生活・その他

夢を叶えるオールインワン教育 田村市「福島県立あぶくま柏鵬高等学校」

2026年7月8日

豊かな自然と温かな地域のつながりに支えられながら、生徒たちがのびのびと学ぶ福島県立あぶくま柏鵬高校。令和8年4月に旧船引高校と旧小野高校の統合によって誕生したこの学校では、一人ひとりの個性を尊重し、多様な進路や夢の実現を支える教育が行われています。田母神 賢一(たもがみ けんいち)校長に、学校の魅力や取り組みを伺いました。

豊かな自然と、温かな地域の目に恵まれた環境

あぶくま柏鵬高校では、旧船引高校を本校舎、旧小野高校を小野校舎として活用しており、2026年6月26日現在、本校舎には221名、小野校舎には52名が通学しています。

今回取材で訪れたのは本校舎です。校舎の南側には広々としたグラウンドが整備されています。目の前にそびえる片曽根山は別名・田村富士と呼ばれ、その雄大な姿は見る人の心を穏やかにしてくれます。

あぶくま柏鵬高校の特色のひとつは、広い地域から生徒が通っていることです。田村市全域にとどまらず、郡山市や近隣市町村からも生徒が通っています。JR磐越東線で電車通学する生徒と保護者による送迎で通学している生徒が過半数を占めており、通学時間は30分~60分ほどの生徒が多いそうです。

JR船引駅方面と校舎を結ぶ学園通りを生徒たちが行き交う風景は、地域の日常の一コマです。「通学路を、地域の方々が見守ってくださっている安心感があります」と、田母神校長。その言葉から、地域と学校とがこれまで築いてきた関係性の温かさが感じられました。

正面玄関では、生徒が制作した田村市の伝統的な守り神「お人形様」のオブジェが出迎えてくれる

校内を案内してもらった際、校舎3階の窓を開けると爽やかな風が通り抜け、鳥のさえずりが近くから聞こえてきました。授業中、黒板をじっと見つめる生徒たちの表情は真剣そのもの。和やかな会話が交わされる場面では、生徒と教員との間に垣根はなく、教室にはやわらかな一体感が満ちていました。

ふと各教室の入り口に目をやると、小さな切り花が飾られていました。華道部と教員によるコラボレーションだそうです。「どうすれば学校生活がより楽しいものになるのか」と交わされた対話の積み重ねが、校舎の各所に息づいているのを感じました。

心のままに挑戦できる寛容な風土

田母神賢一校長

学校の魅力について田母神校長に伺うと、返ってきたのは「生徒たちのすばらしさ」という言葉でした。素直で、どんなことにも一生懸命に向き合う生徒が多いと話します。

「過去に地域ボランティアへの参加希望を募った際には、多くの生徒が自ら手を挙げ、最終的には80名にのぼる生徒が参加しました。生徒たちの、自身で活動の意義を見出し、主体的に行動できる力には、目を見張るものがあります」

制服ブレザー前合わせの右前・左前、スラックスとスカートの選択は生徒自身の意思で決める

また、生徒たちが「やりたい」という気持ちを臆せず表すことができるのは、それぞれの個性を尊重する風土が統合前から両校に根づいていたからではと話します。

「多様性を寛容に受け入れる風土は、2校の統合によってより豊かになったのかもしれません。旧小野高校の校章に使われていた“柏”の葉、旧船引高校の校歌に使われていた“鵬”翼。2校の歴史を反映した“柏鵬”の名が表す通り、それぞれがこれまで築いてきた学校文化が、統合によって交じり合い、新たな校風をはぐくんでいます」

異なる文化や考え方を認め、価値観をアップデートしていく。統合という大きな変化を迎えた学校であるからこそ得られる学びがあります。

「夢」を実現する力をはぐくむカリキュラム

あぶくま柏鵬高校は、福島県の個別支援教育推進校に指定されています。個別支援教育とは、生徒一人ひとりが社会で自立して生きていく力をはぐくむため、個に寄り添ったきめ細やかな支援を切れ目なく行う教育のことです。その考え方をベースに、卒業時の進路実現だけでなく、その先の人生を豊かに生きるために必要な社会的資質や能力の育成を目指しています。そのために組まれたのが、幅広い進路に対応できるカリキュラムです。

1年次は、必修科目に加えて、生き方や働き方を考え進路を見つけるための科目「産業社会と人間」を履修し、自分の将来や社会との関わりについて考えます。2年次・3年次は、国・数・英・理・社の5教科を中心に学ぶ文理探究系列と、食農・6次化分野、情報技術分野、ビジネス分野、福祉・保育分野の4つの分野で知識や技術を磨くプロフェッショナル系列から、希望する学びを選択します。加えて、地域の企業や施設と連携し、実際の職場で働きながら学ぶ体験学習「あぶくま柏鵬高校デュアルシステム」を地域と連携して実施しています。

こうした学びは、4年制大学や短期大学、専門学校への進学はもちろん、民間企業への就職など、多様な進路選択につながっていきます。一人ひとりの夢や目標の実現を支えるオールインワンのカリキュラムです。

「生徒たちは、地域課題を自分ごととして捉え、現状を分析するだけでなく、自分たちにできる解決案を考えて、実践につなげていきます。統合前の両校が課題発掘型の探究学習を大切にしてきた歴史を受け継いだ取り組みです」

地域とともにわくわくを生み出す学校を目指して

かけがえのない高校生活の3年間。その貴重な時間をとおして生徒たちに伝えたいことを伺いました。

「それは校訓『自律・明朗闊達・共創』に込められています。解決にたどり着くまで問いを追い続けられる粘り強さ。他者と力を合わせ、新しい価値を生み出せるコミュニケーション能力。自らを律して判断し、相手を思いやる心。それぞれ、生徒たちがこれからの社会を生きていく上で大切な力だと考えています」

正面玄関前には開校からの活動の歩みが掲示されている

在学中だけでなく、高校卒業後の長い人生を見据え、その土台となる力をはぐくむこと。それが高校の使命だと田母神校長は続けます。

「教育を学校だけで完結するものとして捉えるのではなく、社会のなかで切れ目なく支えていく。その取り組みを通して、地域の未来を担う人材を育てたいと思っています」

地域とともに学び、地域とともに成長する。あぶくま柏鵬高校が描く未来には、生徒一人ひとりの可能性を広げる教育への想いが込められていました。


■福島県立あぶくま柏鵬高等学校
(本校舎)
所在地:〒963-4398 福島県田村市船引町船引字石崎15-3
TEL:0247-82-1511
HP:https://abukumahakuho-h.fcs.ed.jp/

(小野校舎)
所在地:〒963-3401 福島県田村郡小野町大字小野新町字宿ノ後63
TEL:0247-72-3171
HP:https://ono-h.fcs.ed.jp

※所属や内容は取材当時のものです。
取材・文:橋本華加 写真:古関マナミ