事業紹介

【企業紹介】従来では難しい地面の凹凸もクリア。多分野で活躍が期待されるロボット

2024年2月29日

株式会社F-Design

2004年の創業以来、自動車のエンジン部品の請負開発や医療機器の開発支援などを手がけてきた株式会社F-Design(以下F-Design)。近年は従来の業務に加えてロボット開発にも力を入れており、2020年にはその拠点として「南相馬ロボット開発事業所」を開設した。機械設計・構造解析・電気設計・プロダクトデザインの技術を磨き、「地域だからこそ発見できるニーズがある」と考えのもと、ロボットの開発に力を注いでいる。

3社共同による掃除ロボットの開発を機に南相馬へ

2019年、F-Designは、ソフトウェア開発を手掛ける株式会社クフウシヤ、電気設計を手掛ける株式会社キャロットシステムズとの3社共同で、業務用ドライ掃除ロボット『Asion』の開発に携わった。この開発がF-Designが南相馬市に進出するきっかけとなった。

(写真提供:株式会社F-Design)

Asionの開発でF-Designが担当したのはデザインと機構部分、つまり掃除ロボットの駆動にまつわる技術の設計開発。自律走行が可能なことはもちろん、多少の凹凸においてもスムーズな走行を実現している。そこにどのような技術が盛り込まれているのか、南相馬ロボット開発事業所の上村宗弘所長兼ゼネラルマネージャーが教えてくれた。

「近年よく見かけるようになった配膳ロボットなどは、店舗の入り口に敷いてある足拭きマット程度の段差でも上ることができません。点字ブロック上も走行不可能です。しかし当社では、駆動の機構に衝撃を吸収するサスペンションを取り付けることでその課題を解決しています」

Asionは福島県の地域復興実用化開発等促進事業費補助金をもとに南相馬市を拠点に研究開発が進められ、F-Designの藤本恵介代表取締役も本社がある神奈川県相模原市からたびたび南相馬市を訪問。訪問を重ねるうち、地域を挙げて先端産業の振興に取り組む南相馬市の開発環境や、市内に質の高い金属加工会社があること、そして南相馬市そのものの魅力に将来性を見出し、拠点の開設を決断したという。

自社一貫のロボット開発に向け体制強化を目指す

現在F-Designでは、Asionでの経験をもとに、衝撃や段差への対応力をより高めた機構部分=ロボットベースの改良を重ねている。

「汎用性が高いことが、このロボットベースの魅力の一つです。ロボットベースの上に配膳用、ビニールハウス内の農業生産物の搬送用、警備用、工場内の運搬用など、さまざまなユニットを付け替えることで、活用の可能性を大きく広げられます。自動制御のためのセンサーや、あらかじめ引かれたラインに沿って移動できる磁気センサーなども盛り込みつつ、コストを下げるための工夫も重ねながら開発を進めています」

その開発スピードを上げるためにも重要となるのが、人材の確保である。「設計に関しては、その基本的な知識となる材料力学を学んだ方、また、制御・電気の分野である程度の経験を積んだ即戦力の人材が理想」と上村氏は言う。

F-Designが南相馬市で目指すのは、ソフトウェアや電気設計の開発まで内製化した自社一貫のロボット開発。設計・制御・電気の分野でチャレンジ精神を発揮したい人にとっては、その意欲を大いに発揮できる環境だ。

田舎で役立つものでなければ意味がない

上村所長は大阪府の出身。南相馬ロボット開発事業所の開設と同時に赴任した。現地での生活をこう語る。

「釣りが好きなので、海が近いという理由だけで“行きます”と言ったのが正直なところです。でも、来てみると最高の環境でした。同じようにロボット開発に関わる企業が集積していることもありますし、地元の農家さんにコメ作りを手伝わせてもらったり、一緒にキャンプに行ったりするなど、プライベートで交流できる知り合いもできました。地元の人は照れ屋さんが多くて、最初はなかなか喋ってくれなかったりもしますが、話していくと本当にいい人ばかり。楽しく生活させてもらっています。赴任当初は4年ごとの任期更新という話もあったのですが、社長には“ずっとこっちにいます”と言ってあります」

上村宗弘所長

上村所長は、南相馬市で先端産業に携わる意義をこう語る。

「都会に比べて不便であることや、人手の確保が難しいことなど、マイナス面もあります。また、単純にビジネスに乗せることを考えたら東京でやったほうが早いかもしれません。しかし、田舎であることが、ビジネスにおける発想の転換につながることもあると思います。本当の意味で都会といえるのは、東京や大阪など、ほんの一部。日本のほとんどは田舎であるわけで、そこで使えるものを創造していかなければ意味がありません。そのための環境が南相馬には整っていると感じています」

F-Designでは今後も、人材の確保に積極的に取り組みながら、南相馬だからこそできる開発を進めていく予定だ。

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■株式会社F-Design
代表取締役・藤本恵介氏の個人事業として2004年に創立。自動車エンジン開発や治具設計請負で業務を開始し、2008年に法人化。現在は航空宇宙、アミューズメントなど幅広い分野で機械設計を中心に受託開発を手掛ける。2014年からロボット開発事業をスタート。社名は「未来(Future)を構想(Design)する」ことを目指し命名。本社は神奈川県相模原市。
所在地(南相馬ロボット開発研究所):〒975-0036 福島県南相馬市原町区萱浜字巣掛場45-245 南相馬市産業創造センターB-7
URL:https://f-ds.jp/

※所属や内容は取材当時のものです。
取材・文:髙橋晃浩