双葉に多くの「再び」を。リトリート型ホテルFUTATABI FUTABA FUKUSHIMAが生み出す人と地域の新しいつながり

2026年6月、福島県双葉町に、98の客室とスパ&サウナ、レストラン、約2,000冊の蔵書を誇るライブラリー、さらに大規模な会議や研修にも対応できるカンファレンス機能を備えたリトリート型ホテル、FUTATABI FUTABA FUKUSHIMAが開業しました。リトリート(retreat)型ホテルとは、日常の忙しさから離れ、心身を回復させることを目的に滞在するホテルです。
このホテルが目指すのは、訪れた人に快適な宿泊を提供することだけではありません。キーワードは、その名にあるとおり「再び」。ゼネラルマネージャーの練生川裕一(ねりうがわ ゆういち)さんに館内をご案内いただきながら、ホテルに込められた想いを聞きました。
※アイキャッチ画像はFUTATABI FUTABA FUKUSHIMA提供
再生・再会・再訪。3つの「再び」を名前に込めて
2011年の東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故によって全町避難を経験した双葉町。2020年3月に9年ぶりに町の一部で避難指示が解除されて以降、復興や新しい産業の創出に向けてさまざまな人や企業が町に関わっています。一方、住民の帰還においては、長い避難生活のなかで町外に新たな生活の拠点を築くなどして、故郷へ戻りたいと思いながらも簡単には戻れない人も少なくありません。
FUTATABI FUTABA FUKUSHIMAのコンセプトは、そうした町の状況を踏まえ、この地に関わりをもつ人、この地に興味をもつ人、仕事で訪ねる人など、双葉町のこれからに関わるすべての人が快適に過ごせる場所を作ること。ホテル名は、そのコンセプトのもと、ホテルとして目指す未来の姿から着想し決められました。

「FUTATABI」は、3つの「再び」=再生・再会・再訪を意味しています。再生は、震災と原発事故によって大きく姿を変えた地域に産業や人の営みをもう一度生み出していくこと。再会は、双葉町を離れて暮らす人たちやこの地域に関わりをもつ人たちが再びこの地に集まることができる場所となること。そして再訪は、一度この地を訪れた人が「もう一度ここに来たい」と思える施設を目指すことです。
とりわけ再会という言葉には、「ホテルとしてこの地域で果たしたい役割が色濃く込められている」と練生川さんは話します。
「震災から15年以上が経ち、当時の双葉町で小中学生だった子どもたちも結婚し家庭を築く世代になりました。故郷を離れて暮らしていても、彼らやその家族にとって双葉町が故郷であることは変わりません。結婚式など、人生の門出を祝う集まりは、その故郷に想いを馳せるこれ以上ない機会です。親御さんやおじいちゃんおばあちゃんを迎えてここで式を挙げたり、結納の会食をしたり。そうした晴れの場面で“再び”の機会を提供することに、このホテルは必ず貢献できると思っています」

地域の雇用創出にも貢献し「再生」を後押ししたい
一方、この地域にはもともと大きな観光資源がなく、JR常磐線や常磐自動車道を使って仙台市やいわき市へ向かう人にとっては単なる通過点に過ぎませんでした。しかし、ホテル自体が目的地となるだけの価値を提供できれば、「この地に関わりをもたない人に対しても“再び”を提供できるはず」と練生川さんは言います。
太平洋が一望できる最上階のスパやサウナ、2,000冊の蔵書を誇るライブラリー「ふたばの本棚」、福島県沖の海で穫れた「常磐もの」の魚や新鮮な野菜といった、海の幸にも山の幸にも恵まれた福島県ならではの食材を調理し届けるレストラン「~The Local Grill~Umino Yamano」など、1泊ではそのすべてを味わいきれないほど、FUTATABI FUTABA FUKUSHIMAはアクティビティにあふれています。それほどの要素を一つのホテルに詰め込んだのは、一度だけでなく何度もここに足を運び、その再訪のなかで地域や地域の人々と触れ合う時間を作ってほしいという想いがあるからです。

「このホテルが生まれ、長い滞在が可能になったことを一つのスタートにして、双葉町はもちろん、富岡町、大熊町、浪江町といった近隣の町、さらには福島12市町村全体ともつながっていただく。その拠点として活用いただければと思っています」
さらに、ホテルの開業が今後地域にもたらすものとして期待されるのが、雇用です。ホテルでは2026年9月現在、約60名のスタッフが働いており、今後も増員を予定しています。全体の7~8割は双葉町を中心に福島県内出身、または福島県に関わりのあるスタッフだそうですが、「このホテルで働きたい」と県外から双葉町に移住したスタッフもいるそうです。
「ルーツのない場所に自らの意志で移り住み、このホテルで多くのゲストを迎える彼らの姿には、この地でこの仕事をまっとうすることへの覚悟が表れています。地元の方からは見えづらい、移住者の立場だからこその視点で、この地域の魅力を伝える存在になってほしいと願っています」

ホテルという一つの新しい施設が生まれることで、そこに新しい仕事が生まれる。それによって住民が帰ってくる。あるいは、これまで地域との接点がなかった人が移住する。そして、そこで働く人が地域の魅力を外へ伝えることで、さらなる人の流れが生まれる。この循環が実現すれば、それはそのまま、ホテルが目指す地域の「再生」につながっていくはずです。
「新しいことを始めたい」双葉町はそんな人を応援してくれる町

北海道出身で、双葉町に来る以前は東京で働いていたという練生川さん。双葉町に関わるようになって感じた地域の魅力について、「余分なものがないこと」と話します。
「生活も人付き合いも、あらゆることが非常にシンプルだと感じます。地元の方は、よくも悪くも言葉がストレート。最初はちょっと驚きましたが、それもシンプルさゆえであり、その方がもつ素直さや優しさをそのまま表現してくださったものなのだと感じています」

もう一つ、練生川さんが感じているのは、新しいことに挑戦する人を受け入れる地域性。復興に向けたあらゆる取り組みをおおらかに受け入れる懐の深さが双葉町の人々にはあると言います。
「新しいことをスタートさせようとする人を応援してくれる雰囲気を常に感じます。なぜ移住するのか、何をしたいのかは人それぞれですが、この地域に根ざす覚悟をもち移住する方ならきっと応援してもらえるはずです。移住を考えているなら、まずはここに足を運び、その地域性を肌で感じてほしいですね」
移住先を考えるとき、仕事や住まい、支援制度など、知るべき情報の多くはインターネットでも手に入ります。しかし、その地域の空気や人との距離感、自分がそこで暮らしている姿を想像できるかどうかは、実際に現地を訪ねてみなければ分かりません。
その際の滞在先には、各市町村が開設する移住体験住宅があります。移住相談員などのサポートを受けながらコストを抑えて滞在し、現地での実際の暮らしを体験できる施設です。それに加えて民間の宿泊施設も利用すれば、より深い町の姿に触れたり、地域で働く人と出会ったり、どんな仕事や暮らしがあるのかを知ったりできるはず。ふくしま12市町村移住支援交通費等補助金を活用すれば、宿泊費の一部補助も受けられます。
心と体を癒やすリトリート型ホテル、FUTATABI FUTABA FUKUSHIMA。双葉町や福島12市町村をもっと知りたい。静かな海沿いで自分の今後の暮らしを見つめなおしたい。そんなふうに思ったら、ぜひ一度訪ねてみてはいかがでしょうか。

■FUTATABI FUTABA FUKUSHIMA
所在地:〒979-1401 福島県双葉郡双葉町大字中野字宮ノ脇1番
TEL:0240-23-7440
HP:https://www.futatabi-futaba-fukushima.com
Instagram:https://www.instagram.com/futatabi_futaba
※所属や内容は取材当時のものです。
文・写真:髙橋晃浩