生活・その他

ふくしま12市町村の医療事情は?(前編)

2023年7月21日
  • 生活環境
  • 医療福祉

移住を決める際にチェックしておきたいポイントの一つに、医療事情があります。福島12市町村では必要な医療サービスが一つの市町村だけで受けられるとは限らない地域もあるため、近隣市町村の医療事情も確認しておく必要があります。

この記事では、福島12市町村のうち田村市、富岡町、大熊町、楢葉町、広野町、川内村の医療事情をご紹介します。現在の医療体制や今後の整備状況を知ることは、移住後の生活を具体的にイメージするのにも役立ちます。ぜひ参考にしてみて下さい。

目次

県中央部から好アクセスの田村市。新病院は規模拡大予定

内陸部に位置し、福島県の中央部からのアクセスも良い田村市は、滝根町、大越町、都路村、常葉町、船引町の旧5町村が2005年に合併し形成されました。船引町は商業の中心エリアで医療機関も集中していますが、他の4つのエリアでも内科の診察を受けることができます。公立の医療機関は船引町の「たむら市民病院」、都路町の「田村市立都路診療所」があり、民間の医療機関は14軒、歯科は14軒あります。「田村地方夜間診療所」では、平日夜間の診療を行っているので、比較的充実した医療サービスが受けられます。

たむら市民病院は新築移転計画が進められており、新病院は2025年に開院予定です。病床が1.5倍に増えるなど施設規模が大きくなるだけでなく、診療科目も拡大。現在の内科・人工透析内科・循環器内科・整形外科・外科・ 皮膚科・眼科・心療内科などに加え、産前産後検診ができる産婦人科や小児科の設置に向けた準備も進められています。

万が一の時や市内にない診療科目を受診したい場合などは、数多くの医療施設がある郡山市に通院するケースが多いそうです。郡山市へは車で市内各所から1時間以内の距離で、高速道路も利用可能。アクセスの良さも安心につながります。

双葉郡の緊急医療の中核を担う富岡町

福島12市町村に含まれる双葉郡の中でも、医療インフラの中心的な役割を担っている富岡町。福島県が運営する「ふたば医療センター附属病院」では、救急科の受け入れと内科の診療を行っています。近隣町村からも24時間365日搬送を受け入れており、双葉郡8町村(広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村)の救急医療の中核です。在宅診療や訪問看護など、外出が難しい方のサポートも担っています。

町内には他にも診療所が4軒あり、それぞれ内科・外科・精神科・小児科・眼科・整形外科の診察が受けられます。一部の診療所では土曜日も診察OK。歯科も2軒あります。町内にある医療機関は基本的に院内処方が可能です。市販薬は「さくらモールとみおか」内のドラッグストアで手に入れることができます。

富岡町によると、町内にない診療科目を受診したい場合は大きな総合病院があるいわき市や南相馬市に行く人が多いとのこと。それぞれ車で1時間ほどの距離です。

総合病院の開院に期待が寄せられる大熊町

大熊町では週に2回(火曜・木曜)、町診療所で内科の診療が受けられます。多くの住民は車で15分ほどの富岡町や、1時間ほどで行けるいわき市など、近隣市町村の医療機関を利用しています。

また、原発事故の影響で休診している県立大野病院の後継病院として、総合病院の開設準備も進められています。内科や外科、精神科、小児科のほか、現在のところ双葉郡8町村にはない人工透析(腎臓内科)や産婦人科、泌尿器科、皮膚科、耳鼻咽喉科など20診療科目が設置される予定。病床数も250床前後の設置を予定しており、救急医療は24時間365日対応可能になります。開院時期は2023年7月時点で未定ですが、双葉郡では最大、福島12市町村内でも指折りの規模を持つ医療機関になり、近隣町村も含めた医療体制の強化につながります。

近隣市町村と連携した医療サービスを行う楢葉町

福島県浜通りのほぼ中央に位置する楢葉町。福島県が運営する「ふたば医療センター附属ふたば復興診療所(ふたばリカーレ)」では、内科と整形外科の診療を行っています。町内には他に診療所が3軒あり、それぞれ内科・整形外科・小児科・精神科などの診療を受けられます。内科診療は平日しか行っていませんが、休日や夜間は富岡町の「ふたば医療センター附属病院」を利用できます。

町内ではほかに、ふたばリカーレに隣接する場所に歯科と薬局が1軒ずつあります。詳しい診療科目や診察時間は楢葉町ホームページで公開されていますのでチェックしてみてください。

町内にない診療科目を受診したい場合などは富岡町のふたば医療センター附属病院のほか、広野町やいわき市の医療機関を利用することが多いそうです。いわき市までは車で50分ほどの距離です。

いわき市の医療機関も利用しやすい広野町

福島12市町村の最南端に位置する広野町には2軒の民間診療施設があり、いずれも内科の診療が可能です。神経内科・消化器内科・老年内科精神科・外科・脳神経外科などの診察も受けられます。歯科も1軒あります。処方箋は1ヵ所が院内処方可能で、もう1ヵ所は診療施設近くの薬局で処方してもらえます。

楢葉町や富岡町、いわき市など近隣市町村の医療機関を利用する住民も多くいます。特に車で30分ほどの距離にあるいわき市は、大きな総合病院を含め医療機関の数も多いため「かかりつけ医院や何かあればいわき市に行く」という人も多いそうです。

医療・保健・福祉サービスがワンストップで受けられる川内村

双葉郡の中西部、阿武隈高地に位置する川内村には、「川内村国民健康保険診療所」という診療施設があります。平日は毎日内科と歯科の診療を行っており、また月に1~2回予約制の「特別外来」として整形外科・眼科・心療内科の専門医による診察も受けられます。薬は院内で処方されます。

診療所は、複合施設「ゆふね」内に設置されています。医療のほか、健康診断やデイサービスなどの保健・福祉サービスが一か所で受けられる、まさに住民の健康を支える拠点となる施設です。医療・保健・福祉の各部門で情報共有を行っているのも心強い支援体制です。車の運転が難しい高齢者への送迎も対応するなど、村民のニーズに寄り添った保健・福祉サービスを提供しています。

住民のなかには、富岡町の「ふたば医療センター附属病院」や田村市、いわき市、郡山市など、村外の医療機関を併用する人も多いそうです。富岡町は車で30分ほど、田村市は車で40分ほどの距離にあります。

まとめ

ご紹介した市町村では、分娩可能な産科や耳鼻科といった一部診療科目がないなどの条件がある状態です。一方で、田村市や大熊町では大きな病院の新設・改修の動きがみられるなど、医療サービスの整備も進められています。

福島12市町村の医療体制は、近隣市町村も含めた広いエリアで理解しておく必要があります。暮らしの不安を解消するためにも医療は重要なポイントですので、医療体制や暮らしについて気になることがあればぜひ各市町村の移住相談窓口に相談してみましょう。

各市町村の移住相談窓口は以下でご紹介しています。
https://mirai-work.life/concierge/


※内容は取材当時のものです。
文:橋本華加 写真:五十嵐秋音