生活・その他

ふくしま12市町村の医療事情は?(後編)

2023年8月30日

移住を決める際にチェックしておきたいポイントの一つに、地域の医療事情があります。福島12市町村には必要な医療サービスが一つの市町村内だけで受けられるとは限らない地域もあるため、近隣市町村も含めた広いエリアでの医療事情を確認しておくことが必要です。

この記事では、福島12市町村のうち南相馬市、川俣町、浪江町、双葉町、飯舘村、葛尾村の医療事情を解説します。現在の医療体制や今後の整備状況をご紹介しますので、移住後の生活を具体的にイメージする際にぜひお役立てください。

田村市、富岡町、大熊町、楢葉町、広野町、川内村の医療事情については「前編」をご覧ください。
https://mirai-work.life/magazine/6528/

目次

医療機関が豊富で出産分娩も可能な南相馬市

南相馬市は福島12市町村の中で最大の人口を有しています。2006年に原町市・小高町・鹿島町が合併して形成された名残で、原町区・小高区・鹿島区といった地域自治区が設けられています。

原町区には、行政機関や商業施設などが多く立ち並び、医療施設も集中しています。区内の医療機関は、病院が4軒、診療所が24軒、歯科が19軒あり、内科を中心に多くの診療科目をカバーしています。中でも南相馬市立総合病院は、内科をはじめ24診療科目を診察する総合病院として、地域医療の中核を担う存在です。受付時間外の救急外来や土日・祝日・年末年始の夜間診療も可能です。原町区にはお産ができる医療機関があり、市立病院と民間のクリニック2ヵ所で分娩可能です。

市南部に位置する小高区は、福島第一原子力発電所の事故により2016年7月まで避難区域だったことから、再開した医療機関はまだまだ少ないのが実状です。現在、南相馬市立総合病院附属小高診療所のほか、診療所4軒があり、内科、外科、整形外科、歯科などが受診可能です。

市北部に位置する鹿島区には、病院1軒と診療所3軒があり、内科、外科、心療内科などの診察が可能で、歯科も4軒あります。隣接する相馬市の医療機関も利用しやすい立地です。

市では休日昼間の医療対応を行う休日当番医を設置しています。市内の医療機関は、「南相馬市 健康づくりガイドブック」にまとめられています。インターネットからも見られますので、ぜひ参考にしてみてください。

総合病院があり町外へのアクセスも便利な川俣町

川俣町の医療の中核を担うのは、済生会川俣病院です。病床は90あり、内科・外科・整形外科・泌尿器科・眼科・皮膚科の外来診察を行っているほか、透析ベッドも15床あります。このほか、町が設置する川俣町国民健康保険山木屋診療所に加え、民間の診療所が7軒、歯科が5軒あり、休日当番医制度も設けられています。各医療機関の詳細は、伊達医師会ホームページで確認できます。また、薬局は6軒あり、院外処方の場合も町内で薬が受け取れます。

川俣町は県庁所在地で福島県立医大付属病院などの総合病院が多くある福島市と隣接しており、移動時間は車で30~40分ほど。福島市との間には路線バスも運行しているので、自家用車での移動が難しい人も安心です。

新しい調剤薬局のオープンへ期待が高まる浪江町

浪江町には町が設置する浪江診療所があり、内科と整形外科が受診できます。町役場の敷地内に立地しており、診療時間は平日の9:00~12:00、14:00~16:00。整形外科の診察は週1回です。薬は院内処方で、その場で受け取れます。診療所とは別に歯科が2軒あります。

町内で受診できる診療科目は診療所の内科、整形外科と、民間クリニックによる歯科と限られているので、町外の医療機関を利用するケースも多くあります。その場合は、車で片道20~30分ほどの距離にある隣接する南相馬市の医療機関が頼りやすいでしょう。

なお、診療所の近くに新しい調剤薬局が2023年秋にオープン予定で、地域医療活性化の追い風となることが期待されています。

診療所が開所し医療対応がスタートした双葉町

双葉町には2023年7月時点で約100名の住民が生活しており、徐々に住民の生活の動きが見え始めてきました。そんな中、2023年2月には双葉町診療所が開所。JR双葉駅東西自由通路西口のすぐ目の前にあります。診療科目は内科で、診察日は週3回、時間は9:00~12:00と13:00~16:30です。院内処方となるので、薬はその場で受け取れます。

町外の医療機関を利用する場合、候補に挙がりやすいのは南相馬市といわき市です。どちらも医療機関の数が多く、受診できる診療科目も豊富です。南相馬市には電車か車で30分ほど、いわき市は高速道路を利用すると1時間ほどの距離となります。

気軽に相談できる地域医療を提供する飯舘村

飯舘村は、阿武隈高地の北部に位置する村です。村内には、公設の診療所であるいいたてクリニックがあります。診療科目は子どもを含む内科全般の診療に対応する総合診療科で、診察は平日に週2回、時間は8:30~12:30です。薬は院内処方でスムーズに受け取ることができます。診療所での対応が難しい場合は希望する他市町村の病院の紹介も可能で、地域にとって身近で気軽に健康相談ができる医療機関となっています。来院が難しい患者への訪問診療にも力を入れています。

いいたてクリニックに勤務する医師のインタビューはこちらでご紹介しています。
https://mirai-work.life/magazine/3956/

村外で受診をする場合は、南相馬市や川俣町の医療機関がアクセスしやすいです。南相馬市まではバスで40分ほど、車であれば30~40分ほどです。川俣町へは路線バスや車で20分ほどです。

送迎サービスなどで利用者に寄り添う葛尾村

葛尾村にある医療機関は、村が設置する葛尾村診療所歯科診療所です。葛尾診療所の診療科目は内科・小児科で週1回、14:00~17:00に近隣市町村の医師が外来診察を行っています。また、歯科診療所は平日に週3回の診療日を設けています。詳しい診療スケジュールは葛尾村ホームページからも閲覧できる『広報かつらお』に掲載されています。

葛尾村で医療を受ける際のポイントは、隣接する田村市などの施設をうまく併用することです。車で15分ほどの田村市都路診療所は葛尾診療所よりも診察日が多く、週4日受診できます。また、葛尾診療所は院外処方で、村内に調剤薬局がないので、薬を受け取るには村外の調剤薬局やドラッグストアを利用する必要があります。最も行きやすいのは、車で30分ほどに位置する田村市の中心地・船引町。休日に医療が必要となった場合は、田村地区の休日当番医制度を利用する住民が多いです。

まとめ

福島12市町村内には、南相馬市のように医療機関が充実している自治体もあれば、住んでいる市町村だけでは必要な医療サービスをまかなうのが難しいエリアもあります。そのようなエリアでは、周辺市町村の医療事情を知っておくことが必要です。医療事情や暮らしについて気になることがあれば、ぜひ各市町村の移住相談窓口に相談してみて下さい。

各市町村の移住相談窓口は以下でご紹介しています。
https://mirai-work.life/concierge/

※所属や内容は取材当時のものです。
文:橋本華加 写真:蒔田志保