移住サポーター

一人ひとりに向き合ったサポートを 川内村の移住相談窓口「川内村移住・定住支援センター」

2025年8月13日

福島12市町村への移住を検討している方の不安や疑問に寄り添うために、市町村ごとに設置されている移住相談窓口。「移住って何が必要?」「住宅にはどんな選択肢があるの?」などの疑問にていねいに回答し、寄り添った提案をしてくれます。

今回ご紹介するのは、川内村への移住をサポートする「川内村移住・定住支援センター」です。事務局員の渡辺さん・秋元さんのお2人に、業務内容やセンターの想いについて伺いました。

生活にこだわり、エネルギッシュに暮らせる村

川内村移住・定住支援センター(以下、センター)は、2021年に開設された川内村の移住相談窓口です。移住に関する相談対応のほか、移住支援制度の情報提供と申請サポート、お試し居住用トレーラーハウス「GEKKOU」の運営などを行っています。空き家バンク登録物件・村営住宅・民間賃貸住宅などの住まいに関する情報提供や川内無料職業紹介所と連携した就職サポートも可能です。

相談は対面のほか、電話、オンラインでも受け付けており、川内村移住ポータルサイト内に設置されたメールフォームからも申し込めます。

渡辺静香(わたなべ・しずか)さん(左)と、秋元孝文(あきもと・たかふみ)さん

まずは村への移住の実際について伺いました。

「村への移住に興味をもつ方は、年々増えています。初年度となる2021年度のセンターへの相談件数は26件でしたが、2024年度は54件まで増加しました。近年では、首都圏をはじめとした県外からの移住に加え、県内の別市町村からの転入者も目立ってきています」(渡辺さん)

移住者の年齢層は、40代以上が中心ですが、幅広い年代の移住者が来るそうです。若年層の方も決して少なくありません。

「年齢が高めの方々は、暮らしの環境面を重視して川内村を選ぶケースが多いです。田舎暮らしに憧れて、山々に囲まれて暮らしたり、家庭菜園にチャレンジしたりするためなど、皆さん実現したい暮らしのイメージをはっきりとお持ちでした。広い古民家に住みたいからと移住した方もいますよ」(秋元さん)

一方で、若年層の移住者は、仕事や人の縁が移住の理由になるケースも多いそうです。村内に新しくできたビジネスに関わりたくて移住した家族は、地域行事やスポーツにも積極的に顔を出してくれているとのお話でした。

渡辺さんは、センターとして若い世代が暮らしやすい村を目指していきたいと話します。そこで、若者の視点を地域づくりに活かし、移住検討者に村での就農を考えていただく狙いで始まったのが、「農業インターンシップ制度」です。

「大学生に一定期間、村内の農業に従事してもらい、そこで見つけた課題や魅力を村内で発表してもらっています。昨年は、インターン生の開発した農産物加工品を村内のイベント時に販売してもらいました。インターン生のみなさんは、私たちが期待していた以上に、村の魅力発信に積極的に取り組んでくれています。これからもインターン生の一人ひとりと関係性を保ち、長期的に村に関わってもらえたら嬉しいです」(渡辺さん)

村の魅力を伝える自信があるから「一度来てほしい」

お二人に、村のよいところを尋ねました。

「何といっても自然ですね。里山が織りなす景観は、どの季節も美しいです。また、村は全国的にも珍しい『上水道のないエリア』。各家庭が使う水は、井戸水か沢水(さわみず)です。山々が磨いた清らかでおいしい水を、水道代を気にせずに使えます。村の水で炊いたご飯はとてもおいしいですよ。さらに、村は高原に位置するため、夏場でも過ごしやすい気候の日が多いのも魅力です」(渡辺さん)

「地域の人々もまた、大きな魅力ですね。村に住む方々はとても面倒見がよく、人数が少ないからこそ一人ひとりと濃い関係性が築けます。義務教育学校『川内村立川内小中学園』の運動会には、自分の子どもや孫が通っていなくても応援に来てくれます。まるで地域全体が1つの家族のようですね」(秋元さん)

センターに吹き込む風は爽やかで、木々のこすれる音や鳥の鳴き声に癒される

美しく清らかな自然環境に、家族のようにあたたかい人たち。これらの村の魅力を知っていただくためにも、何よりもまず、村へ一度来ていただきたいと秋元さん。「来ていただければ必ずよさが伝わる自信があります」と胸を張ります。そのためにも、センターの取り組みを今後さらに積極的に発信していきたいと話してくれました。

「あるもの」に目を向ければ暮らしが楽しくなる村

村への移住の悩みに寄り添うため、センターとして大切にしていることも伺いました。

「相談者の一人ひとりを大切にしています。センターに相談にいらっしゃる方は、さまざまな背景をお持ちです。それを『移住者』としてひとくくりにせず、地域になじめるまでをサポートしたいと考えます。例えば、村には8つの行政区があり、それぞれの区内に独自のネットワークや行事がありますが、住まい探しの段階から関われるセンターだからこそ、その方のニーズにあった地区の提案を伝えることができます。一人ひとりの幸せな移住の実現に向けて、寄り添える存在でありたいです」(渡辺さん)

一人ひとりを大切にするサポートを実現するために重要なポイントは、相談者との関係の構築です。センター職員は相談者にとって「村での最初の知り合い」になる存在。困ったときに「また話したい」と思ってもらえるよう、信頼関係の構築が大切だと話してくれました。

最後に、移住を検討する方へ伝えたいメッセージを伺いました。

「村にあるものに魅力を感じて楽しみつつ、ないものは工夫して手に入れてくださるような方であれば、村はとてもいい場所だと思います。村には確かに商業施設や医療機関が少なく、子どもの進学先に不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。しかし村には、近隣エリアと協力して生活を築いてきた長い歴史があります。村外の学校への通学交通費や下宿代の補助など、進学や生活をサポートする制度もあります。不安な点はセンターに気軽に相談してください」(秋元さん)

村の公式キャラクター「自然の村長 モリタロウ」

センターでは、住まいの下見や村内企業の見学の際、希望があれば同行しての案内も可能だそうです。川内村への移住に興味を感じたら、ぜひお気軽にセンターで話を聞いてみてください。


■川内村移住・定住支援センター
所在地:〒979-1201 福島県双葉郡川内村大字上川内字町分282-6
TEL:0240-23-7172
受付:8:30~17:15
定休日:土曜、日曜、祝日
相談方法:電話、メール、オンライン、対面でのご相談を受け付けています。(相談申し込みメールフォーム
HP:https://www.kawauchi-ijyu.com/

※所属や内容、支援制度は取材当時のものです。最新の支援制度については各市町村のホームページをご確認いただくか、移住相談窓口にお問い合わせください。
文:橋本華加 撮影:古関マナミ