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【移住セミナーレポート】vol.16「私たちが福島12市町村を選んだ理由」編(仙台開催)

2025年2月14日

ふくしま12市町村移住支援センターが主催する「未来ワークふくしま移住セミナー」は、福島12市町村で活躍するゲストとの交流を通じ、現地での暮らしやその魅力を知ることができるセミナーです。2024年12月7日(土)、宮城県仙台市にてvol.16「わたしたちが福島12市町村を選んだ理由」編を開催しました。

当日の様子は動画でもご覧いただけます。

ダイジェスト版 (全編動画はこちらからご覧ください)

第1部

ゲストによる活動紹介 / パネルディスカッション

高橋 優子さん(カルチュラル・プラットフォーム 縁側の家 主宰)

私は広野町で生まれ進学を機に東京へ移りました。ヨーロッパでも数年間過ごしましたが、今は東京を拠点に広報や文化関連の仕事をしています。リモートワークが普及したおかげで、平日のうち3日は東京、残り2日を広野町で過ごしています。広野町では「カルチュラル・プラットフォーム 縁側の家」で主宰をしながら、サーファーとしても楽しんで暮らしています。

2016年から始めた「縁側の家」は、地域の文化や人々をつなぐ場所です。アートやイベントを通して、この土地の魅力を共有しようと始めた活動ですが、今では仲間が集い、何気ない時間を楽しむ場になりました。
私たちの「みんなで楽しみたい」「良い時間を過ごしたい」という姿を見て、次世代の人たちが「こういう価値観もある」「楽しそうだな」「はみ出しても大丈夫!」と感じてくれたら、最高だなと思っています。

広野町は「広野音頭」に象徴されるように、特別なことはなくても「いいところだから来てください」と歌う土地です。何でもない時間を慈しみ、ありのままを受け入れる―そんな文化に魅力を感じ、ここに戻ってきました。そしてこれからも、この場所で大切な仲間たちと「最高にダラダラ」しながら楽しく過ごしていこうと思っています。

大沼 桃香さん(スマイル薬局小高店、クリエイター育成プロジェクトHATAage)

私は仙台の医療福祉専門学校を卒業し、現在は南相馬市小高区にある薬局に勤めています。仕事は受付や会計業務、薬剤師のサポートをしています。
福島への移住に不安もありましたが、全国から集まる人々が新しいことに挑戦する姿に影響を受け、「少しでも地域医療や地元の方々の役に立ちたい」という思いが芽生え決心しました。

暮らしのなかで出会ったのが、小高クリエイター育成プロジェクト「HATAage(ハタアゲ)」です。
私はデザインの基礎を学んでいる段階ですが、先輩方が作成する地域のお祭りのチラシなどを見て、いつか自分もさまざまな制作物を手がけられるようになりたいと考えています。

南相馬での生活は、私自身を成長させ、前向きにしてくれました。
今後の目標は、デザイナーとしての技術を高めつつ、薬局の仕事との両立を続けることです。そして、この地域の魅力を発信しながら、移住を考える方々を迎え入れる側になりたいと思っています。

田中 洋平さん(フレックスジャパンひなた工房双葉 責任者)

私は長崎県出身で、中学時代からファッションに興味を持ち、福岡のファッション専門学校に進学しました。卒業後およそ10年、東京の縫製工場に勤め技術を磨き、熊本県天草市にある「天草フレックス」というシャツ工場に転職しました。
その後、2013年に東日本大震災からの復興支援と「思い出を繋ぐリメイク事業」への挑戦のために双葉町に進出することになり、「新事業立ち上げの責任者をやらないか」と声をかけていただいたのが移住のきっかけです。

移住した双葉町は、震災後、帰還困難区域として最後まで制限されていた町です。しかし、ここは「自分の意見が町をつくる可能性がある」という特別な場所です。若者が集まり、まちづくりの会議を開くなど、未来をつくる取り組みが進んでいます。

私生活も充実しています。この地域ならではの温かさや繋がりが、日々の生活を豊かにしてくれています。

ブケ・エミリーさん(あまの川農園、イラストレーター)

現在は大熊町で暮らしながら農業とイラストレーターの仕事をしています。
2008年に初めて来日し「日本で生活したい!」という思いから、2011年4月に東京へ引越し、フランス語の教師として働いていました。2018年に初めて福島を訪れ、2021年に会津若松市に移住しました。当時はフランス人にも福島の魅力を知ってもらうために、会津のシンボル「赤べこ」のイラストを描いていました。
そして大熊町での出会いと、人々の温かさや山々の美しい景色に惹かれ、2022年に移住し農業をスタートしました。

農業の知識はほとんどなく、すべて手探りの状態からのスタートでしたが、地元の人にトラクターの使い方やフォークリフトの運転、日本語を教えてもらいながら毎日農業に励んでいます。最近では仲間と一緒に市場へ出荷したり、困ったときには助け合える関係を築けています。

大熊町の人々は温かく、何か困っているときには必ず手を差し伸べてくれます。そしてすぐに良い関係が築ける場所です。
人生は一度きり。やりたいことをやる楽しさを、皆さんにも知ってもらえたらうれしいです。

パネルディスカッション

トークテーマ1:「移住前に考えていたこととのギャップはありますか?」

<高橋さん>
私はふるさとが広野町ですし、東京との2拠点生活なので、そんなにギャップということも実は感じていないですが、しいて挙げるなら、東京にいる時よりも人と出会う率が実は多くて。広野町を拠点としている今の方が、自分が必要としている会いたい人と会えている、そういった実感があります。

<エミリーさん>    
移住する前は大熊町で暮らすのはスーパーもないので不便かなと思ってましたが、住んでみたら不便じゃなかったです。隣町に行けばスーパーや歯医者など、なんでもあるし、ネットで買い物もできます。逆に大熊町で暮らしはじめて、本当にそんなにたくさんのものが必要なのかなあと思い、いらないものがなくなり必要なものだけになりました。

<田中さん>
九州に住んでいたので、こっちの状況がわからなかったのですが、震災からだいぶ経っているので     整備されているのかなと思ったら、まだ帰還困難区域がけっこう残っていてびっくりしたのがギャップです。
生活は不便だと言われてたのですけど、前に住んでいたところも不便なところだったので、不便さのギャップはなかったです。

<大沼さん>
私も田舎から田舎への移住だったのでギャップはなかったのですけど、移住する前に調べてみたら整備状況が心配だったのですが、実際に来てみたら整備も進められていていい意味で環境のギャップがありました。

トークテーマ2:「移住を経験して自分自身に変化はありましたか?」

<大沼さん>
デザインのプロジェクトに携わったり、いろんな方とコミュニケーションを取る機会も増えて、だんだん自分自身が前向きになっていっているところに変化を感じています。

<高橋さん>
私も意外と人と出会う率が上がっているなと思いますし、田中さんもエミリーさんも同じことを仰っていて、ちょっと面白いですね。エミリーさんはどうですか?
「田舎あるある」かもしれませんね。

<エミリーさん>
横浜に住んでいた時は隣に誰が住んでいるかもわからないし、挨拶しても返事がなかったり、あまり仲良くなれませんでした。大熊町に来てからは、みんなが家族のようなつきあいで嬉しいですし感謝してます。

<高橋さん>
田中さんは移住して1年だけど、友達がたくさんいて一緒にお酒を飲んだり、フットサルをやる仲間もできたということですが、いかがですか?

<田中さん>
九州では工場でひたすらシャツを縫っている仕事だったので狭い世界だったんですけど、こちらに来て責任者になって、いろいろな所に顔を出したり、メディアに出たりなど出会う方が増えて、仲間もたくさんできたことは変化ですね。

<高橋さん>
他にもなにか変化があったと感じることはありますか?    

<田中さん>
ずっと好きなことをやっているので変わらないというか、住むところが変わっても自分が楽しめることをずっとやっている感じです。

<高橋さん>
人付き合いの他にも、こちらに来て変わったことはありますか?

<エミリーさん>
ちょっと素直になったことでしょうか? 今まではイラストの仕事を一人でやってきていて、農業も一人でやろうと思っていましたが、たくさんの人と関わって相手の意見を聞くことがとても大事で、自分の意見も伝えて話し合うことがとても大切だと学びました。でもまだ「頑固な部分がある」と、よく言われてますけど。

<高橋さん>
本当に、とても素敵なことですね。
大沼さんも田中さんも移住をして「前向きになった」とお仰っていましたが、みんなそうですね。
それは開かれたいい場所ということかな? と感じますね。

トークテーマ3:「移住先の地域に『受け入れられた』と感じた瞬間はありましたか?」

<高橋さん>
皆さん何かご縁があって福島にやって来られたのかなと思います。
最初はいろいろあったと思いますが、たぶんある地点で「ここでいいんだな」と思ったポイント、「受け入れられた」と感じたはありましたか?    

<大沼さん>
私が休みの時に患者さんが「あの子、今日はいないの?」と聞いたことがあったそうです。
それを聞いて、私のことを覚えてくれたんだなと感じることがあり「受け入れられた」というか、すごく嬉しかったですね。

<高橋さん>
それは受け入れられたのだと思います! その患者さんにとっては大沼さんがいないことが、非日常でいることが当然の風景になっていたんですね。

<田中さん>
イベントなどで「あっ、おはよう!」とか手を振って簡単な挨拶ができることが、受け入れられているな、嬉しいなと感じます。

<高橋さん>
すごくわかります。朝、サーフィンへ行くときに「おー、おはよう!」と声をかけられることがあります。もしかしたらお互い名前をわかっていないかもしれないけれど、顔なじみがいっぱいいる風景、これがコミュニティなのかなと思います。

<エミリーさん>
よく見守られていると感じます。風邪を引いた時には、誰かが飲み物や果物を持ってきてくれたり、農業をしているので畑の草刈りや、なにかしら手伝ってくれたります。いつも本当に見守ってもらっていて、感謝してます。

トークテーマ4:「移住を検討している方に向けて、最後にひとこと」

<田中さん>
昨日もフットサルに行ったのですが、そのメンバーのなかに若い社長が3人ぐらいます。若くて有能な人がこの地域にはいっぱいいます。若い方や夢のある方にとっては、刺激的のあるまちになってますので、ぜひ移住を検討されている方はどうぞ来てください!    

<エミリーさん>
この地域は苦労をした地域なので、避難した人たちは辛い思いをしたんです。辛い思いをしたからこそ、一人でも三人分くらいのパワーを持っている人が多いです。だから何かやりたい人がいると、みんなでサポートをしてくれます。何でもチャレンジできる地域だと思いますので、ぜひやりたいことをでチャレンジしてみてください。

<大沼さん>
やっぱり12市町村は新しいことにチャレンジができる場だと思います。ぜひその町に足を運んで現状を見て自分の肌で感じてみて、今後につなげていくことが大事だと思うので、ぜひお越しください。

<高橋さん>
3人の話に共通していることは、この地域はいますごく活気があって、チャレンジしたい人にはうってつけの場所です。お話にも合ったように優秀な方が多くて、磁石のように起業家精神をもったアントレプレナー達が集まってきている、ちょっと特殊な地域になりつつあるなと思います。もしかすると、私たちは新しい社会が出来上がる、立ち上がっている、その瞬間に立ち会えているのかなと感じます。そういったワクワク感や希望がとても感じられる土地になっています。

一方で伝統的にのんびりして、おおらかな地域でもあります。エミリーさんが言ったようにみんなを見守ってくれるような文化も根付いています。みんながキラキラとしている必要はなく、「のんびりサーフィンしたいな」「だらだらしたいな」という方も受け入れられる、大きな器の土地だと思っていますので、どんな人でももし何か気になったら、まずはちょっと足を運んで実際に来てみてもらえたらいいなと思います。

第2部

ゲストと直にお話しができる座談会 

ゲストの方々によるお話しの後に実施した座談会では、参加者たちが福島での暮らしにまつわる気になることをゲストに質問。移住先の「生活環境」や「楽しみ」「新たな発見」など、本当に気になるところをざっくばらんに話しが盛り上がり、生の現地情報を入手できる時間となりました。

個別相談会

移住に関する個別相談では、現地の求人情報や支援制度を確認される方や、「地域おこし協力隊の募集があるか知りたい」「海の近くで車がなくても住めるところは?」など、小さなことから大きなことまでさまざまな質問がありました。

セミナー後の特別企画「もっと話そう延長戦!」では、上の座談会と個別相談を延長して実施しました。

ワークショップ

未来ワークふくしま移住セミナー用素材 – 3

もう一つの特別企画「私だけのふくしま12市町村移住体験ツアーをつくる」ワークショップでは、12市町村の魅力を巡りながら、移住体験するツアー行程の作成に取り組みました。「海の幸を味わうツアー」や「新進気鋭の酒蔵を巡るツアー」などのアイデアを出しながら、立ち寄る場所や道順を決めていました。参加者からは「実現してほしい!」「調べると、より興味がわいてきた」などの感想が聞かれました。

今年度、全6回の開催を予定している「未来ワークふくしま移住セミナー」。
福島12市町村で活躍されているゲストの方々から、それぞれの活動やこれまでのストーリー、福島12市町村の魅力、そして移住に向けた具体的なアドバイスを聞くことができました。
未来ワークふくしま移住セミナーに関する最新情報は、特設サイトよりご覧ください。
皆さまのご参加を心よりお待ちしております!

■2024年度未来ワークふくしま移住セミナーの特設サイトはこちら 

https://mirai-work.life/lp/seminar2024/