支援制度

1年に14日間利用できる楢葉町「お試し住宅」

2023年9月5日

移住先の生活環境が体感できる「お試し住宅」は、福島12市町村内でも多くの市町村で用意されている移住支援制度です。今回は、サッカーのナショナルトレーニングセンター「Jヴィレッジ」などスポーツ施設が充実しており、キャンプや海でのレジャーも楽しめる楢葉町のお試し住宅を紹介します。商業施設や交流施設などが集まるコンパクトタウン「笑ふるタウンならは」の中にある利便性の高い場所に立地しており、町で暮らす人の流れを感じられます。

コンパクトタウン内にあるため利便性◎

まず訪れたのは常磐線のJR木戸駅から徒歩3分の場所で、楢葉町の移住相談窓口がある「ならはスタートアップ・プレイスCODOU/コドウ」(以下、CODOU)。ここに、今回お試し住宅を案内してくださる一般社団法人ならはみらいteamCODOUの山口政義さん(写真右)と菊地陽子さん(同左)がいらっしゃいます。CODOUは楢葉町お試し住宅を利用する際の窓口にもなっていて、2人は管理・運営も担当しています。

お試し住宅は、CODOUから北に5分ほど車を走らせた先にあるコンパクトタウン「笑ふるタウンならは」内にあります。ここは、スーパーマーケットや飲食店がある商業施設「ここなら笑店街」、楢葉町の復興のシンボルで、ワークスペースも設置されている交流施設「みんなの交流館ならはCANvas」、郵便局、医療機関、災害公営住宅などが集まる楢葉町の中心地。楢葉町のお試し住宅は、災害公営住宅のうち3戸を活用し提供されています。

それでは、中に入ってみましょう。

間取りは2LDK。畳の部屋やソファもあるのでリラックスして過ごせます。日当たりも良く、大きな窓からは街路樹の美しい緑が見渡せます。商業施設の近くにありながら、とても静かな場所です。

リビングと和室の襖を閉めれば、リビング以外に独立した部屋が2つできるため、家族等での利用時にはスペースを分けて滞在できます。寝具は貸布団を利用しているため、利用者が変わるたびに入れ替えています。

キッチンには、食器や調理器具、電子レンジ、電気ケトルなどが用意されているため、調理に不自由はありません。「ここなら笑店街」にはスーパーマーケットの「ブイチェーンネモト」もあるため、地場産の野菜や毎朝いわき市の魚市場から仕入れる海産物などを調理して楽しむのもおすすめです。

洗濯機やドライヤーなど、生活に必要な家電は用意されています。ただし、シャンプーやせっけん、洗濯洗剤、タオルなどの消耗品は準備が必要です。

まちを良く知り、やりたいことを進められる時間に

お試し住宅を利用したい場合は、CODOUに利用を申し込み頂き、その後CODOUスタッフから電話で利用目的のヒアリングを受けます。ヒアリングでは移住後にどんな暮らしがしたいのか、そのためにお試し住宅の利用中にどんな活動ができるかなどを共有して頂きます。希望があれば町内を案内してもらったり、人を紹介してもらうこともできます。「町のイベントにスタッフとして参加してつながりをつくりたい」「テレワーク環境を確かめるためにコワーキングスペースを案内してほしい」などの要望に応えたケースもあったそうです。

このヒアリングは、菊地さんが担当することが多いそうで「相談者が楢葉町に移住する、移住しないに関わらず、楢葉町のことを知って、町でやりたいことを進めるための時間にしてほしい。だからこそ、ミスマッチを防ぐために、暮らしの不便なところも伝えるようにしています」と菊地さんは話します。

楢葉町は今のところ町内だけで買い物や医療などすべてを完結できる生活環境ではなく、行動範囲はいわき市や近隣市町村にまで広がる車社会です。「車がなくてもある程度の生活はできるかもしれませんが、急病など緊急時の対応を考えると車があったほうが安心ですね」と山口さん。自家用車か、お試し住宅から徒歩15分のJR竜田駅前でレンタカーを借りて過ごしてみると、よりリアルな生活環境が見えてくるはずです。

お試し住宅制度は2022年10月にスタート。2023年7月までに15件ほどの利用があり、そのうち単身の2人がそれぞれ実際に移住しました。就職のため町内の企業で面接を受けるタイミングで利用したといいます。

楢葉町のお試し住宅の特長は、年度内14日間の範囲で回数を分けて利用できること。例えば、7日間はまちの様子や暮らしを体感するのに活用し、移住を決めた後は3日で住まい探し、4日で仕事探し…など、活用方法はさまざまです。

「誰かの応援をしていたい」。理想に近い生活へ伴走する担当者

明るく、はつらつとした印象の菊地さんは相談員として中心的な役割を担っており、移住者からもよく頼られているそうです。静岡県出身で、結婚を機にいわき市へ移り住んだ後は大学で学生支援の仕事をしていましたが、元上司からの誘いを機に任期付きで楢葉町役場に就職。東日本大震災後、勤務先には役場の「いわき出張所」が、自宅のすぐそばには仮設住宅が設けられていたことからもともと町との関わりはあったのだそう。役場では移住担当の部署に所属し、2022年に一般社団法人ならはみらいに転職しました。現在も自宅のあるいわき市から片道約40分かけて通勤しています。

「大学退職後、初めて楢葉町を訪れたのは、避難指示が解除されて『笑ふるタウン』や『ならはスカイアリーナ』ができはじめた時期。町の勢いを間近で見て純粋に楽しそうだと感じ、楢葉町で仕事をすることに決めました。私は基本、誰かの応援をしていたい人。移住という大きな決断の前後をサポートするこの仕事に、とてもやりがいを持っています」

移住希望者の理想に近い生活の実現に向けて伴走する担当者のサポートを受けながら、まちでの暮らしを体感できる楢葉町のお試し住宅。楢葉町への移住を検討している人は、ぜひ気軽に利用してみてはいかがでしょうか。

お試し住宅の詳しい情報はこちらをご覧ください。
https://kurasu-naraha.jp/support#trial

福島12市町村で提供しているお試し住宅は以下の記事でもご紹介しています。
https://mirai-work.life/magazine/1360/


■楢葉町移住相談窓口
住所:双葉郡楢葉町大字下小塙字久保田63-3 楢葉町地域活動拠点施設 まざらっせ内
Tel:0240-23-6271
Email:info-codou@narahamirai.com
営業時間:9:00〜17:00
定休日:日・祝・年末年始・第2・第4水曜日は休館
https://try-naraha.jp/
※2024年5月より、ならはスタートアップ・プレイス CODOU/コドウ から移転しました。

※所属や内容、支援制度は取材当時のものです。最新の支援制度については楢葉町移住相談窓口にお問い合わせください。
取材・文 五十嵐秋音