【企業紹介】ロボティックウェアcurara®の開発を通し「歩く喜び」を取り戻す
AssistMotion株式会社 代表取締役 橋本 稔 氏 1982年東京大学大学院工学系研究科博士課程退学。電気通信大学短期大学部助手、同大電気通信学部助手、鹿児島大学工学部助教授を経て、1999年信州大学繊維学部教授に就任。ロボット工学の分野で研究に従事する。2018年に信州大学を退任し、現在は同大繊維学部特任教授。工学博士。 |
先端産業に挑む企業の環境支援と情報発信を目的に2020年に開設された南相馬市産業創造センター。ロボットやロケット、ドローンといった新しい分野での事業創出に取り組む企業がセンター内に拠点を構えている。
その企業の一つであるAssistMotionは、加齢や事故、病気などにより歩行に支障をきたす人のリハビリ訓練装置として機能するロボティックウェア、curara®(クララ)の研究・開発・製造を手掛けている。代表取締役の橋本稔氏に、事業の概要や今後の展望を聞いた。
南相馬市と連携協定を結び病院や介護施設にcuraraを提供
AssistMotionは、本社を長野県上田市の信州大学オープンベンチャー・イノベーションセンターに構える。代表取締役の橋本稔氏は、同大を中心に40年にわたり日本のロボット工学分野において先進的な研究を重ねてきた。その研究の一つの成果となったのがcuraraである。AssistMotionは、そのcuraraをより多くの人が手軽に使える製品として世の中に広く届けることを事業の目的としている。
南相馬市との関わりは2021年にスタートした。福島イノベーション・コースト構想推進機構が福島県浜通り地域で技術やサービスを創造するプレーヤーを支援するプロジェクト「Fukushima Tech Create」に参加。ウォーキングロボットの実証実験に関わったことをきっかけに、南相馬市に新たに研究拠点を置くことになった。現在、市と連携協定を結び、市内の病院や介護施設にcuraraを提供。使用感などの意見を得ることで、開発を加速させる取り組みを行っている。「震災でダメージを受けながらも、多くのみなさんが復興に力を入れている。その動きに私たちも協力し、地域の発展に貢献できれば、ベンチャーとして大きなやりがいにつながる」と橋本社長は語る。
従来の歩行補助ロボットに比べ重さを約4分の1に軽減
歩行を補助するロボットは、curaraが登場する前からすでにいくつかのベンチャーで研究・開発されてきた。しかし、先行して開発されたそれらのロボットは、装置自体の重さが大きな課題だった。そして、体に電極を貼ることで生体電位信号を検知する仕組みのため、装着に手間と時間も要していた。しかし、curaraは重さわずか2.9kg。従来のロボットの4分の1ほどに抑えられている。また、人とロボットの相互作用力を検知し制御をかける仕組みのため体に電極を貼る手間がなく、最短15秒程度で装着できる。
この駆動の仕組みは、身近なところでは電動機付自転車に近い。しかし、単一方向にのみ駆動すればよい電動機付自転車と違い、複雑な動きをする関節の動きに対応するためには高度な技術を必要とする。初号機の開発から10数年、何度かのバージョンアップを経て、curaraはいよいよ実用レベルにまで高められ、2022年にレンタルと販売の両軸で病院や介護施設以外の一般ユーザーへの提供がスタートした。
よりウェアラブルな製品の開発に向け人材の確保が急務
AssistMotionでは今、南相馬や福島県内の製造体制構築を目指している。「せっかく福島で活動するのであれば、福島でサプライチェーンを回したい。地域の部品メーカーなどと積極的に交流し、いずれは部品の製造から組立・加工まで、すべての工程を県内で行い、純福島産のcuraraを作りたい」と意気込む。
そのためにも必要となるのが人材だ。特に技術系人材の確保は、南相馬を開発・研究の拠点とする上で喫緊の課題となっている。機械工学、電気工学、メカトロニクスの分野に関して工業系の大学や工業高校で学んだ人、社会人としてそうした分野での職務経験を持つ人などが対象となる。
現在はリハビリ訓練用のロボットとして需要を得ているcuraraだが、将来的には、足腰が不自由な人の外出を容易にする、ウェアラブルなロボットとして実用化したい。それがAssistMotionの事業展望だ。「そのためには、コストダウンに加え、こうした装置をつけて外出することの心理的負担を軽減するための小型化や軽量化、デザインの進化といった研究も求められる。技術系人材を積極的に確保し、この地で開発を加速させたい」と橋本社長は語った。
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■AssistMotion株式会社
信州大学において得られた成果を社会貢献につなげることを目的に2017年に設立された信州大学発ベンチャー企業。本社は長野県上田市の信州大学オープンベンチャー・イノベーションセンター内。ウェアラブルロボットと次世代ソフトアクチュエータ(人工筋肉)の開発を2つの柱に、これらの技術の実用化を目指し事業に取り組んでいる。
住所(南相馬オフィス):〒975-0036 南相馬市原町区萱浜字巣掛場45-245 南相馬市産業創造センターB-8
URL:http://assistmotion.jp/
※所属や内容は取材当時のものです。
取材・文:髙橋晃浩