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【移住体験ツアーレポートin広野町&楢葉町】ふくしまの笑顔とあなたの未来を重ねる旅

2025年3月12日

2025年2月22日(土)から23日(日)の1泊2日で、広野町と楢葉町を巡る移住体験ツアー「ふくしまの笑顔とあなたの未来を重ねる旅in広野町&楢葉町」が開催されました。この記事では、2日間のツアーのうち広野町を訪問して暮らしのイメージを膨らませた2月22日の様子をご紹介します。

広野町ってどんな町?

「東北に春を告げるまち」をキャッチコピーに掲げる広野町。真冬でも平均気温が10℃を超える温暖な気候を活かした温州みかんや国産バナナの栽培、米の生産などが盛んです。
町立のこども園や小学校、中学校、県立の中高一貫校が集約されているほか、楢葉町にまたがるナショナルトレーニングセンター「Jヴィレッジ」があるなど、教育やスポーツの環境が充実しています。東京駅から広野駅までは常磐線の特急でおよそ2時間30分。アクセスのよさも魅力です。

■広野町の概要
https://mirai-work.life/ciy/hirono/

新しい町の特産品はバナナ

まずは、町の新しい名産品をご紹介。震災後に産声をあげた無農薬国産バナナ「朝陽に輝く水平線がとても綺麗なみかんの丘のある町のバナナ(愛称:綺麗)」が栽培されている、トロピカルフルーツミュージアムです。

町の復興のシンボル「綺麗」を栽培するトロピカルフルーツミュージアム

案内してくれたのは、広野町復興企画課の横田侑哉さんです。「バナナの本格栽培は東北地方で初の取り組み。熱帯性の作物を東北の地で栽培、収穫するという挑戦を通して住民の希望になればと始まりました」と説明します。

「町の新しい名産として栽培に力を入れています」と横田さん

バナナは生食用だけでなく加工用としても生産されています。地元の県立ふたば未来学園高校とコラボし、クッキーやドーナツ、マドレーヌなどのスイーツを商品化。トロピカルフルーツミュージアム内のカフェ「フルーツパーラー二ツ沼 ひろぼーの休憩所」やふたば未来学園高校の学生カフェ「caféふぅ」で販売されています。さらに、町立広野小学校では、バナナの茎の粉末やペーストを使って卒業証書用の和紙を手作りしているのだそう。食用だけではなくさまざまな広がりを見せています。

たわわに実るバナナは無農薬で皮ごと食べられるとか
参加者のみなさんは、はじめて見るバナナの木に興味津々の様子

その後、一行は隣接する二ツ沼総合公園へ。子どもたちが楽しめる遊具や広大な芝生広場のほか、老若男女が楽しめるパークゴルフ場、サイクリングロード、バーベキュー施設などを揃える、双葉郡有数のレジャー施設です。レストランやギャラリー、地場産品直売所などもあり、町外の方にも多く利用されています。

休日ともなると多くの親子連れでにぎわいます

ランチは公園内を一望できる「カフェ・レストラン二ツ沼」へ。メニューは、広野町産のバナナ「綺麗」を使ったバナナパウダー入りカツカレーとバナナスムージー。参加者はバナナの味を探りながら味わいます。

お店一押しのバナナパウダー入りの「カツカレー」
濃厚な甘味が人気の「バナナスムージー」

子育ての中核を担う「教育の丘」

続いて訪れたのは広野町の教育の中枢「教育の丘」です。教育の丘とは、広野こども園「ひろぱーく」、町立広野小・中学校、中高一貫校の県立ふたば未来学園が隣接した、幼児教育から高等教育までを集約した教育エリアのこと。未就学児から高校生までが一つの場所で教育を受けるため交流の機会が多くあるほか、保護者や家族もイベントなどを通して多世代が交流できる場にもなっています。
参加者は広野暮らし相談窓口「りんくひろの」相談員の大森博隆さんの説明を聞きながら、それぞれの施設の様子を外から見学し、教育環境を確かめました。

ふたば未来学園の記事はこちらからご覧ください。
双葉郡から世界へ。最先端教育で変革者を育てる「ふたば未来学園中学校・高等学校」

中高一貫校の県立ふたば未来学園

生活に欠かせない商業施設

生活の土台となる買い物環境もチェックします。広野町公設商業施設「ひろのてらす」には、大手スーパーや飲食店、クリーニング店など、生活に欠かせない店舗が並び、食料品も日用品などの生活必需品が幅広く揃います。21時まで営業しているので、仕事帰りの遅めの買い物にも便利です。

食品から日常品まで揃う「ひろのてらす」

気軽に利用できる日本有数のサッカー施設

次に向かったのは、広野町と楢葉町にまたがるナショナルトレーニングセンター「Jヴィレッジ」。東京ドーム約10個分という広大な敷地に天然芝ピッチやホテル、スタジアムなどを備えており、サッカー日本代表の合宿地としても使われています。

Jヴィレッジのシンボル的存在である天然芝のピッチ

Jヴィレッジは震災後、原子力災害の収束拠点となっていました。2019年4月の営業再開後は、施設に隣接するJR常磐線Jヴィレッジ駅が開業し、各種スポーツやイベント、合宿、教育旅行や企業研修などで幅広く活用されています。

月額制のトレーニング施設や子ども向けのサッカークラブがあるなど、町民にとっても身近な施設です。参加者は建物内にある「蹴球(サッカー)神社」でお参りをした後、天然芝のピッチへ足を踏み入れ、芝の感触を確かめたり、寝転がったりして楽しんでいました。

Jヴィレッジのサッカークラブはこちらの記事でもご紹介しています。
「サッカーの聖地」Jヴィレッジは技術と心を磨く恵まれた練習環境【楢葉町・広野町】

震災からJヴィレッジが営業再開するまでを追った映像を見る参加者

広野町で暮らす移住者と交流

宿泊先のハタゴイン福島広野では、りんくひろのの大森さんが夕食前に広野町の震災後の歩みや生活・教育環境について説明。広野町の居住人口は震災前の約9割まで回復し、スーパーや飲食店もでき生活もしやすくなってきたのだそう。

気になる町内の求人情報についても大森さんから話がありました。
「主な就労先としては火力発電所関連や工業団地、医療機関、介護福祉施設などがあります。特に工業団地には、基板やプラント、セメント、ガス、原発の廃炉関係の機械を取り扱う会社が入っており、求人を募集している企業もあります」

町の現在について参加者に説明する大森さん

続いて、先輩移住者の都築ほのかさんと池谷昭男さんが移住のきっかけや町での生活について語りました。

オンラインで登壇した都築さんは宮城県石巻市出身。2023年4月に移住し、町内のビジネスホテルで事務や客室清掃などの仕事をされています。小学生の男の子と幼稚園児の女の子を持つシングルマザーで、仕事と子育てに奮闘中です。一度、故郷から出て暮らしてみたいとの思いがあったという都築さん。同じ東北で実家から比較的距離が近い場所を探していくうちに、広野町にたどり着いたそうです。

「毎日が楽しい」と充実した日々を送る都築さん

「海も山も近く、幼児教育から高等教育まで教育環境が一ヵ所にまとまっている広野町に興味を持ち、母と2人で見学に訪れました。各学校の先生たちもとても親切に話をしてくれて、親子で安心して移住できそうと感じました」と都築さん。その時に撮った写真を息子さんに見せたところ、「この学校に通いたい!」と目を輝かせたそうです。大森さんが家探しや就職活動で親身に相談に乗ってくれたことも、移住の後押しとなりました。休日には子どもたちと海へ行って砂浜で遊んだり、近くの山や川で生き物を探してみたり、のんびり過ごしているといいます。

「広野町は子育て世代にとってとても魅力的な町だということを、移住を検討している人に伝えていきたいです。今後は広野町のよりよいコミュニティづくりのために貢献していきたい」と、これからの目標を語りました。

広野町で「騎西のパイラ整体院」を経営している池谷昭男さんは埼玉県加須市出身。東日本大震災の直後、地元の加須市にある旧騎西高校は双葉町の避難先になりました。
「当時は温浴施設の手揉み処で働いていて、体の緊張をほぐすことで避難生活を送る皆さんに少しでも元気になってほしいと考えましたが、整体のボランティアは個人ではできませんでした。そのとき、被災者の方の力になれなかった歯がゆい思いがあって、この思いを現地でかなえたいと2024年3月に広野町の移住体験ツアーに参加。移住された方や大森さんの話を直接聞けたことで移住への不安はなくなり、とても充実した時間を過ごすことができました。そして迷うことなく移住しようと決めました」

「ツアーに参加したことで移住への気持ちが確かなものになった」と池谷さん

ツアーに参加した2ヵ月後の5月に、池谷さんは物件を探しに再び広野町を訪問。大森さんと不動産会社の案内で現在の物件を内見し、「民家だった建物ですが、駐車スペースが広く緑に囲まれた環境」が気に入り即決。7月に移住し「騎西のパイラ整体院」を開業しました。この日は参加者を前に、「震災直後にできなかったことがようやくできるようになりました。これからはいろいろな方が毎日元気で暮らせるお手伝いをしていきたい」と語りました。

池谷さんは夕食後の交流会にも参加。参加者は広野町での暮らしぶりや休日の過ごし方などを質問し、交流を深めていました。

池谷さんの移住ストーリーはこちらでもお読みいただけます。
広野町で新規開業。整体の技術で地域の人々の健康を支え、笑顔にしたい

移住者の話に耳を傾ける参加者たち

「体験談が聞けて良かった」「移住がリアルになった」

参加者のみなさんは、この2日間で移住への考えがどのように深まったのか、感想をご紹介します。

「実際に移住をした方の体験談を聞くことができてよかった」(神奈川県・30代女性)
「インターネットで調べるだけでは曖昧だったことがリアルに考えられるようになり、ありがたかった」(山梨県・40代女性)
「実際に行ってみないとわからないことがたくさんあり、移住に対してのイメージが膨らんだ」(神奈川県・30代女性)

まとめ

翌日は隣接する楢葉町に移動。復興状況を確認したほか、商業施設「ここなら笑店街」やお試し住宅を見学し、現地の移住支援制度や生活環境に理解を深めました。移住を検討している地域に実際に足を運び、そこで暮らす人の話を聞くことで、移住に対するイメージを膨らませることができたのではないでしょうか。

未来ワークふくしまの移住体験ツアーは2025年度も実施予定です。

また、自分の興味のある場所をじっくり巡りたいという人はこちらのページのモデルコースを参考に現地に足を運んでみるのもおすすめです。
ふくしま12をめぐろう!~好きな土地・テーマから選べる1泊2日のモデルコースを紹介~

※所属や内容はツアー当日のものです
文・写真:和田学