移住者インタビュー

病院から介護施設への転職で看護師としてワークライフバランスを実現

2024年2月14日
南相馬市
  • 医療福祉
  • ふくしま12職場見学
  • 転職

  • Uターンのきっかけ
    転職のタイミングに合わせて、かねてからの目標だった福島への移住を決意
  • 職場としてのヨッシーランドの魅力
    チームワークの良さと、利用者を大切にする気風
  • 転職して良かったと思うこと
    ワークライフバランスが整い、利用者一人ひとりとていねいに向き合えるため、仕事にも生活にも充実感がある

大熊町出身の植村照美さんは小学5年生の時に東日本大震災を経験し、奈良県に避難しました。学校卒業後は奈良の病院で看護師をしていましたが、転職を考える中で「いつかは帰りたい」と考えていた福島県での就職を選択。2023年4月から南相馬市の介護老人保健施設ヨッシーランド(以下、ヨッシーランド)で働く植村さんに、移住と転職から感じたことを伺いました。

「いつか福島へ」を、転職のタイミングで実現

――転職をしようと思った経緯を教えてください

避難先の奈良県で看護師の資格を取得し、病院で3年ほど勤務しました。当時の目標は、「一人前の看護師になって故郷である福島へ戻り、復興の一助となること」そう思いつつも、なかなか実行に踏み切れなかったのは、「まだ一人前になれていない」という引け目があったからです。

担当していた内科急性期病棟では、重症度の高い患者さんの対応から退院後のサポートまで幅広い業務を任されていました。当時は「看護師は1年ほどで自立し、3年は働かないとどこの職場でも通用しない」と思っていたのですが、3年目になっても、日勤より少ない人数でスピード感のある作業や判断をしなければならない夜勤の業務に難しさを感じていました。毎日緊張感が連続する激務が続き、心のキャパシティは限界に近かったです。それでも当時は、お世話になった病院のためにも、何がなんでも一人前にならなくてはと、かたくなに思い続けていました。

今では「勤続年数やスキルにとらわれ過ぎていた」と思えるのですが、そうした考え方が変わるきっかけとなったのは、高校の同級生と転職について話したことです。転職をポジティブに捉えるようになり、「どうせ転職をするなら福島へ行こう」と決意したのが2022年11月。翌年4月までに移住するという目標を立て、転職活動をスタートしました。

――ヨッシーランドに就職を決めた経緯を教えてください

まずは住む場所を考える中で、生まれ故郷の大熊町と同じく海が見えるまちであり、移住者への支援策が充実していて一人暮らしがしやすそうな南相馬市に魅力を感じました。未来ワークふくしまなどの移住ポータルサイトや、市のWebサイトなどを見て情報収集し、より詳しい情報を得るために2023年1月に3泊4日で南相馬市を訪問。ハローワークでヨッシーランドを紹介され、その日のうちに見学をさせてもらえることになりました。

実際に訪問すると、いきなりの見学希望にも関わらず快く受け入れていただき、じっくりと話を聞くことができました。利用者さんにていねいに対応するスタッフの姿が印象的で、「いつでも来てくださいね」「一人暮らしで困った時には相談してね」とやさしい言葉をもらえたこともありがたかったです。

これらが決め手となって、ヨッシーランドで働こうと決意。転職と同時に南相馬市での生活をスタートさせました。南相馬市の介護事業所就労支援事業の対象となり、奨励金40万円と、3年間の住宅手当の助成金を受けることができて、助かっています。

利用者さんとじっくり関われることがやりがい

――介護施設の看護師として、普段どんなお仕事をしているのか教えてください。

ヨッシーランドは医学的な管理のもと日常生活への復帰をめざす施設で、私の主な役割は利用者さんの健康管理です。必要な医療ケアや、健康状態のチェック、常勤医師とのやりとりなど、医療チームで役割分担をしています。

また、看護業務だけではなく、食事介助やトイレ介助、おむつ替えなどの介護の仕事にも携わっています。自分の仕事だけではなく、職場全体の状況を見渡しながら仕事をしています。

介護施設の仕事は、病院と比べて利用者さん一人ひとりと関わる時間が長いことが魅力だと感じます。一緒に過ごす時間が長いぶん、名前を覚えてもらえたり、またよろしくと言ってもらえたりすると、利用者さんとの関係性の深まりを感じます。こうしたことは仕事のやりがいにもつながっています。

――生活にはどんな変化がありましたか?

一番変わったと感じるのは、生活時間にゆとりができたことです。病院に勤務していた頃は、とにかく毎日が忙しかったです。残業も珍しくなく、日勤でも夜勤でも帰宅するころにはクタクタに疲れ切っていたので、必要最低限のことをするのが精一杯。家族のサポートがなければ、生活が成り立たない状態でした。ですので、南相馬で仕事探しをする際は、一人暮らしでも大丈夫なようにワークライフバランスを保てる職場であることも重視しました。

現在の勤務は通常の日勤に加えて、早出・遅出・月3回ほどの夜勤のシフト制です。残業はほとんどなく、無理なく勤められています。生活リズムが整ったおかげで、好きなことをする時間もつくれるようになり、心のキャパシティにもゆとりができました。

――職場の雰囲気はどのように感じていますか?

スタッフのチームワークと、利用者さんを敬う姿勢が、施設全体の雰囲気を良くしていると感じています。ヨッシーランドでは看護師・介護職員・リハビリスタッフが「みんなで全体を見る」ことを心がけていて、全員で利用者さんに気を配る体制が整えられているんです。朝礼では、利用者さんの状態や必要なケアなどをスタッフ全員で共有するため、担当業務以外の状況も知ることができて業務に活かせるのも良いですね。包括的な介護と看護を目指す共通の目的意識が、チームワークを生んでいると感じます。

利用者さんと信頼関係を築くことを大切にしているため、利用者さんとスタッフの会話に使われる言葉が優しいこともいいなと感じます。病院に勤務していた頃は忙しさのあまり、スタッフが患者さんに優しい言葉をかけられていない場面に出会うこともありました。利用者さんに気持ち良く通ってもらえる施設を目指して適切な敬語や言葉のかけ方などをスタッフ同士で学ぶ機会もあるので、看護師としても成長できる環境だと感じます。

仕事の満足度が、自己肯定感につながった

――植村さんのこれからの目標を教えてください

まずは看護師として、より成長することが目標です。病院に務めていた時は思い描いていた「一人前の看護師」の水準が高く、それを叶えられていないことがコンプレックスとなっていました。今は働きやすい職場に出会い、看護師として認められていると実感できるようになり、自己肯定感が上がったと感じています。これからも自分の成長を楽しみながら、業務に励んでいきたいです。

そして、助けてもらう立場から、同僚を助ける立場になりたいですね。以前の私は、仕事での悩みを打ち明けられずに溜めこんでしまうタイプでした。今は頼りがいのある仕事仲間に救われています。過去の私と同じように悩んでいる人に出会ったら、今度は私が助けになりたいです。

――ふくしま12市町村に移住し、就職を考えている人へメッセージをお願いします

私は同じ仕事をするにしても、奈良から福島へ、病院から介護施設へ、などと環境を変えることでより良く働けるようにもなりました。探してみれば、自分に合う職場はあるものです。生活を豊かにするために環境を変えるという選択も、決して悪いものではないと思いました。

私にとっては、「福島にいつか戻る」という思いが叶えられたことも気持ちを切り替えるきっかけとなりました。この地で働いて暮らす中で、言葉や人との距離感に宿るあたたかさを改めて感じています。私と同じように移住に迷っている人がいたら、一度福島へ来てみるといいよと伝えたいです。

ヨッシーランドを運営する医療法人慈誠会の求人情報はこちら
https://jiseikai-mc.jbplt.jp/


■医療法人慈誠会 介護老人保健施設ヨッシーランド
所在地:〒975-0075 福島県南相馬市原町区石神字赤坂110-1
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FAX:0244-24-6970
HP:http://jiseikai-mc.jp/

植村 照美(うえむら てるみ) さん

2000年、大熊町生まれ。小学5年生の時に東日本大震災を経験し、奈良県大和高田市へ避難。その後、看護師の資格を取得し、奈良県内の医療機関で内科急性期病棟に3年間勤務。2023年4月より南相馬市の介護老人保健施設ヨッシーランドに勤務し、看護師として活躍中。

※所属や内容、支援制度は取材当時のものです。
文:橋本華加 取材・写真:片倉菜々