生活・その他

【遠方通学のモデルケース】飯舘村から県立川俣高校へ通学する場合

2024年3月14日
飯舘村
  • 子育て

福島12市町村のうち、2024年度時点で高等学校がある*のは、南相馬市、田村市、川俣町、広野町の4つの町村です。残る8つの町村で暮らしていたり、他の市や町にある特色のある進学先を選ぶ高校生たちは、家族のサポートを受けながら、それぞれの通学方法で学校生活を送っています。そのなかから、飯舘村在住で隣町の川俣町にある県立川俣高校(以下、川俣高校)に通う大谷(おおがい夢翔(ゆめとさんの通学モデルケースをご紹介します。
*=県立浪江高校及び浪江高校津島分校、県立双葉高校、県立双葉翔陽高校、県立富岡高校は休校中

祖父のサポートのもと片道約20分のバス通学

東日本大震災が発生したのは夢翔さんが3歳のとき。夢翔さんは当時飯舘村に住んでいましたが、福島第一原子力発電所の事故の影響で飯舘村は全村避難となり、一家で福島市に避難しました。夢翔さんには飯舘村で暮らした頃の記憶はありませんでしたが、避難指示の解除後は家族と共に自宅の様子を見に行くことも多かったといいます。

2023年、家族は飯舘村への帰還を決断。夢翔さんは飯舘村から最も近い距離にある川俣高校に入学し、飯舘村から通学する高校生活がスタートしました。

学校がある日の夢翔さんの1日は、以下のようなスケジュールで進んでいきます。

川俣高校までバスで通学する夢翔さん。最寄りのバス停までは車で10分ほどの距離があり、毎朝祖父が送ってくれるとのこと。7:40のバスに乗り、川俣高校前バス停までは約20分の道のりです。「退屈することもなく、スマホを見ているうちにあっという間に着いてしまいます」と夢翔さん。悪天候の日などは通常より乗客が増えることもあるそうですが、座れないほどの混雑にはならないそうです。

バス料金は、飯舘村役場バス停-川俣高校前バス停間の場合で通学定期が1ヵ月2万520円となっています。3ヵ月分まとめて購入すれば5万8,480円、6ヵ月分なら11万810円と割安になります。1回乗車の場合は片道740円です。

なお、飯舘村には、村内から高等学校などに通学する生徒に対して通学費を貸付ける制度があります。生徒の在学期間に応じ、貸付けた通学費の全額の返還が免除されます。

飯舘村高等学校等通学費等貸付要綱はこちら
https://www1.g-reiki.net/vill.iitate/reiki_honbun/c591RG00000733.html

放課後のスポーツクラブに参加してもバス帰宅可能

2023年度の川俣高校の生徒数はおよそ50名。1年生と2年生が1年間かけて川俣町のPR動画を作る活動や、「総合的な探究の時間」の農業体験で自分たちが作った野菜を材料に料理を作る収穫祭などが楽しい時間だと夢翔さんは言います。

授業が終わるのは15:20。その後、掃除などを終えてバス停へ。バス停の目の前にあるコンビニで時間をつぶすなどして、15:50発のバスが来るのを待ちます。夢翔さんは部活動には所属していませんが、川俣高校にはすべての生徒がいつでも参加できる「スポーツクラブ」という活動が放課後にあり、夢翔さんも参加することがあるそうです。

スポーツクラブは、バレーボールやバスケットボール、バドミントン、テニスなど、生徒同士が話し合って曜日ごとに行うスポーツを決める、川俣高校独自の活動。夢翔さんは、テニスの日である木曜日によく参加するのだとか。このスポーツクラブに参加する日でも、いつもより1時間遅い16:55のバスに乗れば、夕方までには帰宅できます。

最寄りのバス停に着いたら、帰宅の時間に合わせて迎えに来た祖父の車で帰宅。晩ご飯になるまでは自分の部屋で過ごし、19時頃にご飯を食べたら日課となっている犬の散歩へ出かけます。帰宅後は部屋で宿題やゲームなどをして過ごし、1日が終わります。

移住先を検討の際は通学事情もチェックして

飯舘村に戻ってまもなく1年となる夢翔さん。飯舘での生活を「田舎なので建物もお店も少ないですが、そんな静かな環境が好き」と言います。週末に食料品などの買い出しのために家族で福島市まで車で外出することも楽しみの一つ。福島市までは片道1時間ほどで到着します。

高校の先の進路は「まだ具体的に考えていない」という夢翔さんですが、音楽が好きだそうで、「音楽に関連した仕事をやってみたい」と将来の夢を語ってくれました。

高校がない町村からの高校への通学は、夢翔さんのように家族のサポートを受けながらのケースが多いようです。ただ、夢翔さんのように30分ほどで通学できるなど、住んでいる町村内に高校がない場合でも十分に通学可能なケースはたくさんあります。

ご家族での移住を検討される際は、こうした通学事情もチェックしたうえで具体的な移住先を検討されることをおすすめします。

市町村ごとの高校進学事情はこちらの記事でもご紹介しています。
▽田村市、広野町、楢葉町、富岡町、大熊町、川内村
https://mirai-work.life/magazine/7977/
▽南相馬市、浪江町、葛尾村、飯舘村、川俣町、双葉町
https://mirai-work.life/magazine/8071/

福島12市町村の子育て特集ページはこちら
https://mirai-work.life/childcare/

※所属や内容は取材当時のものです。
取材・文:髙橋晃浩