社員が誇りを持って働ける会社へ。「株式会社マツモト」の人を大切にする職場づくり

(左)松本 卓真さん
1984年生まれ、南相馬市出身。1956年創業「株式会社マツモト」の3代目。大学卒業後、総合エネルギー専門商社に勤務し、家業を継ぐため24歳でUターン。25歳で代表取締役に就任し、翌年に東日本大震災を経験。ガソリンスタンド、LPガス、不動産、水回りリフォームなど、暮らしを支える事業を展開しながら働きやすい職場づくりに取り組んでいる。
(右)北元 秀明さん
1987年生まれ、南相馬市出身。高校時代に株式会社マツモトでアルバイトを経験。高校卒業後は県外のガソリンスタンドで約9年間勤務し、2014年にUターンし、マツモトに入社。現在はガソリンスタンドの所長を務めるほか、リフォーム事業のサポートなども担当。
株式会社マツモトは、ガソリンスタンドやLPガス、不動産、水回りリフォームなど、地域の暮らしを支える事業を展開しています。
社長の松本卓真さんは、「会社は社員がいてこそ成り立つ」という実感から、社員が安心して長く働ける職場づくりに取り組んできました。その想いは、現場にどのように活かされ、届いているのでしょうか。今回は、松本社長とガソリンスタンド所長の北元秀明さんに、人を大切にする会社づくりへの想いと、ここで働く魅力を伺いました。
Q1. 人を大切にする職場づくりに取り組むようになった背景や、その想いを教えてください。
松本さん:
東日本大震災が大きなきっかけです。私は先代が亡くなったことを受け、25歳で社長に就任しました。社長としてまだ右も左も分からないなか、その翌年、震災が起きたんです。まちから人がいなくなり、ガソリンもLPガスも供給できない。会社を続けられるのか、本気で悩んだ時期でした。
社員に「残ってくれ」とは強制できません。避難したい人は避難していい。そう伝えていたなかで、友人や親戚、残った社員が「手伝うよ」と力を貸してくれました。私自身も現場に出て、仮設住宅のガス配管工事に携わりながら、がむしゃらに会社を存続させてきました。
その経験を通して、社員一人ひとりがどれだけ会社にとって大切な存在なのかを痛感しました。社員がいてくれるから事業を続けることができるし、私自身の生活も成り立っています。自分ひとりでは何もできないからこそ、社員が安心して長く働ける環境づくりが必要だと思うようになりました。

Q2. 独自の「人事評価制度」を導入されていると伺いました。導入したきっかけや、制度の内容について教えてください。
松本さん:
私自身の人事評価の仕方に限界を感じたことです。
以前は、約30人の社員を私一人で評価していました。しかし、一人ひとりの仕事ぶりを細かく把握することは難しく、どうしても私の感覚に頼る部分がありました。その結果、「評価に納得できない」という声が上がり、実際に会社を辞めてしまう社員もいました。そこで、誰もが納得できる、公平な評価の仕組みをつくらなければと考えるようになりました。
現在の制度では、半年に一度、社員一人ひとりが目標を立て、その達成度を自分で振り返ります。その後、直属の上司が評価を行い、さらに部長同士で評価を確認し合います。役職や職種に応じて評価項目の比重を変えるなど、公平な評価になるよう工夫しています。
この制度が理由かどうかは分かりませんが、社員のモチベーションは上がっているように感じます。離職率も低く、30人いる正社員のうちここ2年間で退職した正社員は2名。社員が安心して働ける職場づくりにも、少しはつながっているのかなと思っています。

Q3. 人事評価制度以外にも、働きやすい職場づくりのために取り組んでいることがあれば教えてください。
松本さん:
福利厚生も、社員の声を聞きながら少しずつ充実させています。
例えば、整備士や簿記、インテリアコーディネーターなどの資格を取得した社員には資格取得手当を支給しています。そのほかにも、3人以上で会食した際の親睦交流費や歯科検診の費用補助、部署ごとに必要な靴や防寒着の支給なども制度化してきました。
また、半年に一度は全社員と面談を行い、人事評価のフィードバックをしています。評価を伝えるだけでなく、普段は話しにくい困りごとや会社への要望を聞く大切な機会です。社員の声を受け止めることで、私自身も職場環境や制度の改善を重ねています。
さらに、年に一度は決算報告会を開き、社員や取引先に会社の業績や経営状況を共有しています。売上や利益などをできる限りオープンにするとともに、会社がこれから目指す方向や私自身の想いも直接伝えています。経営状況を隠さず共有することも、社員との信頼関係を築くために大切にしている取り組みの一つです。

Q4. 入社のきっかけと、実際に働いてみて感じるこの会社の魅力を教えてください。
北元さん:
私は高校時代、この会社で初めてアルバイトをしました。先輩や上司が優しく接してくれて、当時からとても働きやすい職場だと感じていました。
卒業後は県外のガソリンスタンドで約9年間働きましたが、「子育てをするなら地元・南相馬がいい」という思いからUターン。学生時代の印象が良かったこともあり、再びこの会社に入社しました。
ここでは仕事のがんばりをきちんと評価してもらえますし、資格取得にも挑戦しやすい環境があります。また、年齢や立場に関係なく意見を言いやすく、社長との距離も近いので困りごとや要望も気軽に相談できます。
最近では、「夏場は暑くて熱中症が心配」という現場の声を受けて、スタンドの入り口にスポットクーラーを導入してもらいました。社員の意見をきちんと聞いてもらえる安心感があります。
また、ガソリンスタンド業務だけでなく、リフォームやガス工事のサポートなど幅広い仕事に携われるため、新しいことに挑戦しながら成長できることも、この会社の魅力だと思います。

Q5. この仕事の働きがいを教えてください。
北元さん:
この仕事の一番のやりがいは、お客様から「助かったよ」「ありがとう」と感謝の言葉をいただけることです。ガスや灯油は、暮らしに欠かせないものです。困ったときにすぐ駆けつけて、お客様の役に立てたと実感できる瞬間は、この仕事をやっていて良かったと感じます。
地域の皆さんに「困ったらマツモトに相談しよう」と思っていただけるような存在でありたいです。

Q6. 最後に、この地域で働くやりがいや魅力を教えてください。
松本さん:
東日本大震災を経験したこの地域は、ゼロから新しいまちをつくり上げてきました。私は、その歩みとともに会社を続け、地域の暮らしを支えてこれたことを誇りに思っています。
震災というと、マイナスのイメージを持たれることもあるかもしれません。でも、この地域には困難を乗り越えながら、新しい挑戦を続けてきた歴史があります。そんな地域で働けることは、ここならではの魅力だと思っています。
だからこそ社員にも、「南相馬のマツモトで働いています」と胸を張って言える会社でありたい。そのために、これからも地域に必要とされる会社であり続けたいです。

【基本情報】
企業名:株式会社マツモト
代表者: 松本卓真
事業内容:石油製品販売、ガス販売及び施工、リフォーム販売及び施工、不動産の賃貸、水道工事、損害保険代理業
所在地:南相馬市原町区高見町1-160
URL:https://matsumoto-ene.com/
(2026年7月取材)
(インタビュアー:奥村サヤ 撮影:古関マナミ)