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【移住セミナーレポート】『はじめよう、私とふくしまの小さな物語。』~ vol.8「農業・食産業で地域の豊かさをつくる人たち」編~

2023年10月4日

    ふくしま12市町村移住支援センター主催の移住セミナー『はじめよう、私とふくしまの小さな物語。』は、福島県内で活躍するゲストとの交流を通し、福島12市町村での暮らし、働く魅力を知ることができるセミナーです。

    2023年9月2日(土)に、東京都・池袋で開催されたセミナーテーマは「農業・食産業で地域の豊かさをつくる人たち」編です。

    第1部では「食・農」を通した福島12市町村の地域の魅力や、どのように地域のこれからをつくる挑戦をされているのかについてトークセッションとパネルディスカッションを行い、第2部では参加者とゲストによる座談会と、ふくしま12市町村移住支援センターや各市町村の移住担当者との個別相談会を開催。さらに特別企画として「福島12市町村であなたの新たな『物語』を描こう!移住・キャリアワークショップ」も行いました。

    食や農業に関わる視点から、福島12市町村の新たな魅力と可能性を知り、移住後の生活イメージを具体化できる、充実した内容のセミナーとなりました。

    第1部 ゲストによる活動紹介/パネルディスカッション

    ~食を通じて東北6県・227市町村の魅力を発信したい~
    三廻部麻衣 / Tregion株式会社 地域創生事業部

    埼玉県出身。現在は福島市在住。早稲田大学大学院卒業後、ファーストリテイリングへ入社。29歳の時に東日本大震災が発生し、仕事で東北にかかわりたいという思いから2014年に復興庁へ転職。2016年に福島市へ移住し、ふくしま連携復興センターで避難者支援や福島の情報発信等に携わる。2018年からは、東北のファンづくりを掲げるTregion株式会社で、イベント企画などの地域PRを担当。人生で大切にしているテーマは、「グリーフ(喪失体験などによる深い哀しみ)ケア」。夢は、誰もが自分の意志で自由に生き、天寿をまっとうできる社会をつくること。

    <三廻部さん>
    私は、10代のころから誰もが天寿を全うできる社会を作ろうと思っていました。その想いは、働き始めてからも変わらず持ち続けていて、そんな折に東日本大震災が起こりました。当時、首都圏で働いていたのですが、被災地に生まれた多くのグリーフ(喪失体験などによる深い哀しみ)を受けて、生き残った人々がより幸せに天寿を全うできる社会のために何かしなければと決意し、復興庁に転職しました。復興庁では、期間業務職員として2年間働き、その次はふくしま連携復興センターというところで、被災者の想いをラジオで発信する番組を制作する仕事などをしておりました。

    個人の活動として、TOHOKU LOVERS というものを運営しておりまして、「出身地や居住地ではない地域を日常的に感じ、想いながら暮らす」をテーマに豊かさや楽しさ、価値を、自然なかたちで発信しています。

    現職のTregionという会社でも、東北のファンを作っていくPRの仕事をしており、“食”を通じた東北地域のプロモーションを手掛けています。例えば、南相馬の“食”と生産者を交えたトークイベントをしたり、福島県田村市都路町のクラフトビールを、醸造所の代表と飲みながら地域のことを話したりといったことをしています。“食”は、地域や人をつなげる中心であり、一瞬で人を幸せにできる最高のエンターテイメントだと思います。

    私自身、被災も避難も経験はしていません。(震災の)当事者の方と、私のような第三者を比較すると、後者のほうが圧倒的に多いです。でも、第三者が変わらないと社会は変わらないと考えているので、“食”などの活動を通じて当事者と第三者を丁寧につないでいきたいなと思っています。「これから関わる方、ふたたび関わる方、これからも関わる方」皆さんにとって良い場を作っていきたいです。

    ~農業で浪江町の新たなまちづくりに挑戦したい~
    大高充 / オオタカ農業

    福島県白河市出身。浪江町在住。大学に在学中、友人を訪ねて浪江町に行くようになり、のちに非農家から農業を志す。「農業から始める新しいまちづくり」をスローガンに、農業方面から浪江町を盛り上げていくため日々汗を流す。令和8年以降経営面積10haを目指し、えごまと水稲を主軸に露地野菜や果樹など幅広く栽培するため修行中の身である。

    <大高さん>
    私は、いま福島県の浪江町でエゴマ農家として独立しており、エゴマ以外にミニトマト、なす、オクラ、小松菜といった合わせて20種類の作物も育てています。県内随一の日照量を誇る農業に適した地域なのですが、後継者不足は深刻で持続可能な農業を目指すには課題がまだまだたくさんあります。農業をしている人の一日、みなさんも気になると思うのですが、農繁期では1日7Lの水分補給をしながら、12~14時間農作業をしていますね。冬場の農閑期は、事務作業や土壌改良などを行っています。

    私の出身は、福島県白河市ですが、浪江町に来る前は「公務員で安定した生活を」「東京や埼玉の首都圏で住みたい」と考えていました。でも、就活で失敗してしまい、既に浪江町に住んでいた親友を通じて、トルコギキョウを育てる花農家さんと出会いました。大輪で咲く花にすごく感銘を受けまして、なんと花農家さんに弟子入りしてしまったんです。そこから、農作業等を覚えて独立。浪江町は遊休農地が多くて、大きな土地を借りられたり、豊富な支援制度を使うことができたりと、農業のビジネスチャンスとしてとても良い場所でした。

    移住したのは2018年で、5年も住んでいると仲間もたくさん増えまして、今はエゴマを使ったお菓子の開発をするなど新しいビジネスに取り組んでいます。今後は、地域の農業のリーダーを目指しながら、浪江町の特産品を増やしたり、若手農家を増やしていきたいです。もちろん、浪江町は就農以外にもさまざまな分野で挑戦できる町なので、自分が主体となって住みやすい町に変えていく志のある方の移住をお待ちしています!

    ~楢葉町から日本の農業に革命を起こしたい~
    瀧澤芽衣 / 株式会社福島しろはとファーム

    2015年に明治大学農学部を卒業し、同年4月に白ハトグループに入社。“らぽっぽ なめがたファーマーズヴィレッジ”のオープニングメンバーとして社内立候補し、以後同施設で農業を中心としたさまざまなイベント等を実施。2020年に楢葉町へ移住し、現在は夫と娘と3人で暮らしながら『日本の農業をステキにしよう!』をモットーにさつまいもの6次産業化に取り組むとともに、現地に訪れる機会の創出や震災からの歩みなどを伝えている。

    <瀧澤さん>
    私にとって、東日本大震災は、テレビの中の出来事でたくさんの被害が出ているんだなという第三者の出来事でした。福島県に友達はいないし、ここまで深く関わるとも思っていなかったんです。それでも、福島県の楢葉町に移住したのは、仕事がきっかけでした。私が所属する、株式会社福島しろはとファームは、さつまいもを生産しており、所在地が楢葉町なんです。

    震災後、2015年から楢葉町の避難指示は解除されましたが、仕事は無く農業をしても風評被害で売れない窮地に陥っていました。そうした風評被害に対して、データを提示して安全を証明するのではなく、さつまいもをよく食べる女性と子どものキラキラ輝く笑顔を通じて安心感を生んでもらうことを目指しました。それからは、さつまいもの収穫祭などのイベントを行い、関係人口を増やし、町を自分ごととして感じてもらえるような機会を創出しています。

    福島で子育てもはじめまして、子どもと一緒に畑いじり、川遊びをしています。先日参加した木戸川の鮎まつりでは鮎のつかみどりに参加しましたが、かなり大きい鮎だったので娘は大泣きしてしまいました(笑)。福島は自然が本当に豊かで、便利さでは都会にはかなわないのですが、自然いっぱいを満喫しながら毎日楽しく過ごしています。

    福島に最初はすごく怖いイメージがあり、自分がそこで子育てすることを想像できませんでしたが、飛び込んだ先の人たちと一緒に作っていって、いまは自分が一いち参加者となってまちづくりに携わることに楽しみを感じています。「移住したいから、どこか探そう」ではなく、その場所でどのような暮らしをして、どのような人たちと生きていきたいのか明確にイメージすることが、移住の大事なポイントだと思います。

    ~世界に誇れる陸上養殖で葛尾村の名を全国に轟かせたい~
    松延紀至 / 株式会社HANERU葛尾 代表取締役

    1973年東京都出身。大学院卒業後、水道事業の設計、企画営業等に従事。上下水道の官民連携事業を行う中で、陸上養殖と上下水道を組み合わせた地方創生を行うべく、葛尾村に「株式会社HANERU葛尾」を設立。原発被災からの復興のために、バナメイエビの陸上養殖を通じて、雇用創出と新たな名産品の創造に取り組んでいる。

    <松延さん>
    私はいま、葛尾村という阿武隈高地の一角でバナメイエビの養殖をしています。みなさんがスーパーでよく見かけるような冷凍むきエビは、ほとんどがバナメイエビなんですよ。さて、この仕事に至った経緯なんですが、私は水インフラに関わる仕事を25年間していました。そのなかで、日本の水インフラをどう守っていくかを考えたときに、技術継承が一番の問題と考えました。この問題を解決する一つの手法として、地域に産業を興してそこで働く人たちが一緒に水インフラを管理するようなワークシェアモデルを作りたいと思ったことが地方創生をやりたいと思った大きなきっかけです。

    そうした構想を、福島県庁さんとお話していたら、それまでどこにあるかも知らなかった葛尾村を紹介されたんです。原発被害で人口が減少した葛尾村に一人でも多く来ていただきたいという村の想いを聞き、また広い土地を安価に借りられることもあり、葛尾村に来ることを決めました。

    葛尾村は人口が少ないということもありますが、非常に人が温かいです。私は、エビの養殖事業をやっていますから、地域の人たちからは「エビ社長」と呼ばれています(笑)。葛尾村でエビ養殖をすることで、それに関連する企業さんがこの葛尾村や浜通りといった地域に進出していただけるような産業クラスターを将来的には作り、地域経済活性化につながってゆけばと思っています。

    パネルディスカッション

    —地域の皆さんと関わる時に、大切にされていることや、印象的なことはありますか?

    <大高さん>
    私は、農業以外にも町の商工会に所属しています。イベントをやる度に、顔出ししたりお手伝いをしたりして、なるべく地域の方と交流するように心がけていますね。ちょうど、9月30日、10月1日に東北五大やきそばサミットを浪江町でやるので、ぜひお越しください!

    <瀧澤さん>
    楢葉町は、行政の方も地域の方もすごく前を向いて頑張っていると思います。私は、震災の現場には居なかったですが、地域の方たちの想いをいかに活かして一緒に新しいものを作っていくかということを意識していますね。

    <松延さん>
    葛尾村で事業を始めて、意識するようになったことは、子どもですね。子どもが活発な地域は、元気になっていくんですよね。私たちは、まだ売上も立ってない小さな会社ですが、『HANERUカップ少年野球大会』というものを主催しまして、葛尾村の子どもや大人が、他地域の人と関わり、ゆるやかに交流が生まれるような仕組みを作っています。

    —福島県で食や農業の仕事をする上で、どのような苦労がありましたか?

    <大高さん>
    農繁期のピークはお盆なのですが、とにかく暑いんですよね。空調服を購入したのですが、全然役に立っていないんです(笑)。生産者として、自身の体調管理と農作物の効率的な収穫を両立させなければならないので、その点が苦労としてあげられます。

    <瀧澤さん>
    農業の現場にいたときは、一日中農作業をしていました。相手は生き物なので決まったスケジュール通りに行かないことも多く、心身ともに疲弊してしまうこともありました。農業が本当に好きじゃないと続かないのが、生産者などの職業の大きな特徴かなと思います。たとえ、大きな会社の社員として入ってきても農業を挫折してしまう人は多いです。この仕事を通じて自分の人生をどう生きたいか、どのような貢献をしたいかといった目的を持てる人が向いていると思います。

    <松延さん>
    私たちは作物系とは少し違いまして、生きているエビを見ながら仕事をしています。毎日、エビに声を掛けていますが、急にバタバタとエビが死んでしまうととても悲しい気持ちになりますね…。餌の量は十分だったのか、水はきちんと綺麗な状態だったのか、細かい作業を毎日毎日し続けるのは本当に大変です。でも、こうした仕事が儲かるようにならないと、働きたいと思える人も増えないので、福島のスタートアップとして頑張っていきたいなと思います。

    —最後に来場者のみなさんに、メッセージをお願いします!

    <松延さん>
    我々の会社は4人でやっていますが、葛尾村でのチャレンジを応援してくれる方や、葛尾村で働きたい方の移住、ぜひお待ちしています!

    <瀧澤さん>
    町をつくるというところに直接参画したり、関係人口の形で応援したりなど、さまざまな関わり方があると思います。ぜひ、今日をきっかけにまずは福島の食べ物に興味を持って、応援したり楢葉町に遊びに来てくれたりしたら嬉しいです!待ってます!

    <大高さん>
    私の大切にしているスローガンは「農業から始まる新しいまちづくり」です。若手の農家さんが増えてくれたら、とても嬉しいです!エゴマに興味がある方がいらっしゃいましたら、ぜひうちに遊びに来てください!

    第2部 座談会・個別相談会

    第2部では、参加者が話しを聞きたいゲストのもとに集まる座談会形式で直接質問をしたり、個別相談ブースでは移住担当スタッフに具体的な相談をすることで、より福島12市町村への移住に関して深掘りできる時間となりました。

    「生産者の仕事に憧れがあるけど、若い自分が一次産業の仕事に就くことに不安があります…」と、一次産業のハードルの高さに関する質問が松延さんのグループではありました。松延さんは「むしろ、若い人の意見を積極的に取り入れることが現在の一次産業の要。だから、安心して一次産業に来てほしい!」と伝え、さらに自治体で新しい産業を興す想いや秘訣を全力で語ってくださいました。

    大高さんのグループでは、就農について関心のある方が多く集まりました。エゴマの栽培を中心に、食品の加工事業のお話しや、農業に関する行政からの補助制度を詳しく説明。また、大高さんは浪江町の魅力をさらに深く語り、参加者の移住に対する解像度を高めてくださいました。

    「移住は、人生の大きな決断。でも、出会いはあるのでしょうか……」

    瀧澤さんのグループでは、赤裸々な質問が寄せられました。瀧澤さんは「(都市部と比べたら)人は多くないですが、明確に目的を持って移住してきている人も多く、同じ志を持つ人と出会えるのが移住の魅力です!」と、力強く回答。質問をされた方の、背中を押してくれるようなアドバイスをたくさんいただきました。

    個別相談会では移住に向けて「車の運転が出来なくても生活はできるのか」「首都圏からアクセスがよい地域はどこか」など、より個人的な内容が多く寄せられました。相談前は海側で検討されていた方が、内陸でも東北本線に近い地域があることを知り、検討の幅が広がったと仰る方もいらっしゃいました。

    特別企画!福島12市町村であなたの新たな「物語」を描こう!移住・キャリアワークショップ

    座談会・個別相談会の終了後、特別企画として自分の未来を想像しながら移住・キャリアを描くワークショップが開催されました! 「15年後のある日の一日」と「15年後のわたしの設定」をテーマに、今回のセミナーを通して参加者の心の中に生じた変化や、想いを掘り下げていきました。

    今年度、全6回にわたって開催するされる移住セミナー『はじめよう、私とふくしまの小さな物語。』の第2回目となる今回は、福島12市町村の農業・食産業の未来の担い手であるゲストの皆さまのリアルなお話を聞くことができました。

    参加者の皆さまからも「地域で活動されている方の生の声をお聞きすることができて良かった」「東京だけでなく、福島で暮らすという選択へと視野が広がり、その選択はより社会貢献につながる、人の笑顔につながると思いました」「将来のことを考えるきっかけになりました。人との縁も感じられ、未来が明るく見えたセミナーでした。」などの嬉しいご感想もいただきました。

    また今回は農業・食産業にまつわるセミナーということで、特別企画でご登壇いただいたゲストの皆さまが生産されている食材(エゴマ・さつまいも・バナメイエビ)を使った特性おむすびをご用意しました。おむすびを作っていただいたのは、笑むすび ∞ の山田みきさんです。食材の味を存分に活かしたおむすびは参加者の皆さまからも大好評でした!

    今年度に開催予定の未来ワークふくしま移住セミナーに関する最新情報は特設サイトよりご覧ください。皆さまのご参加を心よりお待ちしております!

    第8回セミナーのダイジェスト・全編動画を公開しています (YouTube)

    ダイジェスト版 (全編動画はこちらからご覧ください)

    ■2023年度未来ワークふくしま移住セミナーの特設サイトはこちら
    https://mirai-work.life/lp/seminar2023/