「地域と関わり、故郷を誇りに感じてほしい」。2つの小学校に見る川俣町の学校教育の充実度

少子化の影響を受け、公立小学校の統合・再編が全国で進んでいます。福島12市町村も例外ではありませんが、変化をプラスにとらえ特色ある学校運営を推進する市町村もあります。福島県川俣町もそんな町の一つです。町立川俣小学校と山木屋小学校を訪ね、地域の人や文化に根ざした教育の取り組みを取材しました。
教育支援が手厚く行き届いた町
川俣小学校は、川俣町の中心部を見下ろす高台にあります。2022年、旧川俣小学校・川俣南小学校・福田小学校・富田小学校・飯坂小学校の5校が統合・再編され、新たなスタートを切りました。全校児童は299名(12月1日現在)。近年の中山間地の小学校としては比較的規模の大きな学校です。児童のなかには、家族で川俣町へ移住した家庭の子どももいます。
再編により学区が広がったことで、町はスクールバスの運行体制を整備。12台のマイクロバスを導入し、通学の距離が2キロを超える児童は全員が無償でバス通学をしています。川俣小学校の佐々木信晴校長は、教育に対する町の取り組みについてこう語ります。

「川俣町は教育支援が手厚く行き届いた町です。スクールバスは、学年によってバラバラな下校時刻に配慮して運行されています。他の市町村の場合、バスの運行時間や台数の関係からうまく調整できず、それによって教育活動が窮屈になってしまうこともありますが、川俣町ではその心配はありません。スクールバスの運行は、登下校時の安全確保の面から見ても、保護者の皆さんの大きな安心材料となっているはずです。そのほか、給食の完全無償化、登下校の際の見守りシステムの構築など、子育て支援については手厚いです」
川俣町の子どもであることに誇りをもってほしい
川俣小学校では、再編を機に子ども達により深く町の魅力を知ってもらおうと、総合的な学習の時間を、川俣町の特産品や文化を知る探究の時間に取り組んでいます。
川俣町には、明治以降に町の発展を支えた絹織物や、町を代表する名産品である川俣シャモ、東日本大震災後に新たな産品として根付いたアンスリウム、50年の歴史をもつ日本最大級の中南米音楽の祭典「コスキン・エン・ハポン」など、特色ある特産物やイベントがたくさんあります。そうした特色のひとつひとつが、子ども達にとって有益な探究のテーマとなってきました。
川俣町の情報はこちらからもご覧いただけます。
>川俣町:豊かな自然と街の便利さを併せ持ったちょうどいい田舎暮らし
2025年度の4年生は、数年前から町内でブドウ作りに挑戦する生産者を訪ね、その取り組みに継続的に触れてきました。ある日の授業では、校内の多目的ホールに集まり、これまでの探究で得た想いをそれぞれに発表。生産者と話して感じたことや新しく知ったことを貼りだしたホワイトボードを囲み、先生の問いかけに手を挙げ、思い思いに発言します。

その後、自分や同級生の想いや発言を踏まえ、学んできたことをあらためて文字で表現していきます。ある子どもは一心不乱に、またある子どもは隣同士で相談しながら、町に新たな特産品を作ることの意味を自分なりに綴っていきます。

佐々木校長は、総合的な学習の時間の取り組みについてこう言います。
「地域の人たちと触れ合い育てていただく時間には、教員からも親からも得られない成長の種があると思っています。町の人とできるだけ多く関わり、その生きざまや人となりに触れ、なりわいを知ることをきっかけに、川俣町の子どもであること、川俣小学校の児童であることに誇りをもってもらえたらうれしいです。その結果、地域の人たちにとって誇るべき“わが町の学校”として認識していただけること。それが理想です」
ひとりひとりに寄り添う「通学区特認校」山木屋小学校
川俣町には1校だけ、川俣小学校の再編に組み込まれなかった町立小学校があります。福島第一原子力発電所の事故にともなう避難指示が出された山木屋地区にある山木屋小学校です。この小学校が残された背景には、町の中心部から離れていることに加え、山木屋地区がかつてのにぎわいを取り戻すうえで欠かせない、地区の復興のシンボル的存在としての意味合いもあります。
避難指示前、山木屋小学校には約50名の児童が通っていました。避難指示後は川俣南小学校の一部を間借りして授業を続けていましたが、2018年3月に避難指示が解除されると、川俣中学校を間借りしていた山木屋中学校とともに帰還します。2019年4月以降は児童数ゼロの状態でしたが、2025年4月から2名(12月23日現在3名)の児童が通うことになり、6年ぶりに授業が再開されました。

山木屋小学校が特徴的なのは、学区にしばられずに通学できる「通学区特認校」であることです。川俣町内に住む子どもは、子どもの性格や教育方針などを踏まえ、川俣小学校に通うか山木屋小学校に通うかを選択できるようになっています。川俣小学校は比較的児童数の多い学校ですが、少人数の環境での学びが合っている子どもであれば、川俣町の中心部から山木屋地区に通うことも選択肢のひとつとなります。もちろん、登下校時にはスクールバスが運行されます。
山木屋小学校で学ぶことのメリットを、安田雄生(ゆうき)校長はこう言います。
「一番は、少人数であるため、ひとりひとりの関心や課題にていねいに寄り添えることです。臨機応変に学びの内容を調整しながら、その成長を見届けるよう心がけています。先生達の関わりも手厚く、最初は分からない・できない状態だった子ども達が徐々に自分に自信をもち、成長していく姿を日々目にしています」

同じ校舎では、山木屋中学校の生徒たちも学んでいます。中学生が同じ校舎内にいることの効果も大きいと安田校長は言います。
「小中の垣根を越えた交流の機会を増やそうと、文化祭や運動会などは小中共同で実施しています。給食も一緒に食べますし、昼休みも一緒に遊んでいる様子をよく目にします。手本となる中学生がすぐそばにいることで、小学生は自分の行動を見直すきっかけが得られますし、中学生にとっては、小学生の手本となる行動を取らなければという心構えをもつきっかけになっていると思います」
壁にぶつかったとき、川俣町での体験を思い出せるように
山木屋小学校の文化祭や運動会には地区の皆さんも参加し、小さな山木屋地区が大きな賑わいを見せるといいます。山木屋小学校で頑張ったこと、地区の人々にお世話になったことを胸に刻み巣立ってくれれば、きっとここを故郷と感じ、いつか地区の新しい力になってくれるはず。そんな想いもあると安田校長は語ります。
川俣小学校の佐々木校長も同様に、故郷としての川俣町を子ども達に意識させたいと言います。
「故郷から離れ、壁や課題にぶつかったとき、『あのとき川俣町であの人に会ってこう言われたな』『こんなことを教えてもらったな』と思い出せるような体験を一つでも多く提供したいんです。そのためにも、学校から一歩外へ踏み出し、地域に溶け込む機会を大切にしたい。それが子ども達の成長につながると信じていますし、移住者の方が自然な形で町に溶け込むことにもつながると思っています」

2025年には、新型コロナウイルスの感染拡大以降中止が続いていた鼓笛パレードが6年ぶりに復活。多くの町民が沿道に詰めかけたそうです。「君たちの頑張りをちゃんと見ているよ、応援しているよ」という空気が町全体に流れていたと佐々木校長は目を細めます。その表情から、地域の宝を町全体で守り育てていく環境が川俣町にはしっかり整っているのだと感じました。
■川俣町立川俣小学校
所在地:〒960-1466 福島県伊達郡川俣町字宮前36
TEL:024-566-2022
https://www.town.kawamata.lg.jp/site/kawamata-sho/
■川俣町立山木屋小学校
所在地:〒960-1501 福島県伊達郡川俣町山木屋字小塚山9-1
TEL:024-563-2101
https://www.town.kawamata.lg.jp/site/yamakiya-sho-chu/
※所属や内容は取材当時のものです。
文・写真:髙橋晃浩