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【移住セミナーレポート】『はじめよう、私とふくしまの小さな物語。』~ vol.7「まちとつながり、まちをつくる生き方」編~

2023年9月5日

    ふくしま12市町村移住支援センター主催の移住セミナー『はじめよう、私とふくしまの小さな物語。』は、福島県内で活躍するゲストとの交流を通し、福島12市町村で暮らし、働く魅力を知ることができるセミナーです。

    2023年7月22日(土)に、東京都・池袋で開催されたセミナーテーマは「まちとつながり、まちをつくる生き方」編です。

    第1部では「好きなこと」「得意なこと」「挑戦したいこと」を通じて福島12市町村内外で活動するゲストがトークセッションとパネルディスカッションを行い、第2部では参加者とゲストによる座談会と、ふくしま12市町村移住支援センターや各市町村の移住担当者との個別相談会を開催。さらに特別企画として「福島12市町村であなたの新たな『物語』を描こう!移住・キャリアワークショップ」も行われました。

    ゲストの現地で暮らすリアルな声から、福島12市町村の新しい魅力と可能性を知り、移住後の生活イメージを具体化できる、充実した内容のセミナーとなりました。

    第1部 ゲストによる活動紹介/パネルディスカッション

    ~大熊町と若者をつなぐ架け橋になりたい~
    谷田川佐和さん / 株式会社Oriai

    1997年生まれ、東京都出身。大学在学中は「一般社団法人ことば」のスタッフとして、岩手県沿岸部で異世代間交流を促進するボランティア活動に従事。2018年には同法人の理事に就任する。コロナ禍で岩手県での活動ができなくなったタイミングで「株式会社Oriai」の活動に参画。福島県大熊町で「おおくまハチドリプロジェクト」のスタートアップに携わる。2022年、25歳で正式にOriaiに入社。東京から大熊町に移住し、町民と協力しながら本格的に町の復興・再生に携わるようになる。

    <谷田川さん>
    私の東日本大震災の被災地との出会いは、高校生時代に遡ります。学校の教頭先生が、津波被害のあった宮城県女川町の出身で、全校朝礼で先生のご実家が全壊した写真などを見せてくださいました。大学生になってからは、岩手県沿岸部の津波で被災した地域の子どもと、一緒に遊ぶボランティアにも参加しました。被災したけれども、前を向いてエネルギッシュに生きている子どもたちに感銘を受けて、東北地方に愛着が湧いたんです!

    それから、岩手県を中心に一般社団法人を運営したり、地方起業家を育成する法人で仕事をしたりしながら、少しずつ生計を立てられるようになりました。その後、コロナ禍をきっかけに、福島県大熊町で開催された「おおくまハチドリプロジェクト」に関わるようになりました。大熊町は原発があった地域で、帰還困難区域と呼ばれる場所があります。そこに、全国の学生を招き、ありのままの姿を見てもらい、何ができるかを考え、実行していくアイデアソンを行いました。大熊町の内外の人々が、フラットな関係で積極的に町の存続などに取り組まれる様子が、とても面白くて嬉しかったんですよね!このプロジェクトを契機に、大熊町にたくさんの魅力を感じたことと、自分自身のキャリアにとってももっと挑戦が必要だと考えて、移住しました。

    スーパーや娯楽も少ない地域ですが、若者の移住やUターンが多く、さまざまなモノを何でも受け入れてくれる度量を町から感じます…! なので、なにかにチャレンジしたいと考えている人にとってはとっても楽しい町だと思います。ないモノのほうが多い町ですが、学ぶ姿勢を持つこと、自分の何かをしたいという”want”を見つけ、コミュニケーションを諦めないこと、そして不確かさを楽しむ ことを大事にしています。

    これから、大熊町に来られる方は全力でサポートさせていただきますので、ぜひお越しください!

    ~浪江町で仕事も地域貢献も叶えたい~
    千頭数也さん / 都内IT会社勤務

    東京都出身。アイドルの追っかけで訪れた浪江町に惚れ込み移住を決意。都内のIT企業に籍を置きながら、2022年10月に浪江町に移住。平日はフルリモートで仕事し、週末は仲良くなった町の人々とボランティアや地域おこしの企画に勤しむ。最近の楽しみは、町内や双葉郡内の飲み屋さんを巡り、多彩なバックグラウンドを持つ人々と交流すること。

    <千頭さん>
    私は、いま都内のIT企業に在籍していますが、昨年の10月から福島県浪江町に移住しており、仕事はフルリモートで行っています。これは、世を忍ぶ仮の姿でして…(笑)。実は、アイドルを追っかけてニューヨークに行ってしまうほどのアイドルオタクなんです。そして、移住のきっかけがアイドルだったんですよね!

    2022年4月に、浪江町を含めて3つの自治体共催のアイドルのライブがあり、浪江町に3泊4日で宿泊をしました。浪江町の方々と交流してみると、人情に厚くとても前向きな人が多い! そうした部分にとても共感して、何度か浪江町に足を運ぶ機会が増えて、ついに移住しちゃいました。リアルな浪江町を少しご紹介しますと、町内のコワーキングスペースに行けば、若い人やお年寄りの方々がわいわい賑やかに活動されています。また、地方と言えば車社会ですが、実は私は免許を持っていません。町内で、日産自動車のモビリティ事業が展開されていて、車を持っていなくても生活出来てしまう仕組みがあります。車があるとより便利ではありますが。

    浪江町は、ポジティブな意味で “複雑な地域” です。原発の事故後、中央官庁、大企業、帰還者、移住者などいろんなバックグラウンドの人々が浪江町に入ってきています。でも、属性による垣根みたいなものが全然なくて、僕が考えたボランティア企画に、老若男女50人くらいがすぐに集まってくれるんですよね。自分のアクションに、すぐにリアクションを返してくれるのが浪江町の魅力です!そんな浪江町で暮らすうえで大事なことは、地元の方々との交流を通じて可愛がられたり、ときには巻き込まれたりを全力で楽しむことだと思います。

    ~和太鼓で川俣町の情報発信や心の復興を実現したい~
    遠藤元気さん / 山木屋太鼓

    福島県川俣町山木屋出身。和太鼓に魅せられ、10 歳から和太鼓を始める。東日本大震災を機にソロ和太鼓奏者として活動を始め、福島から発信する和太鼓の音色を大切に、国内外で演奏をしている。また 2001 年に発足した地元の和太鼓団体「山木屋太鼓」の会長も務め、故郷と人を繋ぐ活動、子供の育成にも力を注いでいる。和太鼓活動の経験やご縁を生かし、母校を含めた複数の学校、団体での指導や作曲も行っている。

    <遠藤さん>
    移住などを中心に、福島12市町村にこれだけの方が興味を持っていただけていることを本当に嬉しく思います。私は、福島県川俣町の山木屋地区出身なので、現地に生まれ育った一人の意見として本日はお聞きいただければと思います。

    冒頭で、私が演奏した太鼓は山木屋太鼓と言いまして、地域に根ざす若者の育成や発展を目的に結成されました。震災を機に、川俣町の山木屋地区は避難区域になってしまったんですね。太鼓が大好きな自分にとっては、太鼓を続けられないことは本当に不安でした。それならば、自分がどうにかしなければと思い和太鼓の道に進み、太鼓を通じた心の復興をテーマに活動しています。

    これから移住を考えていらっしゃる方に、「地元の人はこんなことを大事にしてますよ」ということをお伝えできればいいのかなと思います。それぞれのペースがあると思いますが、自分のペースを大事にしています。また、空間やスペースが、心が休まる居場所かどうかも非常に重要です。そうした環境のなかで、自分の好きなことをとことんやりながら、自分のことも好きになり、地域のことも好きになり関わっています。”当たり前”に感謝し、川俣町内外のご縁を大切にしながら、今後も自分自身に挑戦してゆきたいと思います。

    太鼓以外にも、非常に魅力のある町ですので、ぜひ遊びに来てくださいね!

    ~古民家を拠点に人と人、文化をつなぎ魅力を発信したい~
    志賀風夏さん / 秋風舎代表

    福島県川内村出身。陶芸家の両親のもとに生まれ、高校1年生の時に県立相馬高校で震災を経験。福島大学を中退後2017年に帰村し、かわうち草野心平記念館の管理人として活動する傍ら帰村した数少ない若者として村の景観づくり会議、校章選考会議や新庁舎会議など川内村役場主催の会議にも参加。EDIT LOCAL LABORATORY、川内村未来デザイン会議に会員として参加し、川内コミュニティ未来プロジェクトの会長も務める。現在は築200年の古民家を改装したカフェ&ギャラリー秋風舎を運営している。

    <志賀さん>
    私も遠藤さんのように、自分の地元である福島県川内村に住んでいます。被災後の翌年から全村帰還できるようになりましたので、他の地域とは比べて元の生活が残っています。元々は美術系の学校に在籍していたのですが、スランプに陥ってしまい地元に戻ってきました。どん底にいた私を、ただそこにいるだけで村の人たちは本当に暖かく迎えてくれたんです。

    地元に戻ってきたタイミングで、かわうち草野心平記念館「天山文庫」という文学館で働き始めて、いまは秋風舎というカフェ&ギャラリーも運営しています。秋風舎でカフェ&ギャラリーを立ち上げた理由は、若者の集まる場所がない、農作物を提供する場所がないなどの、さまざまな課題を解決できる場所にしたいと考えたからです。また、田舎の人たちは謙遜して地元のイメージを「こんなところ」と下げてしまうんですね。「なにもない田舎」から「素敵なものがいっぱいある田舎」にイメージを変えたい、そんな想いもありました。その甲斐があってか、私の予想を超えて秋風舎にはたくさんの地元の方たちが集まってきてくださるようになりました。

    私より前に、ゲスト3名のお話しがありましたが、「なにかやりたいことがある人が移住するんだな」と思って欲しくはないです。私も、まさか自分がカフェをやるとは思っていませんでした。ただ、ずっと川内村で過ごすなかで「こんなことがあったらいいのにな」とモヤモヤを抱えていました。川内村のすごいところは、そのモヤモヤを口に出すと、大人が寄ってたかって応援してくれるんですよね(笑)。なので、ふらっと自然を見に来るとか、とりあえず行ってみるみたいな、軽い気持ちで来ていただけたらいいなと思います。

    パネルディスカッション

    —移住をしたとき、もしくは地元に戻ってきたときはいかがでしたか?

    <千頭さん>
    私は車を持ってるわけではなかったので、本当に普通の引っ越しみたいな感じでしたね。ただ、あまり移住支援制度を知らず、町役場の人から「移住支援金は申請しましたか?」と声をかけられて、その準備などをしました(笑)。

    <谷田川さん>
    12市町村へのシンプルな単身の移住ですと120万円まで補助が出ますからね。かくいう私も、申請をして自家用車への購入資金に充てました。移住のまとまった資金がない、私のような若者でもそういった制度によって移住が近づくのは良いことですよね。

    <遠藤さん>
    私の場合は、6年間避難して戻ってきましたが、何も変わってなかったというのが素直な感想でしたね。生まれ育ってきた場所が、本来の自然に戻っただけと言いますか…自然の力強さに逆に勇気をもらいましたね。

    —福島県でビジネスをはじめるにはどうすれば良いのでしょうか?

    <志賀さん>
    起業をしたのですが、起業をするノウハウがまったくなく、数字にも弱い人間で困ったなと思っていたのですが、川内村とお隣の田村市がやっている「田村市人材育成塾」という起業家や起業中の方向けのサポート制度を利用しました。起業のノウハウやアイデアを具現化する方法、収支計画をどうするのかなどを半年間教えていただきました。3年前にその制度を卒業したのですが、いまでもサポートが続いてるところがすごいと思いますね。未だに気にかけてくださって、事業をブラッシュアップできています。福島県内の補助金や女性向けの補助金などいろいろと使って、理解者の方も得ながら古民家修繕をしていたりします。

    <千頭さん>
    まずは、浪江の人と触れ合ってほしいですね。コワーキングスペースがありまして、いろんな人が集まっていて、こんな人がいるんだなーというのがよく分かると思います。また、まちづくりなみえという場所がありまして、そこで相談するのが良いかもしれません。僕にお声がけいただければアテンドします!

    —各市町村の魅力を教えてください!

    <志賀さん>
    川内村は自然に関するアクティビティが多くて、キャンプや釣り堀、温泉もあるので、一日中自然を満喫できると思います! 移住者向けの方々に向けて、つい最近お試し居住用のトレーラーハウスの運用もはじまり、格安で用意されております。

    <遠藤さん>
    川俣町には、ぜひ美味しい軍鶏(しゃも)を食べに来てください! 冬になると田んぼのスケートリンクなんかもできます。また、中南米由来のフォルクローレという音楽文化もあります。川俣町は、なかなか変わった町なんですよね。入り混じった文化と自然を体験しに来てくださると嬉しいです。

    <谷田川さん>
    大熊町は、実はまだレジャーがほとんどありません…! どちらかというと、スタディーツアーなどが多いのかなという印象です。でも、私が働いている古民家の再生プロジェクトや特産品だったキウイの再生プロジェクトなど、イベントベースの体験がたくさんあるので、ボランティア的に関わり始めるのがおすすめです。大熊町サポーターズというオンラインコミュニティもあるので、これからみなさんとエンターテイメントを作っていきます!

    —みなさんが住む市町村に来たい方に、メッセージをお願いします!

    <志賀さん>
    川内村は、自然や里山が残っている地域なので、ゆっくり自分のペースで生きられる町だと思います。雑草との闘いもありますが(笑)。人と関わって生きていきたい人ではなくても、暖かく迎え入れられるのが川内村だと思います。

    <遠藤さん>
    私が太鼓をやっていることもありますが、祭りの時期にはぜひ来てください。8月には、絵本の語り部と太鼓、お琴、尺八のイベントがあったり、からりこフェスタというお祭りもあったりと賑やかです。そうしたところから町の魅力を知ってくれると嬉しいです。

    <千頭さん>
    浪江町にいま住まれている方は、被災から立ち上がり、前を向いてる方が本当に多いです。いるだけでも、エネルギーをもらえる町だと思います。特殊な能力は、一切必要ありません。エネルギーがある町が少しでも良いなと思う人には、とても合う町だと思います。

    <谷田川さん>
    大熊町は未だ帰還困難区域が残っています。建物が取り壊され、同時に新しいものが建設されている真っ最中です。1カ月あれば町の景色が変わるような所なんですね。仕事の内容を決めてくるとか、起業しなきゃとか決めてくる必要はなく、むしろ何かを探しに町に来てくださったら嬉しいです。

    第2部 座談会・個別相談会

    第2部では、参加者が話を聞きたいゲストのもとに集まる座談会形式で直接質問をしたり、個別相談ブースでは移住担当スタッフに具体的な相談をすることで、より福島12市町村への移住に関して深掘りできる時間となりました。

    「リモートワーク等で仕事を進めるための、ネットワーク環境はどうですか?」、「どうやって地域の人と繋がるのか?」と、生活の実践的な部分への質問が千頭さんのグループでは多くありました。千頭さんは「コワーキングなどを使うことでネット環境も問題なく働くことができます」といった実践的な回答や、「フットワークを軽くして町のイベントに参加したり、ボランティアに行けば行くほどさらにいろんな所に巻き込まれます(笑)」と、日々の暮らしを楽しむアドバイスを交えながら回答されていました。

    志賀さんのグループでは、ご本人だけではなく、会場にいらっしゃった市町村移住担当者も加わり、質問や意見に真摯に回答なさっていました。さらに、実際の補助金の制度などを詳しく質問している参加者もいらっしゃり、具体的な事業のイメージを持っている方も。

    個別相談会では移住に向けてより個人的な質問をする参加者が多く見られ、ふくしま12市町村移住支援センター職員がそれぞれの質問に一つずつ回答しました。

    特別企画!福島12市町村であなたの新たな「物語」を描こう!移住・キャリアワークショップ

    座談会・個別相談会の終了後、特別企画として自分の未来を想像しながら移住・キャリアを描くワークショップが開催されました! 「15年後のある日の一日」と「15年後のわたしの設定」をテーマに、今回のセミナーを通して参加者の心の中に生じた変化や、想いを掘り下げていきました。

    今年度、全6回にわたって開催される移住セミナー『はじめよう、私とふくしまの小さな物語。』の初回となる今回は、参加者の皆さまに積極的に座談会やワークショップにもご参加いただき、参加者と福島12市町村、そしてゲストの皆さまとの間にいくつもの「つながり」が生まれた、大変有意義な回となりました。

    今年度に開催予定の未来ワークふくしま移住セミナーに関する最新情報は特設サイトよりご覧ください。皆さまのご参加を心よりお待ちしております!

    第7回セミナーのダイジェスト・全編動画を公開しています (YouTube)

    ダイジェスト版 (全編動画はこちらからご覧ください)

    ■2023年度未来ワークふくしま移住セミナーの特設サイトはこちら
    https://mirai-work.life/lp/seminar2023/

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