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【フリーランスツアーレポート】まだ見ぬ明日と出会う旅 by freee

2024年3月12日
  • フリーランス
  • 体験ツアー

個人事業主・フリーランスを対象にした楢葉町・富岡町・大熊町・双葉町・浪江町を巡る移住体験ツアー「まだ見ぬ明日と出会う旅 by freee」が、2024年2月8日(木)から9日(金)の1泊2日で開かれました。この記事では、2日間のうち、大熊町と楢葉町を巡った2月8日の様子をご紹介します。

▼ツアーの様子は動画でもご紹介しています

充実した大熊町のリモートワーク環境

イベントは、クラウド会計ソフト『freee』などを運営するフリー株式会社が、「”転職なき移住”を考えるフリーランスの皆様の”地域との繋がりづくり”を手伝いたい」という思いから主催し、運営には、ふくしま12市町村移住支援センターおよび一般社団法人双葉郡地域観光研究協会が協力しました。

住む場所にとらわれずに仕事ができる、フリーランスという働き方。福島12市町村でも、マーケターやデザイナー、カメラマンやライターなど、あらゆる分野で「転職なき移住」をする人が増えています。そうしたみなさんが気になるのが、地域での仕事の作り方や、自宅以外で作業ができるコワーキングスペースの有無ではないでしょうか。今回のツアーでは、福島12市町村を舞台に活躍するフリーランスの人の話を聞いたり、コワーキングスペースを巡ることで、移住後の仕事と生活をイメージしていただきました。

富岡駅に到着した一行。バスに乗り込み、福島県浜通りを縦断する国道6号沿いの車窓の景色を眺めながら向かったのは、大熊町の大熊インキュベーションセンター(以下、OIC)です。ここは旧大熊町立大野小学校から生まれ変わった起業支援拠点で、コワーキングスペースやシェアオフィス、レンタルオフィス、会議室などが併設されており、多くの人が利用しています。

■OICの紹介記事はこちら
https://mirai-work.life/magazine/4468/

OICを見学し、会議室へ到着すると昼食が用意されていました。準備してくれたのは、楢葉町でkashiwaya シェアハウスと食堂を営む古谷かおりさんです。福島県産食材をふんだんに使ったお弁当で、古谷さんが一品一品丁寧に説明してくださいました。

古谷さんも、千葉県で生まれ育った移住者です。移住後に立ち上げた小料理屋での出来事を振り返りながら、「ここは仲間に恵まれるエリア。いろんな支援のネットワークがあるし、やりたいことを応援してくれる土台が、たぶんどの田舎町よりもあると思います」と話してくれました。

■古谷さんの移住ストーリーはこちら
https://mirai-work.life/magazine/653/
■kashiwaya シェアハウスと食堂の記事はこちら
https://mirai-work.life/magazine/3180/

続いて、ふくしま12市町村移住支援センターから、福島12市町村移住支援金ふくしま12市町村移住支援交通費等補助金お試し住宅といった移住支援制度について説明しました。説明した担当の稲村自身も、Uターンの移住者。「移住後にやりたいことや叶えたい暮らしに挑戦する機会が多い地域だと思います。当センターにぜひ移住相談しに来てください」と呼びかけました。

■移住相談窓口はこちら(オンライン/対面 どちらも可能)
https://mirai-work.life/concierge/

福島12市町村×フリーランスの働き方とは

2日間のツアーで案内人を務めてくれたのが、一般社団法人双葉郡地域観光研究協会(F-ATRAs)代表理事の山根辰洋さんです。山根さんは東京都出身で、2013年から双葉町の復興支援員として活躍した後、2019年に同社を設立。OICへ入居し、観光・まちづくり分野でさまざまな事業を展開しています。

午後のプログラムは、山根さんによるF-ATRAsの事業説明からスタートしました。同社では、立ち上げ当初から事業に共感したフリーランス人材と協働し、双葉郡(※)のまち歩きのガイドツアーや大学と連携した研修ツアー、インバウンド事業や情報発信事業を手掛けています。
※広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村の6町2村

双葉郡を含む浜通り地域について、「個の可能性が大きくなりやすい環境」と語る山根さん。2024年には、同社が手掛ける双葉郡のガイドツアーがインド最大規模の観光博に出展することになり、世界と仕事をする夢が叶いつつあるそうです。そして、このことを「双葉郡の可能性にしっかりコミットしてきた結果」と表現します。「ここは外から来た人にもチャレンジできる可能性を見出し、応援してくれる寛容な地域です。一方で、個に対する負担が大きくなってしまう部分も。最初は負担にならない範囲で地域に入っていきながら、自分の可能性を広げていくことをおすすめします」

続いては、フリーランスの立場でF-ATRAsに参画する3人が登壇し、福島12市町村での働き甲斐について語りました。

富岡町出身で、スタディーツアーの案内や演劇作品の出演や創作などを手掛ける秋元菜々美さんは、富岡町役場職員を退職してフリーランスになった理由を説明。「震災前の双葉郡は、東京電力という大きな会社とその関連企業や協力企業でピラミッド型の産業構造になっていました。でも、この地域が再び動き出したら、産業全体がボトムアップされるような気がしていて。私もそのプレイヤーになりたいと思いました」

今回のツアー参加者は、地域で自分だけの仕事を見つけたい人、サーフィンが好きな人、これからの生き方を探りたい人など、さまざまな分野で活躍している皆さん。それぞれの自己紹介を終えると、F-ATRAsのメンバーも含めた座談会がスタートです。

ある参加者の方は、「一定のコネクションやネットワークがないと、一人ではリソースが確保できず諦めてしまう仕事もあります」とぽつり。「フリーランスで大きい仕事をやろうとすると一人では難しい」と共感する声もありました。

それに対し、山根さんは「プレイヤーの少ない地域で一から起業すると、リソースを抱え続けるのが難しいんです。僕の会社では、必要な時にリソースを引き出せる関係性があったほうが多様な仕事ができるようになると考え、フリーランスの集合体として会社を動かすようになりました。結果、それが現代社会にマッチしています」とコメント。参加者からは、「個人だと時間の融通も利くし、やりたいようにはできるけど、大きな仕事に関われないのは残念だと感じていました。チームで仕事をすることでフリーランスでも大きな仕事に関われるなら、すごくうれしい」という声が上がりました。

楢葉町のコワーキングスペースは地域の交流施設

続いての目的地は、OICからバスで25分ほど走った楢葉町のみんなの交流館ならはCANvas(キャンバス(以下、CANvas)です。会議室や、無料で利用できるコワーキングスペースなどを備えた交流施設で、子どもたちが遊びに来たり、待ち合わせに使われたり、仕事をする人がいたりと、町民が日常的に集う、居心地の良いスペースになっています。

館内とその周辺を案内してくれたのは、CANvasを管理運営する一般社団法人ならはみらいの平山将士さんです。CANvasのそばには、スーパーやホームセンター、パン屋や飲食店が入るここなら笑店街があります。この周辺には、診療所や歯科医院、帰還した人のための災害公営住宅、郵便局など生活に必要な施設が集まるコンパクトタウンが構成されています。災害公営住宅の一部は、楢葉町のお試し住宅として活用されています。

■楢葉町のお試し住宅の紹介記事はこちら
https://mirai-work.life/magazine/6981/

「楢葉町は一度、全町避難で人が消えた町であることがまちづくりの原点にあります。新しい町が立ち上がっていく姿を目にしたことで何かが響いた方が通ってくれるようになり、通うのが大変だから住むようになるというパターンで移住される方が多いです」と平山さん。「ここは元気な60~70代の方たちに支えられている町で、今大切なことは伝統を継承していくこと。地域コミュニティに参加して、まちの歴史を一緒に作ってくれる人に来てもらえたらうれしいですね」と話しました。

楢葉町にはほかにも、ならはスタートアップ・プレイス CODOU(コドウ)、ならはsalonの2つのコワーキングスペースがあり、いずれも無料で利用できます。

■福島12市町村のコワーキングスペース一覧はこちら
https://mirai-work.life/startup/coworking/

最後に

2日目は、双葉町の双葉町産業交流センターでコワーキングスペースFUTABA POINTを見学。浪江町では、循環乗り合いミニバス日産スマートモビリティで町内を周遊したり、道の駅なみえのテラスでリモートワークをしたり。フリーランスの移住者やリモートワーカーと交流する時間もあり、参加者は福島12市町村の地域の魅力や仕事の環境を確認できたようです。

今回のツアーで話をしてくれた移住者からは、「福島12市町村はチャレンジしやすい環境」という声が多く聞かれました。福島12市町村での暮らしは、これまで磨いてきた仕事のスキルがまちづくりに直結する可能性を秘めています。自分の力を試したい、地域や復興の力になりたいと考えているフリーランスの人は、まずはご紹介した施設に足を運んでみてはいかがでしょうか。

福島12市町村で活躍するフリーランスの移住者はこちらのページでご紹介しています。
https://mirai-work.life/freelance/

※所属や内容は取材当時のものです。
取材・写真 五十嵐秋音