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【移住セミナーレポート】vol.18「先端技術でふくしま12の未来を描く」編(東京開催)

2025年3月20日

ふくしま12市町村移住支援センターが主催する「未来ワークふくしま移住セミナー」は、福島12市町村で活躍するゲストとの交流を通じ、現地での暮らしやその魅力を知ることができるセミナーです。第6回は「先端技術でふくしま12の未来を描く」編と題し、2025年2月15日(土)に東京で開催しました。

当日の様子は動画でもご覧いただけます。

ダイジェスト版 (全編動画はこちらからご覧ください)

第1部 ゲストによる活動紹介 / パネルディスカッション

但野 謙介さん(南相馬市/一般社団法人 パイオニズム 理事)

私は南相馬市で生まれ育ち、18歳で東京の大学に進学した後に、日本放送協会(NHK)で記者をしていました。甲子園でリポートしたり番組をつくったりしていたので、私の関わった番組をもしかしたら皆さんもちょっとはご覧になっていたかもしれません。福島の沿岸地域では震災前から人口減少や雇用の問題は厳しい状況があったので、2010年に南相馬市に戻りました。

東日本大震災が起きた後は、世界が180度変わりました。復興作業に奔走しながら、被災した企業の再生にも尽力しました。一方で、新たに鎌倉でベンチャー企業を立ち上げたりもしましたが、現在は復興支援に専念し、社団法人の理事やベンチャーキャピタルとして被災地に進出する企業を支援しています。

現在、宇宙産業の誘致や支援を通じて、被災地に新しい仕事をつくることをしています。これまで被災地は「社会的意義があるから復興のために力を貸してほしい」と言ってきましたが、ここ5年ほどでずいぶん様変わりし、今は「福島はこんなに美味しいものがあって、こんな楽しい暮らしができるよ!」と発信するようになりました。なかなか被災者が楽しく暮らしているよと外に向かって発信しづらい雰囲気がありましたが、ちゃんと福島を知ってもらおうと、イベントや現地ツアーを開催しています。

その他には、教育環境を充実させてゆきたいと思っています。魅力的な教育を外部から取り入れたり、宇宙と関連したプログラムを大学と連携して検討をしています。震災後に生まれた子供たちには、自分たちがどのような場所に生まれ、今の暮らしが多くの方の応援のおかげで暮らせていること、そのなかでチャレンジしている人が周りにたくさんいることを分かってほしいです。被災地かつベンチャー企業が集まる場所だからこその子育て環境をつくり始めています。

2011年当時は、「もう帰って来られることは二度とないのではないか」と思いましたが、今ではこの先の地域を豊かにしていく、チャレンジする、共に生きてゆく仲間を大募集しています!ぜひまずは一度現地に足を運んでみてください。

二田郁子さん(大熊町/国立研究開発法人日本原子力研究開発機構<JAEA> 研究員)

私は広島県の出身で、親の転勤により千葉県に移り住み大学まで千葉で過ごした後、2017年にJAEA(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構)に入社しました。

2022年に福島県大熊町の研究所に異動し、今にいたります。福島の廃炉となるとデブリの分析などいろいろなことがありますが、JAEAでの私の担当は福島第1原子力発電所の廃炉に向けた放射性廃棄物の分析になります。

原発事故によって放射性物質が拡散して、たくさんの放射性廃棄物が出てきました。それらを捨てるためにはじめにしなければならないことは、どんな放射性廃棄物ができているのかを把握することです。私はそれを実際の廃棄物を分析することで進めています。

仕事はとても充実しているのですが、実際どのような暮らしをしているのかご紹介したいと思います。

住んでいる場所は、勤務地の隣の富岡町です。歩いて海に行けたり、山も近くにあるのですが、とくにお気に入りの場所は「夜ノ森の桜並木」です。道の両側に植えられた桜が満開になると、桜のトンネルのようになり、夜はライトアップもされてとてもきれいです。お越しの際はぜひ見ていただきたいです。

また、中学の頃からオーボエを演奏しているのですが、現在も福島県いわき市の楽団で吹いています。富岡町は「学びの森」という複合施設の中に図書館や防音室もあるので、練習できる環境があり嬉しいです。富岡町はとても住みやすいまちだと思います。

最後に、私は福島の復興に携わりたいと思い、現在の機関に就職しました。まだまだ研究課題は多くありますが、当機関で生まれた新しい技術が、福島をはじめ、日本中の原子力発電所が抱える課題解決につながるように、これからも研究を続けていきたいです。

色々な分野で新しいことにチャレンジできる地域なので、ぜひ移住候補地の一つとして考えてみてください。

沼尾丈夫さん(南相馬市/株式会社スペースエンターテインメントラボラトリー運用部マネージャー)

私は現在の会社への転職をきっかけに、南相馬市に移住しました。

スペースエンターテインメントラボラトリーは南相馬市に本社がある、宇宙航空技術をメインに無人航空機システムの開発や運用の実績を持つ会社です。飛行艇型やマルチコプタータイプのドローン、高高度気球、小型の人工衛星の開発にも携わっています。飛行艇型ドローンのHAMADORIは、海や川、湖、沼などの水上を滑走路代わりに離発着できるタイプで、南相馬市の沖合や相馬市、浪江町の請戸川、そして飯舘村のはやま湖などで飛行実験を行っています。

南相馬市では、当社のようなベンチャー企業を紹介する展示会やイベントの開催がありますが、それだけでは地域のみなさんとの距離は縮まりません。そこで伝統神事の「相馬野馬追」の前夜祭で、メダカすくいやボールすくいなどの露店、ドローンやロボットを飾った山車を作ってパレードに参加して、我々の存在やドローン、ロボットなどのPRに努めています。

私自身は、南相馬市で仲良くさせていただいている農家さんの田んぼで、稲刈りが終わった時期に当社のドローン機の実験をさせていただく代わりに、田植えや稲刈りの手伝いをしています。米袋を担いだり軽トラックを運転したり、普段の仕事とはまったく異なることができるのがとても楽しいです。

移住したからといって、「地域のために貢献しなければ」と肩ひじを張らなくてもよいと思います。私のように、日々働くことが結果的に地元の魅力を発信することにつながる場合もあります。弊社も人が足りていないので、一緒にドローンを飛ばしてくれる人を募集しています!気軽な気持ちで南相馬市へどうぞお越しください。

松葉あずみさん(渡江町/福島国際研究教育機構<F-REI>広報担当)

私は福島県郡山市の出身で地元での就職を考えていたのですが、周囲の勧めで内閣府に入府しました。ただずっと福島への思いがあり、2021年に復興庁へ出向し、そこで東日本大震災の復興業務に携わるようになりました。2023年には福島国際研究教育機構「F-REI」(以下、エフレイ)設立のタイミングで転勤をして、浪江町に移住しました。

エフレイは、福島をはじめ東北の復興を実現するための夢や希望となるとともに、我が国の科学技術力・産業競争力の強化を牽引し、経済成長や国民生活の向上に貢献する、世界に冠たる「創造的復興の中核拠点」を目指しています。私はエフレイの広報担当として、イベントのブース出展や製作物の企画・制作、SNSでの情報発信を行っています。

浪江町に住んで感じたことは、移住前に思っていたほど不便ではなかったことです。飲食店や住宅もここ数年でどんどん増えてきていて、先日、浪江町に震災後はじめて24時間営業のお店としてすき家がオープンしたのですが、感動して3日連続で食べに行きました(笑)。

この地域はイベントが多いので、地元の方や周辺地域の方と触れ合う機会がたくさんあります。食べ物やお酒も美味しいですし、自然も豊かで心地いい場所です。また、新しいことにチャレンジしやすい環境が整っているので、周りも応援してくれますし「やってみたい」が叶う場所だなと思います。

移住前にちょっと心配していたのは、移住者と地元の方との距離感でした。移住者がコミュニティの場に馴染めるのか不安でしたが、実際は地元の方と移住者の間に垣根はなく、すぐに仲良くなることができました。若い世代も増えてきていて、町全体が活気にあふれています。

本日のゲストの但野さんがされている南相馬市のイベントに参加したことがあるのですが、そのイベントがきっかけで知り合った農家さんの畑で野菜の収穫のお手伝いをさせていただいたり、他にも地域で行われるイベントにはなるべく顔を出すようにしています。東京の友人が遊びに来たときは浜通りを案内したり、南相馬市で乗馬をしたり、地域のイベントで地元の人との交流を楽しみに活動しています。

移住するなら、その地域を思いきり楽しんでほしいと思います!一度この地域へ来て、地域を実感してみてもらえたらと思います。

パネルディスカッション

トークテーマ1:「福島12市町村へ移住をして日常生活に変化はありましたか?」

それぞれ首都圏から福島12市町村へ移住されてきましたが、日常生活で変化したことはありますか。

二田さん
以前は仕事が終わって疲れていたら何か買って帰っていましたが、富岡町はスーパーが19時で閉まってしまうので隣町まで買いに行くこともあります。平日夜に買い物ができないときもあるので、週末に食料品をまとめて買うようになりました。

沼尾さん
南相馬市も同じで、飲み屋さんだとだいたい午前0時くらいに閉まりますが、それまでであれば代行で帰ることも出来ます。私の思う南相馬市の魅力は「不便過ぎないところ」だと思います。

松葉さん
私はプライベートの時間が増えました。東京にいた時は深夜まで働いて帰って寝るだけという生活でしたが、浪江町に来てからは業務を定時で終わらせて、プライベートの時間をゆっくりと楽しむことができるようになって、生活が豊かになったなと感じています。

トークテーマ2:「移住前と移住後にギャップはありましたか?」

但野さん
みなさん移住前のイメージから、実際に来てみてギャップはありましたか?

二田さん
正直、働く場所が変わっただけで土地へのギャップはありませんでした。ただ自分が西の生まれなのでどんどん北の方へ来ているなあという淋しさはありました。

但野さん
プライベートで楽器をされているというお話がありましたが、移住者同士のコミュニティなどはどうですか?

二田さん
今はいわき市の楽団に所属していますが、イベントなど福島12市町村で一緒に楽器演奏をしてくれる人はいないかなあとは思っています。

トークテーマ3:「現地のコミュニティについて」

但野さん
今日、参加いただいている方の中でも、現地のコミュニティについて気になっている方もいるかと思います。南相馬市だともともとの住民の方も多く残っていて、私も地区の消防団員として夜警の後に一緒にお酒を呑んだり昔ながらのつき合いが残っているところもありますが、一方で富岡町や浪江町のように移住者が多くなっている地域もあります。すでにある昔からのコミュニティのなかに入りたいのか、それとも新しい移住者のなかでつきあいをつくっていきたいのかは、各々の好み次第かと思います。

沼尾さん
会社が南相馬市産業創造センターのなかにありまして、そのセンターを管理している夢サポート南相馬さんが地元の方々と強いつながりを持っていらっしゃり、地元のお祭りに参加する橋渡しや地域の方々と交流する機会をいただいています。

但野さん
松葉さんはいかがですか?

松葉さん
移住前は移住者とのコミュニティについて不安でしたが、実際に浪江町に住んでみると、移住者の方とも地元の方とも関われる場所がたくさんありました。地域によりますが、コミュニティは充実しているので、不安に思われている方はそこまで心配されることはないと思います。

但野さん
私が暮らしている南相馬市の小高区は、いま人口のおおよそ4人に1人の方が移住をされた方々です。もう「地元民」「移住者」と区分けをしなくても暮らせるくらいに、開けた環境になってきていると感じます。

トークテーマ4:「移住した地域の魅力について」

但野さん
みなさんがお住まいのまちの魅力についてお聞きしたいのですが、二田さんいかがですか?

二田さん
富岡町にある夜の森の桜並木は本当にお勧めです!桜が満開の時期でも朝早いと人も少ないので、「桜のトンネル」を独り占めしているような気分になれます(笑)。観光地ではありませんが、山に行くとダムがあったり、湧水があったりと、ドライブや散歩するにはとてもいい環境で、時間に追われない自由さがあります。

沼尾さん
地元の農家の方と仲良くさせていただいているのですが、その方が但野さんのお知り合いとさっき知りご縁を感じたのですが、その方が船もお持ちで実験に貸してくださったり、釣りに連れて行ってくださったりします。お手伝いしている農作業も楽しいですが、作業の合間に農家の方がつくってくださったおにぎりがすごく美味しくて、とても素敵な時間を過ごさせていただいています。

松葉さん
農業関連ですと、私も地域の方と一緒に玉ネギやブロッコリーの収穫をさせていただいています。東京にいたら農業体験はできていなかったと思いますし、この地域の方とつながることで、その地域のいろいろな魅力にも触れることができると思います。

トークテーマ5:「移住を検討している方へひとこと」

但野さん
福島12市町村はとてもいい場所なので、ぜひたくさんの方に来ていただきたいと思っているのですが、そのときに「これがあるともっと楽しくなるよ」というポイントがあったら教えてもらえますか?

二田さん
弊社では新入職員は全員福島の現場見学をするのですが、何年か過ぎて富岡町へ移住することになったときに、町には見学した当時のものがそのまま残っていることもあれば、きれいになった場所もあり、人も増えています。移住したこの2年半のなかでもどんどん工事が進んで整備され、新しい店もできて、土日もたくさんの人がスーパーで買い物をしているという様子を肌で感じることができます。こんなことを感じることができるのは、いま日本で福島しかないと思います。

但野さん
地域のなかにお店が一店舗増えるだけでも、地域にとっては大きなことで、暮らしている場所が日々前に進んでいることを感じられます。今日より明日が良くなると感じながら過ごせる場所は、日本のなかでもなかなかないと思います。未来や先に希望を持って生きられることは、とても重要なことだと思います。

沼尾さん
南相馬市の伝統神事である「相馬野馬追」をぜひ見ていただきたいです。甲冑を着た方々が馬に乗って競馬をしたりする姿は、生で見るとなかなか迫力がありすごいので、興味を持っていただけるきっかけになるのではと思います。前夜祭のお祭りでは私たちのドローンの展示もしていますので、ぜひお越しください。

松葉さん
東京から友人が来ると、地元の食材を使った料理やお酒を楽しめるお店に行きますが、みんな「また行きたい!」と言ってくれます。ぜひみなさん現地へ来られてときは「お気に入り」の場所を見つけていただきたいと思います。二田さんも言われていましたが、これから町が変わっていく様子を見に来るのもポイントかなと思います。ぜひリピーターになってください。

但野さん
みなさんにいろいろとお話しいただきましたので、私のコメントはいらないかと思います(笑)。私たちもみなさんを歓迎して待っていますので、ぜひ福島へお越しください。

それでは、みなさん今日はありがとうございました!

第2部 座談会/各種相談会・もっと話そう延長戦!/ワークショップ

座談会

座談会では、ゲスト4名が各グループに分かれ、地元住民との交流や仕事、子育て支援、移住先での楽しみなど、参加者たちが福島での暮らしで気になることを質問していました。ゲストからのリアルは回答に話しは盛り上がり、有意義な時間となりました。

個別相談会(もっと話そう延長戦!)

個別相談では、すでに本格的に移住を考えている参加者が、移住相談員に、現地の求人情報や支援制度の細かい部分まで踏み込んで相談する姿も見られました。

「私だけのふくしま12市町村移住体験ツアーをつくる」ワークショップ

もう一つの特別企画「私だけのふくしま12市町村移住体験ツアーをつくる」ワークショップでは、12市町村の魅力を巡りながら、移住体験するツアー行程の作成に取り組みました。

南相馬市の伝統神事「相馬野馬追の歴史と文化を辿るツアー」や福島12市町村で続々と誕生する「酒蔵・ワイナリー・醸造所を辿るツアー」など、すぐにでも催行されそうな案も出されました。

起業相談ブース

福島12市町で起業を検討される方へ、起業支援金福島県創業等補助金、申請におけるサポート体制などのご案内をしました。
(詳しくは☞こちら

お仕事紹介ブース

お仕事紹介コーナーでは、福島12市町村の最新の求人案内や、現地のしごとについてご紹介しました。

(詳しくは☞こちら)   

2024年度、全6回開催しました「未来ワークふくしま移住セミナー」。

福島12市町村につながりのあるゲストから、それぞれの活動やこれまでのストーリー、福島12市町村の魅力、そして移住に向けた具体的なアドバイスを聞くことができました。

また次年度も開催予定ですので、ぜひまたお越しください!

今後の未来ワークふくしま移住セミナーに関する最新情報は、こちらよりご覧ください。

■2024年度未来ワークふくしま移住セミナーの特設サイトはこちら

https://mirai-work.life/lp/seminar2024/