移住相談員さんに聞く!ふくしま12市町村の移住相談窓口ってどんなところ?~富岡町・楢葉町・広野町編~
福島12市町村では、市町村ごとに「移住相談窓口」を設け、地域の基本情報から仕事や住まい、移住支援制度、地域コミュニティへの入り方など、相談者一人一人に合わせた情報を提供しています。
この記事では、前回の田村市・葛尾村・川内村編に続き、富岡町・楢葉町・広野町の「移住相談窓口」をご紹介します!
【富岡町】富岡町移住相談窓口「とみおかくらし情報館」
\この相談員さんに聞きました!/
富岡町移住相談窓口「とみおかくらし情報館」
移住相談担当
辺見珠美さん
富岡町の移住相談窓口は、町の写真館として親しまれた「竹村写真館」をリノベーションして造られました。
旧・写真館のエントランス部分は移住相談窓口、スタジオは事務所、そして、もともと住居として使われていた部分は、「お試し住宅」として利活用されています。
――移住相談と居住体験が同時にできる相談窓口は、全国的にも珍しいですね。
そうですね。やはり移住って、仕事、住まい、教育、医療、生活インフラなど、相談内容が多岐にわたりますし、実際に暮らしてみて見えてくるものもたくさんあると思うんです。
そのため、とみおかくらし情報館では、電話やメール、窓口での移住相談を随時受けつつ、希望者にはお試し住宅を利用したオーダーメイドの「移住体験プログラム」を組んで、職住環境見学や地元住民との交流体験も含めた、総合的な情報提供を行うようにしています。
――実際に「移住体験プログラム」に参加された方からは、どのような声が寄せられていますか?
地域のキーパーソンと話したり、小・中学校を見学して校長・教頭先生と面談をしたりするので、個人では出会えないような人と交流できると、好評をいただいています。
先日、中学生のお子さんがいるご家族が移住体験プログラムに参加し、実際に学校見学と先生方との面談をされたのですが、その際の先生方の親身な対応に子育ての不安が解消され、富岡への移住準備を始めたと直接連絡をいただきました。
移住後も役立つ情報が得られるように、相談者さん一人一人に合わせたプログラムを組んでいますので、ぜひ多くの方に利用していただきたいですね。
――辺見さんも東京からの移住者だと伺いましたが、どのようなきっかけで富岡町に移住したのですか?
東京の大学で放射線や原子力の研究をしていた時に震災が起こり、現地での放射線測定や、東京に避難してきた子どもたちの学習サポートボランティアをしたことから福島とのつながりができました。
2011年6月に、土壌採取と放射線測定のボランティアで計画的避難区域に指定された飯舘村を訪ねた時、ある老夫婦に出会ったんです。畑で何か作業をされていたので「何をされているんですか?」と伺うと、「ここ(畑)を森に返すんだ」と言いながら畑に木の苗を植えていらっしゃいました。その時に、避難するということがどういうことか、心にずしんと来たんです。これは現地に行かなくては分からないことが山ほどあると感じ、もっと現地のことを知りたいと福島への移住を考え始めました。そして大学卒業後、「福島大学 うつくしまふくしま未来支援センター」の放射線担当の職員として、富岡町の隣村の川内村に移住しました。
富岡に来たのは、たまたま友人の親戚の家があったからで、今の仕事に就いたのも、また別の友人から「移住・定住促進の仕事があるからやってみない?」と言っていただいたのがきっかけです。
私は「移住は縁とタイミング」だと思っていて、無理にするものでもなく、人と地域との縁がつながった先に「あっ、今が行動するタイミングだな」とピンとくる瞬間が巡ってくるとものだと感じています。
――富岡町のどのようなところに魅力を感じていますか?
人と人とのつながりを実感できる瞬間が、日常の中にあるところです。
スーパーでふらっと買いものをしている時に知り合いの子どもに会うとか、友人の子どもの誕生日を一緒にお祝いするとか、日々の暮らしのちょっとした瞬間に「コミュニティの中で生きている」という安心感が得られるんですよね。
特に富岡町には世話好きの人が多く、私のように一人で移住してきた人に対してでも、会うたびに「元気にしているか?」「ちゃんとご飯食べているか?」と声を掛けてくれたり、私が仕事とは別に「『子ども食堂』を始めたい」と言った時も、地域のお母さんたちが快く手伝ってくれたりして、見守られている実感があります。
また、富岡は東北地方の中では冬でも温暖で夏は東京ほど暑くないので、健康面で過ごしやすいところも魅力だと思います。
――最後に、これから相談窓口を利用したい方へのメッセージをお願いします!
富岡町は、東日本大震災でなくなってしまったものも多く、まだまだ足りないものがたくさんあります。でも「足りない」ということは「余白」が多いということでもありますし、移住・起業支援金やサポート制度も充実しているので、特に新しいチャレンジをしたい方や夢をかなえたい方にはもってこいの場所だと思います。
富岡に興味を持ってくださるだけでもうれしいですし、富岡と関わることが少しでも皆さんの人生のプラスになればと思って日々相談対応をしていますので、ぜひお気軽にご連絡ください。
■富岡町移住相談窓口「とみおかくらし情報館」(一般社団法人とみおかプラス)
住所:〒979-1111 福島県双葉郡富岡町大字小浜字中央338(旧竹村写真館)
TEL:0240-23-6983(受付時間:10:00~17:00)
お問い合わせフォーム:https://www.tomioka-iju.jp/info_and_access/
HP:https://www.tomioka-iju.jp/
【楢葉町】楢葉町移住相談窓口「CODOU/コドウ」
\この相談員さんに聞きました!/
楢葉町移住相談窓口「CODOU/コドウ」
team CODOU
菊地陽子さん
楢葉町の移住相談窓口は、交流ラウンジやレンタルオフィスなどを備えた地域内外の交流施設「NARAHA START-UP PLACE CODOU」の中にあります。
「CODOU」という名称には、楢葉町で新しい物語を紡ぐ人、一人一人の「どきどき」「わくわく」する“鼓動”を重ね合い、みんなでよりよい地域をつくっていきたいという願いが込められています。
――CODOUでは、どのような取り組みを行っていますか?
移住希望者からのご相談を受け付けているほか、1階の交流ラウンジでは、移住希望者、移住者、地域の方々が交流できる機会をつくり、地域内外をつなぐ活動を行っています。
CODOUの2階にはレンタルオフィスがあり、「楢葉町で起業したい」「何か新しいことをしたい」という方のための活動拠点として利用していただいています。
――相談者は、どのような暮らしを思い描いて、楢葉町への移住を希望されていますか?
具体的に「こんなことがしたい」というよりも、「何か新しいことにチャレンジしたい」「今の暮らしを変えたい」という、漠然とした希望を抱いていらっしゃる方が多いですね。
新しい住まいを探している方に対しては、状況に応じて楢葉町役場の建設課と連携し、雇用促進住宅や町営住宅をご紹介しています。子育てや教育環境のご相談はこども課、農業関連は産業振興課と連携するなど、移住希望者と地域とのつなぎ役として伴走支援をしています。
楢葉町の移住促進を担う「一般社団法人ならはみらい」には、移住・定住を支援する「team CODOU」として7名が在籍しており、そのうち私を含めた5名が、今年度のCODOUの立ち上げとともに新たにならはみらいに加わったメンバーです。「しごと・あそぶ・まなぶ・つながる」の各分野の担当者がチーム一丸となって、移住・定住のサポートをしています。
――菊地さんは、楢葉町のどのようなところに魅力を感じていますか?
私は結婚を機に福島県いわき市に移住して、今もいわき市から通勤しているのですが、やはり地域の人のあたたかさ、人懐っこさは、楢葉町の魅力だと思います。初めて会う方であっても「あんた、どっから来たの?」と気軽に話しかけてくださったりして、外から来た人への寛容さを感じますね。
楢葉町のスーパーは夜7時には閉店しますし、夜9時頃には閉まるコンビニもありますし、大型の衣料品店は1軒もありません。決して便利な暮らしとは言えませんが、それすら楽しんでいる人が多いところもいいなと思います。
――相談対応をされていて、印象的だったこと、心に残っているエピソードはありますか?
心に残っているエピソードは、2つあります。
1つ目は、「酪農をやってみたい」という相談者さんから「自分に本当に合うか試すために就労体験をさせてもらえないか」というご要望をいただき、「team CODOU」でその実現に向けて動いたことですね。
見学させていただいた事業所では、お試し就労の受け入れを行ったことがなかったので、相談者さんと一緒にお願いして「こういう形だったら、お試し就労を受け入れてもいいよ」と言っていただきました。相談者さんは実際に仕事がお休みとなる土曜日を利用して、3週間にわたって茨城県から楢葉町に通っていました。相談者さんの頑張りをチームで支えられたので、とても印象に残っています。
2つ目は、大学のゼミ生の受け入れをしたことです。担当したスタッフは「ならはミラクル」と呼んでいましたが、地域住民へのヒアリングを通して人生経験の豊かさにひきつけられて、学生さんたちの純粋さが開花していくのが印象的でした。
学ぶことの重要さを感じましたし、これから社会に出てキャリアを築いていく中で、ふと立ち止まった時に「学生時代にいい学びをもらった楢葉町に、もう一度行きたい」と思っていただけるような町でありたいと改めて思いました。
――最後に、これからCODOUを利用したい方へのメッセージをお願いします!
楢葉町には「笑顔とチャレンジがあふれるまち ならは」というスローガンがあり、これから新しい暮らしを始めたい方、新しい挑戦がしたい方を町全体で歓迎しています。
CODOUでは、移住セミナーや地域内外の交流会を今後も積極的に開催していきますし、町としても木戸ダムや木戸川・井出川でのカヤックやSUP(スタンドアップパドルボード)、木戸川渓谷でのトレッキングやサイクリングなどのアウトドアアクティビティを活用したまちおこしにも力を入れていきますので、ぜひ一度、足を運んでいただきたいです。
「よく集まったね」というくらい個性豊かで経験豊富な担当者7名が「team CODOU」としてサポートします!
■移住相談窓口 ならはスタートアップ・プレイス CODOU/コドウ(一般社団法人 ならはみらい)
住所:〒979-0513 福島県双葉郡楢葉町大字山田岡字堂ノ下6番4
TEL:0240-23-6271 (受付時間:9:00~17:00)
問い合わせフォーム:https://narahamirai.com/aboutus/contact/
HP:https://try-naraha.jp/
休館日:日・祝日、第2・4火曜日、年末年始
【広野町】広野暮らし相談窓口「りんくひろの」
\この相談員さんに聞きました!/
広野暮らし相談窓口「りんくひろの」
相談員
大森博隆さん
町の中心部に認定こども園から小・中・高等学校までを集約させるなど、子育てしやすいまちづくりが進む広野町。
町役場の復興企画課内にある移住相談窓口「りんくひろの」には、子育て世代からの相談も多く寄せられています。
――「りんくひろの」では、どのような移住支援活動をされていますか?
町役場の中にあるという特長を活かし、各担当課と連携を図りながら、仕事や住まいに関する情報提供や各種手続きのサポートなどをワンストップで行っています。
求人募集中の企業や民間の不動産会社とも最新情報を共有していますので、移住に関して必要な情報があれば、まずは「りんくひろの」までご連絡ください。
――広野町は特に子育て支援に力を入れているそうですが、具体的な取り組みや支援制度について教えてください。
広野町では「教育」を中心にしたまちづくりを進めていて、広野町役場近くの一部エリアを「教育の丘」と名付け、広野こども園「ひろぱーく」、広野町児童館(放課後児童クラブ)、町立広野小学校、町立広野中学校、福島県立ふたば未来学園中学校・高等学校などの教育機関を集約し、コンパクト化を図りました。
そうすることで、こども園に通う子どもと児童クラブに通う子どものお迎えが一緒にできる、幼児期から同じ通園・通学経路が使える、世代間交流が活発になるなど、安心して子育てできる教育環境を実現しています。
また、広野駅の東側には子育て世帯向けの住宅団地を整備しているほか、企業誘致を積極的に行って地域に新しい雇用を生みだす計画もあり、住宅や雇用面でも広野町の子育て支援は手厚いです。
支援制度としては、移住者も含むすべての町民を対象に「出産祝金」と「入学祝金」をそれぞれ5万円支給しており「ひろぱーく」に通う3歳から5歳の園児と小・中学校に通う子どもの給食費無償化、0から18歳の子どもの医療費助成などの取り組みも行っています。
――大森さんは、どのようなところに広野町で暮らす魅力を感じていますか?
広野町は、東は太平洋、西は阿武隈高地に接していて、自然の中で生活できるところが魅力だと思います。山側のエリアには五社山や浅見川渓谷、折木鉱泉などの大自然と触れ合えるスポットがあり、町の北側には広大な芝生広場や大型遊具などがある「二ツ沼総合公園」という大きな公園もあります。
また、東北地方で2番目に人口の多い福島県いわき市に隣接していて、市の中心部まで車で40分ほどでアクセスできます。そのため、家具・家電などの大きな買い物にも困りませんし、緑豊かな広野町に住みつついわき市内の会社に通勤されている方もいて、多様なライフスタイルの実現が可能です。
広野駅から東京駅までは、JR常磐線「特急ひたち」で約2時間30分、仙台駅には約1時間45分ほどで行き来でき、高速道路のインターチェンジもあるので、交通アクセスが良好な点も魅力だと感じています。
――震災からの復興状況はいかがでしょうか?
広野町は、国の指示で立ち入りが制限される「警戒区域」には指定されず、震災の翌日に町から出された「自主避難勧告」も、翌年4月1日には解除されました。そのため、福島12市町村の中でもいち早く除染作業と住民の帰還が始まり、震災から10年以上がたった今では約9割の住民が帰還し、日常生活が戻っています。
一方で、そうした土地柄ゆえに原子力発電所の廃炉や除染作業を行う方のために住居を提供してきた経緯があり、現在では町内居住者が約4,250名、作業員などの住民票を持たない滞在者が約1,450名、合計5,700名が町内で生活を送っています。
原発関連の仕事をしている方と一般住民が一緒に生活しているところは、今の広野町の特徴です。
――最後に、これから「りんくひろの」を利用したい方へのメッセージをお願いします!
広野町の暮らしや子育て、住まいについては、移住定住ガイドブックに分かりやすくまとめています。移住定住ポータルサイト「HIRONO STYLE」にも広野町の魅力を伝えるPR動画や先輩移住者のインタビューなどさまざまな情報を掲載していますので、ぜひ一度ご覧ください。
「りんくひろの」は町役場の中にあるので、住まい、仕事、各種補助制度などの相談対応や申請手続きを、担当課の職員と連携してワンストップでサポートしています。「福島12市町村移住支援金」の申請サポートも行っておりますので、お気軽にご相談ください。
■広野暮らし相談窓口「りんくひろの」(株式会社ルネサンス )
住所:〒979-0402 福島県双葉郡広野町大字下北迫字苗代替35(広野町役場復興企画課内)
TEL:0240-27-1251
E-mail:linkhirono@town.hirono.fukushima.jp
HP:https://www.town.hirono.fukushima.jp/ijyu/index.html
※所属や内容、支援制度は取材当時のものです。最新の支援制度については各自治体のホームページをご確認いただくか移住相談窓口にお問い合わせください。
取材・文:高田裕美