【現地レポート】大熊町・JR大野駅前に誰でも使えるコワーキングスペースがある「CREVAおおくま」&商業施設「クマSUNテラス」が誕生!

2025年3月15日(土)、大熊町の玄関口・JR大野駅前に新しい施設が誕生します。コワーキングスペースや貸事務所が入る産業交流施設「CREVAおおくま」と、コンビニや飲食店が並ぶ商業施設「クマSUNテラス」です。生活の利便性が向上するほか、新しいビジネスが生まれる拠点にも、住民同士や町外から足を運ぶ人との交流の拠点にもなります。グランドオープン前に一足早くのぞいてきました。
目次
- かつての町の中心地がにぎわいの拠点に
- 【CREVAおおくま1階】多目的ホールと廃炉のいまが分かる展示室
- 【CREVAおおくま2階】コワーキングスペースと貸事務所
- 【CREVAおおくま3階】広いテラスから町を一望!
- 【クマSUNテラス】コンビニと6つの飲食店・文具店
かつての町の中心地がにぎわい創出の拠点に
CREVAおおくまとクマSUNテラスができた大野駅西側は、かつて小さな商店街があり地域住民や電車通学の学生でにぎわうまちの中心地でした。福島第一原子力発電所の事故後に帰還困難区域に指定され、かつての町並みは一度更地になってしまいましたが、2020年3月に大野駅周辺の避難指示が解除されてまもなく、大熊町の玄関口であるJR大野駅が再開。通勤で利用したり、遠方から大熊町を訪れる人の流れが復活しました。
そして今回、震災前の風景のように人々がにぎわい交流する場として誕生したのがこの2つの施設です。施設を管理運営するBGタイズCCC共同事業体の統括責任者を務める田淵義浩さんに案内してもらいました。

【CREVAおおくま1階】多目的ホールと廃炉のいまが分かる展示室

大野駅を出て、すぐ右手に見える曲線と木目が印象的な大きな建物が「CREVAおおくま」です。仕事や勉強の場として誰でも無料で利用できるコワーキングスペースのほか、イベントや休憩、交流会に使えるホールやオープンスペース、大熊町に新たな拠点を置きたい事業者向けの貸事務所を備えています。

入ってまず広がるのが、CREVA HALLです。天井が高くまるでホテルのラウンジのよう。休憩や勉強に使うことができるほか、イベントなどの開催予定もあるそうです。

奥には、現在進められている廃炉や除染について知ることができる2つの展示室があります。一つ目は、原発の燃料デブリや放射性物質が含まれる汚染水を浄化した「ALPS(アルプス)処理水」を分析する日本原子力研究開発機構(JAEA)の「ANALYSiS LAB.」。放射線に関する基礎知識を謎解きや映像などで学ぶことができます。もう1つが、町内と双葉町で除染土壌を一時保管している中間貯蔵施設の見学を疑似体験できる「中間貯蔵事業情報センター」です。福島県外で行う除染土壌の最終処分に向けた取り組みや、中間貯蔵施設が立地する土地の所有者の思いを伝えるパネルが並びます。

【CREVAおおくま2階】コワーキングスペースと貸事務所
2階は貸事務所とコワーキングスペースのエリアです。フリーWi-Fiを備えたコワーキングスペースは、「貸事務所の企業や住民が交流する場になれば」と田淵さん。島が分かれているような配置なので、複数のグループが同時に使用できます。


貸事務所は13~41平米のサテライトオフィスを想定した小区画と、企業の本・支店を想定した50~1,000平米の大・中区画、合わせて33区画を用意。利用希望者が多く、すでに26社31区画が埋まっています。復興事業を手掛ける企業やスタートアップ企業などが入居し、町内の雇用創出にもつながります。小区画にはデスクや椅子、ロッカーが備え付けてあるので入居もスムーズに進められそうです。
※貸事務所の入居希望については要問合せ


一部の貸事務所からはバルコニーにも出られますが、このバルコニーは誰でも入れる共用スペースでもあります。田淵さんは「地域の方々と交流できるスペースとして、うまく機能していくような流れが生まれるといいですね。自社の商品やサービスをアピールしながら、地域の方から意見をもらえる場としても活用できるはず」と話します。

【CREVAおおくま3階】広いテラスから町を一望!
3階には大熊町内を一望できる広場があります。こちらもオープンスペースになっており、結婚披露宴を開催する企画の相談も寄せられているのだとか。

下の写真左端のベージュ色の建物が大野駅で、右側に何軒か見える平屋がクマSUNテラスです。人工芝は子ども向けのサッカー体験を行うなどの活用方法を想定しているとか。3つの芝のちょうど間にあるスペースは、夏には噴水が出て子どもたちが水遊びできる場所になります。
クマSUNテラスは地域住民と来訪者が日常的に足を運ぶ場で、CREVAおおくまは仕事で滞在する人が多く利用する施設です。施設間を遊歩道にすることで、このエリアを利用する人同士が自然に交われるような設計になっています。

CREVAおおくまには、アイデア次第でさまざまな活用方法ができそうなフリースペースが数多くあります。1階ではフラワーアレンジメントのワークショップが、2階のコワーキングスペースではお話会や読書交流会が予定されています。田淵さんは「地域の方からも、企業の方からも、活用に関して意見が集まってくるような流れをつくりたい。その流れを誘発するために、特に1年目は我々主導でいろんな企画を組んでいきたいと考えています」と期待を寄せます。

【クマSUNテラス】コンビニと6つの飲食店・文具店

クマSUNテラスでは、グランドオープンに先駆けて2024年12月からファミリーマートが営業を始めています。野菜や日用品も多く販売しており、営業時間は7時から22時まで。これまで大熊町で食料品が購入できる場所は役場近くの「linkる大熊」にあるニューヤマザキデイリーストアのみでした。現在のところ町内にスーパーマーケットはなく、多くの住民は車で15分程度の富岡町に足を運んでいます。急に買い物が必要になった時に便利な場所が増えました。

平屋の各テナントでは、ファミリーマートのほかに飲食店5店舗、文具店1店舗が営業します。文具店は、震災前から町内で営業していた株式会社双葉事務器の「ふたば文具」が入ります。飲食店は中華料理店のほか、カフェ・レストランやラーメン店、ステーキ店、昼にはランチ・夜はお酒が飲める和風ダイニングなどバリエーションが豊富です。

クマSUNテラスで営業する以前はlinkる大熊で営業していた中華料理店「十川食堂」は、中国出身の店主による麻婆豆腐や自家製麺が味わえます。取材日のお昼どきはプレオープン中で、休憩中の同僚らしきグループや赤ちゃん連れの方、お友達同士とみられる方で大にぎわい!定食・丼・麺で味わえる麻婆豆腐はもちろん、味噌ラーメン、タンタンメン、カツカレーなど、みなさん注文するメニューがそれぞれ違うことからも、どのメニューも間違いないことがうかがえます。

屋内のキッズスペースにはボールプールやボルダリングもあり、子どもと一緒でものびのびと過ごすことができそうです。

まとめ
大熊町では、今回オープンする2施設の整備を皮切りに、大野駅周辺の整備が進みます。双葉郡の医療体制の核となる県立大野病院(休診中)の建て替えが始まるほか、近くには公民館や図書館などを備える社会教育複合施設ができる予定です。大熊町では、大熊町立学び舎ゆめの森の教育環境に魅力を感じて移住するファミリーや、まちづくりに興味をもって移住した人も多くいます。これから暮らしの利便性がより高まっていく大熊町。興味がある人は、一度足を運んでみてはいかがでしょうか。
CREVAおおくまとクマSUNテラスでは、グランドオープンを記念して2025年3月中にさまざまイベントが開催される予定です。その後もさまざまなイベントが予定されています。イベント情報はホームページで紹介されていますので、ぜひご覧ください。
https://okuma-creva-kumasun.jp/
■CREVAおおくま
所在地:〒979-1308 福島県双葉郡大熊町大字下野上字大野116-5
開館時間:8:00~20:00
■クマSUNテラス
所在地: 〒979-1308 福島県双葉郡大熊町大字下野上字大野116-6
営業時間:店舗・施設による ※管理事務所は8:00~20:00
2施設の問い合わせ先:
大熊町大野駅西交流エリア指定管理者BGタイズCCC共同事業体
TEL:0240-41-9948
※所属や内容は記事公開当時のものです
文:五十嵐秋音 写真:中島悠二