生活・その他

心とお腹を満たすごはんやさん。わがまちの「推しグルメ」はここ!Vol.3

2025年8月6日

福島12市町村で過ごす日々を彩る、その土地ならではの“ごはんやさん”たち。福島12市町村で暮らしている皆さんは、どんなときに、どんな場所で、どんなごはんを楽しんでいるのでしょうか。

仕事やライフスタイル、好みによって、おすすめのお店も十人十色。シリーズ第3弾となる今回も、福島12市町村で暮らしを営む移住者4人の方に、それぞれのおすすめのごはんやさんを紹介してもらいました。

目次

双葉町の今を映す、交流のカフェ「KEY’S CAFE 福島双葉」(双葉町)

(写真=KEY’S CAFE 福島双葉提供)

2023年、石川県から単身で双葉町に移住した黒津今日子さん。石川県の農業生産法人での経験を活かし、現在は町内でブロッコリーやキャベツを栽培しています。
そんな黒津さんは、双葉町のおすすめスポットとして「KEY’S CAFE 福島双葉」を紹介してくれました。

「KEY’S CAFE 福島双葉」は、2023年4月にオープンしたばかりの複合施設「フタバスーパーゼロミル エアーかおる双葉丸」の一階にあります。カフェではネルドリップでていねいに抽出するコーヒーのほか、地元の食材を活用したオリジナルメニューの展開も。現在は福島県産の桃やリンゴ、しらすや川俣シャモを使用したオリジナルメニューが提供されています。

黒津さんのお気に入りは「ジェノベーゼ」。こちらのメニューには、黒津さんが双葉町で栽培したブロッコリーがトッピングされています。レモンが入ってさっぱりとした味わいのジェノベーゼと、新鮮で甘みのあるブロッコリーの相性が抜群の一品です。

双葉町産ブロッコリー入りジェノベーゼパスタ(写真=KEY’S CAFE 福島双葉提供)

「KEY’S CAFE 福島双葉」の担当者によれば、福島県産食材を活用したメニューのなかでも、地元の双葉町産の食材を使用したこちらのジェノベーゼはお店の人気メニューだそう。「町内の方はもちろん、観光やバスツアーなどで訪問する県内外のお客様に広く愛される一品です!」と話します。

メニュー以外に黒津さんがおすすめポイントと語るのが、大きな窓が設置された、開放感のあるおしゃれな店内。「久しぶりにあった友人と時間を忘れて話し込んでしまうくらい、自然とリラックスできる雰囲気があります」と言います。客席はカフェラウンジを含め、地域最大級となる80席を用意。地元の方の交流の場としても愛される場所となっています。

お店では現在、黒津さんが栽培したキャベツを使用したペペロンチーノも提供されています。地元双葉町産の美味しい野菜が、素敵なメニューとなって県内外のたくさんの方に提供される、そんな循環がこのカフェから生まれています。

KEY’S CAFE 福島双葉店(キーズ カフェ)
所在地:〒979-1401 福島県双葉郡双葉町中野舘ノ内1-1 フタバスーパーゼロミル1F
TEL:0240-23-7642
営業時間:10:00~18:00(17:00フードLo./17:30ドリンクLo.)
定休日:月曜

地域の恵みを一皿に込めて。季節を味わう「田舎レストラン La Kasse」(飯舘村)

「福島県産ハンバーグ 季節のソース」この時は飯舘村産の夏野菜を使用したソース(写真=La Kasse提供)

2023年12月まで飯舘村の地域おこし協力隊員として活躍し、2024年末から再び飯舘村に戻って起業の準備を進めている松尾洋輝さん。彼のおすすめは、地元・飯舘村産をはじめ、地域の恵みをふんだんに使ったオリジナルメニューが楽しめる「田舎レストラン La Kasse(ラ・カッセ)」です。オーナーシェフの佐藤雄紀さんは地元飯舘村の出身。高校生のころから「いつか地元でお店を開きたい」と思い描いていた夢を、この「ラ・カッセ」で実現させました。素材の個性をていねいに引き出す料理の数々で、村内外の多くの人に愛されています。

数々の魅力的なメニューのなかでも松尾さんが特におすすめするのが、手ごねハンバーグ。飯舘村産の牛肉を使用したこのハンバーグは、季節ごとに変わる自家製ソースが特徴です。「旬の食材に合わせてソースが変わるので、いつ訪れても新しいおいしさに出会えるんです」と松尾さんは話します。これまでには、昔から飯舘村に多く自生する果実・ナツハゼを使ったソースも登場したことがあるのだとか。佐藤シェフの豊かな感性が光る一品です。

ハンバーグと並んで人気なのが「季節のパスタ」。こちらも地元産の旬の食材をふんだんに使っています。2~3か月ごとにメニューが変わるため、訪れるたびに新しい味に出会えるのも魅力です。

「飯舘産のバジルを使ったジェノベーゼパスタ」(写真=La Kasse提供)

そのほかにもさまざまな創作料理が楽しめるこちらのお店。「お昼どきにお店の前を通ると、以前に食べたメニューのおいしさを思い出し、ついお店に入りたくなってしまって」と松尾さんは笑います。提供される料理のクオリティはもちろんのこと、佐藤シェフの優しくあたたかな人柄にも松尾さんは大きな信頼を寄せているそうで、「訪問するたびに癒されています」と話してくれました。地元の人に愛される理由は、佐藤シェフだからこそ醸し出せる、穏やかでほっとするようなお店の雰囲気にもあるのかもしれません。

田舎レストラン La Kasse (ラ・カッセ)
所在地:〒960-1634 福島県相馬郡飯舘村二枚橋字本町193-3
TEL:0244-42-1228
営業時間:10:30~15:00(14:30Lo.)
(夜は完全予約制で営業。詳細は店舗までお問い合わせください)
定休日:月・木曜

葛尾村で出会う、こだわりのコレクション「Cafe 嵐が丘」(葛尾村)

オーナーの奥様のみどりさん。店内にはカップとソーサーがずらりと並ぶ

一般社団法人葛力創造舎でアート事業Katsurao CollectiveのPRを担当する阪本健吾さんがおすすめしてくれたのは、葛尾村にある「Cafe 嵐が丘」です。小高い山の上にある、ゆるやかな時間が流れるカフェ。大切なお客様をお迎えする際によく利用しているそうです。

阪本さんが特に心惹かれるポイントは、店内にズラリと並ぶカップとソーサーのコレクション。その数、なんと約150客!オーナーである堀江さんご夫妻が長い年月をかけて大切に集めてきたものだと言います。ここでは、そのコレクションのなかから好きなカップとソーサーを自分で選んで、ドリンクを楽しむことができます。阪本さんは、「ていねいに淹れられたコーヒーのおいしさはもちろん、たくさんのなかから自分のお気に入りを選ぶ時間が、食後のティータイムをさらに特別なものにしてくれる」と話します。

阪本さんが選んだ南アフリカ・ケープタウンのカラフルなカップ&ソーサー(写真=阪本さん提供)

オーナーの堀江夫妻も、2011年に神奈川県から葛尾村にやってきた移住者です。「魅力はいろいろありますが、やっぱり一番は“自然を肌で感じられること”ですね」と、葛尾村での暮らしについて話してくれました。

また、村の人たちの温かさもこの地ならではの魅力だと言います。震災後、仮設住宅での生活を通じて出会った人たちが、今でもお客さんとしてお店を訪れてくれるそうで、地域とのあたたかなつながりが自然と築かれていることが、お話からも伝わってきました。

阪本さんが以前カフェを訪問した時には、南アフリカ・ケープタウンのカラフルなカップ&ソーサーで食後のコーヒーとデザートを楽しんだそう。「その日の気分にぴったりの一客がきっと見つかるはず」と、葛尾村でおすすめのリラックス時間の過ごし方を教えてくれました。

Cafe 嵐が丘
所在地:〒979-1603 福島県双葉郡葛尾村野川字中島234-2
TEL:0240-25-8922
営業時間:11:30~17:00(予約制)
定休日:月・火・日曜

地元食材と店主の想いが織りなす、ゆったりとした空間「café&gallery 秋風舎」(川内村)

2024年に川内村へ移住し、地域おこし協力隊員としてデジタルを活用した村づくりに取り組む岡本奈美佳さんが「エネルギーチャージできる場所」として紹介してくれたのが、川内村の古民家カフェ「café&gallery 秋風舎」です。

自然に囲まれた立地にたたずむ秋風舎。古民家の趣を残した重厚な梁や囲炉裏、窓から望む四季の風景が心を癒してくれます。

店内では、地元食材を活かした手作りの食事や自家製ドリンクなど、ここでしか味わえないメニューが豊富に用意されています。岡本さんのイチオシは「季(き)がわりランチ」。酵素玄米や川内村産の旬の野菜を使った副菜などが彩りよく並び、「野菜不足だなと思ったときも、秋風舎のごはんを食べると元気になれます」と話します。

「日替わり」でも「週替わり」でもなく「季がわり」とした理由を店主の志賀風夏さんに伺うと、「仕入れた素材から柔軟にメニューを組む“生産ベース”のスタイルなんです。日替わりのこともあれば週替わりのこともある。名前を固定しない方が柔軟に出せると思って」と、自然や地域に寄り添ったメニューづくりへの想いを話してくれました。

岡本さんが訪問した際の「季がわりごはん」は、アジとメヒカリのフライに自家製タルタルソースをそえたもの(写真=岡本さん提供)

また、岡本さんが「珍しい変わり種ドリンク」として推すのが「きゅうりサワー」。きゅうりとレモンを使ったビネガードリンクで、きゅうりの爽やかさとレモンの酸味が夏にぴったりの一杯です。隠し味にはフェンネルシードを使っていて、意外な組み合わせがクセになる、奥深い味わいに仕上がっています。

「食いしん坊な性格で、“これも入れたら美味しいかも”と発想が広がるんです」と話す志賀さん。「地元の農家さんがいろんな食材を教えてくれるので、どんどん掛け合わせてみたくなります」と笑顔で語ってくれました。

スライスきゅうりがさっぱり感を引き立てる、夏にぴったりのきゅうりサワー

川内村の自然や食材の魅力を五感で味わえる秋風舎。そこには「誰かの“おいしい”に応えたい」という志賀さんの想いと、人と人がつながるあたたかな空気が流れています。岡本さんも、志賀さんの人柄や想い、そして料理に心を動かされたひとり。秋風舎はこれからも、村の人々に愛されるやさしい交流の場として、あたたかく育まれていくはずです。

川内村に訪れた際は、ぜひ秋風舎でゆったりとした時間と地域の味を楽しんでみてください。

café&gallery 秋風舎
所在地:〒979-1202 福島県双葉郡川内村下川内字牛淵509
TEL:070-2811-6899
営業時間:11:00~17:00(夜は不定期で営業。詳細はInstagramをご覧ください)
定休日:火~木曜(冬季期間は休業)

まとめ

美味しいごはんと居心地のよい空間には、不思議と人が集まり、自然とあたたかなコミュニティが生まれます。想いのこもった料理やその店ならではの雰囲気にふれるひとときは、地域内のコミュニケーションだけでなく、地域内外の人々をつなぐ大切な交流の場にもなっています。福島12市町村での暮らしに興味がある方は、今回ご紹介したお店をきっかけに、まちのごはんやさんを訪れ、さらなる地域の魅力にぜひ触れてみてください。

※所属や内容は取材当時のものです。
取材・文:國井舞