生活・その他

0歳から小学校高学年まで楽しめる 南相馬市小高区の屋内遊び場「NIKOパーク」

2023年11月22日

福島12市町村には新しい屋内遊び場が数多くあります。今回はその中の一つ、南相馬市小高区にある「NIKOパーク」をご紹介します。年代別にゾーニングされた施設内はワクワクするような遊具やおもちゃが並び、遊具には親も一緒に入って遊べるとあって、市外や県外から遊びにくる親子も多いそうです。子どもの遊びを見守り、サポートしてくれる「プレイリーダー」も心強い存在です。

3つの年代でゾーニングされた「動の遊び場」

NIKOパークは2021年に開設された新しい遊び場です。3つの年代別にゾーニングされた「動の遊び場」では体を動かしたりおもちゃで遊んだり、その年代の発達度合いに応じて安全に過ごすことができます。体を動かす気分でない子は「静の遊び場」で絵本を読んだり塗り絵をしたり、楽器にも触れられるなど、さまざまな遊び方ができる場として年代や趣味嗜好を問わず多くの家族連れに愛されてます。南相馬市からだけでなく市外、県外から年間約3万2,000人が訪れ、旅行ついでや帰省の際に利用する人も多いそうです。

施設長の藤林真也さんにNIKOパークの中を案内していただきました。

「初めて来た子も、常連の子も、その時やりたいと思った遊びができる施設を目指しています」と藤林さん。子どもの遊びを見守り、ヒントを生み出し、自由な遊びを提案する「プレイリーダー」として日々子どもたちと接しています。

まず見せていただいたのは「動の遊び場」。ここでは大人も子どもも原則、裸足になって遊びます。

「まずは滑って転ばないようにするためです。また、足裏の感覚を養う目的もあります。足裏の刺激は運動機能の向上に役立つといわれていて、パーク内にもボルダリングやネットなど、足の指をしっかり使って遊ぶ遊具が多くあります。もちろん、爪がはがれやすいなど、靴下をはいていたほうが安全であればそれでもかまいません」

5歳から小学生までが対象の「わいわいエリア」で真っ先に目に入るのが、天井から吊るされたネット遊具です。中央のこどもエレベーター(ジャングルジム)や奥の昇降ネットから登り、足場が安定しないなかで鬼ごっこをしたり、寝転んで揺れに体を任せたりと、子どもたちに大人気なのだそう。もちろん大人が乗っても問題ない強度です。

ボルダリングは傾斜がある面と、ネット遊具につながる地面に垂直な面があります。写真は傾斜がある面で、垂直面に慣れた子が挑戦します。

凹凸のある道や、不安定な板の上を歩けるバランス遊具
エアー遊具
屋内では珍しいロープウェイ

0歳~2歳までが対象の「よちよちエリア」はふかふかマットの上に背の低い遊具が並びます。「こちらには音、目、感触、色を楽しめるような遊具を置いています」と藤林さん。壁にかかっている遊具は、丸いプレートを回すと水中にきらきらとしたグリッターが浮かんでいったり、触れると音が出たり。端には小さなクッションがあるため、下のきょうだいを連れてきても側で寝かせておけます。

よちよちエリア
左の遊具は、丸い木枠を回すと円柱の中でグリッターが流れ落ちていく仕組み。右の遊具は握るとクシャクシャと音が鳴る

続いて見せてもらったのは、3歳から5歳までが対象の「すくすくエリア」。この年代の子どもたちは、自分が思うように動けるようになり、体の平衡感覚をコントロールする欲求が強くなるそう。そのため、細い板やネットの上を歩くバランス遊具が用意されています。

コルク、アルミ、フェルト、木とさまざまな素材が組み合わせられたすくすくエリアのバランス遊具

このほかにはクッションブロック、ままごとセットも。「この時期の子どもは人とのコミュニケーションが始まります。おままごとは人との関係性をつくる第一歩なんです」と藤林さん。

オムツ替えもできる授乳室は、カーテンで仕切り3つのスペースに分けられます。浄水給湯器もあるので便利です。

多目的トイレのオムツ交換台はお父さんも気兼ねなく利用できる

落ち着いて遊びたい子も安心「静の遊び場」

「静の遊び場」は、旧小高幼稚園を改装したエリア。入口すぐの交流スペースでは積み木や絵本で遊ぶことができます。並べられた絵本は南相馬市図書館のもので、毎週木曜日に更新されます。更新の日の午後2時には市の移動図書館が訪れ、職員の方が読み聞かせをしてくれるそうです。

静の遊び場にはほかにも、木のおもちゃや絵本、塗り絵セットなどが用意されている2つの部屋と電子ドラムと電子ピアノがある多目的室があります。スペースが分かれているので、人が多い場所が苦手だったり、落ち着いて遊びたいという子も安心して過ごせそうです。

多目的室の電子ピアノ

遊び方を提案するプレイリーダーが常駐

NIKOパークは、スポーツ施設や子どもの遊び場の管理運営を担う株式会社フクシ・エンタープライズが運営しています。NIKOパークに常駐しているプレイリーダーは、同社の研修を受けた「子どもと遊ぶプロ」。安全面の管理だけではなく、子どもの遊びをサポートする役割があります。

「どんなことをして遊びたいか決まっていない子どもに、何をしたいか考えてもらい、自分でやり出すように仕向けていくのもプレイリーダーの仕事です。何度も来てくれている子はどんな遊びが好きなのかわかってきますが、初めて来た子は、休日に混雑している『動の遊び場』に入りたいのに入っていきづらいケースもあります。そんな時は『静の遊び場』で絵本を読んだり、塗り絵や積み木遊びをしながら場に慣れてもらい、『動の遊び場』に興味が出てきたら一緒に行くようにします。
鬼ごっこの中に自分から入れない子がいれば、『あの子にタッチしてきて』と声をかけるとどんどん中に入っていける。子どもが転んで泣いてしまったあと、落ち込んだ気分を上げていくための声掛けも意識しています」

NIKOパークの利用時間は3クールに区切られていて、プレイリーダーは朝と1クールが終わるごとの計4回、情報共有のミーティングを行っています。「遊びに入っていけない子がいた」「こういうサポートができればよかった」など、そのクールで起こったことをすぐに振り返り、次につなげているのだそう。ただ公園で遊ぶのとは違い、プレイリーダーに導かれながら新しい遊びに挑戦できる、子どもの成長を促せる環境があるのです。

親同士が交流できる場にも

動の遊び場の入口そばにあるカウンターは、保護者が子どもの遊ぶ様子を見守れるスペースです。NIKOパークがもう一つの目的としているのが、保護者同士の交流。このカウンター席では、子どもをきっかけに幼稚園・保育園や学校が異なる保護者同士で関わりが生まれ、悩みを打ち明け合ったり、子育ての仲間ができる場になることもあるそうです。

子どもと一歩離れてみる場にしてもいい、と藤林さんは話します。

「子どもと1対1で遊んでいると、なかなかできないことってあると思います。子どもが親を気にして自分がやりたいことを我慢してしまうパターンもありますし、親がいると甘えてしまい子ども同士での遊びがうまくできないこともあります。子どもは自由に遊び、保護者はちょっと子どもから離れて、いつもとは違う第三者的なところで見ていてもらうことも大事だと思います」

土日のどちらかは、突発的なイベントとしてミニゲームを開催しているのだそう。動の遊び場にいる子どもたちみんなでルールを決めて鬼ごっこをしたり、大量のボールをなだれこませたり。保護者対子どもで綱引きや鬼ごっこをすることもあり、大人同士が打ち解けるきっかけになっているようです。さらに、ミニゲームを各クールの終盤に行うことで、ミニゲームが終わったら片付け、と帰宅に切り替えやすくなります。時間を守って遊び、社会性を育む目的もあるのです。

NIKOパークは通常、保護者同伴でないと利用できませんが、隣接する小高小学校の児童は事前に登録しているため子どもだけでの利用も可能です。交流スペースで宿題をしてから遊んで、保護者の迎えを待つ子も多いのだそう。小高小学校の子どもたちにとっては、学校と、家と、もう一つの居場所にもなっています。

最後に、藤林さんから移住を考えている子育て世帯の方へメッセージをいただきました。

「子育て中のスタッフもいるので、南相馬市の子育て環境について相談に乗ることも可能です。利用者の制限はありませんので、まずはぜひ遊びに来てみてください」


■南相馬市小高区子どもの遊び場 NIKOパーク
住所:〒979-2113 南相馬市小高区関場一丁目1番地
TEL:0244-44-2215
休館日:毎週火曜、年末年始(12月29日~1月3日)
営業時間:10:00~16:30 ※1日3クールの入れ替え制
午前の部 10:00~11:30
午後の部① 13:00~14:30
午後の部② 15:00~16:30
利用料金:無料
駐車場:敷地内25台、第2駐車場26台
HP:https://minamisoma-playground.com/

※所属や内容は取材当時のものです。
文・写真:五十嵐秋音