INTERVIEW先輩就農者の声
南相馬市栽培農作物 コメ、小麦、12種類の野菜 など
まだまだ農業を
進歩させたい。
僕、若いんで!
南相馬市鹿島地区でコメ、小麦、12種類の野菜を栽培する「武田ファーム」。この地で続く農家の四代目である武田幸彦さん(35)が代表を務めます。武田さんはアメリカで農業研修中に東日本大震災の知らせを受けました。帰国後は群馬県の農業生産法人で働き、2017年にUターンして就農。農地の拡大、従業員の雇用など進化を続ける武田さんの農業について伺いました。
狙い通りにいかないのが面白い
どんなところに販売しているんですか?
群馬時代に声をかけてくれた野菜の宅配業者さん、加工屋さん、あとはネットで個人のお客さんに売ったり、ふるさと納税とか、直売所、農協、学校給食……。考えられる売り方は全部やってますね。
取引先は帰ってきてから僕が開拓したお客さんが多いです。栽培するより先に売ってました。「これ売ります」って言ってから作るみたいな。だから作るプレッシャーはめちゃありました(笑)。
営業のコツの一つは相手が求めるものを聞くことですかね。例えば紫キャベツの場合、ニーズがあるのに作ってる人があまりいなかった。生産者からは栽培が難しいって敬遠されてたんですが、案外、ちょっとしたコツをつかめばできました。そんなことをしているうちに、「この品種のかぼちゃを作ってくれませんか?」というふうに品種を指定して相談されるようになりました。
就農して5年目、経営としてはいかがですか?
初期投資として機械を導入して、ビニールハウスも何棟か新設したんで……。どれぐらいだろ……、庭付きの一軒家が買えるぐらい投資しましたが、3年目ぐらいでペイできて、黒字で経営できています。ハウスの減価償却が終わるのが10年なので、それ以降は出た利益でさらに投資していく予定です。今よりもっと作業効率の良い機械なんかも出てくるんで、利益はそういうものに投資してさらに進歩していきたいですね。50、60歳ぐらいになったら考え方が変わるかもしれないですけど、僕はまだ若いんで。投資、成長、投資、成長……って、その方が面白いですね。
そう考えると農業って栽培だけじゃなくて、経営的な感覚も必要なんですね。
そうですね。農業をやったことがない人がいきなり独立して、こういう経営判断をしろっていうのはかなり難しいし、危険だなと思いますね。だから例えば自動車会社に就職するのと同じように、農業の会社に就職するっていう入り口ができれば、個人農家は減っていっても農業人口は増えるのかなと思います。実際、南相馬市も農業法人が結構できていて、そこに就職してる人っていっぱいいるんです。将来的には、うちもそういう人を新卒で雇用できるような会社にしていきたいです。
改めて、ここで農業をして暮らすことの魅力ってなんでしょうか。
南相馬に限らず、農業全般に言えることなんですけど、狙った通りにならないのが面白いところですね。もちろん狙い通りにいったら嬉しいけど、ほとんど狙った通りにいかない。でも外れたら外れたで「もうちょっと早く植えたらどうなるだろう」って考えるのが楽しいし、毎年天候が違うから飽きることがない。
南相馬で暮らすことの良さは、山もあって海もあって、東京まで特急で一本だし、仙台までは車で1時間。冬は雪も降らないし、僕は好きですね〜。それから、隣の家まで距離があるんで、大きな声出してもいいところですかね。僕も声デカイんですけど、子どもたちも元気なんで(笑)。「隣に家がなくてよかったねー」っていつも言ってますよ。
取材日:9月15日
取材・文・写真:成影沙紀