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【移住セミナーレポート】『はじめよう、私とふくしまの小さな物語。』vol.10「はじめまして、福島12市町村です」編

2024年2月8日

    ふくしま12市町村移住支援センター主催の移住セミナー『はじめよう、私とふくしまの小さな物語。』は、福島12市町村で活躍するゲストとの交流を通じ、福島12市町村での暮らしや、働く魅力を知ることができるセミナーです。

    11月23日(木)に、北海道の札幌にて「はじめまして、福島12市町村です」編を開催しました。

    第1部では、札幌と福島12市町村にご縁のあるゲストの皆さまから、福島12市町村での挑戦や移住を決めたきっかけやその魅力、具体的な活動内容に関するプレゼンテーションとパネルディスカッションを行い、第2部では参加者とゲストによる座談会と、移住担当スタッフによる個別相談会を開催しました。

    福島12市町村で実際に活躍されているゲストの皆さまのリアルな実体験に基づくお話しを通じて、移住後の生活や仕事が具体的にイメージができる充実した内容のセミナーとなりました。

    第1部 ゲストによる活動紹介 / パネルディスカッション

    赤司展子 / 札幌新陽高等学校 校長

    早稲田大学商学部卒業。三井物産、アルフレックスジャパン、UBS証券を経てPwC Japan入社。2014年福島県双葉郡教育復興ビジョン推進協議会事務局へ出向したことをきっかけに教育に関心をもち、学びの多様化を掲げ2018年ウィーシュタインズ設立。2021年“複業する校長”として札幌新陽高校の校長に就任。ウィーシュタインズ株式会社代表取締役、NPO法人インビジブル理事、社会彫刻家。

    <赤司さん>
    私は生まれは千葉県で、中学校からは東京で生活をしていました。新卒のときは事業会社に就職し、その後は経営コンサルティング・事業再生の分野に長く携わっていました。今は、札幌新陽高校の校長をしておりますが、教員免許はありません。教育に関わるきっかけをくれたのは福島でした。東日本大震災の後、当時勤めていた会社で、福島県双葉郡の教育復興プロジェクトのプロジェクトマネージャーの社内公募がありました。直感的に「福島✕教育」に使命感を持ち、2014年から2年間、いわき市に移住しました。

    教育復興プロジェクトには「福島県双葉郡教育復興ビジョン」というものがありました。子どもたちが自分たちで考えて、行動するような学びのカリキュラムを作ったり、ふたば未来学園という中高一貫校の立ち上げに関わったりしました。この時に仲良くなった先生たちや校長先生に福島の美味しい日本酒を飲みに連れて行っていただきました(笑)。この2年間で福島の方々に本当に良くしていただいて、福島が大好きになりました。プロジェクトが終結してからも、教育や子どものことに関わってみたいなと思い、学びの多様化をテーマに、ウィーシュタインズという会社を起業しました。

    起業後は、富岡町の小中学校に大工さんや油絵の画家さん、音楽家の方を1年間「転校生」として受け入れて、何気ない日常の中で子どもたちがプロフェッショナルな人材と触れ合う教育プログラムなどを作りました。こうした教育プログラムづくりをきっかけに、いまは札幌新陽高校の校長先生をやらせていただいています。

    新陽高校では、福島で感じた子どもたちの生きる力や、先生たちが子どもたちをよく見てくれる力を体感し、一人ひとりの個性をお互いが尊重し合って新しい価値を生み出していけるよう「人物多様性」というビジョンを掲げています。福島での教育復興プロジェクトで経験した、「子どもたちが自分で考えて生きる力を身につける」というものを実際の教育現場にもっともっと広げていけるように活動し続けています。

    高田江美子 / BACKSTAGE WORKS

    福島県南相馬市出身。大学卒業後仙台→札幌で営業職に従事し、2019年に南相馬市の起業型地域おこし協力隊「Next Commons Lab 南相馬」の委嘱をきっかけに地元へUターン。NCL南相馬の活動期間中、地域事業者や行政関係の広報・PRの事業に取り組む。現在は、在籍中に立ち上げた事業を中心に、地域の様々な商品をECサイトや各地のイベントで販売する「みなみそうま百貨店」を運営。活動内容やエリアの範囲を広げている。

    <高田さん>
    私の出身は、福島県南相馬市です。大学進学から県外に出て、就職してからは北海道に10年ぐらい住んでいました。その後は、南相馬市にUターンして Next Commons Lab 南相馬という起業型地域起こし協力隊のプログラムに参加しました。現在は独立しフリーランスとして、地域の事業者様の販促支援などを行っています。

    福島県にUターンして戻ってきたきっかけは、35歳で転職を決心したことです。今後のキャリアを考えているうちに、「稼ぐこと」をテーマに置き続けて良いのかと自問自答しました。そうしたなかで、ローカルビジネスが様々な所で盛り上がっていたことを受けて、現地の人に会いに行ったり、イベントに参加したりして「こんなにも楽しそうに仕事している人がいるんだ!」と気付きました。最初は、地元に戻るつもりはあまりなかったのですが、ローカルビジネスの面白さに気づいてから、「地元で自分も何かしたい」という意欲が生まれ、地元で面白いことをやっているNext Commons Lab 南相馬に入りました。

    南相馬市は、福島12市町村の中でも早めに避難区域が解除された地域であり、たくさんの新しい人が入ってきて、チャレンジがしやすい場所になっています。私自身、まだ小さくはありますが自分で生業づくりができたことは収穫かなと思っています。やりたいことや興味があることにすぐチャレンジできるところや、お客様やまちに貢献していると感じやすいところが魅力だと思います。

    移住でも転職でも、まずは自分自身を良く知ることが大事だと思います。福島12市町村には、さまざまな場所でいろいろな募集があります。何が得意・何が好き・何が苦手といった自分自身をよく理解することで、新しい場所でも出来ることを見つけやすくなり、失敗にもなりにくいのではないかと思います。この地域は、人の往来が活発で、新しいチャレンジがしやすく、エネルギーが溢れている場所です。ぜひ、気軽に足を運んでいただけたら嬉しいです!

    原口拓也 / 株式会社ReFruits

    和歌山大学システム工学部4年生。これまで全国20ヵ所以上の一次産業の現場に出向き、昨年度は大学を休学し、和歌山県で果樹栽培の研修を受ける。震災関連の活動で福島県大熊町のことを知り、その町の特産品だったキウイフルーツの復活を目指し活動する「おおくまキウイ再生クラブ」の活動に携わっている。今年10月に農業法人「株式会社ReFruits」を設立し、本格的なキウイ栽培を開始予定。

    <原口さん>
    実は、私はいま和歌山大学システム工学部の4年生でまだ大学生です。けれども、今は福島県大熊町で、キウイ農家になる準備をしています。ゆくゆくは、農業界のジョン万次郎 (※1) になるという目標を立てています。

    ※1 : ジョン万次郎は、高知県出身の漁師で、14歳の時に漂流。その後、アメリカの捕鯨船に助けられ、20年間アメリカで生活。日本に帰国後は、幕末の幕府で通訳や人材育成に勤しみ、多大な影響を与えた人物。

    昔から、ジョン万次郎の生き様に感化されて、高知県の四万十に行ってジョン万次郎資料館に行ってしまうほどのファンでした。彼のように、海外の様々な文化を見たいと留学を志したのですがコロナで行けなくなってしまい、改めて「自分のやりたいことはなんだろう」と考える機会になりました。そのタイミングで、お世話になっていた和歌山県のニンニク農家さんに声をかけられ、二ヶ月ほど住み込みで農家のバイトを始めました。

    緊急事態宣言が出て大変だったんですけれども、日中体を動かしてニンニクの収穫を行い、 休みの日には海や山に行って、自然のなかに身を置くことにすごい価値を感じました。そうして、自然に触れながら働く農業がすごく良いなと、のめり込んでいきました。ですが、みなさんもご存知の通り、農業は後継者不足が問題になっています。既存の農業のやり方には限界が来ていると感じた時に、開国を迫られていた幕府の鎖国の時代に、イノベーションを起こしたジョン万次郎が浮かびました。そして私は「農業界のジョン万次郎」になることを決めました。

    そうしたなかで、福島県大熊町に出会いました。東日本大震災前は、大熊町は「フルーツの香り漂うロマンの里」と言われていて、梨とキウイが特産品だったことを知りました。町のなかで、震災前にキウイ農家を営んでいた農家さんから、震災後に町を出ることを余儀なくなれ、キウイ栽培が無念に終わってしまったという想いを聞きました。この想いを聞いて、「ここでキウイをやらなければいけない」と強く感じて、フェニックスプロジェクトや、12市町村起業支援金の制度を活用して農業法人を設立しました。

    私のように、福島に縁もゆかりもない人間でも、新しいチャレンジを周りの方々が支援してくれて、気がつけば会社を立てるほど本気になれるのはこの町の魅力だと思います。生活のなかで不便を感じるところもあるけれど、このまちだからこそチャレンジできるのだと思いますので、みなさんもぜひ一度福島へ足を運んでキウイ畑を見に来てください!

    鈴木彩香 / 株式会社ふたば 技師

    北海道稚内市出身。大学3年次に、富岡町のまちづくり会社で約1カ月のインターンを体験し、卒業を機に富岡町に本社を置くコンサルタント「株式会社ふたば」に就職。現在は、富岡町のまちづくりを考えるワークショップの企画・運営等に携わっており、地域住民とともに富岡町のにぎわいづくりに向けた活動を行っている。

    <鈴木さん>
    現在、私は株式会社ふたばという福島県双葉郡富岡町の建設コンサルタントの会社に所属し、隣町の楢葉町で生活しています。出身地は北海道の稚内で、日本の最北端のところから来ました。高校卒業までは、稚内で生活しており、大学も北海道内でした。大学では、建築を専攻していくなかで、特にまちづくりに関して勉強しました。まちづくりに興味を持ったきっかけは、出身地の稚内の課題を幼いころから目の当たりにしてきたからです。人口減少、少子高齢化、若者流出、空き家の増加、交通網の縮小…、どんどん悪くなっていく状況が当たり前だったんです。でも、大学でまちづくりを学んでいくうちに、地域の実状に向き合って課題に取り組めば、魅力的な街を作れるし、共感して移り住んでくる人も生み出せるのではと考え始め、もっとまちづくりについて学びたいと思うようになりました。

    そのようななかで、実践的なまちづくりを学びたくなり、大学3年生の夏休みに復興庁主催の実践型インターンシップに参加しました。富岡町は、東日本大震災後の2017年に避難指示が一部を除いて解除されました。避難指示が解除されても、人も戻らないし、産業も戻ってこないため、被災後に復活が難しい町となっていました。この実状を前にして、私は「原発被災地域は、日本の地方自治体が将来直面する課題に直面している」と思いました。逆に言えば、富岡町は「課題先進地域」とであり、ここで行われるまちづくりは、将来の地方自治体のまちづくりモデルケースになると考えました。

    インターンシップを通じて、震災の爪痕が残る場所で、復興に向けて活動する人々がいる町をとても魅力的に感じてきました。時間が止まってしまったような町ではありましたが、富岡町が好きな人がたくさん集まり、エネルギーがあふれる場所になっていたんです。その魅力に気づき、大学卒業を機に移住を決意し、現在の会社に就職しました。日々、町民の皆さんの意見をお聞きしながら、どういった町にしていけるかいろいろ考えています。地域で暮らしながら、日々の変化を実感し、町の未来の姿を考え実践することができるのは、唯一無二の環境だと思います。双葉郡は、北海道からだと遠いとは思いますが、移住とは言わずともぜひ一度町に遊びに来ていただいて、変化していく町の今の状況を見に来てください!

    パネルディスカッション

    —お住まいの地域の魅力を教えてください

    <高田さん>
    南相馬市は相馬野馬追(そうまのまおい)という重要無形文化財にも指定されていて、600年以上の歴史がある大きなお祭りがあります。地域に馬が根付いていて、馬を育てながら生活してるご家庭もあるほどなんです。(江戸時代に近辺を治めていた)相馬藩の歴史がいまでも続いている地域です。一方で、ロボット開発等の先進事業にも取り組んでいて、昔のものと新しいものが共存するエネルギーあふれる街です!

    <原口さん>
    大熊町は、2017年に一部避難指示が解除されており、最初は正直「住む場所あるの…?」と思っていました。でも、意外と行ってみると若者がたくさんいるんですよね。大学生も多くて、「熊女」という大熊町の若い女性たちの活動もあります。最近では、毎週イベントがあってすごく活発な地域になっています。今日も、「新米会」と言って大熊町に移住して間もない人を歓迎する会があるんですよね。元々住んでいた帰還者と、移住者の境界が 全くなくて、盛んな交流がされているのが大熊町の特徴だと思います。

    <鈴木さん>
    富岡町は、桜が有名で、道路に桜のトンネルができる景色がすごく綺麗なんです。富岡町もすごく歴史を大事にしていながらも、昔の姿と今の新しい取り組みが融合しているのが富岡らしさだと思います。

    —移住や起業はすごくチャレンジングなことで、行動に移す勇気が必要で踏み出せない方も多いですが、その一歩を踏み出せたのはなぜでしょうか?

    <原口さん>
    私は、ジョン万次郎に取り憑かれてしまっていますが…(笑)。鎖国時代の人がアメリカで20年過ごせるのだから、日本国内での移住は苦ではないだろうなと感じていました。北海道に居たときも、歴史的に現地の方や開拓者の方々がいたこともあり、冒険心のある文化や刺激を貰って福島でチャレンジしました。

    <鈴木さん>
    私は、福島との出会いは1ヶ月のインターンシップで、元々は北海道に戻るつもりでした。ですが、まちづくりを机上のものとしてでなく、実践的にやってみたいという気持ちから継続的に福島と付き合っていく中で福島に段々と魅かれていったので、移住に対するハードルは私の場合は高くなかったです。

    <高田さん>
    私はもともと地元だったので他のお二人よりは移住しやすい環境でした。私は、引っ込み思案で石橋を叩いて叩いて結局渡らないタイプなのですが、南相馬市で起業している人が仲間を募集している、このタイミングを逃したら絶対に後悔すると感じて戻ってきました。この決断に至るまでに、自分から色々いろんな人に会い、様々なセミナーに参加して話を聞いていたからこそ、今に繋がっていると思います。

    —移住を考えている皆さんへメッセージをお願いします

    <高田さん>
    福島12市町村全体で、「まずは行ってみたい」「ちょっと移住を体験してみたい」と考えている方を受け入れる土壌やイベントがたくさんあります。南相馬市では、相馬藩のお殿様が主催するツアーもあります!関東から何度か通われて、先日移住された方もいらっしゃいますので、まずは気軽に遊びに来て、関係人口になってみてください!

    <原口さん>
    私は、個人的におおくまキウイ再生クラブで2週に1回作業会を開催しています!大熊町だけでなく、様々な地域の人が集まるイベントなので、ぜひまずは遊びにきてみてください。

    <鈴木さん>
    富岡町では、お試し住宅制度も作っていまして、そうした制度に参加いただくとその街の人との繋がりが出来て2、3回目も来やすくなるかと思います。また、富岡町ではワイン用ブドウの栽培ボランティアもやっていますので、原口さんのキウイ体験とあわせて農業体験にぜひ来てください!

    第2部 座談会・個別相談会

    第2部では、座談会で参加者がゲストに直接質問をしたり、個別相談ブースでは移住担当スタッフに具体的な相談をすることで、より福島12市町村への移住に関して深掘りできる時間となりました。

    座談会では、ゲストの方々がお住まいの各市町村でどのような動きが生まれているのか、そこに参加するためには具体的にどのようなアクションをしたら良いのか、福島12市町村で起業や農業を始めるためのはじめの一歩は何かなどの相談に対して、ゲストの皆さまが実際に福島12市町村の地図などを使いながら、一人ひとりに丁寧にアドバイスをしている様子が見られました。非常に和やかな雰囲気で、参加者の皆さまも時間いっぱいまでゲストの皆さまに質問・相談をされていました。

    個別相談会では、福島12市町村でどのような仕事があるのかや、移住を考えている地域の気候や暮らしぶりについてなど、移住に向けて踏み込んだ相談をされている方もいらっしゃいました。

    今年度、全6回にわたって開催する移住セミナー『はじめよう、私とふくしまの小さな物語。』の第4回目となる今回は、札幌と福島12市町村につながりのあるゲストの皆さまから、移住に向けて始めた行動やや現地の魅力について聞くことができました。

    未来ワークふくしま移住セミナーに関する最新情報は特設サイトよりご覧ください。皆さまのご参加を心よりお待ちしております!

    第10回セミナーのダイジェスト・全編動画を公開しています (YouTube)

    ダイジェスト版 (全編動画はこちらからご覧ください)

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