【移住体験ツアーレポートin相双エリア】親子で参加! ふくしま12市町村暮らし体験ツアー
2024年10月18日(金)~19日(土)に「親子で参加! ふくしま12市町村暮らし体験ツアー」が開催されました。首都圏や大阪府などから8組22名の親子が参加し、広野町、楢葉町、富岡町、大熊町、浪江町、南相馬市にある教育施設の魅力を見て回りました。この記事では、大熊町と浪江町を訪問した10月19日の様子をご紹介します。
一人ひとりに芽生える「好奇心」と「個性」を育む
「より良い子育て環境を求めて移住を考えたい」という思いを持つ方々が参加した今回のツアー。2日目は、大熊町立学び舎ゆめの森(以下、ゆめの森)からスタートしました。
ゆめの森は、認定こども園と小中一貫の義務教育学校(1~9年生)が一体となった教育施設で、0歳〜15歳の子どもたち約70人(2024年10月現在)が通っています。この日は南郷市兵(なんごういっぺい)校長が案内してくれました。
正面玄関から入ると、まず目に飛び込んできたのは「図書ひろば」。ぐるっと本棚で囲まれた空間で、入学式や卒業式などの催しはここで行われます。大熊町の成人式や演劇の公演など、地域に開かれた場としても使われており、階段状の本棚は客席にもなります。
教室は、図書ひろばを中心に放射状に配置されています。ゆめの森の教室はクラスごとに決まっているわけではなく、先生と生徒が相談して時間割ごとに授業を受ける場所や授業内容を決めています。このため図書ひろばの一角やテラスなどのあらゆる場所が教室となり、一つの場所にとらわれず授業が行われています。
「教師が黒板に書いたことを書き写す従来の教育方法は『勉強した』ように思えますが、書き写しただけで理解できていないこともあるかもしれません。ここでは、教師が児童・生徒それぞれの理解度を把握し、少人数ならではの寄り添った指導をしています」(南郷校長)
ゆめの森では、児童生徒が自分で学習計画を立て、自分のペースで学習を進める「自由進度学習」を取り入れています。理解が早い子はより深い学びが可能になり、理解がゆっくりめの子もじっくり取り組むことができるため、生徒それぞれに合った最適な学びが実現できるといいます。
在校生からも、「好きな場所で勉強できるのは楽しい」「すぐに質問できるし、わかるようになるまで教えてもらえる」といった声が上がっているのだそう。
さらに、校内には人体模型やドラムセット、卓球台や楽器が気軽に手に触れられる場所に置いてあります。興味をそそる「何か」が身近にあると、好奇心を養うことができるといいます。
「興味や関心を持った教科や得意分野を生徒一人ひとりが追求する機会があると、学ぶことのおもしろさに気づき、探究心が芽生えます。ゆめの森では、生徒たちの『知りたい』という思いを伸ばしながら成長を見守っています」(南郷校長)
参加者からは「高校進学時に、教室で授業を受けることに戸惑いがないか」「障がいのある子どもも受け入れてくれるのか」など、具体的な質問もありました。
南郷校長は「この学校で身につけられる自分で解決する力というものは、高校に進学してからも役立つのではないかと思います。この春に卒業した生徒も多少戸惑いがあったようですが、今ではすっかり慣れてしまったようです。特別な支援が必要な子どもも、通常学級で受け入れています。自由進度学習は自分の目標に合わせて学習を進められるため、本人も周りも安心して勉強を進めることができます」と答えていました。
2023年4月の開校から、ゆめの森には約40人の児童・生徒が増えました。在校生のうち、実に7割が移住してきた家族の子どもなのだそう。仕事の関係で移住してきたという人のほかにも、ゆめの森の校風や学習法に魅力を感じて移住を決めたという保護者もいるといいます。
移住前は不登校だった子どもが、ゆめの森に転入してからは生き生きと通学する姿もみられているとか。ゆめの森の特徴的な教育環境には、子どもたちの健やかな成長と可能性を広げる「教育移住」の受け皿としての期待が寄せられているようです。
ゆめの森についてはこちらの記事でも詳しくご紹介しています。
フェンスもチャイムもない学校。大熊町立 学び舎 ゆめの森のシームレスな学び
地元のグルメや特産品が揃う町のランドマーク
次の目的地は「道の駅なみえ」。こちらでランチタイムです。大人には、地元請戸漁港で水揚げされたシラスをたっぷりと使った「請戸産釜揚げシラス丼」と、B級グルメのコンテストでグランプリに輝いたこともある浪江町のソウルフード「なみえ焼きそば」のセット。子どもたちには「キッズカレーセット」が用意されました。
鮮度抜群のシラスと名物のなみえ焼きそばを味わった大人たちは、地元の味を堪能した様子。子どもたちもあっという間にカレーを平らげていました。
食事のあと、大人は地元の特産品などのお土産を購入。子どもたちは、広場にある「ラッキー公園 in なみえまち」へまっしぐら!ポケモンの「ラッキー」にちなんだ遊具で元気に遊んでいました。公園の片隅にはヒツジが2頭飼育されており、普段の生活ではなかなか出会えない動物にも興味津々の様子。道の駅なみえは屋内キッズルームも用意されており、天候に関わらず遊べるのはうれしいポイントです。
子どもと一緒に楽しめる道の駅なみえのおすすめポイントは、こちらの記事でも詳しくご紹介しています。
晴れでも雨でも子どもが遊べる施設が充実、浪江町の「道の駅なみえ」
縦横無尽に遊びまわれる「ふれあいげんきパーク」
続いて向かったのは、道の駅なみえから車で10分ほどの場所にある屋内アスレチック施設「ふれあいげんきパーク」。この施設は、JR浪江駅西側に位置する「ふれあいセンターなみえ」の敷地内にあるガラス張りが特徴的な建物です。
施設内は、子どもたちの年齢や興味、関心に合わせ、保護者の方も一緒に遊ぶことができる「わんぱくひろば」「すくすくひろば」「のびのびひろば」の3エリアに分かれているほか、ボルダリングスペースが設けられています。
入ってすぐにあるのは、大型アスレチックや空中ネット、飛んだり跳ねたりできるふわふわドームなど、のびのびと体を動かせる遊具が設置された「わんぱくひろば」です。
隣には、乳幼児や就学前の子どもも安全に遊ぶことができるハイハイコーナーやクッションブロック、ままごと用のキッチン小物などがそろう「すくすくひろば」があります。
奥にある「のびのびひろば」は、かけっこや鬼ごっこなど、自由に走りまわることができる広場になっています。
小学生以上から使用できるボルダリングスペースは、初心者から上級者まで楽しめるつくりで、子どもはもちろん、仕事帰りの大人にも人気。遊びの場としても本格的な練習の場としても利用者が絶えず、順番待ちの列ができる日もあるとか。
暑さや寒さ、天気のことも気にせず子どもを連れていける「ふれあいげんきパーク」は、子どもたちの遊び場としてだけでなく、大人も気軽に運動に取り組める町のホットスポットです!
楽しそうな学び舎に驚いた/移住への第一歩になった
最後に「道の駅南相馬」に立ち寄った一行は、旅の終着となるJR原ノ町駅へ。ツアーに参加したみなさんは、この2日間で移住への考え方をどう深めたのか、感想をご紹介します。
「都会にはない、のびのびと子育てができる環境や子どもの自主性を伸ばすための教育施設が整っていて、とても驚きました」(東京都、中学生1人・小学生2人と参加のお母さん)
「移住ツアーに参加したのは今回が初めてでしたが、すぐにでも移住したいという気持ちになりました。帰ったらもっと詳しく調べてみます」(埼玉県、未就学児2人と参加のお母さん)
「初めて浜通りに来ましたが、とても住みやすそうな環境で興味が湧きました。子どもがまだ小さいので検討したいです」(大阪府、未就学児2人と参加のお母さん)
「2日間のツアーで小さな子どもを持つ親同士、いろいろな話ができてとても有意義でした。移住について本格的に考える一歩になりました」 (東京都、小学生1人・未就学児1人と参加のお母さん)
ほかにも「子どもの個性を伸ばせそうな学校があるのは興味深い」「思っていたより生活がしやすそう」などの声がありました。
まとめ
今回のツアーでは、ゆめの森やふれあいげんきパーク以外にも、広野町のこども園「ひろぱーく」や福島県立ふたば未来学園中学校・高等学校、子ども向けのサッカースクールが行われている広野町・楢葉町のJヴィレッジ」など、子どもたちを育む環境を中心に見学しました。参加者にとっては、暮らしの環境や学びの環境、遊び場などを知り、家族に適した移住先を見つける良い機会になったようです。
2024年度の「未来ワークふくしま移住体験ツアー」は、2025年2月まで月1回開催予定です。
12月21日(土)~22日(日)は未就学のお子さんがいる世帯を対象に、飯舘村の「いいたて希望の里学園」や遊び場を巡るツアーを開催します。12月1日まで参加者を募集しています。
詳しくはこちらをご確認ください。
>https://mirai-work.life/lp/tour2024/
福島12市町村での子育てに役立つ情報はこちらをご覧ください。
>https://mirai-work.life/childcare/
※内容や所属は取材当時のものです
写真・文:和田学