「地元企業」として双葉郡の教育・交流・オフィスを支える双葉事務器
双葉町の伝承施設「東日本大震災・原子力災害伝承館」の向かい側にある、双葉町産業交流センターの中に、おしゃれで見晴らしのいいコワーキングスペース「FUTABA POINT」があります。運営するのは、震災前から双葉郡内を含む浜通り全域で、OA機器に関する各種商品の販売と保守サービスを行ってきた株式会社双葉事務器。双葉町でコワーキングスペースを始めた経緯や今後の雇用、事業展開についてお話をうかがいました。
「双葉町初のコワーキングスペース」という新しい風
1966年に大熊町で創業した双葉事務器は、東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故の影響で、2011年4月にいわき市へ本社機能を移転させました。双葉郡内の避難指示が徐々に解除され、住民の生活や産業が戻るのに伴い、2017年に富岡町に営業所を設立。2020年10月には、双葉町の避難指示解除に先駆けて整備された交流施設・双葉町産業交流センター(通称F-BICC)内に、町内初となるコワーキングスペース「FUTABA POINT」をオープンしました。社長の志賀祐広さんは、「双葉に新しい風を吹かせたかったんです」と振り返ります。
福島第一原子力発電所が立地する双葉町は2022年8月、原発被災地の中で最後に避難指示が解除された町です。その動きは世界的にも注目されました。志賀さんは、町内への企業進出やインバウンド需要を見込み、2020年に当時、双葉郡内でも数少なかったコワーキングスペースの開所を決めました。
想定外のコロナ禍。「継続すること」が力に
しかし、時を同じくして新型コロナウイルスの流行が広がり、インバウンドはおろか、首都圏をはじめとする国内企業の来訪もなくなってしまいました。「梯子を外された感じで正直きつかったですけど、価格やサービス内容を見直したり、イベントを開催したりと、手を替え品を替え、とにかく続けることで双葉町を盛り上げたいと考えていました」と志賀さん。
その甲斐あって、現在は開所時に見込んでいた復興事業に従事する企業人をはじめ、ドロップインで個人利用する人も増え、認知が広がってきたと感じているそうです。また、双葉町の社会福祉協議会が定期的に事務所やイベント会場として利用したり、映画鑑賞&交流会の「ふたばCINEMO」に会場を提供したりするなど、団体やイベントでの利用も増えています。「広いスペースと、大きなモニターなどの設備もあるので、仕事以外の用途でも利用できることを知ってもらいたいですね。このFUTABA POINTを積極的に利用して、たくさんの交流が生まれたら良いと思っています。住んでいる人同士が関われる機会を増やすこと、そして町から離れてしまっている人が町と関わる機会を増やすこと。そのための協力は惜しみません」
子どもたちの声が戻った地元でともに働いてくれる人を
FUTABA POINTは、双葉事務器の双葉営業所も兼ねています。現在はOA機器に関する商品のPR、事業者や学校への提案、アフターサービスや文房具の販売といった主幹業務の営業職として活躍する人材を募集しています。
特に、双葉郡内では公立の小・中学校が再開・新設され、少しずつ子どもたちが戻ってきており、文房具の需要も見込まれています。「避難指示が解除されて双葉町に戻ってきた当初は、子どもの声が全く聞こえなかった。すごくショックでした。今は少しずつですが、子どもの声が聞こえてくる町になってきて、私自身が元気をもらっているんです。だから会社として、地元の子どもたちのためにできる限りのことをしたいと思っています」と志賀さん。
今後も双葉郡には、福島国際研究教育機構(F-REI)による本部施設整備や大学のサテライトキャンパスなどが設立される予定で、双葉事務器は2024年12月に大熊町のJR大野駅西口に整備される商業施設内への出店も決まっています。「デジタル、オンライン社会といっても、子どもや学生には必ず文房具が必要です。今の双葉郡には事務用品や文房具を専門に扱う会社がないので、そういった部分の企画・提案もできる人だといいですね」
双葉事務器では、経験は不問で移住者を含めた双葉郡に住んでいる人の雇用にこだわっています。「地元企業として、双葉郡への定住人口の増加に寄与しなければと思っています。地域で暮らしながら、魅力的な提案ができる人がいいですね」と志賀さんは未来を見据えます。現在FUTABA POINTに常駐している2人の社員も、ともに双葉郡在住。施設管理のほか、SNS運用なども担当しています。「社員でも利用者の方でも、若い人の感性からは大いに刺激を受けますね。ここは新しいことを生み出していくことが必要な地域なので、そういう刺激は大歓迎です」と笑顔を見せてくれました。
震災前の双葉郡を知っている地元企業だからこそ、これまでの地域の良さを活かしつつ、新たな挑戦ができるのでしょう。双葉事務器で地域の良さを学びながら、新しいまちづくりに参画してみてはいかがでしょうか。
株式会社双葉事務器の求人はこちら
>https://arwrk.net/recruit/net-fj
■株式会社 双葉事務器
1966年に大熊町で創業し、東日本大震災後の2011年4月に本社機能をいわき市に移す。2017年に富岡町、2020年に双葉町に営業所を設立。最新のOA、事務機器、事務用品の販売のほか、2020年から双葉町産業交流センター内でコワーキングスペース「FUTABA POINT」を運営。
HP:http://www.net-fj.co.jp/
・いわき事務所(本社機能)
所在地:〒979-0201 福島県いわき市四倉町字芳ノ沢1-60 K-10棟
TEL:0246-38-8371
・本社
所在地:〒 979-1308 福島県双葉郡大熊町大字下野上字大野379番地
・富岡営業所
所在地:〒979-1151 福島県双葉郡富岡町大字本岡字関ノ前182番地3
・双葉営業所(FUTABA POINT)
所在地:〒979-1401 福島県双葉郡双葉町大字中野字高田1番地1 双葉町産業交流センター2階
HP:https://futabapoint.jp/
※所属や内容は取材当時のものです。
取材・文:山根 麻衣子 写真:及川 裕喜