【移住体験ツアーレポートin川俣町&飯舘村】ふくしまの笑顔とあなたの未来を重ねる旅

2025年7月19日(土)から20日(日)の1泊2日で、川俣町と飯舘村を巡る移住体験ツアー「ふくしまの笑顔とあなたの未来を重ねる旅in川俣町&飯舘村」が開催されました。この記事では、飯舘村で暮らす人々と交流した2日目、7月20日の様子をご紹介します。
飯舘村ってどんな村?
阿武隈高地の豊かな自然に恵まれた飯舘村は、「日本でもっとも美しい村」連合に加盟する、日本の原風景ともいえる雰囲気を残す村です。基幹産業は農業で、高原野菜や花きの栽培、畜産などが盛んで、道の駅や飲食店、ドラッグストアなどの商業施設、村営の宿泊施設、スポーツ施設などもあります。
■飯舘村の概要はこちら
>福島県相馬郡飯舘村への移住について知る | 未来ワークふくしま
観光やワーケーション、研修に最適な「きこり」と「きらり」
最初に訪れたのは、飯舘村内にある「宿泊体験館きこり」です。原発事故による全村避難で一時閉鎖されていましたが、避難解除後の2017(平成29)年5月に宿泊営業を再開。その後一部改装され、2023(令和5)年6月にリニューアルオープンしました。

館内には5つの客室があるほか、敷地内にはコテージ風の離れ客室が3棟あり、一人でもグループでも利用できます。観光はもちろん、ワーケーションでの滞在も可能です。すぐ目の前には「村民の森あいの沢キャンプ場」もあり、キャンパーに人気のスポットです。

2024年7月には、村で新規就農を希望する人が利用できる「農業研修館きらり」が隣接地にオープンしました。5つの宿泊室と自炊用キッチン、ランドリーが完備されており、長期滞在にも便利です。


生活を支える2つの商業施設を見学
次に訪れたのは、2017(平成29)年8月にオープンした「いいたて村の道の駅までい館」。名称にある「までい」は、「ていねいに、真心こめて」というこの地域の方言です。

館内に入ると、メインホールの天井から吊り下がる多くの「花玉」が参加者を出迎えてくれます。

産直コーナーには村の農家さんが丹精込めて育てた野菜や花き類が並びます。また、村特産のどぶろくやナツハゼ、村オリジナル品種のかぼちゃ「いいたて雪っ娘」を使ったお菓子なども販売されています。

道の駅の次に訪れたのは、2025(令和7)年7月にオープンしたドラッグストア「ハシドラッグ飯舘店」。公設民営型の店舗として整備されました。医薬品のほか、生鮮食品や日用雑貨、地元の農産物も売られています。さらにはクリーニング店もあり、村での暮らしに欠かせないお店となっています。

ランチは「氣まぐれ」メニューの農家レストランで
続いて一行が向かったのは、農家レストラン「氣まぐれ茶屋ちえこ」。2004(平成16)年にオープン後、震災時の避難指示期間を経て2019(令和元)年5月に再オープンを果たしたこちらのお店で、”までい”なランチをいただきました。

店主の佐々木千榮子さんと娘さんが作る「氣まぐれ膳」は、きのこと野菜の炊き込みご飯、自家製の味噌を使った田楽芋、梅のシロップ漬けなど、どれも味わい深いものばかり。皆さんゆっくり楽しんでいました。


昔からある村の味をつなぐ千榮子さん。先ほどご紹介した、道の駅で売られているどぶろくも、実は千榮子さんが作っています。
移住サポートセンターで移住者の体験談に触れる
「までい」なランチに満足した皆さんは、次の目的地である「いいたて移住サポートセンター3ど°(さんど)」へ。飯舘村には以前から移住相談窓口がありましたが、2024(令和6)年4月、村民と移住者、移住希望者をつなぎ、気になることを気軽に相談できる拠り所として、「3ど°」の名称でリニューアルされました。

3ど°では移住者交流会が開催されました。まずは3ど°のセンター長、山本阿子(あこ)さんが登壇。3ど°の名前の由来を、「1度目はふらりと遊びに来てほしい、2度目は村の誰かに会いに来てほしい、3度目からは飯舘村での暮らしや仕事を想像して訪れてほしい、という想いが込められています」と教えてくれました。移住を検討している方や移住まもない方にはとても心強い存在です。

山本さんの話のあとは、先輩移住者が、移住のきっかけや村で事業を起こした体験談を披露しました。まずは、埼玉県出身で畜産農家をしている天野浩樹(あまの ひろき)さん。震災前は飯舘村の東隣りの相馬市で畜産業を営む祖父の家で働いていました。

「原発事故後、飯舘村から相馬市に避難してきた畜産家の佐藤一郎さんと知り合い、村の畜産業の状況を知りました。祖父からは『飯舘村は畜産が盛んで、いい牛もたくさんいる』と話を聞いていたので、悲惨な状況にショックを受けたことを覚えています。
そのあと、帰村した佐藤さんから『村で畜舎導入の事業計画が動き出す』と話を聞き、自分も飯舘村で畜産業に取り組もうと決意。村に自分の牛舎が完成する1年前から村内の牛舎を間借りして牛を増やし、牛舎の完成とともに、家族や牛たちと村に引っ越しました。役場の皆さんや村の畜産家の方々の計らい、そして自分の意思を尊重してくれた家族に感謝しています。
今後は、繁殖牛の生産基盤を安定させると同時に、繁殖した牛を育てて出荷する肥育まで一貫で経営すること、そして、震災前に人気だったブランド牛『飯舘牛』を復活させることを目指してがんばります」

2人目は、村のベーグル専門店「村カフェ753(なごみ)」の店主、田中久美子さんです。田中さんはツアーのバスに同乗し、村の案内もしてくれました。

「震災時、私は福島県立医科大学看護科の院生で、神奈川県立がんセンターへの入職も決まっていました。当時は福島に残ることも考えましたが予定どおり入職し、5年後の2016(平成28)年、院の同級生が立ち上げた相馬市の「NPO法人 相双に新しい医療保健福祉システムをつくる会(通称なごみ)」へ転職。翌年からは看護師として訪問看護で村内を巡回しました。
その道すがら、寂しくたたずむお店がありました。地元の方に聞くと、そこは震災前、お客が絶えない人気の喫茶店だったのだとか。しかし、全村避難で空き店舗になっていました。私はその前を通るたび、『ここにお店がオープンしたら村が元気を取り戻すかも』と思っていました。そのことを知人に伝えたところ、お店のオーナーを紹介していただき、幸運にも店舗をお借りできることに。2019(令和元)年の秋に店舗の改修が始まり、翌年4月、ベーグル専門店「村カフェ753(なごみ)」をオープンしました。
村をなんとか元気にしたいという思いつきにたくさんの方が協力してくださり、形にできたお店です。まだまだ苦労することも多いですが、皆さんの想いに感謝しつつ、これからもベーグルを焼き続けたいと思います」
田中さんはベーグル屋を営みながら、今も週に1日は看護士として働き、村の医療を支えています。想いのこもった田中さんの話に、参加者からは自然と拍手が湧き起こりました。

感じたことをワークショップで共有
天野さん、田中さんの話のあと、参加者は3つのグループに分かれ、2日間のツアーで感じたことを共有するワークショップに臨みました。
「千榮子さんや田中さんの人柄から村への熱い想いが伝わってきた」「農業体験が新鮮で楽しかった。野菜がおいしい!」「移住者への補助金が充実しているが、車がないと生活が大変そう」など、それぞれ感じたことを書き出しました。

まとめ
川俣町と飯舘村を巡った今回のツアー。参加者の皆さんにとっては、自らの目で見た地域の様子や人との交流、先輩移住者の体験談、そして感じたことを共有したことで、改めて移住について考えるよい機会になったようです。
最後に、ツアーに参加した方の感想をご紹介します。
「1日目に見学した川俣町で移住・定住住宅を見学できたことで、移住後の暮らしをイメージすることができました」(東京都・20代女性)
「さまざまな場所を見学し話を聞くことでき、川俣町、飯舘村のことが理解できました」(茨城県・30代女性)
「同じ想いをもった方たちとの交流や先輩移住者の話を聞き、明日からの人生のあり方を考えさせられました」(東京都・60代女性)
「川俣町の企業の見学では社⾧も従業員も楽しそうに働いていることが伝わってきた」(神奈川県・60代男性)
2025年度の「未来ワークふくしま移住体験ツアー」は全7回を予定しています。今後の予定は「未来ワークふくしま」のウェブサイトでご確認ください。
>ふくしま12市町村移住体験ツアー | 未来ワークふくしま
また、自分が興味のある場所をじっくり巡りたいという方は、以下のモデルコースを参考に現地に足を運んでみるのもおすすめです。
>ふくしま12で移住体験!新しい暮らしを見つけよう | 未来ワークふくしま
※所属や内容はツアー当日のものです
文・写真:和田学