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【イベントレポート】第1回ふくしま12現地体験イベント〜食・農から見つけよう!これからの私〜

2023年1月19日
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「ふくしま12市町村移住支援センター」では、さまざまなテーマで現地体験イベントや移住体験ツアーを開催し、福島12市町村での暮らし、働く魅力をお伝えしています。

今回は、2022年12月11日(日)に開催された「第1回ふくしま12現地体験イベント〜食・農から見つけよう!これからの私〜」の様子をレポートします!

ふくしま12現地体験イベントとは?

県外から福島12市町村に移住した方々と直接交流しながら、現地の暮らしや仕事の様子を知ることができる、全2回の体験型イベントです。第1回の今回は、田村市、葛尾村、川内村に移住し、食・農業分野で活躍する方々を招き、ワイナリーの見学やさまざまなワークショップ、座談会など、盛りだくさんの内容で行われました。

10:30 「かわうちワイナリー」見学

最初に訪ねたのは、川内村にある「かわうちワイナリー」。2021年に開所したばかりの新しい施設で、阿武隈高地に広がる約3haの畑でのぶどう栽培と、国産ワイン造りに取り組んでいます。

案内してくださったのは、川内村の地域おこし協力隊として活動する安達貴さん。東京都出身の安達さんは、大学で醸造学を学び、山梨県や青森県でワイン造りの経験を積んだのち、川内村が地域の新産業として推進するワイン事業に携わるため、2020年12月に移住されました。現在は「かわうちワイナリー」のぶどう栽培・ワイン醸造の責任者として、生産管理や技術指導を一手に担っています。

安達さん。私生活では小学生の女の子を育てるパパでもあります

そんな安達さんの案内で醸造所内を見学。参加者は、ひとつひとつの工程や醸造用機械について丁寧に説明してくださる安達さんの言葉に、熱心に耳を傾けていました。

一通りお話を聞いたあとは「ルミアージュ」という作業を体験しました。これは、製造過程でワインの中にできる(おり)をビン口に集めて排出させるため、寝かせた瓶を90度ずつ回転させるもの。最初はぎこちなかった手つきも、慣れるとリズミカルにできるようになり、ほんの10分ほどで約200本のビンを回し終えました。

そのあとは、お待ちかねの試飲タイム。
「かわうちワイナリー」では、標高の高い土地で育つぶどう特有の、酸味のある味わいを生かしたワインを造っているそうで、参加者からも口々に「おいしい」「飲みやすい」との声が聞かれました。

川内村では、今後もワイナリーに携わる地域おこし協力隊を募集予定。安達さんは「興味があれば、ぜひ力になってください!一緒に地域に愛されるワイン造りに取り組みましょう!」と呼びかけました。

■かわうちワイナリー
https://www.kawauchi-wine.com/

12:10 「よりあい処 華」で郷土料理ランチ

ワイナリーをあとにした一行は、田村市にある「よりあい処 華」へ。震災後、飲食店がなくなってしまった都路(みやこじ)地区に2014年にオープンした古民家レストランで、地元のお母さんたちによる手作りのランチが人気です。また、地域伝統のつるし雛の手芸教室が開かれるなど、さまざまな地域交流イベントの場としても活用されています。

到着したバスを迎えるように、庭先で行われていたのは餅つき。「よいしょ!よいしょ!」のにぎやかな掛け声に誘われ、参加者も代わる代わる(きね)をふるいます。

餅つきを体験したあとは、店内に移動して昼食をいただきました。囲炉裏で焼いた鮎の塩焼きや、「よりあい処 華」の名物のローストビーフなど、地元食材をふんだんに使った手作りの料理がテーブルいっぱいに並びます。先ほどみんなでついたお餅は、エゴマと豆腐のペーストをからめた「さい餅」という郷土料理に変身。

福島の豊かな食文化に触れることができる、和やかなランチタイムとなりました。

■よりあい処 華
https://tamuland.net/?p=580

13:35 先輩移住者とのワークショップ

昼食後には、ゲストの方も加わってワークショップが行われました。この日、集まったのは、先ほど「かわうちワイナリー」で出会った安達貴さん(東京都出身)のほか、葛尾村で胡蝶蘭栽培に取り組む丸山剛史さん(群馬県出身)と、田村市の地域おこし協力隊であり、地元産のそば粉を使ったワッフル作りやホップ栽培などで起業を目指す大島草太さん(栃木県出身)の3名の移住者です。

大島さん
丸山さん

ワークショップでは2班に分かれ、ジャム作りとハンドクリーム作りを交互に体験しました。

まずはジャム作りから。原料となるブルーベリーは、田村市に移住し農業に従事するかたわら、さまざまな加工品を開発・販売している「福福堂」の稲福由梨さんが、無農薬・無肥料で育てたもの。まるまると大粒で、みずみずしい甘みがあることが特徴です。

各自ボウルに入れたブルーベリーに砂糖を加え、ヘラでなじませます。すると果実が溶け、徐々にペースト状に。出来上がりに思いをはせながら、好みのジャムや食べ方などについて、みんなで情報交換し合う姿が印象的でした。十分なじんだところで鍋に入れ、焦げないように注意しながら煮詰めたら完成。できあがったジャムは瓶に詰め、今日のおみやげになりました。

次はハンドクリーム作りに挑戦。ゲストの大島さんが育てたハーブから抽出した「ティンクチャー」を使い、オリジナルのハンドクリームを作ります。用意されたティンクチャーは、ラベンダー、レモングラス、カモミール、バタフライピーの4種。効能や好みの香りからベースを決めたら、ワセリンと混ぜ、湯煎してなじませます。

※乾燥させたハーブをアルコールに漬けて、有効成分を抽出したもの。

重さを慎重に量ったり、スポイトで液を吸い出したりと、どこか理科の実験のような雰囲気に、参加者の皆さんも真剣な表情。最後は溶けた液体をケースに流し込み、粗熱が取れて固まったら完成です。こちらもジャム同様に、参加者のおみやげになりました。

地産素材からものづくりを行うというワークショップを通し、土地の恵みの豊かさを実感。地域を訪れただけでは知りえない地域農業の可能性と魅力を、存分に感じることができました。

14:45 座談会〜お茶会〜個別相談会

続いて、ゲストや福島12市町村の移住担当者を交えた座談会がスタート。ファシリテーターとして「TURNS」プロデューサーの堀口正裕さんを迎え、移住にあたって不安なことや暮らしの実情についてざっくばらんに話し合いました。実際の参加者の質問とその答えを、抜粋して紹介します。

-買い物や病院などはどうされていますか?
市町村によっては病院や商業施設がなかったりもするので、その場合は近隣の大きな市(いわき市、郡山市など)まで足を伸ばします。居住地域で生活が完結することは少ないので、車ありきの生活になります。

-移住者はどんな仕事に就くことが多いですか?
一般企業への就職のほか、自分で起業したりフリーランスとして独立する方も少なくありません。希望があれば地域おこし協力隊という道もあります。求人サイトを運営している市町村もありますし、ふくしま12市町村移住支援センターが運営するポータルサイト「未来ワークふくしま」では、地域の求人案件をまとめてご紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。

■未来ワークふくしま「ふくしま12で働く
https://mirai-work.life/work/#

-移住者同士の交流はありますか?
移住者向けのイベントを開催したり、自治体の移住・定住担当者が間に入って移住者同士をつないだりすることで、なじみやすい環境を作るよう心がけています。例えば川内村は居住人口の2割が、葛尾村は3割が移住者なので、人が集まる場所に顔を出せば知り合うのは難しくないと思います。

-移住する人の目的や年代に特徴はありますか?
「田舎暮らしをしたい」「新しいチャレンジがしたい」という人が多いですが、各市町村主催のマラソン大会をきっかけに移住したり、震災後のボランティアで地域と出会い、移住する人もいます。田舎暮らしをしたいという動機の人はシニア世代が多いですね。

-福島12市町村に「移住しないほうがいい人」ってどんな人ですか?
一般的に地方では清掃活動や集落の行事など、住民同士が協力し合う機会もあります。そのため、こだわりが強すぎる人や理想が高すぎる人、「誰かがやってくれる」という依存型の人には向いていないかもしれません。

座談会後は、稲福さんが栽培した小麦で作ったパンケーキにブルーベリージャムを添えて食べつつ、大島さんが準備してくれたハーブティーで一息つきながら、自治体の担当者との個別相談会へと移行。住居のこと、子どもの教育のことはもちろん、ネット通販で注文した商品が届くか否かまで、さまざまな話題が飛び交っていました。

参加者の声

今回の現地体験イベントに参加した方に話を聞きました。

「思っていたよりもいろいろな仕事があると分かってほっとしました。自分のスキルとどのようにマッチさせられるかを見極めながら、移住について前向きに考えていきたいです」(30代女性)

「一度にいろいろな自治体の話を聞けてよかったです。次のステップに進む足がかりになりそうです」(40代女性)

「新規就農に興味があるので、栽培できる作物や地域農業の現状を直接聞くことができ、とても参考になりました。原発の問題など不安はありますが、チャレンジしやすい環境が整っていることが分かったので、今後も引き続き情報収集をしていきたいです」(50代夫婦)

実際に福島12市町村で暮らす方と交流し、移住に向けたビジョンが明確になった方が多かったようです。盛りだくさんの1日を終え、帰路についた参加者からは、満足そうな笑顔がのぞいていました。

次回の「第2回ふくしま12現地体験イベント~充実の起業サポートがある地域で、“やりたいこと”を始めよう!~」は、起業やフリーランスをテーマに南相馬市小高区で2月11日(土・祝)に開催予定です。さまざまなチャンスにあふれた福島12市町村の空気を、移住者とのリアルな交流から感じ取ってみてはいかがでしょうか。

■今回の現地体験イベントのアーカイブ動画を公開しています(YouTube)

※ダイジェスト版。全編動画は動画右上の(i)マークからご覧ください

■第2回ふくしま12現地体験イベントのイベントレポートはこちら
https://mirai-work.life/magazine/5090/

■福島12市町村のイベント情報
https://mirai-work.life/topics/#categories=event

文:渡部あきこ 撮影:鈴木優太