INTERVIEW先輩就農者の声
川俣町栽培農作物 アンスリウム など
“花を作る”のその先へ。
さらに先へ。
2017年3月に避難指示が解除された川俣町山木屋(やまきや)地区。そのおよそ1年後にこの地でアンスリウム栽培をスタートさせた谷口豪樹(ごうき)さん(35)。2021年には(株)smile farmを設立し、現在は観光農園や体験農園などお花の栽培に留まらない多角的な経営をしています。地元は埼玉、実家は非農家、元サラリーマンの谷口さんが農業に感じる魅力、谷口さんが描くこれからの川俣の姿を伺いました。
みんなで創り上げた川俣アンスリウムブランド
川俣町でなぜアンスリウム栽培が盛んなのでしょうか?
川俣町はもともとトルコギキョウの有名な産地だったんです。震災後、「復興の花」として川俣町全体でアンスリウムの栽培を促進しました。2017年に町内農家11人で始めて、2018年に僕も加わりました。実は去年、川俣町は全国でアンスリウムの生産量日本一になったんですよ。ゼロから始めたので普通は十年単位でかかるんですが、それだけみんなが頑張って、市場に認められたんだと思います。「川俣アンスリウム」というブランドが確立して、小売店でフェアをやってくれたとも聞きましたし、最近では冬でも欲しいと注文が入るようになりました。
僕らが参入した当初は国内流通量のうち90%以上が輸入でしたが、今ではなんと40%が川俣産になりました。コロナで輸入がストップしたときに川俣のアンスリウムを使っていただいて、品質の高さを知ってもらえたのも要因の一つかと。外国産のものに比べて価格は倍以上するんですが、花持ちのよさ、色艶、立体感などが評価されているようです。川俣のアンスリウム農家12人で月に一回定例会をやっていて、お互いのいいところを取り入れて腕を磨いてきました。惜しげもなく技術を共有しているのは、一人勝ちじゃなくてみんなで成功させたいっていう思いがあるからです。やっぱり、アンスリウムは川俣の「復興の花」なので。あっ、ちょっと待ってくださいね。ちょうどアンスリウム農家の大内さんが来ました。農家の大先輩です。
すごいっすよねー。大内さんなんて農業の大ベテランなのに、僕みたいな新人のところにも来て話を聞いてくれて、色々アドバイスをしてくれます。僕よりもはるかに知識も技術もあるのですごく嬉しいです。
2023年オープン予定の「体験農園」について教えてください。
川俣町が運営していて、うちは管理業務をしています。一区画50平米(0.5a)で、30区画、月額5000円で使えるというサービスです。今年の8月にプレオープンして、現在すでに半分の15区画が埋まっています。約7割は福島市からいらっしゃってますね。川俣町に新規就農者を増やしたいという目的があるのですが、いきなり就農といっても難しいので、まずはその一歩手前で「農業に興味を持ってもらう」ということを目指しています。
手ぶらで来てもらってOKで、苗はうちが色々作っているので好きなものを選べます。もちろんご自身で苗や種を買っていただいてもいいです。来られない間は、お客様の要望に合わせて、例えば草取りをしておくなど、僕たちが管理をするので無理なく農業を始められる。さらにできた野菜は持って帰ってもいいし、うちの直売所で売ってもいいし、農園で行うイベントで振る舞ってもいい。作って終わりじゃなくてその先のお客様に喜んでもらうところまで体験できるように設計しています。僕自身も、農業をやっててそこが一番面白かったので、体験してみてほしいです。
取材日:11月16日
取材・文・写真:成影沙紀