか?

以前は国内の競技会の運営を担う部署に所属していました。また、サッカー日本代表の国際試合が国内で開催される時の、選手や関係者の入国対応も行っていました。新型コロナウイルスの感染拡大時期に、メディカル分野に携わったことがきっかけになったのでしょうか、メディカルセンターへ転勤することになりました。

当クリニックで働き始めたのは2022年9月からです。医療機関で働いたことはこれまで一度もなかったので、はじめは右も左も分からず苦労したのですが、約1年間、医療業界の仕組みをコツコツと学ぶことで少しずつ慣れてきました。

――地方に移住することに関して不安はありましたか?

東京で生まれ育ち地方で暮らした経験がなかったので少し不安もありましたが、出張で全国各地を訪れていたので、地方で暮らすイメージはわずかながらありました。また、当クリニックが隣接するJヴィレッジには仕事で何度も足を運んでおり、楢葉町や周辺の町の雰囲気は知っていたので、あまり抵抗はありませんでした。

――住まい探しはスムーズにできましたか?

思ったよりも早く見つけることができました。住まいの選択肢が多くなかったため、楢葉町だけでなく周辺の町でも物件を探して、最終的に富岡町の新築アパートに決めました。移住した当初はアパートの周りにいくつか更地になっているところもありましたが、最近は新しい家が次々に建ち、移住や帰還してくる方も増えているようです。

――東京での暮らしと富岡町での暮らし、一番大きな違いはどこにありますか?

選択肢の数ですね。富岡町にはスーパーが一つしかなく、飲食店もあまりありません。しかもそのスーパーは夜7時には閉まってしまいます。コンビニもありますが、遅くても夜の9時までしか開いていません。でも、仕事が休みの日にまとめ買いをしたりネット通販を活用したりと工夫をすれば、さほど困ることはありません。日本で一番便利な場所といっても過言ではない東京に住んでいたので、福島に来たら不便に感じるだろうなと移住前は思っていましたが、意外と不便に感じることはなく、自分でもびっくりしています。

買い物をする場所や遊ぶ場所などの選択肢が多い東京の生活も魅力的ですが、「足るを知る」ともいうように、選択肢が少ないことは決してネガティブな要素ではないと富岡町に住んで気づきました。

心を癒やしてくれる自然が身近にある暮らし

――富岡町や楢葉町の魅力はどういったところにあると感じていますか?

身近に自然がたくさんあるところです。浜街道という海が見える道を通勤時に使っているのですが、水平線を横目に運転しているとすごく心が癒やされます。休みの日は楢葉町にある「天神岬スポーツ公園」に行き、散歩をしたり、オーシャンビューを楽しめる園内の温泉に入ったりして自然を満喫しています。それから、魚がとっても美味しいです。海が近いのでスーパーにはいつも新鮮な魚が並んでいます。

――働くなかで福島12市町村の医療・福祉分野の課題は感じますか?

楢葉町をはじめ福島12市町村では人材不足が深刻な問題になっています。今後、高齢化はますます進み、医療や福祉における需要は増えていくことが予想されるため、人材の確保は急務だと感じています。

――最後に今後の展望をお聞かせください。

ありがたいことにJFAメディカルセンターには楢葉町だけでなく周辺の地域にお住まいの方々も多く来院してくださっています。今後も来院された方が笑顔で帰っていただけるよう一人ひとりに寄り添って医療を提供していきたいです。そして、ゆくゆくは当クリニックが地域の方々にとってかけがえない場所になったらうれしいです。


■JFAメディカルセンター整形外科クリニック
所在地:〒979-0513 福島県双葉郡楢葉町山田岡美シ森8−1
TEL:0240-25-1557
HP:http://medicalcenter.jfa.jp/

中原 大(なかはら だい) さん

1977年生まれ。東京都出身。2007年にJFA(公益財団法人日本サッカー協会)へ入社し、アスリートを全国の小学校に派遣して授業を行うプロジェクト「JFA こころのプロジェクト」や、障がい者サッカーの普及や啓発に携わる。2022年、JFAが運営するJFAメディカルセンター整形外科クリニックへ転勤となり、東京から富岡町へ移住。クリニックでは事務長を務めている。

※所属や内容は取材当時のものです。
文・写真:永井章太