【移住セミナーレポート】vol.17「続・関西出身者が大活躍する福島12市町村」編(大阪開催)

ふくしま12市町村移住支援センターが主催する「未来ワークふくしま移住セミナー」は、福島12市町村で活躍するゲストとの交流を通じ、現地での暮らしやその魅力を知ることができるセミナーです。第5回は「続・関西出身者が大活躍する福島12市町村」編と題し、2025年1月18日(土)に大阪で開催しました。
当日の様子は動画でもご覧いただけます。
ダイジェスト版 (全編動画はこちらからご覧ください)
第1部 ゲストによる活動紹介 / パネルディスカッション
建野 成恒さん/株式会社宮田運輸 企画開発室室長

私は福島12市町村の一つである富岡町に住んでいまして、今日はその富岡町から来ました。京都出身でずっと大阪で仕事をしてきましたが、本社が大阪の宮田運輸が福島県で事業所を起こす時に移住をして、今年で5年目になります。
福島事業所は、東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故により発生した、除染後の汚染土を運ぶ車両が不足していたときに、地元企業から「一緒にやってくれないか」と声を掛けられて「わかりました!」とダンプを5台購入して向かったことが始まりです。
富岡町は一度全町民が避難しましたが、除染が終わり戻れるようになっても、スーパーやインフラなどがないところからのスタートでした。各自治体は産業団地を整えて、さまざまな補助制度を準備しましたが、工場を建設する側からは「働く人がいるのか」「ものをつくっても物流があるのか」という点がボトルネックになりなかなか進まず、役場からも「宮田さんで拠点を出してくれませんか」と言われました。
ですが、まだそのときは産業団地も整地の段階で、まったくお客さんがいない状況で物流拠点をつくっても大変だなとは思いましたが、困っている方が沢山いらっしゃるということで、私たちは900坪の倉庫を約8億円投じて建てることを決断しました。
経済産業省や復興庁とも関わりながら、この地域のためにどのように事業を展開すればよいか検討し、事業を進めていました。物流が整えばこの地域の復興が促進されるわけではなく、さまざまな生活インフラも必要です。そのなかで「自分たちは物流だけをやっていていいのか」という問いが出てきました。そこで新たに「宮田開発」という会社を昨年つくり、物流事業を超えて「この地域の方々と共にしあわせを創造する企業になるんだ!」と新たな事業展開を考えています。
この福島12市町村で本当に特徴的だな思うことは、めちゃくちゃ輝いている人が沢山いらっしゃるということです。自分のためにということを超えて、誰かのために、未来のために、そんな思いを持つ方がこの地域には集まっています。そういう方と一緒に過ごして仕事をできることが、自分の今の人生や生活を豊かにしていると思うんです。そしてその方々から刺激を受けて、さらに頑張ろうと思えるようになってきました。
もちろんこの地域には不便なこともたくさんあると思いますが、このような人々と一緒に時間を過ごせることはとても素敵なことではないかと思っています。
石井 美優さん/amateur architect(素人建築家)

私は2年前に立命館大学の修士課程を終えたあと、そのままフリーランスとして大熊町に移住しました
仕事の肩書として「素人建築家」と名乗っているのですけど、今は建築家を目指して試験勉強に励んでいる途中で、「建築的思考」を通していろいろなものづくりをしています。アウトプットが建築だけでなくデザインやグラフィックもしていますが、自分のなかでは建築をつくっていると思い動いています。
移住のきっかけは大学の卒論でした。大熊町は人口が少ないですが、ヒアリングをするなかで住民の方にすごく良くしていただきました。活動をしていて地域に馴染めたかなと思ったときに、移住を決断しました。
ここまでで「建築的思考ってなに?」と思われたかと思いますが、自分のなかに「身近なところから社会問題を考え、それを解決するための風景のデザイン」という建築設計の定義があって、今はそれらを中心につくっています。
たとえば、大熊町では復興に向けてさまざまなまちづくりが行われていますが、大きな建築物「ハコモノ」がどんどん先行してつくられていて、そのなかは賑わっていてもまち全体はどうだろうかと思い、自分自身の小さな建築としてアイスキャンディーを自転車でまちなかで売ることで、楽しいまちが目でわかるといいなと思いしたこともあります。
まちのイベントでは移住してきた若者が目立ちがちなのですが、もともとのまちや地元住民の方をリスペクトした企画を一緒に考えて距離を縮められるようにしたり、地域でグラフィックデザインの仕事もしています。
これからやりたいことは、いま福島県12市町村起業支援金を使いながら空き家を借りていますが、古材を活用したものづくりです。
このまちに住んでよかったことは、私が「あれやりたい」というと「いいね!やってみようよ」と言ってくれる同世代や、大人がアドバイスをしてくれたりすることです。個人的なおもしろポイントとしては多様なバックグラウンドを持つ方が多いことです。デメリットもありますが、自分のキャリアとしてここにいることが成長につながると思うのでここに居ます。
参加してくださった皆さんが大熊町の魅力を知り、さらになぜこのまちに住みたいと思ったのかなど深い話ができる友達ができると嬉しいです。
植村 照美さん/介護老人保健施設ヨッシーランド 看護師

南相馬市で看護師をしている植村です。
私は大熊町の出身で、いわゆる「Uターン移住」をしました。
東日本大震災のときに奈良へ引っ越して、小学生の頃から奈良で過ごしているので、福島生まれの奈良育ちです。今は趣味の旅行で宮城の松島や青森などいろいろ出かけますが、奈良の看護師時代は病院での命を支える責任感や仕事の忙しさから、あまり遠出はしていませんでした。いま振り返ると自分に合わない場所で戦っていたのかなと思います。
2年前、高校の同窓会で友人が、引越しや転職をしていると聞いて「同じところで頑張り続けなくてもいいんだ!」と気づいたのが移住のきっかけでした。
移住先について考え始めたときに、「地元に帰りたい」「人に必要とされる場所に行きたい」「海のきれいな街へ行きたい」という気持ちから、福島12市町村への移住を思い立ちました。近くに頼れる人もいなかったので、未来ワークふくしまのホームページを見て情報収集をして、南相馬市が支援制度も充実していていいかなと思い現地へ行ってみたりしました。
そして私はいま介護老人保健施設で働いていますが、職場は移住された方も多く、雰囲気もとても和やかで、残業もほぼないので趣味を楽しめています。移住とともに転職したことで、ライフワークバランスを整えることが出来ました。
暮らしてみてのデメリットはありますが、住めば都になりました。メリットは周囲の防災意識が高いことや、知り合いから野菜をもらえたり、新鮮な桃が食べられることです。あともう一つ、福島の方言はかわいくて癒されます。
南相馬市は「介護事業所就労支援助成事業」という支援制度があり、住宅手当など介護事業所で働く方にとても手厚いサポートがあるので、興味がある方はぜひ現地へ一度お越しください。
片岡 慎太郎さん/株式会社デジラボホールディングス DXコーディネーター

私は生まれも育ちも大阪で、移住する直前までいました。趣味は釣りや料理で、ゲームも大好きです。転職を機に楢葉町へ移住しました。
移住は住む場所、引越し費用などいろいろとハードルがあると思いますが、生活基盤がしっかりしていないと移住先でも困ることになると思います。楢葉町はけっこう仕事の種類もありますが、私の勤める会社では「自分達がまちで面白い仕事をつくる」事業をさまざま手がけています。
転職先の会社は設立して3年ぐらいのスタートアップ企業で、社員は全員移住者です。移住者が集まってきているのは、面白い仕事があるからです。
私がいま携わっているのは、地元企業や役場向けの業務効率化の支援です。本業の他にやらなくてはいけない仕事の時間を短縮することで、やるべき仕事に注力できるように支援するという感じです。他にもフレイル診断アプリやNFTデジタルキャリア証明などの開発もしていますが、これ以外にもやりたいことはいくらでもあります。
移住前の楢葉町の印象は震災、津波、福島第一原子力発電所の事故などいろいろあった町なので、メディアを通じてネガティブな情報が伝わってくるんですけど、実際は全然そんなことはなくて、都会で見かけるような死んだ目をした人を、このまちでは1人も見たことがないですね。
楢葉町だけでなく12市町村全体に言えることだと思いますが、この地域にはいろんなチャレンジャーが集まってきています。とても田舎で不便なことも確かにありますが、それ以上に毎日が刺激的で楽しいです。今後新しい仲間が増えてゆくことを、とても楽しみにしています。
最後に、楢葉町は、チャレンジができる、チャレンジを受け入れてくれる最善の選択肢の一つだと思っています。何かにチャレンジしたいなと思っている人は、ぜひ楢葉町へお越しください!
パネルディスカッション
トークテーマ1:「移住した地域で好きになった食べ物はありますか?」

建野さん
パネルディスカッションの進行をさせていただきます建野です。
関西と食文化の違いはありますけれど、皆さんいかがですか?
石井さん
カツオの刺身をしょうが醤油ではなく、ニンニク醤油で食べることに驚きました。
とてもおいしくて、今はお刺身にはニンニク醬油をつけて食べるようになりました。
植村さん
移住してから自炊を始めたのですが、モロヘイヤやオカワカメなど珍しい野菜があるので、買って料理して食べてみて美味しさを発見することがあります。
片岡さん
私、釣りが趣味で釣ってきた魚をさばいて食べています。関西では高級魚として扱われている「ヒラメ」が好きです。福島沖で獲れる魚は「常磐もの」と呼ばれていてとても有名です。
他には、カレイやドンコ、メヒカリという深海魚もおいしいのでオススメです。
建野さん
関西ではあまり食べない食材もあるので新しい発見がありますよね。片岡さん、うちにも魚をぜひ持ってきてください(笑)。
トークテーマ2:「移住前に想像していたことと、ギャップはありましたか?」

片岡さん
あの、ギャップしかなかったです。移住前に調べてみても、何もない、ど田舎の田んぼや畑しかない情報しか出てこないんですけど、来てみると意外にそうでもなくて、車でちょっと移動すれば大きな街がありますし、両方楽しめます。暇そうだなと思っていましたが、全然そうじゃなかったです。
建野さん
そうですね、飲食店も商業店舗も少ないですけど、少し移動をすればなんでもそろいますよね。南相馬市はどうですか?
植村さん
南相馬市は、12市町村のなかでも住むハードルが低いと思います。チェーン店もあって日常の買い物に困ることはありません。
石井さん
移住前は「復興を手伝わなきゃ」という気持ちでいましたが、移住してみるとまったく違って、こっちが何かするというよりも皆さん自分から意欲的に動かれていることに驚きました。
建野さん
移住された方も地元住民の方も一緒にイベントを開催したり、地域コミュニティをつくっていこう!と、行政を含まずやっている方々がたくさんいらっしゃいますよね。
トークテーマ3:「移住で苦労したことはありますか?」

植村さん
大きなショッピングセンターや映画館といった娯楽施設がないところですね。
少し足を伸ばせばありますが、やはり近くにあればなと思います。
片岡さん
いっぱいありますけど、一番は関西のノリでしゃべるとちょっと嫌な顔をされることです(笑)。
「なんて失礼なこというんだ!」とか思われてしまって。相手との空気感とか距離感みたいなものは最初苦労しました。
石井さん
お年寄りの方の「なまり」が強すぎて、はじめはまったく聞き取れませんでした。コミュニケーションで苦労とういか、文化の違いを感じました。
建野さん
「なまりが強い!」わかります(笑)。さっきも「福島の方言はかわいい」と大熊町出身の植村さんからお話しがありましたね。
植村さん
子どものころ大熊町に住んでいたのですけど、今でもなまりが強いと聞き取れないことがありますが、私はやわらかい感じが好きです。
建野さん
地元の人でもそうなんですね、でもなんか福島の方言は和むというか、癒されるところがありますね。
トークテーマ4:「いま住んでいる地域でおすすめの場所があったら教えてください」

石井さん
大熊町で私が手伝わせて頂いている「読書屋 息継ぎ」という本屋さんです。営業時間は夕方6時から夜9時までやっている屋外の本屋さんです。キュウリを栽培する支柱に灯りがぶら下がっていて、本が廃材を組み立てて作った本棚に並べられています。周りが更地で何もないところにポツンと光が灯っている感じでとても神秘的です。
植村さん
廃校になった旧大野小学校の校舎を活用した「大熊インキュベーションセンター」という施設です。教室や図書室の面影を残しつつ、誰もが交流できるフリースペースや共同のワーキングスペースが完備され、すごくいい感じに生まれ変わっています。また、私にとっては母校の校舎を残してくれてありがとう、という思いがあります。
建野さん
小学校とは役割がちがいますが、町の人の役に立ってほしいですよね。
片岡さん
楢葉町の海ですね。岩沢海水浴場というところがあって、真っ暗な海岸線から朝日が登ってくる時のコントラストがすごく綺麗です。視界を遮るものがないので星もびっくりするくらい綺麗に見えます。
建野さん
私が住んでいる富岡町のおすすめは「夜の森の桜並木」です。道の両側にソメイヨシノが並んでいて桜のトンネルのように見える景色が2kmくらい続いています。夜もライトアップされて、とても幻想的で桜の名所です。満開の頃にはイベントもあり、私の会社が出店している関西風たこ焼きも大人気です!
トークテーマ5:「移住を経験して、自分自身に変化はありましたか」

植村さん
周りから「前向きになったね」とよく言われます。ライフワークバランスが整って趣味に割ける時間が増えて「自分が何をしたいのか」をワクワク考えられるようになりました。
片岡さん
私自身は移住前に変化しているので、移住で大きく変わったとは感じていませんが、自分の性格ややりたかったことがピッタリとハマったという感覚はあって、毎日楽しく過ごしています。
石井さん
単身で移住して友達も知りあいもいないなかで、誰かが手を差し伸べてくれても、なかなか頼ることができなかったのですが、他の人の助けを借りながら楽しく過ごしたいと思っています。
建野さん
事業をしていると競合他社と戦ってるという感じがありますよね。ただ、今は誰かと戦ったり競ったりすることではなく、「みんなが喜ぶこと」に変わってきたかなと思います。そういう気持ちでやっていると、人と良心でつながるんだなあと思ったり、物事がうまく進むという経験をたくさんさせてもらってよかったなと思います。
トークテーマ6:「休日の楽しみを教えてください」

片岡さん
金曜日に仕事が終わって、家にも帰らずそのまま釣りに向かい、日曜日の昼間に家に帰ってくることもあります。
植村さん
旅行です。茨城県の常陸太田市にある竜神大吊橋に行って、100mの高さからバンジージャンプを試してみたり、今までやったことがないことにチャレンジしています。
石井さん
私は住んでいるまちから出るようにしていて、ちょっと足を伸ばして買い物に行ったりしています。
トークテーマ7:「移住を検討している方に向けて最後に一言」
石井さん
実際に現地へ来てみるのが一番だと思います。まずは自分の目でそのまちの魅力を深く知って、見ていただくのがいいかなと思います。
植村さん
震災を経て一度大きく人が減りましたが、何年もかけて復興が進み人が住みやすいまちに変わってきているので、そういった変化も楽しいし、このセミナーで気になった方は一度見にきてもらえるといいなと思います。
片岡さん
12市町村への移住のキーワードは「チャレンジ」だと思います。何かに挑戦したいという方には本当にいい場所だと思います。チャレンジャーが集まるとまちもどんどん楽しくなるので、ぜひ挑戦しに来てください。

建野さん
移住は「何のために」「どこへ」移住するのかも大事ですが、私の知っているこの地域へ移住されてきた多くの方は、考えたり条件を調べるだけでなくて、移住したい地域へ足を運んでその地域とのつながりを受けて「私もこの地域に来てみたい!」となった方が圧倒的に多いです。
関西からは少し距離はありますけれど、ぜひ福島12市町村へお越しください。
それでは、皆さん、今日は本当にありがとうございました!
一同
ありがとうございました。
第2部 座談会/個別相談会・もっと話そう延長戦!/ワークショップ
座談会では、ゲスト4名が各グループに分かれ、被災地の復興や除染の進み具合、土壌の安全性、毎月の生活費など現実的なことから、一人で暮らすことの環境、就労、子育てに関する支援など、参加者たちが福島での暮らしにまつわる気になることを確認していました。
ゲストからの福島12市町村のリアルな回答に話しは盛り上がり、現地を知る有意義な時間となりました。

個別相談では本格的な移住に関する質問から、現地の求人情報や支援制度の細かい部分まで踏み込んで相談する姿も見られました。

2024年度、全6回開催しました「未来ワークふくしま移住セミナー」。
福島12市町村につながりのあるゲストから、それぞれの活動やこれまでのストーリー、福島12市町村の魅力、そして移住に向けた具体的なアドバイスを聞くことができました。
また次年度も開催予定ですので、ぜひまたお越しください!
今後の未来ワークふくしま移住セミナーに関する最新情報は、こちらよりご覧ください。
■2024年度未来ワークふくしま移住セミナーの特設サイトはこちら
https://mirai-work.life/lp/seminar2024/
