INTERVIEW先輩就農者の声
南相馬市栽培農作物 ブロッコリー など
小高の田園風景を
取り戻したい
南相馬市小高区でブロッコリーを生産する農業生産法人「I Love ファームおだか」。小高区が避難指示区域に指定されたため、一時は営業休止を余儀なくされました。2016年には同区の避難指示が解除となり、2019年には営農を再開。代表・吉田博さん(66)の息子であり、会社の未来を担う吉田一貴さん(34)に、復活の軌跡や地域とのつながりについてお話を伺いました。
農業ってツラいし、なんかダサい?
「I Love ファームおだか」の概要を教えてください。
うちはもともと兼業農家で、父はJAに勤めながら稲作をしていました。2000年、僕が中学生ぐらいの頃ですかね。「I Love ファームおだか」という会社を立ち上げたという経緯です。
リレー出荷のメリットは二つあります。一つは、小売業者さんにとってのメリット。露地野菜って、当然ですが季節によって作れる時期と作れない時期があるんですね。でもうちを含めた「I LOVE」グループなら、1年間途切れることなくブロッコリーを提供できます。
二つ目は消費者さんにとってのメリット。例えば無理やりハウスで気温を上げて作ろうとすると、作れないことはないんですがブロッコリーにストレスがかかってしまいます。リレー出荷は気候に合わせて産地を変えていますから、そのとき旬の、ストレスのかかっていないおいしいブロッコリーが食べられるんです。
一貴さんが農業の道に入ったのはいつからですか?
大学卒業後ですね。学生の頃は農業には興味すらなくて、公務員を目指して大学では政策の勉強をしていました。大学を卒業するときに、当時うちの会社の顧問をしていた方から「農業に打ち込める専門学校があるから行ってみないか」と言われて滋賀県の種苗会社が運営している園芸専門学校に行ったんです。半ば強引に、引っ張られたような感じでしたが……(笑)。
小さい頃から近くで農業を見てきたんで、「農業ってツラいし、なんかダサい」という思い込みがあったんですよね。だから自分はビシッとスーツ着てビル街で働きたい……って思っていました。でも専門学校に入ってみると、同世代の仲間がひたむきに農業に向き合ってたんです。みんなの“農業熱”を感じたし、農業って知れば知るほど深くて面白い。汗をかく仕事もやってみたら気持ちいいなと思いました。専門学校で2年間学んで、その後は北海道の「I LOVE」ブランドのグループファームで8年間働きました。3年前に地元に戻ってきてうちの会社に入りました。
取材日:10月4日
取材・文・写真:成影沙紀