生活・その他

ふくしま12市町村の高校進学事情は?(前編)

2023年10月24日
  • 子育て

子どもと一緒に移住する際に頭に入れておきたいのが、中学卒業後の進学先です。福島12市町村には高校がない市町村もあり、公共交通機関などを利用した遠距離通学になるケースが多くあります。この記事では、田村市、広野町、楢葉町、富岡町、大熊町、川内村の高校進学事情についてご紹介します。公共交通機関の情報や通学費の補助制度もご紹介していますので、ぜひ進路先の選択肢を知るヒントにしてください。

※内容は特別支援学校を含まない、全日制の普通学校への進学を前提にしています。

目次

【田村市】磐越東線の駅が6つあり通学も便利

田村市内には郡山市といわき市をつなぐ磐越東線が通っており、市内に6つの駅があるため市外の高校にも通学しやすい環境です。平日は郡山方面に14本、いわき方面は15本運行しています。

市内には船引高校(普通科)があります。船引高校は2026年に、隣町にある小野高校と現在の校舎で統合する予定です。田村市と郡山市の間に位置する三春町には田村高校(普通科、スポーツ科)があり、磐越東線か、エリアによっては自転車での通学も可能です。

田村市内の中学校を卒業した生徒の半数は、福島県内で最多規模の人口を有する郡山市に通学しています。郡山市にある高校は、公立・私立合わせて13校。船引駅から郡山駅までは約30分で到着します。郡山駅からは自転車やバス等で通学するケースが多く、部活動も積極的に参加できます。また、郡山駅前には進学塾も多くあり、本格的に大学進学を希望する生徒は郡山方面に通学するパターンが多いでしょう。

また、先進的な理数系教育に取り組む「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」に指定されている郡山市の安積 (あさか)高校(普通科)は2025年度から中高一貫校になる予定で、中学受験も視野に入れることができます。

【広野町】ふたば未来学園が立地。いわき市への通学も多い

広野町には中高一貫のふたば未来学園(総合学科)があります。大学進学希望者、実業系、スポーツ系と3つのコースに分かれており、地域企業との連携や国際交流を取り入れた教育が行われています。町内では、中学受験をして高校までふたば未来学園に通う生徒も多いそうです。また、寮があるため遠方の町外から入学する生徒もいます。

そのほかの生徒は、隣のいわき市に通学するケースが目立つとのこと。いわき市には県立13校、私立4校、高校1年次からの5年制で技術系を中心とした専門教育を受けられる国立の福島工業高等専門学校もあります。

町内には特急ひたちも停車する常磐線の広野駅があり、平日は上り19本、下りは14本運行しています。広野駅からいわき駅までは約20分。いわき市内にはいわき駅より北に4駅、いわき駅より南に5駅あるため電車通学しやすい環境です。

また、いわき市には私立の中高一貫校もあります。磐城緑蔭中学校・高等学校(普通科)、東日本国際大学附属昌平中学・高等学校(特別進学科、普通科、体育科)の2校があり、通学圏内であれば中学受験も選択肢に入るでしょう。小中高一貫校の私立いわき秀英学園(普通科)もあります。

【楢葉町】町内からの通学費は全額助成

楢葉町内に高校はありませんので、生徒の半分は隣接する広野町のふたば未来学園に通学し、半分はいわき市へ通学しているそうです。町内には常磐線の駅が3つあり、町内で最も北側の竜田駅からふたば未来学園の最寄り駅となる広野駅までは約10分、いわき駅までは約30分です。平日は1時間に1本程度、上下線11本ずつ運行しています。
※いわき市の学校情報は【広野町】の項目でご確認ください。

通学支援制度があり、町内からの通学にかかる定期券購入費は全額町から補助してもらえます。

【富岡町】ふたば未来学園やいわき市への通学が多い

2023年現在、富岡町内で開校している高校はありません。高校の進路としては広野町のふたば未来学園やいわき市を選択する生徒が多いそうです。平日の富岡駅には、常磐線と特急ひたち合わせて上下線で14本ずつ停車します。夜ノ森駅は常磐線各駅停車のみ上下線11本ずつ停まります。ふたば未来学園の最寄りとなる広野駅には常磐線では15分~20分ほどいわき駅には35~45分ほどの距離です。
※いわき市の学校情報は【広野町】の項目でご確認ください。

【大熊町】南相馬市~いわき市が通学圏。通学費助成あり

2023年現在、大熊町内で開校している高校はありません。常磐線と特急ひたちが停車する大野駅からの通学圏は、南相馬市、広野町、いわき市が挙げられます。町内からの通学費は全額町が助成してくれるため、遠方通学も安心です。

大野駅には平日、上下線ともに14本(うち3本が特急ひたち)が停車します。南相馬市の原町高校(普通科)と相馬農業高校の最寄り駅・原ノ町駅には約30分、小高産業技術高校がある小高駅には18分の距離です。また、ふたば未来学園の最寄りとなる広野駅には25分ほど、いわき駅には常磐線で約50分、特急ひたちで40分ほどかかります。
※いわき市の学校情報は【広野町】の項目で、南相馬市の学校情報は【後編】でご確認ください。

【川内村】通学費補助制度はバス通学や寮・下宿も対象

川内村に高校はなく、公共交通機関は路線バスのみです。自宅から通う場合は、隣接する田村市の船引高校か、小野町の小野高校(総合学科)への進学を選択するケースが多いのだそう。船引高校には平日は上下線で4本ずつバスが出ており、川内村役場前から船引高校までは1時間10分ほどの距離。小野高校は平日のみ上下線3本ずつバスが出ており、川内村役場前から50分ほどです。小野高校は、2026年に船引高校の校舎で統合されます。

その他の進学先としては、ふたば未来学園の寮に入る、郡山市・いわき市・南相馬市で下宿や一人暮らしを選択する、などのパターンがあるそうです。

村では遠距離通学をする高校生に対し、通学費として1ヵ月あたり3万円まで助成する補助金を用意しています。バス通学のほか、寮や下宿などの諸経費も対象になります。

まとめ

福島12市町村では高校進学の選択肢が広域になりますが、鉄道やバス等を利用して自宅から通学することも可能ですし、地域によっては支援制度をうまく利用することで家計の負担なく遠距離通学ができます。ふたば未来学園やいわき市方面への進学を考えれば、小学校・中学校から受験に臨み特色のある一貫教育を受ける選択肢もあるでしょう。

子どもの進路は、希望する移住先だけではなく近隣市町村の進学事情も参考にしながらイメージしておくことをおすすめします。

※内容や支援制度は取材当時のものです。
取材:片倉菜々 文:五十嵐秋音 写真:鈴木宇宙