事業紹介

おいしいご飯で、地域の農業を支えたい。相馬屋パックご飯工場がつなぐ福島の食

2026年2月9日

1923年。老舗米店「相馬屋」は、現在の福島県いわき市で創業しました。以来、厳選したお米を地域の食卓へ届け続けています。創業から100年の節目となる2023年には、楢葉町にパックご飯工場を新設しました。その背景にあるのが、福島第一原子力発電所の事故以来続く農業の課題です。

事故から15年が経とうとする今も、福島12市町村では営農再開率が4割弱にとどまっています。地域農業の基盤である稲作を、もう一度この地で循環させたい。米の消費拡大や将来的な輸出も視野に入れながら、相馬屋は、加工という新たな形で地域農業を支えています。

今回は、パックご飯事業部部長・都築絢子(つづき あやこ)さん、品質管理室・河野舞(こうの まい)さんに、工場新設の背景や日々の仕事、そして地域への想いについて話を伺いました。

地域農業を盛り上げるための新たな挑戦

原発事故により楢葉町に出された避難指示が解除されたのは、2015年9月。しかし、稲作をはじめとする農業は、長期間田んぼを使えなかった影響や農家の高齢化により、以前のような姿には戻っていません。令和7年度に楢葉町が発表した「地域農業再生協議会水田収益力強化ビジョン」によれば、町内の水稲作付面積は令和3年時点で震災前の約7割まで回復していますが、ここからさらに地域の農業を盛り上げていく取り組みが必要です。

100年以上の歴史をもち、米の流通で地域の食卓を支えてきた相馬屋は、浜通り地域の農業にどのような形で貢献できるかを模索してきたといいます。その想いを形にするために始めたのが、パックご飯の製造です。米の卸や販売をするだけでなく、生活スタイルの変化に合わせた商品の開発までを自社で担うことで、安定した需要を生み出すことができると考えたのです。

「単身やご高齢の世帯では、ご飯を炊くこと自体が負担になることもあります。パックご飯なら、電子レンジで温めるだけで手軽に炊きたての味が食べられます。生活のなかで役立ててもらえている実感があるのがうれしいですね」

そう話すのは、相馬屋に勤めて20年になる都築さん。

いわき市の本社勤務から工場へ移った都築さんは、稼働から2年を迎えた新しい工場について、「清潔な環境が保たれており、食品工場としての衛生管理も徹底されています」と話します。

「きれいな空間で働けることはもちろん、社員同士の風通しがいい点も、この職場の魅力のひとつですね」

清潔で、安心・安全なご飯を

工場の中は、想像していた食品工場のイメージとは異なり、すっきりとした空間が広がっています。

相馬屋パックご飯工場では、無菌化包装米飯方式を採用しています。蒸気による短時間の殺菌処理のあとに炊飯し、無菌化状態のクリーンルームで密封包装する製法です。炊飯後に加熱殺菌を行うレトルト米飯方式と異なり、炊きたてに近い風味や食感、自然なおいしさを保てるのが特徴です。

生産能力は1時間あたり約8,000パック。フルオートメーション化されており、人の手が必要なのは、機械の操作やフィルムの交換、製品チェックなど、工程の一部のみです。効率的なライン構成により、少人数でも安定した生産が可能となっています。

現在、工場は朝8時から夕方5時まで稼働しています。そのなかで、都築さんが「いちばん大事」と話すのが、清掃の時間です。

「食品を扱う工場なので、菌の繁殖は一番気をつけなければいけません。そのため、1日の稼働時間のうち3時間ほどを清掃に充てています」

効率を追い求めれば、生産量をさらに増やすことも可能です。しかし相馬屋では、無理に稼働時間を延ばすことはしていません。安心して食べてもらうために欠かせない工程として、これからも清掃の時間を削ることはないと言います。

未経験からの転職でも安心して働ける環境がある

この工場で重要な役割を担うのが、品質管理です。工場立ち上げのタイミングで入社した河野さんは、前職は食品業界とは無縁でしたが、未経験から学びを重ね、現在は品質管理を担当しています。本社で厳選・精米したお米の状態をチェックすることから始まり、製造工程を通して、菌の有無や水分量、包装状態などを細かく確認。ひとつひとつの工程を積み重ねながら、安心して食べてもらえる安全な商品かどうかを見極めていきます。

「玄米から製品になるまでを一貫して見守るのが、品質管理の役割です。表に出る仕事ではありませんが、しっかり品質を見極めることで、初めて商品として届けられると思っています」

河野さんはもともといわき市に住んでおり、通勤には1時間弱かかっていました。その負担を減らすため、いわき市から工場のある楢葉町の隣町・広野町へ移住しました。生活環境は大きく変わりませんが、富岡町や浪江町、仙台市などに足を運ぶ機会が増え、行動範囲が広がったと言います。

「転職や移住で生活が変わることに、最初は不安もありました。でも、実際に働いてみると、その不安はすぐに払拭されました。職場はいつも和気あいあいとしていますし、周りの人たちに支えられていると感じます」

相馬屋パックご飯工場は2025年12月、食品安全マネジメントシステムに関する国際認証規格「FSSC22000」を取得しました。品質管理だけでなく、働く環境や業務の進め方まで含めて見直し、現場全体で協力して取り組んできた証といえるものです。「取得に向けて、スタッフ同士で話し合いの時間をつくりました。みんなで工場の中を一緒に見て回りながら、『ここはもう少しこうしたほうがいいよね』『この動線、変えたほうが作業しやすいかも』と、率直に意見を出し合っていった結果、取得が実現しました。私自身は、品質管理に関する資格取得にも挑戦していきたいと思っています。今は検査業務が中心ですが、これからは食品安全や品質についてデータを集めて分析し、自分の言葉で意見を発信できるレベルまで成長していきたいです」

人を育てる、100年企業の文化

お二人の話を聞いていると、相馬屋が、人を育てる会社であることが伝わってきます。

「経営層が人材教育についてきちんと考えていて、普段の仕事だけでは得られない経験ができる場を用意してくれています。年に一度の経営方針発表会では、売上や目標の共有に加えて、外部の講師を招いた勉強会もあります。マナー研修や経済の話、社会保険労務士さんによる制度の説明など、生活にも役立つ知識を学べる機会です。お米マイスターなど仕事に関わる資格を取得する際の費用を支援する制度もあります」

100年続く老舗企業でありながら、現状にとどまることなく、学びと成長を重ねていく。その企業文化が、この工場の日常を形づくっているのかもしれません。

福島県産の米を原料に商品化したパックご飯も製造。「ふくふくご飯」は福島12市町村内産の米も使用している

相馬屋のパックご飯は全国のスーパーで販売されており、各地の消費者から声が届くこともあるのだそうです。関西圏で商品を手に取った方から思いがけない電話が寄せられたこともありました。

「おいしくて、どこで作っている商品なのか気になって調べたら福島だったからと、わざわざ電話をくださって驚きました。『復興への道は大変でしょうが、頑張ってくださいね』と話してくださって。そうやって応援の言葉をもらえるのは、本当にありがたいです」

こうした声のひとつひとつが、現場で働く人たちの励みになっています。

地域に寄り添いながら事業を広げる相馬屋の取り組みは、復興の枠を超え、地域農業の支えとなっています。食に関わる仕事に少しでも関心のある方は、相馬屋パックご飯工場の取り組みにぜひ触れてみてはいかがでしょうか。

株式会社相馬屋の求人情報はこちらからご確認いただけます。
https://arwrk.net/recruit/soumaya


■株式会社 相馬屋
1923年創業。福島県いわき市に本社を置き、精米・卸・小売を中心に、100年以上にわたり事業を展開。5つ星お米マイスターが在籍し、地域の生産者の想いが詰まった米をていねいに取り扱っている。2023年、加工分野へ進出し、福島県楢葉町にパックご飯工場を新設。福島県産米を中心としたパックご飯の製造を通じ、米の安定的な活用と地域農業の循環に貢献している。

所在地:〒979-0513 福島県双葉郡楢葉町大字山田岡字仲丸1-9 楢葉南工業団地内
TEL: 0240-25-8111
HP:https://soumaya.biz/

※所属や内容は取材当時のものです。最新の求人情報は公式ホームページの採用情報をご確認いただくか、相馬屋へ直接お問合せ下さい。
文・写真:奥村サヤ