経験を活かしながら復興への貢献を実感できる仕事が南相馬市にあった

- 出身地と現在のお住まい
和歌山県出身→大阪府→愛知県豊橋市→宮城県角田市→南相馬市で一人暮らし - 現在の仕事
株式会社アイリスプロダクト 製造部 マネージャー
- 移住してよかったこと
仕事を通して震災からの復興に貢献していると実感できること
生活用品や家電の企画・製造・販売を手掛けるアイリスオーヤマ株式会社では、2022年、福島県浜通りにおける産業振興と雇用の創出を目指し、南相馬市にアイリスグループの株式会社アイリスプロダクト南相馬工場を開設しました。愛知県豊橋市から移住しその工場で働く中岡久好さんに、移住の経緯や南相馬市での暮らしについて聞きました。
豊橋市から単身南相馬市へ
――南相馬市に移住した経緯を教えてください。
南相馬市に来る前は、カレーのレトルトパウチや洗剤の詰め替えパウチなどの包装フイルムを製造する会社で働いていました。最初は大阪府で勤務し、その後転勤で愛知県豊橋市に移り、30年以上同じ会社で働きましたが、子どもが大きくなってきたこともあり、新しい環境で自分の視野を広げたいと考えるようになりました。
そんなある日、何気なく転職サイトを見ていて、今の職場の求人を見つけました。30年の間に培った技術を活かせる仕事であったこと、アイリスグループであるという安心感、そして何より、アイリスプロダクトという会社自体が復興支援の一環として設立されたことに心を動かされました。50歳を迎えてからの転職活動だったので採用してもらえるか不安もありましたが、前職の経験を評価していただき無事に採用されました。

――現在はどんなお仕事を担当していますか?
個包装されているカイロの外袋やパックご飯の上面のシールなど、アイリスオーヤマの製品の包装フイルム製造に、仲間に支えられながらマネージャーとして関わっています。
――転職前に福島県に来たことはありましたか?
まったくありませんでした。東日本大震災の被害も遠い場所からテレビなどで見ることしかありませんでしたが、東北のために何かできないかという想いはずっと心にありました。当時住んでいた豊橋市からはかなり遠いので最初は家族にも驚かれましたが、この転職が復興に貢献するために私に与えられたタイミングなのではないかと思い家族を説得。最終的には快く送り出してもらいました。今は単身で南相馬市に住んでいます。
休日は東北のおいしいものを求めてドライブ
――南相馬市での暮らしはいかがですか?
海にも山にも近く、生活のすぐ近くにきれいな景色がたくさんあるので、とてもいいところだと感じています。以前住んでいた豊橋市は比較的大きな町で、生活するには何の不自由もなかったので、それに比べると少し不便に感じることもありますが、自然環境のよさを考えれば気にするほどの不便さではありません。
――不便さを感じるのはどんなところでしょうか?
一人暮らしなので食事は自分で用意しなければなりませんが、飲食店が豊橋市と比べると早い時間に閉まるので、遅い時間帯はコンビニぐらいしか夕食の選択肢がないことです。ただ、現地採用の従業員がおいしいお店や遅くまで営業しているお店の情報を教えてくれるので助かっています。
――南相馬工場の従業員の皆さんはほとんどが現地採用だそうですね。
その通りです。この地で雇用を創出する企業で働くことで、間接的ではありますが、復興の後押しや地域貢献に関われている実感があります。

――お休みの日は何をしていますか?
東北での生活が初めてなので、福島県内に限らず、東北のいろんなところにドライブに出かけています。東北はどこに行ってもおいしい食べ物があるので、食も楽しみの一つですね。あまりにおいしいものがあり過ぎて、実は南相馬市に来てから体重が15kgぐらい増えてしまいました(笑)。
よく出かけるのが仙台市周辺です。南相馬市の中心部から宮城県仙台市へは車で1時間程度あれば行けるので、プロ野球を観戦しに行ったこともありました。南相馬市内だと、原町シーサイドパーク(北泉海浜総合公園)が好きです。ときどきふらっと海を見に出かけています。アウトドアが趣味なので、今後は南相馬市内や近辺でソロキャンプをしてみたいと思っています。
「福島に行ってから前向きになったと言われます」
――移住後、ご自身で感じる変化はありますか?
息子と娘から、「福島に行ってから明るくなった」とか「前向きになった」と言われます。前職では工場の中の決められた工程でずっと作業をしていたので、外部との関わりがほとんどありませんでした。また、もともと人見知りで、人前でたくさん話せるようなタイプではなかったんですが、転職を機にリーダーおよびマネージャーとして社内外のいろいろな方と関わるポジションを任せていただけるようになったことが変化につながったのだと思い、会社には本当に感謝しています。移住でこれまでの自分を知る人がいない環境に身を置いたことも、変わることができた理由の一つだと思います。

――ご家族が南相馬市に来られたことはありますか?
一度だけ来たことがあります。私と同じく福島県に来たことはなかったので、震災の遺構などを見るのも初めて。いかに大変な状況だったのかを実感したようです。自分で足を運び、自分の目で見ることは、やはり大切なのだと思います。
――移住にあたって利用した支援制度はありますか?
福島県12市町村移住支援金を使わせていただきました。自分や家族の生活にも充てさせていただきましたが、せっかくいただける支援金ですから何かの役に立つことに使いたいと考え、支援金の一部を、引退した盲導犬を支援する活動に寄付しました。私は犬が大好きで、なかでも盲導犬の犬種であるラブラドールレトリバーが大好きなんです。実際に飼っていたこともあるので愛着もあり、盲導犬の活動に貢献したいとずっと思っていました。それを叶えることができたのも、移住してよかったと思うポイントの一つです。
――南相馬市や福島12市町村に移住を検討している方にメッセージをお願いします。
南相馬市は「住みたい田舎」のランキングで上位に入ることもあり、田舎暮らしに憧れる方に人気の場所です。実際の生活の中で暮らしやすさを実感することも多く、移住者に向けたいろいろな支援も充実しているので、安心して移住できると思います。スローライフに憧れる人、アウトドアが好きな人、海やサーフィンが好きな人などにぜひおすすめしたいです。
■株式会社アイリスプロダクト 南相馬工場
所在地:〒975-0036 福島県南相馬市原町区萱浜北谷地301-3
HP:https://www.irisohyama.co.jp/company/sdgs/project/project311/minamisouma/
■移住者を対象に「アイリスプラザ」50,000ポイント進呈中
福島県とアイリスオーヤマ株式会社は、福島12市町村の移住促進に係る協定を締結しています。その一環としてアイリスオーヤマ株式会社では、福島県12市町村移住支援金の交付決定者を対象に、アイリスオーヤマ公式通販サイト「アイリスプラザ」で使用できる50,000ポイントを進呈する移住支援を実施しています。
詳しくはこちら。
>◆福島県12市町村移住支援金のお知らせ◆≪令和7年4月から新規加算追加≫|福島県ホームページ
中岡 久好(なかおか ひさよし) さん
1970年、和歌山県生まれ。2021年3月、株式会社アイリスプロダクトに転職。宮城県角田市での勤務を経て、2022年5月の南相馬工場竣工と同時に製造部リーダーに就任し南相馬市へ単身移住。2025年からはマネージャーに。二児の父。
※所属や内容、支援制度は取材当時のものです。最新の支援制度については各市町村のホームページをご確認いただくか、移住相談窓口にお問い合わせください。
文・写真:髙橋晃浩