事業紹介

衣料のリメイクを通してまちづくりに貢献できる双葉町「フレックスジャパン」

2023年11月17日

2022年8月、東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故から11年5ヵ月を経て一部の避難指示が解除され、居住が可能となった双葉町。人口はまだ100人ほどで(2023年10月現在)、まさにこれから新しいまちづくりが始まっていく町です。

そんな双葉町に、2023年7月に縫製工房をオープンしたのが、長野県に本社を置くアパレルメーカー、フレックスジャパン株式会社。同社の衣料品再生事業の新たな拠点とすべく開所した「ひなた工房 双葉」では、縫製業務および店頭で働く正社員、パート職員を募集しています。

新しい町に、魅力的な仕事を

フレックスジャパンの矢島隆生社長が初めて双葉町を訪れたのは2019年ごろのこと。すでに双葉町への進出を決めていた岐阜県の浅野撚糸の浅野雅己社長から声をかけられたことがきっかけでした。当時、まだ避難指示が解除されていなかった双葉町は、東日本大震災・原子力災害伝承館以外に大きな建物は何もなく、住民はもちろん、働いている人も見かけないような状態でした。「その光景を目の当たりにして、社長は感じるものがあったんでしょうね。これから元気になっていく町の波に、自分たちも乗っていけたらと考えたそうです」と、執行役員の小山幹人さんは話します。

現在、双葉町をはじめとする福島12市町村には多くの求人がありますが、移住する人が希望する仕事、特に女性が活躍する仕事が少ないのではないか、と小山さんは考えているといいます。
フレックスジャパンは社員全体のうち、6割が女性。メイン事業であるオーダーシャツの製造は、20以上のパターンをミリ単位で縫製し、シャツに仕上げていく作業です。得意・不得意はもちろんありますが、手先の器用な人が多い女性が活躍できる仕事といえます。

「ひなた工房 双葉」で働くスタッフは、縫製の経験者だけでなく未経験の人もいます。仕事は先輩スタッフが一から指導するため、一人でシャツを作れるようになるスキルは必ず身につくとのこと。ほかに求めるスキルとしては「ミシンの経験はあったほうがいいですが、手先の器用さ、ものづくりが好きなこと、アート感覚なども仕事に活かせます」と話す小山さん。これは、オーダーシャツの製造とともに双葉町で展開する衣料のリメイク事業への貢献に期待を込めてのことでもあります。

生まれ変わっていく双葉町から、リメイク商品を発信

「ひなた工房 双葉」は、工房と自社商品を扱う店舗の2つで構成されています。店舗には、バッグやぬいぐるみの洋服、ジャケットの裏地など、着られなくなった衣料品や着物をリメイクして作られた商品のサンプルが数多く並べられており、サンプルを見てリメイクのオーダーをすることはもちろん、そのまま商品を購入することもできます。

ひなた工房のリメイク事業は、創業から約80年で培ってきた縫製技術を活かしたもの。「もう着ないけど捨てられない」という思い出の詰まった衣料品を生まれ変わらせて、また新しい思い出を紡いでほしいという思いが込められています。このリメイク事業には、縫製のスキルだけでなく、アイディアも必要になります。ここで、小山さんが求める「ものづくりやアートの感覚」が活きてくるのです。

スポーツチームのユニフォームをリメイクして作られたバッグ
ジャケットの裏地は着物をリメイクして仕立てたもの

リメイク事業は、これまで本社の長野県や東京日本橋、長崎県の天草で行ってきましたが、今後は双葉町をメインに展開していくとのこと。そこには、「思い出が生まれ変わる」リメイク事業は「町が生まれ変わる」双葉町でこそ、その本領を発揮するという矢島社長の確信があります。

経験を活かしながら、まちづくりを見守りたい

縫製スタッフの一人、石川弘子さんは、2023年7月のオープンに合わせて埼玉県から移住してきました。「出身が北海道なので、同じ北日本の人間としてずっと福島のことは気になっていました。息子たちが成人したタイミングで、福島で縫製の経験を活かせる仕事があるというのをたまたま目にして応募したところ、執行役員の小山さんが埼玉まで会社説明と面接に来てくれたんです」と語る石川さんは、小山さんの熱意に心を動かされたことと、震災から12年が経ちこれからまちづくりが始まるという双葉町への関心が重なり、移住を決めたと言います。

前職では、体操服やジャージの縫製をしていた石川さん。オーダーシャツの縫製は「より精度が求められるので苦労していますが、ようやくシャツを一人で仕上げられるようになったのでこれからが楽しみ」と笑顔を見せてくれました。

「この会社で働きながら、双葉町が復興していく、良くなっていく姿を見ていきたいです」と話す石川さん。とはいえ、双葉町にはまだ住宅が少ないため隣の浪江町から通っています。人口が少なく煩わしい人間関係を気にせずに静かに暮らせる生活が気に入っているといいますが、「できれば双葉町に住みたいですね」という本音も。ひなた工房では町外から通う場合でも、家賃と交通費合算で3万円の補助があるため安心です。新しい仕事と住まいを同時に作り始めているのは、福島12市町村共通の状況でもあります。

2023年10月現在、「ひなた工房 双葉」では5人のスタッフが働いています。今後は10倍、15倍と人数を増やし、最終的には50人~80人の雇用を目指しています。

「実はまだ、工房の敷地は半分しか使っていないんです。機械ではなく必ず人の手が必要な仕事なので、まとまった人数の雇用を確保できます。今はスタッフを育てている段階ですが、今後はリメイクの仕事をたくさん受けて、その仕事の様子を日本中の方に見てもらえるようにしたいと思っています。私たちがここでどんな仕事をしているのか知ってもらって、双葉町で働いてくれる人を増やしたいですね」と小山さんは熱く語ってくれました。

「ひなた工房 双葉」では衣料品のリメイクに留まらず、作業服のほころびなど洋服や着物の一部の修繕など、衣料品に関する小さな困りごとにも対応し、「衣類のお医者さん」のような存在として、まちの人が気軽に訪れてもらえる場所を目指していくそうです。

新しいまちづくりが始まっている双葉町で、新しい思い出・居場所をつくる「ひなた工房 双葉」。縫製の経験やものづくりに興味がある人はぜひ、まちづくりにも貢献できる仕事に挑戦してみませんか。

フレックスジャパン(ひなた工房 双葉)の求人はこちらから
https://arwrk.net/recruit/flexjapan-fukushima/

福島12市町村の、女性が活躍する求人はこちらをご覧ください
https://mirai-work.life/work/joblist/#tags=166

■フレックスジャパン株式会社 ひなた工房 双葉
長野県に本社を持つ1940年創業のワイシャツメーカー。オーダーワイシャツ等の企画、製造、販売卸、衣料品再生事業を手掛ける。インドネシア、ミャンマー、バングラデシュにも生産拠点を置き海外展開にも力を入れている。「ひなた工房 双葉」はフレックスジャパンの衣料品再生およびオーダーシャツの新たな生産拠点として2023年7月に設立。
住所:〒979-1401 双葉町中野舘ノ内35-1
TEL:0240-33-4884
営業時間:10:00~17:00 
定休日:日曜、月曜 ※詳細はHP内の営業カレンダーでご確認ください
ひなた工房について
https://restitch.jp/pages/aboutus

※所属や内容は取材当時のものです。最新の求人情報は公式ホームページの採用情報をご確認いただくか、ひなた工房 双葉に直接お問合せ下さい。
取材・執筆:山根麻衣子 写真:及川裕喜