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【移住体験ツアーレポートin富岡町&大熊町】充実の子育て支援&教育環境を見学! 親子で移住体験ツアー

2025年11月25日

2025年10月18日(土)~19日(日)に「親子で参加!ふくしま12市町村移住体験ツアー」が開催されました。首都圏などから8組21人の親子が参加。富岡町、大熊町、浪江町、南相馬市、飯舘村を巡り、教育施設や子どもの遊び場など子育て環境を見て回りました。初日の移住者交流会では、実際に移住されたご家族から経験に即したリアルな話を聞く機会も。この記事では富岡町と大熊町を訪問した10月18日の様子をご紹介します。

遊びを通して想像力を育む「とみおかわんぱくパーク」

東京駅から特急ひたち3号に乗車した参加者たち。車窓を楽しみながらこれから始まる2日間への期待を膨らませます。約3時間の列車旅を経て、富岡駅に到着。バスに乗り換え、最初の目的地「とみおかわんぱくパーク」へ向かいました。

到着後、自己紹介タイムがスタート。それぞれの移住への想いや、参加のきっかけを発表しました。初対面の緊張もありましたが、「よりよい子育て環境を求めて」という共通の目的をもっている参加者同士、自然と会話が弾みます。

子どもたちは待ちきれない様子で遊具へ一直線。アクティブな遊具や想像力をはぐくむ遊具が揃う施設内で、思い思いに体を動かします。大人も子どもの様子を見守りながら、リラックスした雰囲気のなかで互いの情報交換を始めていました。

クマSUNテラスで腹ごしらえ、交流も深まる昼食タイム

たっぷり遊んだあとは、大熊町のクマSUNテラスへ移動。「クマSUNラウンジ」で、施設内のカフェ&レストランpanier(パニエ)が提供する昼食をいただきました。メニューはボロネーゼパスタのセットで、参加者たちは皆さん「おいしい!」と堪能。子どもたちにはプリンも用意され、笑顔でほおばる姿が見られました。

クマSUNテラスには、キッズルームや文房具店などもあります。この日は文房具店でアートクレヨンのワークショップが開催されており、ツアー参加者も色を重ね塗りして楽しんでいました。

商業施設「クマSUNテラス」はこちらの記事でも紹介しています。
【現地レポート】大熊町・JR大野駅前に誰でも使えるコワーキングスペースがある「CREVAおおくま」&商業施設「クマSUNテラス」が誕生!

一人ひとりの「好き」を大切にする学び舎ゆめの森

午後は、大熊町立学び舎ゆめの森(以下、ゆめの森)の見学です。南郷市兵(なんごういっぺい)校長が出迎えてくれました。

ゆめの森は、認定こども園と小中一貫の義務教育学校(1~9年生)が一体となった教育施設です。0歳~15歳までの子どもたち98人(2025年10月現在)が通っています。

正面玄関から入ってすぐの場所に広がるのは、ぐるりと本棚に囲まれた開放的な空間の図書ひろば。毎日のホームルームや入学式、卒業式も実施する場所です。住民にも開かれていて、成人式や結婚式も行ったそう。階段状の本棚は客席にもなります。

南郷校長による校内ツアーがスタートします。図書ひろばを中心に、教室が放射状に配置されている校舎。しかし、ゆめの森では一般的な学校のように学年ごとの教室が固定されているわけではありません。

「先生と生徒が相談して、時間割ごとに授業を受ける場所を決めています。図書ひろばの一角でも、テラスでも、どこでも教室になります」と南郷校長。

校舎内を歩いていると、1階の廊下には卓球台、ランチルームの隣の音楽室にはピアノが置かれているのが目に入ります。教科ごとの教室が並ぶ2階には、理科系の教室の前に人体模型や虫の標本が、また教室の机には顕微鏡が出しっぱなしで置かれています。「子どもの興味関心を引き出し、遊びと探究を組み合わせることで、遊びが加速するようにしています。好きなことに熱中してほしい。好きなことを追求していると、学校に来たくなるんですよ」と南郷校長は説明します。

自分のペースで、自分らしく学ぶ

ゆめの森の特徴的な教育方法が「自由進度学習」です。児童生徒が自分で学習計画を立て、自分のペースで学習を進めていきます。南郷校長は、「ここでは少人数だからこそ、教師が一人ひとりの理解度を把握し、寄り添った指導ができます。個別最適な授業に、ほかの学校に先駆けてチャレンジしているんです」と話されていました。

ゆめの森が目指すのは、「先生に言われたから」ではなく、自分で自分を理解してマネジメントできる力を育てること。理解が早い子はより深い学びへ進むことができ、じっくり取り組みたい子も自分のペースで学べる。そんな環境が、ここにはあります。

大熊町立 学び舎 ゆめの森はこちらの記事でも紹介しています。
フェンスもチャイムもない学校。大熊町立 学び舎 ゆめの森のシームレスな学び

不安と希望、移住の先輩のリアルな体験に耳を傾ける

宿泊先のホテル蓬人館にチェックインしたあとは、移住者との交流会が開催されました。会場隣の部屋に専門保育士による臨時保育所が設けられ、小さな子どもたちは保育スタッフと一緒に遊びました。大人は安心して子どもを預けられ、ゆっくりと交流会に参加できました。

まずは、ふくしま12市町村移住支援センターの職員が、福島12市町村の移住支援金や起業支援金など各種支援制度について説明。続いて、実際に福島12市町村へ移住をされた2組のご家族が移住体験を語りました。

福島12市町村に関する移住支援金や起業支援金についてはこちらからご覧ください。
福島県12市町村移住支援金について
福島県12市町村起業支援金について

まず登壇したのは、2024年4月に川内村に移住した高橋文子さん。夫の海斗さんと、2人のお子さんの4人で参加していただきました。海斗さんは川内村でジンづくりに励んでいます。

「移住前は、よそ者とみられるのではないかと心配していました。でも、実際に暮らしてみると『子は宝』と大切にしてもらえます。『来てくれてありがとう』と声をかけられることも多いんです」

文子さんが特にうれしかったのは、妻として、母としてではなく、一人の人間として見てもらえること。「地域の方々が温かく迎え入れてくれて、ありがたいと感じました」

高橋さんご家族の移住者インタビューはこちらの記事でも紹介しています。
一家で川内村に移住。大学同期と共にクラフトジンづくりに挑む

次の登壇者である橋本陽一さんは妻の結城さんと2025年3月に川崎市から大熊町に移住しました。2人の娘さんが、ゆめの森に通っています。

「目的は教育移住でした。子どもたちが熱中することを見つけ、成長している姿を見られるのが、何よりも移住してよかったことです」

もちろん、引っ越しへの子どもたちの抵抗や、車社会への適応など、苦労もあったと言います。それでも橋本さんは力強く語ります。

「移住は人生の成長物語だと思っています。一度の人生、後悔せずに楽しみましょう!」

参加者たちは、先輩移住者のリアルな声に真剣に耳を傾けていました。

座談会形式で少人数だからこそ深まる対話

体験談を聞いたあとは座談会の時間。参加者が移住者家族を囲み、より具体的な質問を投げかけます。

「住居はどうやって見つけましたか?」
「仕事はどうされているんですか?」
「移住前に不安だったことは?」
「子どもは新しい環境にすぐ慣れましたか?」

少人数のグループに分かれての対話は、個人的な悩みや疑問も気軽に相談できる雰囲気。移住者たちも自身の経験を惜しみなくシェアし、「私たちも最初は不安でした」と優しく声をかけていました。

移住体験ツアーの1日目が終了したあと、参加者の皆さんに感想をお聞きしました。

「ゆめの森が気になっていたので、実際に校長先生からお話を聞けて参考になりました。仕事をどうするか考えたいと思います」(千葉県からご夫婦と子ども2人で参加)

「子育てのために移住を考えていました。支援が手厚く、学校もよい環境であると思いました。ほかの市町村の教育環境も気になりました」(東京都からご夫婦と子ども1人で参加)

まとめ

今回のツアー2日目は、道の駅なみえや南相馬市のNICOパーク、飯舘村のいいたて希望の里学園など、子育て環境を中心に見学しました。教育施設の見学から移住者との交流まで、充実したプログラムを通じて、参加者の方々は福島12市町村での暮らしのイメージを少しずつ具体化していったようです。

2025年度の「未来ワークふくしま移住体験ツアー」は全7回を予定しており、2026年1月まで毎月開催予定です。12月13日(土)~14日(日)は大熊町と双葉町で魅力的な人や企業を巡ります。2026年1月24日(土)~25日(日)は浪江町と南相馬市のツアーを予定しています。ぜひご参加ください!

今後の予定は「未来ワークふくしま」のウェブサイトでご確認いただけます。
ふくしま12市町村移住体験ツアー | 未来ワークふくしま

また、自分が興味のある場所をじっくり巡りたいという方は、以下のモデルコースを参考に現地に足を運んでみることもおすすめします。
ふくしま12で移住体験!新しい暮らしを見つけよう | 未来ワークふくしま

※内容や所属は取材当時のものです
写真・文:佐藤美紀