生活・その他

初心者でも一人で馬に乗れるようになる!馬のまち・南相馬市の乗馬スポットを紹介

2024年9月11日

約400騎もの馬が行列をなす伝統文化行事「相馬野馬追」が行われる南相馬市は、馬のまちともいわれています。犬を飼うように馬を飼う家があったり、学校行事で馬と触れ合う機会があったりと、幼い頃から生活で馬を身近に感じてきた人も少なくありません。

そんな南相馬市には、誰でも馬を身近に感じ、乗馬ができるスポットがいくつかあります。今回ご案内するのは、初心者から一人で馬に乗れるレベルまでステップアップできるスポットです。初心者による乗馬体験レポートを交えながらご紹介しますので、レッスンの内容や施設の雰囲気を感じてみてくださいね。

目次

カリフォルニアライディング
一般社団法人HorseValue

①カリフォルニアライディング

最初に紹介するのは、原町区にある「カリフォルニアライディング」です。市内で飲食店を経営するオーナーが、「相馬野馬追に携わる機会がない人は、馬を身近に感じる機会も少ない」という声を聞いたことをきっかけに立ち上げました。乗馬体験や会員制のレッスンを行うほか、乗馬せずとも馬を身近に感じられるようにと、厩舎にはBBQができるキャンプサイトを併設しています。

今回は、ふくしま12市町村移住支援センターの廣田航歩(かずほ)さんが「園内お散歩コース」(税込6,000円)を体験。その様子をレポート形式でお届けします。子どもの頃、旅行先でポニーに乗って以来、乗馬はしていないという廣田さん。果たして、およそ30分間の乗馬体験でどのぐらい馬を乗りこなせるようになるのでしょうか…!?

厩舎にて、楽しみと緊張が混ざり合った様子の廣田さん

まずは身支度から。大がかりな準備はなく、夏であればTシャツにチノパンやジーンズといったラフな格好で乗馬することができます。ヘルメットなど、乗馬に必要な備品は全てレンタル可能で、追加料金もかかりません。

頭にフィットするヘルメットを選び、しっかりと装着
厩舎の奥では、インストラクターの相山さんが馬具をつけて準備

準備ができたら、囲いのある馬場(ばば)での散歩からスタートです。まずは乗り方から。「片足を鐙(あぶみ)にかけて、自転車に乗るようにまたがってください」と、インストラクターの相山由香さん。日常動作からイメージしやすい声かけで、廣田さんもスムーズに乗馬することができました。

無事に乗れた廣田さんはホッとして、嬉しそう

次は手綱(たづな)の握り方のレクチャーです。「馬に指示が伝わりやすくなるように、手綱は長く握りすぎず」「でも馬が苦しくはならないように」と、具体的かつなぜそうするのかを交えた説明が分かりやすいです。

そしていよいよ、歩き始めます。体験中は相山さんが手綱を引いてくれるので安心…..かと思いきや、しっかりと手綱を握る廣田さんの身体はまだ少し固いようにも見えます。でも、ゆっくりパカパカと歩き出してしまえば、だんだんと身体も表情もほぐれ、気持ちが良さそう。

「園内お散歩コース」では、馬への指示の出し方を教わることができるのがポイントの一つ。少し歩いたところで、最初のレッスンが始まります。歩いている馬を止める「停止」と、再び歩き始めさせる「発進」を習います。手綱を引き、「グー」と発すると馬は止まり、かかとでギューとお腹を圧迫すると歩き出します。相山さんの合図に合わせて、廣田さんは指示をマスター。歩いたり止まったりしながら、しばらく馬場をぐるぐると歩きました。

7月末の取材時、馬場の向こうには緑の田んぼと青空のコントラストがのびやかに広がっていた

2周ほどゆっくり周ったところで、次は左右への方向転換のレッスン。曲がりたい方向に手綱を引くと、馬の首もそちらに向く……そうなのですが、少し手こずっている様子の廣田さん。相山さんから、「手綱を引きながら目的地の方を見ると、指示が伝わりやすいですよ」とアドバイスが。人は、進行したい方向を向くと無意識の力が働くのだとか。それが馬に伝わると、すんなり方向転換できるそうです。

手綱はハンドル、足での圧迫はアクセルといった操作は「車の運転みたい」と廣田さん

スムーズにいかない場面は、相山さんのリードで進む場面も。終始明るく、前向きな言葉でフォローしてくれることもあってか、廣田さんも少しずつ馬に気持ち(指示)を伝えられるようになっていきます。

手綱での指示に慣れてきたところで、その場をぐるりと周る「周回」にチャレンジ。手綱を引っ張る力加減がポイントです。強く引きすぎると、馬は止まってしまいます。「止まった時には、発進を指示すればいいですよ」とアドバイスを受け、止まりながらも何度も挑戦する廣田さん。

最後は囲いの外へ!カリフォルニアライディングの園内をぐるりと回ります。砂地から芝生へ移ると、乗馬中の揺れ方も大きく変わります。山や海などで乗馬をする「トレッキング」の疑似体験になり、「園内お散歩コース」だからこそ味わえる楽しみです。

馬場外での乗馬から帰ってきた廣田さんは、どことなく晴れやかな表情

廣田さん「馬に乗ることは、純粋に楽しかったです。視線が高くなるので見える景色がまるで変わり、遠くまで見渡せました。馬にうまく気持ちを伝えられたら、もっと楽しいだろうと思います。指示を出すのは簡単ではないので、馬を自在に走らせられる野馬追に出る人はすごいなと思いました。もうちょっとやりたかった……!」

首や頭を撫でて、褒めたり、感謝を伝えたり。馬は、人の気持ちがわかる生き物です

相山さん「乗馬の定期的なレッスンを希望される方は、会員コースへのご入会をおすすめしています。上手になるためには少しずつ繰り返し乗ることが大事で、週2回くらい乗れるのがベストです。上達することの喜びはもちろんあると思いますが、乗馬にはそれぞれの楽しみ方があると思います。カリフォルニアライディングでは会員さん向けの小さな大会などもやっていて、そこで仲良くなられる方も多いんです。そうしたコミュニティの面白さもあるんじゃないでしょうか」

会員イベントで沖縄へトレッキングにで出かけた時の様子(写真:カリフォルニアライディング提供)

デイキャンプやBBQのついでに乗馬できる環境も、ここならではの楽しみ方。そんな時には、馬場を2周する「引き馬」コースでお試し乗馬がおすすめです。
乗馬がちょっと気になる方にも、アウトドアレジャーを楽しみたい方にもおすすめのカリフォルニアライディング。お一人でも、仲間や家族と一緒でも、ここに来れば動物たちや明るいスタッフのみなさんと楽しい時間が過ごせるはず。外でのレジャーが気持ちの良い季節に訪ねてみてはいかがでしょうか。

■カリフォルニアライディング
所在地:〒975-0059 福島県南相馬市原町区上太田石積248-1
電話:0244-26-9943
営業時間:7:00~17:00
定休日:火・水曜 ※キャンプサイトは不定休
HP:https://california-riding.jp/
※乗馬体験やキャンプサイトは要事前申し込み

②一般社団法人HorseValue

2つ目に紹介するのは、小高区に拠点を置く「一般社団法人Horse Value」。小高のまちなかを乗馬する「うまさんぽ」や海での乗馬体験「海トレッキング」といったレジャーから、15回のレッスンで一人で乗馬できるように考えられた「ホーススピードマスタートレーニング」など、体験者のニーズに合わせて馬と触れ合える機会をつくっています。

「馬と過ごす時間が楽しいものであってほしいんです」そう話すのはHorseValue代表理事の神瑛一郎(よういちろう)さん。ホーススピードマスタートレーニングの体験者は、最後のレッスンでパカラッ、パカラッと走れるようになるのだそう。レッスンはどんなプロセスで行われているのでしょうか?

(写真:HorseValue提供)

神さん「15回のレッスンを通して、一人で走れるようになることを目指しています。通常の速度で歩く並足(なみあし)から、少しスピードをあげた速足(はやあし)、最終的には勢いよく駆け足ができるまでを、5レッスンごとを目安にステップアップ。馬に乗って駆けてみたいというのが、お客様のニーズだと思うんですよね」

神さんをはじめ、レッスンを担当するHorseValueのメンバーはプロの馬術選手としての経験を持っています。細かくなりすぎず、必要な情報を取捨選択をしながら、馬と一体感をもって走れるようになるようレッスンを進めているそうです。

神さん「しがみつくように馬に乗るのではなく、身体の力が抜けた状態が上手な乗馬の姿勢。そのための身体の使い方や馬への気持ちの伝え方をレッスンでは教えています。馬の動きや気持ちを感じることを大事にしてほしいので、レッスンのなかでは馬術用語も使わないようにもしています」 

レッスン後には、動画を見ながら乗馬中の姿勢や馬の状態、乗っている時の馬の気持ちを客観的に振り返ります。馬術選手として長い時間を馬と過ごしてきた神さんたちだからこそ、感じ取れることもあるでしょう。身体の動きや馬の気持ち、感覚を言語化してフィードバックすることで、レッスン参加者は限られた回数でより成長を実感することができ、馬とも仲良くなっていくそうです。

動画での振り返りの様子。厩舎長の深野聖馬さん(写真左)もレッスンを担当(写真:HorseValue提供)

さらに、このレッスンでは馬の支度や手入れも一緒に習得できるように設計されています。馬具を装着させ、乗馬後の夏は馬を洗い、冬はブラッシングをする。そんな時間はさらに馬と距離が近づくことができ、毎回のレッスンを一段と有意義なものにしてくれそうです。「支度から手入れまでできれば、遊びに行った先に馬さえいれば乗馬ができるじゃないですか。ここで乗馬を習得して、どこででも馬と楽しめる人生が届けられたら嬉しいです」と神さん。

ちなみに、レッスンに必要なウェアや馬具は全て無料でレンタルできます。それでも、一人で乗れるようになってくると3割くらいの方はヘルメットやブーツを購入し始めるそうです。その際には、神さんおすすめの商品や購入先をぜひ聞いてみてください。

また、南相馬市でしかできない乗馬体験が、「小高うまさんぽ」や「海トレッキング」です。厩舎や馬場は、言ってしまえば全国どこにでもある環境ですが、囲いのある馬場から飛び出て乗馬できる環境はあまりないのが現状だそう。「まちなかなどで人が馬に乗っている姿が見られたら、馬を身近に感じてもらう機会を増やせるかなと思って。馬のまちって言われているのだし、そういう景色がつくれたらいいですよね」と神さん。気軽に乗馬体験してもらえるよう、体験価格もリーズナブルに設定。南相馬市に訪ねた人だけでなく、いつもと違う町の景色を見てみたい地元の人も、乗馬で非日常を味わえるかもしれません。

桜シーズンの「小高うまさんぽ」は景色も特別にきれい(写真:Horse Value提供)

■一般社団法人Horse Value
所在地:〒979-2164 福島県南相馬市小高区川房字南石名坂28-1
電話:050-7107-3874
営業時間:9:00~17:00
定休日:火曜日
HP:https://www.horsevalue.jp/

まとめ

それぞれのサービスの形と良さがある二つの乗馬施設ですが、共通しているのは、初心者・経験者を問わず、馬と一緒に楽しみながら乗馬を習えることではないでしょうか。乗馬だけを目的とせず、馬がいる環境も体感できる、馬のまち・南相馬市らしいスポットと、取材を通して感じました。

新しい趣味を始めたり、家族や仲間とワイワイ楽しんだり、そんな時間の候補に乗馬体験も加えてみてはいかがでしょうか。

※内容は取材当時のものです
文・写真 蒔田志保