INTERVIEW先輩就農者の声
広野町栽培農作物 米、大豆、玉ねぎ など
ピンチはチャンス。
それぞれの10年と、
親子でつくる
これからの農業
広野町で米を中心に大豆、玉ねぎなどを栽培する「新妻有機農園」。江戸時代から続く農家で、代表の父・新妻良平さん(63)が14代目にあたります。2014年に法人化をし、2022年に長男の秀平さん(34)が入社。今シーズン初めての稲刈りの日、そんなお二人にお話を聞きました。
親子が描くこれからの農業
農業を軸にした地域づくりとは?
息子・秀平さん:例えば“福祉”分野。うちで作った玉ねぎの皮むきを障がいのある人の仕事の一つにしてもらう。他には子どもたちの農業体験を受け入れたら“教育”分野。うちは今後農業をやりたい人をどんどん雇用したいと思っているので、外から人が来てくれたら“移住”分野というふうに、農業を軸にすればどんな分野の地域づくりにも手が届くんです。
農園としては今後拡大していく予定なのですか?
息子・秀平さん:今年中に研修生の受け入れや新たな従業員の募集を始めたいと思っています。去年まで農地は10ha程度だったんですが、今年から一気に40haに増えました。広野町だけではなく、楢葉町、富岡町、大熊町でも農地を借りられることになったんです。来春に避難指示解除になる地域もあるので、そこでもやりたいです。うちは親父が土づくりがうまくて、米もおいしいって評判をいただいてるので、その技術を伝えたい。それから、ずっと自分で農産物を販売してきた農家だから、農業技術だけではなくて、「どうやって売るのか、どうやって生計を立てるのか」ということも教えられると思います。
父・良平さん:今年、秀平の高校の同級生がうちに社員として入ってくれたんです。全国的には農業は高齢化、後継者不足って言われてるけど、この子みたいに農業やりたいっていう若い人もいる。そういう就農希望がある人たちを受け入れて2〜3年経験を積んでもらって、富岡町や大熊町で彼らが独立していくのもいいよね。地元で農業やりたいっていう人がいなくて困っているような地域でさ。最初は機械とかうちのを使ってもいいし、うちで働いている間にお米に限らず収益性の高い作物を探すということもできる。
そもそも日本農業の歴史を振り返ると、戦後の農地改革でそれまで地主が束ねていた農地が細分化されて作付者のものになった。だからみんな農地の規模が小さくなっちゃった。近代化に伴ってそんな小さな農地だけでは食っていけなくなったのに、代々受け継いだ土地だから手放すわけにはいかねぇって兼業してまで農業をしてきたっていう流れがある。だけど今回の震災、原発事故がきっかけになって、俺みたいに農業やりたい人のところに土地が集まって大規模化できるようになった。捉え方を変えればいいチャンスなんじゃないかな。ピンチはチャンス。どんなことも考え方ひとつだね。
取材日:9月14日
取材・文・写真:成影沙紀