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【移住体験ツアーレポートin相双エリア】 \ 充実の子育て支援&教育環境を見学!/ 親子でふくしまの暮らし体験ツアー

2024年3月21日
  • 体験ツアー
  • 子育て

2024年3月2日(土)から3日(日)の1泊2日で、福島12市町村の太平洋に面した相双エリアを中心に充実した子育て環境を巡る移住体験ツアー「充実の子育て支援&教育環境を見学!親子でふくしまの暮らし体験ツアー」が開催されました。
この記事では、2日間のツアーの様子をご紹介します。

相双(そうそうエリアってどんな地域?

福島12市町村内に含まれる相双(そうそうエリアは、太平洋の沿岸部「浜通り」地方に位置する「相馬地域」と「双葉地域」を指します。1年を通して温暖な気候が特長。今回はこの相双エリアを中心に、福島12市町村にある魅力的な人や教育機関を始めとした子育て環境を訪ねるツアーです。

特に学校環境は公立ながらも「ここに子どもを通わせたい」と移住される方もいるくらいの評判です。ツアーでは、親子参加者6組18名のご家族に、子育て環境や教育を体感してもらいました。

【1日目】自然に囲まれた環境に、幼児教育から高等教育を集約。広野町「教育の丘」を見学

幼児教育から高等教育までを隣接で行うことを可能にした「教育の丘」

子育て環境を巡るツアーは、広野町の「教育の丘」の見学からスタート。広野暮らし相談窓口「りんくひろの」相談員の大森博隆さんの案内で施設内をめぐります。大森さんには、ツアーの初日に帯同いただき、広野町を中心に移住に関する参加者からの相談に乗っていただきました。

広野暮らし相談窓口「りんくひろの」相談員の大森博隆さん

「教育の丘」は、
・認定こども園の広野こども園「ひろぱーく」
・町立広野小学校
・中高一貫校の県立ふたば未来学園
が隣接する、幼児教育から高等教育までを集約した教育エリアです。「地域が人を育み、人が地域をつくる」という考えの下に、未来を生き抜く力を身に付ける教育に取り組んでいます。

徒歩での外観見学をしながら訪問したふたば未来学園

訪問先であるふたば未来学園では、對馬(つしま俊晴副校長に学校内をご案内いただきました。

ふたば未来学園 對馬(つしま)俊晴副校長

ふたば未来学園は、「変革者たれ」を建学の精神に、中学生の頃から世界を導くリーダーを育てようと、最先端の教育が取り入れられています。
①「実践力を磨く『未来創造』」
②「世界に飛び出す学び」
③「深い学び・高い学力」
④「未来の主人公となる学び」
の4つをテーマに、中学校から取り組んでいます。

エントランスから入ってすぐの地域協働スペース

高等学校になると、生徒は「アカデミック」「トップアスリート」「スペシャリスト」の3つの系列に属し、自身の得意分野を伸ばしていきます。

特徴的な試みの一つとして、生徒が運営する学園内のカフェ「ふぅ」があります。商品企画から接客までを生徒自身が行っているそうです。
また、「演劇による成果発表会」もあります。生徒自身が、地域の課題を自ら調べ、まとめ、色々な人の話を聞き、シナリオにし演劇形式で発表します。演劇は、さまざま立場の人の視点が不可欠で、物事が一面的ではないことを実践の中で学ぶことが出来ます。

スポーツは、中・高ともバドミントンが特に盛んです。オリンピックのメダリストなど、世界的なバドミントンプレイヤーを輩出した富岡高校の流れを継ぎ、全国レベルで活躍する生徒が多数います。

室内でのテニスの練習を見学

今回のツアーに参加したご家族のお子さんは、未就学児・小学生が中心でしたが、成長した後も、地域に先進的な教育に取り組む施設があることをツアーの中で学ぶことが出来ました。

(関連リンク)
>双葉郡から世界へ。最先端教育で変革者を育てる「ふたば未来学園中学校・高等学校」
https://mirai-work.life/magazine/4009/

ナショナルトレーニングセンター・Jヴィレッジでランチ

続いて向かったのは、楢葉町にあるサッカーナショナルトレーニングセンター・Jヴィレッジ。サッカーフィールドを見渡せる部屋で、昼食をいただきました。

サッカーフィールドを見渡せる部屋

Jヴィレッジは、福島第一原子力発電所事故後の対応拠点として使われた後、2019年から全面再開。サッカーコートが10面あるという豊かな環境もあり、2024年からの男子サッカーのインターハイは、Jヴィレッジで毎年開催されることが決まっています。

日本有数のサッカー施設でありながら、地域に開かれた場所でもあり、子ども向けのサッカー教室なども開催されており、未就学児から参加できるクラスまで用意されています。

食事の後は、Jヴィレッジの歴史や震災からの復興の歩みについて教わった後、芝のフィールドへ。普段なかなか入ることのない天然芝の上を子どもたちが走ったり、寝転んだりするなど、楽しむシーンが見られました。

地域の遊び場・わんぱくパーク!

富岡わんぱくパーク

子育てで気になるのが、子どもの遊び場所。双葉エリアには、各地に大きな公園や施設があります。この日は、富岡町の商業施設・さくらモールとみおかの一角にある富岡わんぱくパークを訪れました。

広い屋内スペースにたくさんの遊具が揃っており、0歳から小学校高学年まで利用できます。

家族連れに人気のスポットで、多い日は町内外から、300人が訪れる日もあるそうです。
これほど充実した施設ですが、無料で利用できます。「都心でこういう施設に行ったら、家族で5千円はかかるのに!」という参加者の驚きの声もありました。

(関連リンク)
>ここにあるおもちゃはどこから来たの? 知りたい方はこちらもチェック
https://mirai-work.life/magazine/8694/

現地の子育て環境について、先輩をたずねる!

ツアー初日の最後は、移住者交流会。現地に移住し、子育て・生活をする先輩に話をうかがいました。いわき・双葉の子育て応援コミュニティcotohana(コトハナ)共同代表の鈴木みなみさんと、小林奈保子さんです。
地域の子育て情報を冊子やWEBで発信するお二人に地域の子育て情報について話していただきました。

双葉郡内の就園児童数は、避難指示解除から年々増加し、2023年には約400人に。富岡町では、園が再開してから4年で、児童が約9〜10倍に増えたそうです。育児コミュニティが広がっているというのはうれしい情報ですね。

続いて「保育施設・教育環境」「医療環境」「買い物・レジャー事情」「地域コミュニティ」などの子育て情報を、保護者仲間の声などを交えて紹介。
保育制度や医療環境など、年々良くなってはいるものの、当然ながら全てのことに手が届くわけではありません。そういった課題に対して、地域の子育て世代がどのように対処しているかについて、実際に暮らしている方の声も交えてご紹介いただきました。

鈴木さんと小林さんの運営するWEBサイト・cotohana。地域の子育て情報や体験談が掲載されています

2日目】生徒が本を手に取る回数は日本屈指。大熊町 学び舎 ゆめの森の見学からスタート

ツアーの2日目は、大熊町の学び舎ゆめの森からスタートです。

2023年大熊町に戻ってきて学校再開したゆめの森は、全国から注目される町立の学び舎で、地域の0歳〜15歳の子どもたちが通います(認定こども園と義務教育学校)。
同舎の試みは全国から注目を浴び、京都や東京、埼玉などから教育移住するご家族もいるほど。この日は、校長先生の南郷市兵さんが案内してくれました。

「わくわく本の広場」校舎の中央にある大きな吹抜けの図書ひろば

ゆめの森のビジョンは、「『わたし』を大事にし 『あなた』を大事にし 『みんな』で未来を紡ぎ出す」。「避難経験などをふりかえり、何を大事にすべきだったんだろう?」と話し合った時、出てきたのが「わたし」だったそうです。
一人ひとりが「わたし」を大事にできるよう、熱中できるものを見つけるには……を考え、「生涯幼稚園児 〜熱中する探求者〜としての資質・能力の成長」を学びの基盤としています。

校舎には、「遊びの中で探求する」仕組みが随所に散りばめられています。
坂を登ったり、階段を登ったりといった移動の導線に本棚があり、一休みする場所からも本棚が見えます。希望者が「私のオススメの本」を紹介する本棚もあり「本を手に取る回数なら日本屈指」(南郷校長)とのこと。

子どもたちには、学ぶ中、遊ぶ中、移動する中など、いたるところに「出会い」が提供されます。そして、それは本だけにとどまらず、理科の模型やドラムなどの楽器、さらには、卓球台もあります。
子どもたちは、「そこにある」ことで、気軽に手に取り、始め、そして探求し始めます。

子どもたちの「探求」の例を挙げると、
・食堂のステージにあるドラムをさわりだした生徒の演奏がぐんぐん上達していく。
・アリーナに行く途中には卓球台があり、始業前や放課後に誰かしらが卓球を始める。熱中し、上達し、大人に勝つようになった小学生もいる。
とのこと。

今回の見学中も、子どもたちが本や楽器、模型に手を伸ばすシーンを何度も目にしました。
「遊び」と「探求」を軸にした環境デザインはもちろん、その考え方に共感するばかりでした。

実は「ゆめの森」見学が今回のツアーの主目的だったご家族も複数いるくらいでした。この学び舎で育った子どもたちが将来どんな大人になっていくのか、今から楽しみです。

(関連リンク)
>フェンスもチャイムもない学校。大熊町立 学び舎 ゆめの森のシームレスな学び
https://mirai-work.life/magazine/8254/

浪江町、南相馬市の子どもの遊べる環境を見学

ゆめの森を訪問した後は、大熊町から北上しながら、各所にある子どもの遊び場を回りました。
まずは、ランチで立ち寄った道の駅なみえ。

お買い物などの施設が広いことも魅力ですが、特徴の一つにポケットモンスターにちなんだ「ラッキー公園 in なみえまち」があります。

公園のほか、ポケモンのぬいぐるみがたくさんある室内のキッズスペースもあります

道の駅の舎の裏には、請戸川が流れ、ちょっとした休憩スポットにもなっています。この日は、渡り鳥を見られました。

(関連リンク)
>晴れでも雨でも子どもが遊べる施設が充実、浪江町の「道の駅なみえ」
https://mirai-work.life/magazine/8151/

道の駅なみえの次は、南相馬市小高区の「NIKOパーク」へ。

この施設も無料で利用できる屋内型の子どもの遊び場です。
90分1クールで区切り、1日3クールの間、入れ替え制で遊ぶことができます。多いときで各クール100名(定員150名)、1日300名ほどが利用されるとのこと。

NIKOパークで遊びを開始する前に、参加者の親たちは、NIKOパークの別館で、南相馬市こども未来部の鈴木仁美さんから、南相馬市の子育て支援について話をうかがいました。

南相馬市では、市内の出生数をあげようと各種取り組みをしていて、経済的支援として3つの無料化に取り組んでいます。具体的には「保育料の無料」「幼稚園・保育園から中学校までの給食費無料」「18歳までの医療費無料」です。他、「一時預かり」や男性の育児参加を支援する「はぐパパ応援 育休取得 促進奨励金」の支給などです。

こちらは南相馬市がつくった「こども・子育て応援コンセプトムービー」です。会場でも流されたもので、1分程度で南相馬市の子育て支援の概要を確認できます。

説明後は、プレイエリアへ。
NIKOパークには「プレイリーダー」と呼ばれる、子どもの遊びをサポートしてくれる「遊びのプロ」が常駐しています。この日も、子どもたちと一緒にかけっこしたり、小さな子のやりたい気持ちをサポートする姿が見られました。子どもと一緒に遊んでくれるプレイリーダーの存在は心強いですね。

「まだ遊びたい!」というお子さんもいましたが、クールの終わりとともにNIKOパークを後にしました。

(関連リンク)
>0歳から小学校高学年まで楽しめる 南相馬市小高区の屋内遊び場「NIKOパーク」
https://mirai-work.life/magazine/8256/

そろそろツアーも終盤。最後の訪問地は、道の駅南相馬。そして、ここにも隣接する屋外遊具や屋根付きのキッズスペースがあります。

屋内には、ふわふわドームなどの遊具があり、球技をする子どもたちの姿も見られました
屋外にも遊具が並び、夏はじゃぶじゃぶ池で水遊びもできます

いろいろと回って疲れているかと思いきや、子どもたちは新しい場所でも色々な遊具を試していました。最後まで子どもの元気には驚かされるツアーでした。
そして、「学ぶ」と「遊ぶ」を軸に、相双エリアについて、学べたツアーでもありました。

参加者の声

最後に参加者の声を紹介します。

「12市町村への移住を考えて、このツアーに参加した。過去にもこちら(現地)には来ていて、南相馬に来てみたかった。南相馬以外も魅力的な場所で、どこに住むか気持ちが揺れている」

「1月にゆめの森のオンライン説明会に参加して、子どもに学ばせたいと思って移住を決めた。2月にも来たが、今回のツアーでは、その時とは違った観点でいろいろとまわれて良かった」

「首都圏からの移住を考えている。海の見える場所で探していたところ、今回のツアーを知った。はじめて来たがいろいろと見られてよかった」

「今回のツアーはリピート参加。ゆめの森に子どもを通わせたくて、その最終確認として参加した」

移住候補の視察、移住エリアの最終判断、目的の学校があったなど、参加の目的はご家庭ごとに違いますが、子育てを軸に先輩の声・学ぶ環境・遊ぶ場所などをいろいろな視点で見ていただける機会になったのではないかと思います。

※所属や内容、支援制度は取材当時のものです
文・写真:岐部淳一郎