地域の人々に見守られて。家族でのびのび過ごせる双葉町での暮らし

- 出身地と現在のお住まい
妻・優希さんは宮城県、夫・直弥さんは神奈川県出身→結婚後、横浜市で暮らす→双葉町へ移住
- 移住のきっかけ
地方移住に興味があり、優希さんの実家の近くで暮らせる地域を探していた
- これからやりたいこと
新しく双葉町に来る人たちを迎え入れ、地域での暮らしをともに楽しみたい
2024年10月に神奈川県横浜市から双葉町へ移住してきた綾部さん一家。小学生2人、未就学児2人の子育て世帯です。妻・優希(ゆうき)さんのご実家が宮城県にあることから、家族の距離感を大切にしながら移住先を探し、双葉町にたどり着きました。ご近所との関わり合いが楽しいという双葉町の駅西住宅で、優希さんと小学6年生の長女・蒔千(まち)さんに現在の暮らしや移住前の準備について聞きました。
実家までの距離と手厚い子育て支援が移住決断の理由

――地方移住を考え始めたきっかけを教えてください。
優希さん 横浜で子育てをしていたのですが、地方移住にはずっと興味がありました。私の母が仙台に住んでいることもあり、月に一度ぐらいは会いたいなと思って、関東より北の地域で探し始めたのが最初です。
夫も移住には前向きでした。いろいろと調べてくれて、福島12市町村が子育て支援をはじめ、移住支援が手厚いことを見つけてきてくれたんです。
――双葉町を選んだのはなぜですか?
優希さん 福島12市町村のなかでは、双葉町と、新しく学校ができた大熊町とで悩みました。どちらも子育て支援に特に力をいれていると感じたからです。移住をしたいタイミングで住める家が見つかったのは双葉町でした。先延ばしにすると別の方が入居してしまうかもと思い、すぐに入居を申し込みました。

子ども思いの人々に囲まれた子育て環境
――お子さんと一緒に移住するうえで気になっていたことや準備したことはありますか?
優希さん 子どもが学校に馴染めるかという不安が一番大きかったです。移住前の夏休みに、子どもたちと一緒に小学校の見学に行かせてもらいました。そのときに、転校してからの生活を少しはイメージしてもらえたかな。移住後の子どもたちの適応力はすごくて、こちらの心配をよそにあっという間に馴染んでいきました。
――移住してからの学校生活はいかがですか?
蒔千さん 前の学校は1学年100名ぐらいでした。入学した学校は6名と、人数は少なくなりましたが、楽しく過ごしています。
学校では、学級委員や行事の司会者などをやることもあります。前の学校ではみんなの前にでる機会はあまりなかったので、やりたくない気持ちも大きかったです。でも、今のクラスメイトは少ないので、担当することも増えました。やりすぎているくらいです。そのせいか、少しずつ面白くなってきました。

優希さん 子どもたちが少ない分、先生方は一人ひとりとていねいに関わってくださると感じます。特に次男はじっくり見てもらえる環境が合っているようで、この1年で穏やかになりました。安心して過ごせているのだと思います。
――双葉町で子育てをするようになって、特に変化を感じることは何ですか?
優希さん 周りを気にせず、のびのびと子育てできるようになりました。横浜だと、本人の意思に関わらず、学校が終わってからは塾や習い事に行くのが当たり前のような雰囲気があり、少し窮屈だったんです。でも、双葉町に来てからはそうした空気を感じることもなくなりました。学校以外の時間で、子どもたちは地域のさまざまな体験に関わっています。

――地域の皆さんとはどのような関わりがありますか?
優希さん 駅西住宅の皆さんとは距離感も近く、日ごろからお世話になっています。お野菜をいただいたり、「ごはんのおかずを作ったから取りにおいで」なんて声をかけてもらったり。以前の暮らしにはなかったご近所付き合いがあり、うれしく思っています。放課後に宿題をする子どもを見てもらうこともあり、心強いです。
双葉町は、子どもたちのために動いてくださる方が多いと感じます。例えば、「双葉町結ぶ会」という、駅西住宅に住む方の有志で結成される団体では、子ども向けに月に一度のごはん会や季節のイベントを開催してくれています。子どもたちが遊べる遊具を作ろうかという話もしてくれているようです。さらに最近、「ふたばネクストリーフ」という子どものための団体も作られました。

町外でも、さまざまな経験をさせてもらっています。夏には富岡町の演劇祭の一環で紙芝居を一から作ったり、最近はふくしま駅伝*の練習に参加したりしました。きっと自分たちだけでは参加していないだろうというものでも、声をかけてもらい行ってみたら「すごく楽しい!」と思うことがたくさんあって。そうした体験をお金をかけずにできることにも驚いています。
蒔千さん 弟と一緒にダンスも習い始めました。週に一回、浪江町で、プロのダンサーやシンガーの先生の本格的なレッスンを受けています。家でも踊っちゃうくらいハマっています。
*ふくしま駅伝…毎年11月に開催される福島県内59市町村対抗の駅伝競走大会
人との出会いが、暮らしと仕事を前向きにしてくれた
――移住後のお仕事について教えてください。
優希さん 移住してすぐは生活に慣れることを第一にしていたので、私は働いていなかったんです。2歳の次女も保育園に通うようになってから、まずはシフト制のパートスタッフで、浪江町の飲食店で働き始めました。本格的に仕事をしようと決めたタイミングで、移住前から就いていた訪問介護の仕事へ転職。職場は富岡町になり、現在は週4~5日の時短社員として働いています。神奈川県にいた時と職種は変わりませんが、仕事のやりがいが大きくなりました。現在勤めている職場の上司の仕事への姿勢がすばらしく、感銘を受けています。
双葉町には、お一人で住んでいる高齢の方や、「故郷で最期を迎えたい」と強い想いを語る方もいらっしゃいます。お話をしていると、その想いに寄り添えるよう頑張りたいと力が湧いてきますね。
――ご主人は双葉町での暮らしをどう感じていますか?
優希さん 「想いやエネルギーをもった人との出会いが、双葉町に移住して一番よかったこと」だと話していました。最近のタイムリーな出会いは、福島浜通りシネマプロジェクトを運営する方たち。双葉町を舞台にした映画が作られ、長女と長男が出演させてもらいました。移住しなければできなかった経験だろうと思います。「子どもも一緒だからこそ親としての責任もともなうし、移住を決断するには勇気も必要だったけれど、飛び込む価値があった」と、1年半の暮らしを経て夫婦ともども感じています。

――最後に、双葉町や福島県への移住を検討している方に向けてメッセージをお願いします。
蒔千さん 正直、引っ越しや転校をすると決まった頃はいやだなあと思う気持ちもありました。でも、双葉町に来てからは、周りの大人の人たちがみんなやさしいし、町内でのイベントもめっちゃ楽しいから、今は来てよかったなと思っています。
優希さん 移住してきたとき、双葉町の皆さんは私たちを温かく受け入れてくれました。今度は私たちが、新しく来てくださる方を温かく迎えたいと思います。
2028年4月には双葉町に新しく学校ができる予定で、家族みんなですごく楽しみにしています。子どもの数も、これから少しずつ増えていったらうれしいですね。子どもたちの成長をみんなで見守っていけたらと思います。
■綾部優希さん・蒔千 さん
優希さんは宮城県出身。 結婚後は神奈川県で暮らし、2024年10月に家族で双葉町へ移住。小学生2人、未就学児2人の4人きょうだいを育てる6人家族。現在は訪問介護の仕事に就きながら、地域に根ざした暮らしを送っている。
※内容は取材当時のものです
文・写真:蒔田志保