生活・その他

ふくしま12市町村の高校進学事情は?(後編)

2023年11月10日

子どもと一緒に移住する時には、教育環境も気になるところ。福島12市町村では、高校がない市町村もあり、遠距離通学や下宿の選択をする生徒も少なくありません。今回の記事では、南相馬市、川俣町、浪江町、飯舘村、葛尾村、双葉町の高校通学事情についてまとめました。通学や下宿にかかる費用の補助制度なども紹介していますので、進路選びにお役立てください。

【前編】では、田村市、広野町、楢葉町、富岡町、大熊町、川内村にある高校や、各市町村の進学事情をまとめています。

※内容は特別支援学校を含まない、全日制の普通学校への進学を前提にしています。

目次

【南相馬市】専門科のある県立高校の選択肢が豊富

南相馬市には3つの県立高校があります。中心部の原町区には、普通科の原町高校、相馬農業高校があります。市内で暮らし、大学進学を目指す生徒は原町高校に通うことが多いそうです。相馬農業高校では農業や食品について専門的に学べるため、将来は飲食業や農林畜産業の仕事を目指す生徒が通います。

小高区にある小高産業技術高校は、工業科と商業科が一体となった学校です。専門知識を身につけ経験を積める環境が整っており、電気工事士免許や簿記資格の取得が可能です。卒業後の進路は就職と進学が約半分ずつとなっています。

生徒は自転車や常磐線を使って通学しています。市内には5つの駅があり、原町高校と相馬農業高校の最寄り駅は原ノ町駅、小高産業技術高校の最寄り駅は小高駅です。

常磐線のすべての普通列車は原ノ町駅で折り返します。平日の場合、原ノ町駅ーいわき駅間で運行する列車は上下線各14本、原ノ町駅ー仙台駅間で運行する列車は上下線各26本です(2023年10月現在、特急含む)。

原ノ町駅-小高駅間は2駅・所要時間は約10分ほどですが、原ノ町駅をまたいで普通列車で移動をする場合は、原ノ町駅で必ず乗り継ぐ必要があります。多くの生徒が利用する8時台・16時台の乗り継ぎ時間は3分程度ですが、他の時間帯は20分から30分程度待ち時間がある場合もあります。

原町区と鹿島区に住んでいる生徒は、雨の日に両区で運行する定額タクシー「みなタク」を利用する生徒もいるそうです。運賃は自宅から600円または900円です。

市外へは、隣の相馬市にある相馬高校や相馬総合高校、広野町の中高一貫校・ふたば未来学園に進学する生徒もいます。相馬高校と相馬総合高校の最寄り駅は相馬駅で、原ノ町駅からは約20分。ふたば未来学園の最寄り駅である広野駅へは約1時間です。

中学卒業時点で希望の進路が明確な生徒は、仙台市の高等専門学校等への進学を選ぶ場合もあるそうです。原ノ町駅から仙台駅までは常磐線で約1時間20分、特急ひたちを使うと約1時間で到着します。高等専門学校へ通学する場合は公共交通機関の定期券購入の助成制度があり、自宅から学校までの距離に応じて月額最大1万2,000円の交通費補助を受けられます。

【浪江町】自宅からの通学費が全額補助

浪江町には2つの高校がありましたが、東日本大震災以降はいずれも休校中です。町内からは隣の南相馬市の高校や、広野町のふたば未来学園へ通う生徒が特に多いそうです。

浪江駅からは小高駅までが約10分、原ノ町駅までは約20分、広野駅までは約40分で通学できます。平日は上下線14本ずつ停車し、そのうち各3本が特急です。公共交通機関を使う場合は、定期乗車券等購入に充てられる「遠距離通学費助成」を受けることが可能です。夏休みなどの長期休暇を除き、通学費は全額補助されます。

【葛尾村】公共交通機関は路線バスのみ。下宿の選択も

葛尾村には高校がないため、生徒の多くは田村市の船引高校や三春町の田村高校に通学しています。部活動に参加する場合はバスの時間に間に合わない場合もあり、下宿をして通学する生徒もいるそうです。陸上競技や球技など、より力を入れて部活動に取り組みたい生徒はスポーツ科のある田村高校に通う傾向にあります。

葛尾村には鉄道がないため、自宅から通う場合は路線バスか、保護者の送迎で通学することになります。村には「生活路線バス運賃補助」があり、バスを利用する場合は定期券等の購入金額の半額を補助してもらえます。通学時間は船引高校まで片道45分、田村高校までは1時間程度で、平日は上下線各5本のバスが走っています。

【飯舘村】海岸部も中心部も選択肢。交通費や家賃の助成あり

2023年時点で飯舘村に開校している高校はありませんが、県庁所在地の福島市と海岸部の南相馬市の間に位置するため、希望する進路に合わせて福島市と南相馬市のどちらの高校も選べるのが特徴です。いずれも飯舘村からは車で40分程度の距離で、生徒たちはバスまたは保護者の送迎で通学。バスは福島駅前から南相馬市の原ノ町駅前をつなぐ福島交通の路線バスがあります。平日は上下線各6本が運行し、福島駅-飯舘村、飯舘村-原ノ町駅間の料金はいずれも片道1,100円です。

バスの定期券代や送迎にかかったガソリン代などの費用は、村から貸付金として月額1万5,000円~3万9,000円が受けられます。飯舘村立いいたて希望の里学園を卒業後、村外に下宿や一人暮らしをして高校に通う場合にも、月額4万円まで受け取ることが可能です。いずれも在学期間の貸付金は返還が免除されますので、実質補助金と同じ扱いとなります。

【川俣町】自宅から近隣3市への通学が可能

飯舘村よりさらに福島市寄りの川俣町。町内からは地元の川俣高校か福島市内の普通高校や実業高校に通うケースがほとんどだそうです。

川俣高校へは路線バスや自転車で通学する生徒もおり、地元ならではの通いやすさがありそうです。福島市内への通学はバスで片道約30分~40分かかります。バスはおよそ1時間に1本運行するJRバス東北の路線バスと、上下線各6本運行する福島交通の路線バスがあります。福島駅発の終バスは21:10発なので、バス通学でも遅い時間まで部活動に参加することが可能です。また、福島市内の私立・松韻学園福島高校は川俣町を経由する通学バスもあり、そちらを利用し通う生徒もいます。

また、少数ですが二本松市の安達高校、二本松実業高校、同校安達東校舎や、伊達市の伊達高校、私立聖光学院高校に通う生徒もいます。多くはバスや保護者の送迎で近くの駅まで行き、そこから鉄道に乗り換えて通学するそうです。学校によっては片道1時間半程度かかりますが、進路の選択肢は広がります。

【双葉町】常磐線での通学。下宿や寮生活も選択肢

2023年5月に町内での町立学校再開の検討が始められたばかりの双葉町。現在のところ、町内からの通学は常磐線の双葉駅から南相馬市方面に通学するか、広野町のふたば未来学園に通学することが現実的です。双葉駅には、平日は上下線ともに14本の電車が停車し、南相馬市の駅までは約25分、広野駅までは約30分です。進学先によっては、一人暮らしや下宿、寮生活も想定されます。

まとめ

福島12市町村には高校がない町村もあり、住む地域によって高校の選択肢に違いがあるのが現状です。遠方進学をサポートする制度を用意している町村もありますので、通学手段を工夫したり、寮や下宿、一人暮らしも視野に入れることで進路の選択肢は広がりそうです。

希望する進路やご家庭の状況に合わせて、納得できる学校選びができるかイメージしてみてはいかがでしょうか。

※内容や支援制度は取材当時のものです。
取材・文:蒔田志保