起業型地域おこし協力隊

Overview

「地方移住に興味がある」「いつかは自分で起業したい」と考える方におすすめしたいのが、起業型地域おこし協力隊(以下、起業型協力隊)という働き方。自治体から与えられた業務を遂行する一般的な地域おこし協力隊と異なり、自分でビジネスをつくって地域を盛り上げていきます。

チャレンジできる領域のたくさんある福島12市町村。いきなり起業するのは難しくても、地域おこし協力隊として生活のサポートを受けながら準備できるのが、起業型協力隊の魅力。ここでは起業型協力隊の特性やサポート内容、応募条件などを解説します。あわせて、福島12市町村で実際に活動している隊員の起業事例も紹介します。

起業型地域おこし協力隊
南相馬市の起業型地域おこし協力隊「Next Commons Lab南相馬」

ミッションは起業!起業型地域おこし協力隊とは

まだあまり聞かない起業型協力隊。一般に知られている「地域おこし協力隊」とは、どのように異なるのでしょうか。

地域おこし協力隊は、都市部から過疎化や高齢化が進む地方への移住・定住を目的とした、政府の地方活性化支援制度。観光PRや農林水産業への従事など、自治体から依頼された業務に取り組むミッション型が一般的で、具体的な活動内容は自治体によってさまざまです。

起業型協力隊も地域おこし協力隊のスタイルの一種で、地域で事業を起こして活動するスタイルの協力隊です。特定の業務があるわけではなく、自らのアイデアで地域活性化につながるような事業をつくり、その地域で新たなビジネス創出を目指すのが起業型協力隊の大きな特徴です。まだ活用事例は多くはなく、すべての自治体で起業型協力隊を募集しているわけではありません。

起業を目指しながら、他のスタイルの協力隊と同様に、地域おこし協力隊としての支援が受けられます。さらに起業に特化した支援も受けられます。地域おこし協力隊の大多数は、市役所職員のような地方公務員としての雇用形態を取ります。一方の起業型協力隊は、多くの場合、地方自治体に対して個人事業主として関わるか、業務委託という形で雇用関係を結ぶことになります。そのため活動内容の自由度が高く、副業をしても問題ないことが一般的です。

Artvivaプロジェクト
南相馬市の起業型協力隊の活動の様子。佐藤太亮さんが立ち上げた酒造会社「haccoba -Craft Sake Brewery-」の皆さん
Horse Value「小高うまさんぽ」
神瑛一郎さんによる一般社団法人Horse Value「小高うまさんぽ」

起業型地域おこし協力隊のメリットとは?

起業型協力隊というスタイルは、基本的に自由な事業を行えます。しかし、何をしてもいいということではありません。協力隊本人のチャレンジしたいことと地域のニーズが合致していることが条件となります。つまり、起業したいと考えている人にも、それを受け入れる地方自治体にもメリットがある形となっているのです。

起業したい人が起業型協力隊になる具体的なメリットは、以下のようなものが挙げられます。

起業型協力隊になるメリット

  • 支援金を受けながら起業準備ができる
  • 起業の準備段階から地域とのつながりをつくれる
  • 専門家から企業サポートを受けられる
  • 任期終了後も支援金をもらえる場合がある

もっとも大きなメリットは、国からの支援金を受けながら起業準備ができる点ではないでしょうか。通常の起業と比べると、一定の収入がある状態で起業に専念できることは精神的にも金銭的にも余裕が生まれるはずです。

さらに、地域に入り込んで起業準備ができるので、先々、事業のお客さまや連携先となっていく地域の住民や企業と、事業開始前からつながりをつくる機会を持てることも特長です。

住宅支援を受けられる場合も多く、都市部で暮らしながら起業するより生活コストを抑えられます。加えて、任期終了後1年以内の起業または事業承継のために、国から100万円までの支援を受けられる可能性があります。自治体や実施年度によって異なるので、応募を考えている自治体の要綱にはしっかりと目を通してみてください。

南相馬市の協力隊活動報告
南相馬市の協力隊活動報告。起業を目指す仲間とのつながりが持てるのも起業型協力隊の魅力です

どんなサポートが得られるの?

起業型協力隊が得られるサポートは自治体によって様々ですが、主に以下のようなものがあります。

  • 給与
  • 活動費(経費)
  • 事業用事務所の貸与
  • 地域での生活相談
  • 専門家への事業相談
  • 地域とのつながりづくり
  • 地域おこし協力隊サポートデスク

また、福島12市町村では以下のような移住支援や起業支援制度も用意しています

福島県12市町村移住支援金制度

福島県外からの移住者に最大200万円(単身者は120万円)の補助金を支給する制度です。直近3年以上を福島県外で過ごしていた人であれば福島県出身者でも受けられる場合があります。
詳細はこちらをご覧ください。

福島県12市町村起業支援金

起業にかかった経費の4分の3以内を最大400万円補助する制度です。これは全国トップクラスの支援金額となっています。対象となる経費は、人件費や設備費、原材料費、旅費、広報費などさまざまです。
詳細はこちらをご覧ください。

AREA

現在募集中の地域はこちらです。

Qualification

基本的には3大都市圏の都市地域および政令指定都市に住んでいる人が、応募地に住民票を移すことが起業型協力隊の共通の応募用件です。ただし、3大都市圏外の都市地域も対象となるなど、地域や募集内容によって異なることがあります。

起業の業種は、分野指定する場合もありますが、多くの地域では自由です。その他の要件も含め、地域別の募集要項を読んだり説明会に参加したりして確認してみてください。

活動のイメージ

起業型協力隊の任期は最大3年間。その間に地域で関係構築し、スモールスタートさせながら事業継続の可能性を図っていきます。

活動スケジュールの例

  1. 1年目

    地域を知り、事業を描く

    引っ越したら、まずは地域になじむところから。地域を知り、関係づくりからスタートします。そこから見えてきた地域や自らの資源を組み合わせ、事業のたたき台の作成。仮説検証を繰り返しながら、2年目以降の実施計画を立てます。

  2. 2年目

    本格スタート!

    1年目を振り返りながら、本格的に事業開発を開始します。法人化するのも多くはこのタイミング。事業に必要な資源をもつ地域の方、生産者とのつながりを大切にしながら実証実験を進めていきます。

  3. 3年目

    自立に向けて総仕上げ

    いよいよ最終年。事業継続が可能か、見直すべきところはどこかなど、卒隊後を意識して事業計画を立てて動かしていきます。卒隊後の住まいや活動拠点を見つけたり、具体的な活動をイメージしながら残りの時間を過ごします。

EXAMPLE

ここでは、福島県南相馬市の起業型協力隊として実際に活動された事例を紹介します。
また、福島県田村市でも、三代都市圏内と政令指定都市から起業型協力隊の受け入れを進めています。地域との接続支援や専門家からの起業サポートが受けられるため、起業が初めての方でも安心です。

  1. 事例1

    エンジニアがITで地域を活性化

    都内在住のエンジニアの方が、Next Commons Lab南相馬の求人を見て起業型協力隊に参加した事例です。現在、自治体個別のネットワークであるローカル5Gの導入を進めており、ITで地方活性化を図ろうと邁進しています。

  2. 事例2

    東京からUターンでデザイン事務所を創業

    都内でデザイナーとして活躍していた方が、デザイン事務所を立ち上げ。地元である福島でデザインをいかした仕事をしたいと考えるなか、Next Commons Lab南相馬の存在を知り、移住を決意。最初の2年は個人のデザイン業と並行しながら移住促進や支援コーディネーターを勤め、残り1年で起業してデザイン事務所を立ち上げました。現在抱えている仕事のほとんどが地域での案件だといいます。

  3. 事例3

    異業種から転身酒造事業を立ち上げ

    都内にあるIT関連企業で働いていた方が、起業型協力隊として夫婦で移住し、地酒づくりをスタート。もともと日本酒文化に興味があり、「ゼロから暮らしや文化をつくっていけるフロンティアなまち」である南相馬市で酒造事業を立ち上げることにしたといいます。地元の方々からもあたたかく迎え入れられているそうです。

  4. 事例4

    馬術を活かして乗馬を軸とした事業を

    国の重要無形民俗文化財「相馬野馬追」のある南相馬市で、乗馬を楽しめる事業を開始。馬術競技で日本一になったキャリアを活かし、馬を活用した事業を行う法人を立ち上げようと都内から移住。今は、乗馬を軸とした複合施設づくりや企業向けサービスづくりなどで南相馬市への貢献を図っています。

MAGAZINE

FAQ

応募前に地域のことを知るにはどうしたらいいでしょうか?

オンライン説明会や体験ツアーなどに参加してみてください。

各市町村や福島県、ふくしま12市町村移住支援センター等の主催で、オンライン説明会や移住体験ツアーなどのイベントが開催されています。また移住検討段階から使える交通費等補助などの制度もあるので、オンラインでの情報収集と現地視察を組み合わせて、地域のことや先輩起業家に会う機会をつくることがおすすめです。

・起業に関するイベントはこちら
・その他のイベントはこちら

地域の課題解決に直接むすびつかないと採用されませんか?

もっとも大事なのは「自分のやりたい」をかたちにすることです。

地域ごとに応募要件が異なるので、どのような事業でも採用されるとは限りません。地域課題を解決したり、地域資源をうまく活用したりすることも大事ですが、事業を継続させるうえでもっとも大切なのは「自分がやりたい」「チャレンジしてみたい」と思う業種で起業することです。

地域住民や先輩起業家とのつながりはどうやってつくればいいですか?

移住者をあたたかく受け入れる地域。自治体サポートもあります。

福島12市町村には、避難指示によりまちを離れた経験を持つ方が多くいらっしゃることから、移住者や地域活性に取り組む方々を歓迎する地域性があります。また各市町村や、協力隊事業を委託された中間支援組織が、地域の方や先輩起業家とのつながりをサポートします。移住者が集うコワーキングスペースなどを利用するのもおすすめです。