(有)I Love ファームおだか

(有)I Love ファームおだか

吉田一貴さん

南相馬市栽培農作物 ブロッコリー など

小高の田園風景を
取り戻したい

南相馬市小高区でブロッコリーを生産する農業生産法人「I Love ファームおだか」。小高区が避難指示区域に指定されたため、一時は営業休止を余儀なくされました。2016年には同区の避難指示が解除となり、2019年には営農を再開。代表・吉田博さん(66)の息子であり、会社の未来を担う吉田一貴さん(34)に、復活の軌跡や地域とのつながりについてお話を伺いました。

  1. 農業ってツラいし、なんかダサい?
  2. 風評被害は、
    「ごめんなさい」っていうぐらい無い
  3. 地域の中で、地域のために

風評被害は、「ごめんなさい」っていうぐらい無い

東日本大震災はどこで経験したのでしょうか?

大学卒業の年が2011年だったので、3月11日は大学卒業と専門学校の入学の間で、ちょうど一時的に実家に帰ってきていました。ここは海から遠いので津波の被害はありませんでしたが、原発事故は……、怖いというよりただ呆然として混乱していたように思います。小高区は避難指示区域に指定されて、家族は新潟の親戚のところに避難しました。僕は専門学校のご好意で少し早めに寮に入れていただきました。当時の社員は全国のグループファームに移って、うちの会社は2016年の避難指示解除までは店じまいでした。

一貴さんはいつ会社を継ごうと決めたんですか?

実は、3年前に小高に帰ってくるまでは会社を継ごうという気持ちは全然ありませんでした。たぶん、震災直後の小高の状況も知ってたし、僕自身も南相馬から来たということで他県の人から怖がられるような経験もしたので、根強い風評被害が残るだろうと思ったんです。それから、今4歳になる娘がいるんですが、一人の親の心情としても戻るのは難しいんじゃないかと思いました。やっぱり国産野菜って「安全でおいしい」というイメージがある。一度損なわれてしまったイメージの回復はなかなかできないんじゃないかと思っていました。

実際にこちらで農業をやってみていかがですか?風評被害は感じられますか?

いやー、それがっすね……。「ごめんなさい」って言うぐらい無くて(笑)。2〜3年ぐらいまでは少しあったとバイヤーさんから聞いたことがあるぐらいですが、少なくとも今はまったく無いです。親としても子どもに食べさせることに抵抗はありません。農薬検査と同じように毎年出荷前に放射線検査もきっちりしていることを知ったからでしょうか。

営農再開にあたって苦労したことはありますか?

まず、もともと使っていた畑は線量が高い場所にあったので、別の場所に畑を借りるところから始めました。加えて避難指示が解除されるまで5年もあったので、畑がリセットされていますし、土壌の除染で表土を取り除いたこともあって土の性質が様変わりしています。堆肥を入れたり、「緑肥」といって、畑の肥やしになる植物を栽培して青いまま畑にすきこんだりして土づくりを行っています。他には、支援事業を使ってトラクターを購入できたことや、行政が行う基盤整備によって農地が集約されて畑が使いやすくなったことも再開の背中を押してくれました。

取材日:10月4日
取材・文・写真:成影沙紀

(有)I Love ファームおだか

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吉田一貴さん

「I Love ファームおだか」は2000年設立の農業生産法人。父・吉田博さんが代表、一貴さんが取締役を務める。「I LOVE」というブランドでブロッコリーを生産、販売している。北海道、福島、岡山、宮崎、長崎の全国に5カ所にグループファームがあり、「I Love ファームおだか」は福島の農場を担う。福島第一原発の事故により小高区が避難指示区域に指定されたため一時は休業を余儀なくされたが、2016年には避難指示解除、2019年に操業再開となった。震災前の農地は120haで、現在51haを作付けしている。100haを目指して奮闘中。

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