事業紹介

人も技術も大切に。社員に寄り添う働き方を実現した会社から誕生した「ひなた工房 双葉」

2025年11月20日
双葉町

(右)宮下靖さん

フレックスジャパン株式会社 常務取締役
1968年生まれ。長野県出身。大学卒業後、1992年にフレックスジャパン株式会社入社(本社:長野県)。営業、商品企画、マーケティングなどを歴任。2018年より常務取締役、2022年からは採用担当も兼任。ひなた工房の立ち上げを担当し、現在も4カ月に1度のペースで双葉町の工房へ通う。

(左)田中洋平さん

ひなた工房 福島双葉 責任者
1982年生まれ。長崎県出身。2015年にフレックスジャパンへ入社し、熊本の天草縫製工場で勤務。ひなた工房のオープンに合わせて2023年に大熊町へ移住。


大切な服のリメイクやリフォームを通して、あたたかな日常のひとときに寄り添う「ひなた工房 双葉(以下、ひなた工房)」。約80年の歴史を持つ老舗シャツメーカー「フレックスジャパン株式会社」の福島拠点として、2023年に設立されました。社員は4名と少数精鋭ながらも、一人ひとりがものづくりと真摯に向き合い、いきいきと働いています。取材を通して見えてきたのは、「社員の声」を大切にすることで、働く人と技術を守る組織の在り方でした。

Q1. 一人ひとりが働きやすい環境づくりに力を入れられているのは、いつ頃からですか?理由とあわせて教えてください。

宮下さん:
当社は30年ほど前から、ライフスタイルの変化に合わせて雇用形態を整備してきました。縫製工場の技術職は、経験値が活きる仕事。個人の技としてだけでなく、会社としても技術を継承していくために、長く働ける仕組み作りを当時から進めてきました。

入社後に、結婚・出産・育児などライフステージが変わる可能性もあります。働きたいけれど時間に制約がある方、家庭に専念するため一度退職を希望される方もいます。そうしたなかでも、できる限りご本人やご家族の希望に寄り添えるよう努めてきました。

宮下さん。面談のために5時間かけて本社のある長野から双葉町まで通う

Q2. 働きやすさに関する具体的な取り組みや事例を教えてください。

宮下さん:
フレックスジャパン本社では、育休はここ8年ほど男女ともに取得率100%です。男性社員は毎年1〜2名が取得しており、1カ月ほどの休暇を取られる方が多いです。出産予定日に合わせて休みのスタートを決め、引き継ぎなどをチームで準備しています。

社員の提案から生まれた取り組みもあります。たとえば「週に1度、午前中だけリモートワークをする」といった柔軟な働き方を選んだ方もいました。ライフステージや技術に合わせて、パートタイム勤務からフルタイム勤務の正社員へステップアップされる方もいらっしゃいます。また、一度退職された方を再雇用するカムバック制度や介護休暇も活用されつつありますね。

一人ひとりの状況を把握し、相談しやすい体制づくりにも力を入れています。総務部の相談窓口のほか、働く中で感じたことを投函できる「意見箱」や、業務効率化などの改善案を出す「創意工夫提案」など、さまざまな形で声を届けてもらえるようにしています。

「意見箱」への相談は、希望があれば内容の開示範囲を総務部内又は個人のみに限定できるようにしており、安心して悩みを打ち明けてもらえる体制です。半期ごとの定期面談も実施しており、ひなた工房のみなさんについては、田中さんと私が一緒に面談を行っています。全社的にはできている取り組みも、まだひなた工房ではできていないこともあるのが実状です。面談を通して社員のみなさんに意見をいただき、少しずつ整えている最中です。

田中さん:
ひなた工房でも、話しやすい雰囲気づくりを心がけています。私が責任者ですが、新商品の企画会議はみんなで行っています。工房をどう良くしていくか、というテーマでもよく話し合っていますね。

本社や大きな工場に比べると、ひなた工房はつくり手の自由なアイデアを生かせる環境。社員それぞれのオリジナルアイテムも店舗に並んでいます。

ひなた工房の店舗にて、ご自身のオリジナル商品を誇らしげに手に取る田中さん

Q3. ひなた工房でパートタイムから社員登用された方について教えてください。

宮下さん:
パートタイムから正社員登用された方は2名います。どちらの方も縫製の専門経験はありませんでしたが、アパレル業の経験や裁縫の趣味があり、「挑戦したい」という意欲があったため採用しました。入社後は、技術を習得するスピードも早く社内の技術検定試験もクリアし、ご本人のタイミングで正社員に。今ではいっそういきいきと働いてくれています。

社員・Aさん:
子どもの成長とともに勤務時間を延ばせるようになり、正社員になりました。趣味でレザークラフトをしていましたが、縫製の仕事は初めて。技術検定をクリアできたときは、独学で学んできたことが認められたようで自信がつきました。自分の作った服を双葉町役場の方が「毎日着てるよ!」と言ってくださるのも嬉しくて。ここならではのやりがいです。

社員・Bさん:
ものづくりが好きで、ひなた工房で働きたいと思い入社しました。シャツの採寸をしたり、思い描いたものをミシンで縫ったり、一つひとつの作業が好きなんです。なので、パートから正社員になっても変わらず、毎日が楽しいです。

ひなた工房の店舗にはオリジナルのリメイクアイテムがずらり。

宮下さん:
実は今日の午前中、双葉町役場でオーダーシャツの受注会があったんです。本社から助っ人社員が来ていたのですが、2人の活躍があまりに頼もしくて、本社メンバーが手持ち無沙汰になるほどでした。入社当初から率先して動いてくれていましたが、正社員になってからはより一層仕事に熱が入っていますね。

Q4. ひなた工房は、これからどんな職場を目指していますか?

宮下さん:
地域の方が愛着を持って訪れてくれるような、地域密着型の工房を目指しています。そのため、地元や新卒の方の採用に力を入れたり、学校との連携も進めています。ゆくゆくは20名ほどの規模に成長できたらと思っています。ひなた工房への就職をきっかけに、移住してくださる方がいらっしゃることも嬉しいです。

とはいえ、技術習得には時間も人手も必要です。今は少数精鋭の工房だからこそ、大量採用はせず、一人ひとりを丁寧に育てながら仲間を増やしていきたいですね。

看板商品の一つ「お絵描き刺繍」。お子さまの絵をハンカチやレザーチャームなどに仕立て思い出をつむぐ

Q5. 福島12市町村への移住や就職を検討している方へメッセージをお願いします。

田中さん:
僕はもともと引っ越し慣れしていたこともありますが(笑)、縁のなかった土地でも地域のイベントに参加するうちに思いのほかすぐに友達ができて、楽しい日々を送っています。確かな技術を持つ仲間とオリジナリティあふれる商品づくりができるのも嬉しいです。当初は2年で異動予定でしたが、ここでの暮らしと仕事が楽しく、今では「このまま残りたい」と思うほど気に入っています。

宮下さん:
双葉町をはじめ、福島12市町村では住宅の確保など課題もあります。無理なく働いていただくためにも、会社として生活面からもサポートしています。ひなた工房の仕事に興味を持っていただけたら、ぜひご相談ください。役場の方々をはじめ、暮らしを支える環境が整っていますよ。

▼「ひなた工房 双葉」の詳しい事業内容はこちら
https://mirai-work.life/magazine/8235/

▼「ひなた工房 双葉」の求人情報はこちら
https://arwrk.net/recruit/flexjapan-fukushima


【会社情報】
企業名:フレックスジャパン株式会社 ひなた工房 双葉
代表者:代表取締役 矢島隆生
事業内容:縫製業
所在地:〒979-0401 福島県双葉郡双葉町中野舘ノ内35-1
URL:https://www.flexjapan.co.jp/site/hinata_koubou

(2025年10月取材)

取材・文:蒔田志保 / 撮影:古関マナミ