広野町でスポーツを通じたつながりをはぐくむ「NPO法人広野みかんクラブ」

総合型地域スポーツクラブは、世代を超えて誰もが楽しめる地域のスポーツコミュニティです。2010年に広野町で設立されたNPO法人広野みかんクラブ(以下、みかんクラブ)もそのひとつで、それまで個別に活動していた体操教室やスポーツ少年団、成人クラブを集約し、子どもからお年寄りまでスポーツに親しめる環境を整えました。
スポーツで地域を元気にする広野みかんクラブの活動について、地元広野町出身で陸上競技や幼児スポーツの指導を担当する事務局員の半澤悠司(はんざわ ゆうじ)さんに話を聞きました。
広野町でスポーツといえばみかんクラブ

みかんクラブは、公民館や公共体育施設の管理をはじめ、スポーツ教室の開催、スポーツ少年団や成人クラブの支援、駅伝やソフトボールなど市町村対抗福島県大会の事務局業務を担っています。
「小さい町ということもあり、『スポーツといえばみかんクラブ』と、さまざまな事業を委託されています。スポーツ少年団には指導者を派遣し、陸上部は私が担当、剣道部や空手部はみかんクラブ設立以前からの指導者が今も指導にあたっています。成人クラブは既存団体が主体となって活動し、みかんクラブは大会時の送迎や運営をサポート。市町村対抗大会では町の事務局となり、代表チームの監督・コーチの調整や合宿日程の管理などを行っています」
ほかにも、スポーツ大会「MIKANカップ」を開催。フットサル、ソフトボール、バドミントン、バレーボール、野球、陸上の6種目の大会を開催しており、各大会ごとに定める出場資格を満たしていれば、みかんクラブ会員や広野町民に限らず参加することができます。さらに2025年度からは、マラソンや陸上大会の計測事業もスタート。ゼッケンにICタグを装着し、ゴール地点のマットで自動計測するシステムを導入しています。広野小学校の持久走大会やMIKANカップの陸上大会で活用し、より大規模な大会への展開を目指しています。
楽しさを何より大切にするスポーツ教室
スポーツ教室は、子どもからお年寄りまで、世代ごとにプログラムが分かれています。参加するには、活動会員としてみかんクラブに入会し、年会費を納める必要があります。そのあとはどの教室にも1回100円で参加できるシステムです。広野町在住の人に限らず、周辺の楢葉町や富岡町、いわき市から参加する人もいます。
幼児・小学生向けの教室を多く担当する半澤さんは、子どもが楽しめることを重視してメニューを組んでいます。運動が得意でない子も含め、幼い頃からスポーツに親しんでほしいという想いで取り組んできました。
「子どもたちの表情や動きから、楽しんでいることが伝わってきます。2025年度学校保健統計調査によると、福島県内の児童は全国と比べて肥満傾向の割合が高い状況にありますが、教室に通う小学生は少しずつ増え、心強く感じています。週に3〜4回通う子もいて、教室の終わりには『また明日もね』と声をかけあいます。顔なじみの関係が保護者の方の安心にもつながっていると思います」

大人向けには、太極拳とピラティスの教室を開講。各教室には年間を通して10名ほどが通い、「自宅練習用の資料を配布してほしい」という希望が出るなど、参加者は熱心に取り組んでいます。
年配層は健康意識が高く積極的ですが、小学生の保護者世代からは「子どもは運動しているが自分はできていない」との声が多いと半澤さんは話します。
「来年度から運営委託が始まる広野町保健センターのトレーニングルームは、スポーツ教室を行う中央体育館や多目的グラウンドに近く、利用可能時間も教室の時間と一部重なるため、子どもが教室にいる間に保護者も運動できる環境を整えたいです。あわせて親子体操や運動会など、親子で体を動かす機会も企画していきます」
声をかけ続けることで途切れないつながりを生む
会員数やMIKANカップ出場者は年々増え、教室でスポーツに親しんだ子どもたちが高校や大学で競技を続けるケースも増えているそう。その背景には、2010年の団体設立時から事務局長を務める大和田幸弘(おおわだ ゆきひろ)さんの存在があると、半澤さんは話します。
半澤さんが大和田さんと出会ったのは町代表駅伝チーム。当時中学生だった半澤さんは、8歳年上の大和田さんに気にかけてもらい、大学進学で一度広野町を離れたあとも連絡を取り合っていました。大学卒業後はいわき市内の企業で幼児向けスポーツに関わっていましたが、大和田さんの誘いで広野町に戻り、みかんクラブに入職しました。
「大和田さんは周りに目を配り、なにかと声をかけています。その積み重ねが、教室やチームを離れても関係が途切れない、人のつながりを生んでいると感じます。かつてみかんクラブに通っていた子が昨年大学を卒業して広野町に戻り、今は私とともに小学生の指導にあたっています。その姿に現在通う子どもたちが憧れを抱く様子も見られ、よい循環だと思います」

週1回の教室が遊び場や居場所にもなっている
2025年4月から始まった幼児スポーツ教室は、毎週水曜16:00〜17:00に開講。2026年2月現在、約10人が通っており、取材したこの日は6人が参加しました。指導者は半澤さんを含め3人と手厚く、元気なあいさつから準備運動、マット運動や逆立ち、なわとびまで、子どもたちの歓声が響く、あっという間の1時間でした。
教室に参加する子どもの保護者に感想を聞きました。
「年少・年中・年長が対象のクラスなので、はじめは年長の兄だけが参加していました。ある日、たまたま参加者が少ない日に3歳の妹が勝手に混ざりに行ってしまって、そのまま一緒にやらせてもらうようになりました。今では2人で楽しく通っています」(6歳・3歳の兄妹の保護者)

「9歳の兄は年長の時から半澤先生の教室に通っており、人見知りな年中の娘も先生とは顔なじみのため、安心してクラスに入ることができました。兄はかけっこやフットサル、小学生体操教室に参加し、娘も混ざってなわとびを覚えました。みかんクラブは1回100円で気軽に通えるうえ、友達や優しい先生がいる点も親として安心できる理由です」(9歳・4歳児の保護者)

「通い始めたきっかけは、仲よしの子が来ていたから。一度も嫌がらず、毎週楽しそうに通っています。跳び箱は3段、鉄棒や前回り、なわとびもできるようになりました。遊びながら楽しむことで身についているのでしょう。夏は教室後も体育館の外で遊び、家を行き来して遊ぶことがなかなかない今の子どもたちにとって、大事な遊び場にもなっていると感じます」(6歳児の保護者)
幼児スポーツ教室に通う子どもの保護者は、教室が終わるまで会場に残る人が多いそう。おしゃべりや情報交換をしている様子に、「お母さんたちにとっても、居場所のような、大事な時間と場所になっているんだなと思います。こうした営みが少しずつコミュニティになっていくのかもしれません」と半澤さんは話します。

すべての世代がスポーツを楽しみ、健康に生きる未来を目指して
今後は部活動の地域移行の受け皿も担いたいと半澤さんは語ります。
「広野中学校の運動部は、バドミントン部と剣道部、特設陸上部があります。日本サッカー協会(JFA)運営のJFAアカデミー福島に参加している生徒は、アカデミーのクラブチームに所属して練習に励んでおり、中学校にサッカー部はありません。
地域移行を受け入れる場合、剣道部はスポーツ少年団の指導者が、バドミントン部と陸上部は私含め専門の事務局員が指導できます。しかし、それ以外の種目を希望する子どもたちがいた場合には十分な環境を整えられないのが現状です。今後は指導者を確保し、さまざまな種目に対応できる体制を整えたいです」
参加者の輪を広げながら、地域全体の健康づくりを目指すみかんクラブ。スポーツを楽しむ風土が根づき、子どもたちが将来も広野町でスポーツに親しみ、また次の世代へとつながっていくことを半澤さんは期待しています。
最後に、広野町に移住を検討している方へメッセージをいただきました。
「私たちはスポーツクラブとして、子どもから大人まで、どの世代でもスポーツに関われる場をつくっています。小さな町だからこそ人との距離が近く、あたたかなつながりが生まれています。体を動かしながら健康的に暮らしたい方には、ぜひ広野町に足を運んでいただきたいです」

■NPO法人広野みかんクラブ
地域住民が気軽にスポーツを楽しめる環境づくりを目指し、2010年3月に広野町に設立された総合型地域スポーツクラブ。社会体育や公共体育施設の管理を行政から受託しながら、大会開催などの自主事業にも取り組み、「スポーツで広野町を元気に!」を合言葉に活動している。
HP:https://hirono-mikan-club.com/
※所属や内容は取材当時のものです。
取材・文:はしもとあや 写真:中島悠二