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福島12市町村での副業を経て次のチャレンジを目指す「フクシマックス」決起会

2024年4月16日
  • 起業・開業
  • 地域イベント

東日本大震災で福島第一原子力発電所の事故により避難指示等の対象となった福島12市町村は、課題先進地域として非常にチャレンジングな場所です。

福島相双復興推進機構が主催する「フクシマックス」は、浜通り地域を中心とする福島12市町村で、ビジネスを通した社会課題の解決に取り組む企業に副業として関わりながら、ご自身のやりたいことやアイディアを形にしていくプログラムです。今回は当プログラムの決起会の様子をご紹介します。

フクシマックスの詳細はこちら
https://yosomon.jp/fukushimax

プログラムの運営を担う 特定非営利活動法人エティックの伊藤さん

3月23日に行われたフクシマックス参加者による「決起会」

フクシマックスは、参加者が福島12市町村に通いながら地元企業の経営者の右腕として協働することから始まります。その後、参加者自身の事業プランの精度を上げるためのフィールドワーク、メンタリングなどを経て決起会を迎えます。今回は当プログラム2期目の2023年度参加者のうち3名の発表の様子をご紹介します。

「報告会」ではなく「決起会」である点がポイント。これまでの取り組みがこの日で終わるのではなく、今後も福島12市町村に関わって、起業や開業などやりたいことを実現してもらうという意味を込めています。会場参加者からは発表者へ向けて「全力応援」という掛け声とともにエールが送られました。

それぞれの発表者はプレゼンの中で、これまでの取り組みや、会場参加者に求めるアイディアなどを伝えました。プレゼンが終わった後は、会場参加者全員が各発表者のもとに集まりブレストを行うなど活気に満ちた決起会となりました。

浜通りで食ビジネスにチャレンジする人をサポートしたい

1人目の発表者は、フードビジネスの仕事をしながら、信州大学の客員研究員としても活動する大野さん。元々飲食店の経営をしていた大野さんですが、東日本大震災やコロナ禍をきっかけに、ご自身のお店の経営だけではなく、別の形でも飲食に関われないかと思い、現在の仕事を始めたと言います。現在は生活の拠点を東京に、仕事の拠点を長野に置いていますが、自分の仕事の幅を広げたいと思っていたときにフクシマックスのプログラムを知って参加を決めたそうです。

大野さんが関わった協働プロジェクトは一般社団法人 東の食の会 による「福島県水産物売上倍増計画」です。水産加工業者の、商品リブランディングや、販路開拓を通して、販売強化に取り組みました。

今後、大野さんご自身が取り組みたいことのひとつは「浜通りで食事業にチャレンジする方のサポート」です。フィールドワークにおいて、地域の若い人たちがお店の開業や新商品開発に取り組むものの苦戦していることを知り、サポートをしたいと思ったそうです。

最後に、大野さんは会場参加者に以下2点のアドバイスを求めました。
・大野さんが持っている構想を具体的にどうやってマネタイズするか
・分かりやすいネーミングがあるか

発表後、大野さんと共に協働プロジェクトの取組を行った 一般社団法人NoMAラボ代表理事 高橋大就 氏は次のようにコメントしました。
この地域で食の話をすると、必ず「風評払拭」の話が出てくるが、マイナスをゼロにするだけでは、買って食べたいと思う動機にはならない。食の生産者が届けたい「美味しさ」を届けることが売る側の責任。大野さんは、被災地だからという視点ではなく「美味しいかどうか」をフラットに見てくれて嬉しかった。「この地域を一番の食のブランド地域にすること」をこれからも一緒にやっていきたい。

印象UPで売上UP!お店のレイアウトや接客指導などのサポート

続いての発表者は、アパレル業界にて店長やスーパーバイザーとして、店舗運営や接客指導などの経験を持つ古舘さんです。南相馬市に住んでいた経験があることや、知人が1期目のフクシマックスに参加していたことで興味を持ち、ご自身も参加を決めたそうです。

古舘さんが関わった協働プロジェクトは株式会社バトンの「業務改善プロジェクト」。社内ツールの整備や各種ガイドラインの制定などに取り組みました。古舘さんは取り組みを通して、チームのメンバーと「目標」や「本質的な課題」の認識を合わせることの大切さを学んだと言います。また、株式会社バトンのメンバーの第一印象が良かったことで緊張がほぐれ、プロジェクトをスムーズに進めることができたそうです。

今後、古舘さんご自身が取り組みたいことは「お客様とのコミュニケーションを中心としたお店のレイアウトや接客指導のサポート」です。すでに、カフェの販売スペースのレイアウト変更サポートを実際に行っており、照明や商品配置の工夫などを行い、商品を手に取ってもらえるようになったという声をもらっているそうです。

最後に、古舘さんは会場参加者に以下2点のアドバイスを求めました。
・古舘さんが考えているサービスの顧客はどこにいるか
・第一印象が良くないことを課題だと感じてもらうにはどうしたらいいか

発表後、メンターの一般社団法人TATAKIAGE Japan 小野寺孝晃 氏は次のようにコメントしました。地域の中には、店舗のレイアウトに関して課題を抱えていたり、改善余地がある店舗が多く存在する印象がある。現在古舘さんはオンラインでコンサルテーションを行っており、広域でサポート出来る可能性があるので、ぜひ取り組みを続けて欲しい。また、古舘さんは接客に関するコンサルテーションも得意なので、ぜひその強みも活かして欲しい。

生活の中の「面倒」を解決する商品を、浜通りから広めたい

3人目の発表者は、コンピュータエンジニアのわたなべさんです。わたなべさんは人生を25年区切りで考えており、最初の25年は「勉強」、次の25年は「仕事」、そして現在次の25年目に入り「次の世代を育てる」ことにチャレンジしているそうです。現在、お住まいの滋賀県で小中学生向けに理科・算数・ロボットなどを学べるフリースクールを運営しています。知り合いの方がフクシマックスの1期生として参加しており、楽しく取り組んでいることを知ったことで、縁を感じて参加を決めたと言います。

わたなべさんは、協働プロジェクトのマッチングを目的にした「縁会」で色々な方と話をする中で、「無料サービスが必ずしもベストではない」ということに気が付いたと言います。サービスの品質や継続性の観点から、一定の料金をもらったほうが消費者にとっても良いということを考えさせられたそうです。縁会の中では3つの案件相談をいただき、そのうちのひとつが、復興していく大熊町の様子を写真で残したいという要望から生まれた、Googleマップ上に写真を保存できるシステム「おおくまっぷ」の作成です。

今後、わたなべさんご自身が取り組みたいことは、「滋賀でご自身が行っているスクールを福島12市町村でもやる」こと。運営を継続していけるように有料にしつつも、参加者の立場や状況に合わせて料金設定をしていこうと考えているそうです。

最後に、わたなべさんは会場参加者に以下の意見を求めました
・生活の中で面倒だと感じるものはあるか
・その悩みを解決する商品を作りたいので商品名のアイディアが欲しい

発表後、わたなべさんと共に協働プロジェクトの取組を行った おおくままちづくり公社 山崎大輔 氏は次のようにコメントしました。移住を促進していくには、この地域に来ていただくための余白が必要。そのために首都圏からの副業人材を積極的に受け入れたいと思っている。町の中には企画力のあるゼネラリストの方は多いが、専門性の高いスキルを持つ方が少ない印象。企画はあるが具体化していないものが無数にある。わたなべさんがやりたいことと、地域が求めていることの相性がいいので、今後も応援していきたい。

発表終了後

発表終了後は会場参加者を交えて、各発表者が求める意見やアイディアについてブレストが行われました。多くの意見が出たことで発表者の新たな気付きに繋がったようです。

今回の「フクシマックス」をはじめ、福島12市町村では自分のやりたいことにチャレンジするプログラムや制度などが数多くあります。やりたいことを実現するための新たな一歩として、ぜひ福島12市町村に足を運んでみてください。

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※内容は取材当時のものです
文・写真:ふくしま12市町村移住支援センター