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【移住セミナーレポート】『はじめよう、私とふくしまの小さな物語。』~ vol.1 「住んでないけど福島人」編~

2022年9月8日

ふくしま12市町村移住支援センター主催の移住セミナー『はじめよう、私とふくしまの小さな物語。』は、福島県内で活躍するゲストとの交流を通し、福島12市町村で暮らし、働く魅力を知ることができる、全6回のセミナーです。

2022年8月6日(土)に、東京都世田谷区・池尻大橋駅近くの「BPM – BEATS PER MOMENT」で開催された第1回セミナーのテーマは、「住んでないけど福島人」。

第1部では、東京に拠点を持ちながら、それぞれの方法で福島と関わり活躍するゲストが、実体験をもとにしたトークセッションとパネルディスカッションを行い、第2部では、ゲストと参加者による座談会と「ふくしま12市町村移住支援センター」スタッフや各市町村の移住担当者との個別相談会を開催しました。

司会進行は、福島県ローカルの番組でも日々県内の情報を伝えている、福島移住歴4年目の三谷咲都美さん。

それぞれのゲストの実体験を聞きながら、自分らしく福島と関わる方法を探ることができるイベントとなりました。

第1部ゲストによるトークセッション/パネルディスカッション

(キャプション)左から、森雄一朗さん、佐々木瞳さん、赤澤岳人さん、森禎行さん、小林味愛さん

福島との関わり方1:地域資源を活かして起業する 
小林味愛さん|「株式会社陽と人」代表取締役社長
1987年東京都立川市生まれ。慶應義塾大学を卒業後、衆議院調査局入局、経済産業省出向。その後、株式会社日本総合研究所で、地域活性化などのコンサルティングを経験し、2017年に福島県伊達郡国見町で地域商社「株式会社陽と人(ひとびと)」を立ち上げた。子育てをしながら、東京と福島を行き来する。

小林さん 国家公務員時代に震災ボランティアとして福島に行った際に、当時の自分が持っていたスキルがあまり復興の役に立たず、周りに迷惑をかけてしまった後悔が残り、『何かできることがないか』と模索しながら過ごしていました。その後、『自分にできることを、少しずつでもいいからやっていこう』と考え、2017年に国見町で会社を立ち上げ、地域のため、世の中のために、農家の課題解決、女性の健康課題を解決する事業を行っています。移住しなくても福島に貢献する方法はあるので、こうしたイベントを通して多くの方に自分らしく福島と関わる方法を見つけて欲しいです。

福島との関わり方2:農ある暮らしを始める
森禎行さん|「ふくしま12市町村移住支援センター」アドバイザー / 「ヤフー株式会社」社会貢献事業本部
東京都出身。2011年にヤフー入社。ニュース編集や弁当事業担当を経て、東北の本当にいいものをネット販売する「東北エールマーケット」を担当。福島の食のファンクラブ「チーム ふくしまプライド。」立ち上げや、初年度15億円を記録した大手EC3社による福島県産品オンライン事業の企画運営に従事。県内自治体とも多くの連携事業を行っている。2022年より「ふくしま12市町村移住支援センター」のアドバイザーとして、移住推進業務にあたる。

森禎行さん 福島で食べた生のトウモロコシやナスのみずみずしいおいしさに衝撃を受け、今では毎週東京から郡山市まで通ってブランド野菜を作っています。浜通り(福島県の太平洋側沿岸地域)は独自の歴史・文化があり、震災からの復興も進む日本のフロンティア。地域課題は多いですが、その分やりがいも大きい地域です。今は働き方も暮らし方も多様化していますし、例えば東京と福島のように自分らしく活躍できるフィールドが2つあったほうが、幸福度は上がりやすいと思います。

福島との関わり方3:アートの力で地域を活性化させる
赤澤岳人さん|株式会社OVER ALLs / FUTABA Art District
1981年京都府生まれ。大手人材会社の営業職を経験後、新規事業責任者として事業継承をテーマとした社内ベンチャーを設立。退職後、2016年9月株式会社OVER ALLsを設立。「楽しんだって、いい」を企業理念とし、正解を追求する「HOW」ではなく、心の感動に従う「WOW!」を追求し、「楽しい国、日本」の実現を目指す壁画アートカンパニー。オフィスアートやオーダーアートの企画制作、アパレル制作を行う。「情熱大陸」や「news zero」等多数メディアにも出演。

赤澤さん たまたま双葉町の人と出会ったことがきっかけで、双葉町にいくつも壁画アートを制作してきました。地域の人に頼まれたわけでもなく、復興のためのアートでもなく、自分たちのエゴで勝手に活動してきたのですが、だからこそ続けられましたし、地域と関わるきっかけはエゴでもいいと思っています。身近なところからまち全体を盛り上げるために、オフィスやお店、美容室の壁をキャンバスに、その地で生きる一人一人の想いをアートで表現しています。壁画を見る目的でも双葉町に来て欲しいですし、それがきっかけで新しい交流が生まれたら嬉しいです。

福島との関わり方4:“福島の今”を伝える活動を行う
佐々木瞳さん|フリーアナウンサー / とみおかアンバサダー
2010年にラジオ福島でキャリアをスタートしたのち、東京を拠点にフリーアナウンサーとしてNHK Eテレや日本テレビなどで活動。今年3月までは文化放送の報道番組の現場リポーターや3.11震災報道で福島から取材・生中継リポートを行い、TOKYO MXでは政治・経済番組のMCを担当。現在は文化放送「サンデーNEWSスクランブル」パーソナリティーを務める。一方、月1〜2回福島に足を運び、ラジオやSNSで“福島の今”を伝え続けている。富岡町の魅力を発信する「とみおかアンバサダー」も務める。立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科で「関係人口」について研究。

佐々木さん ライフワークとして月に2、3回福島に行き、ボランティアツアーや視察ツアーを企画・運営しています。福島に対して“被災地”というイメージを抱かれている方も多いですが、ワクワクするようなことがたくさん起こっているのが今の福島です。特に富岡町は都内から2時間半くらいで行ける場所なので、今後も福島に興味あるなし関係なく、いろいろな人を引っ張ってきてアイデアを形にしたいと思っています。今日のようなイベントをきっかけに、まずは福島に興味がある方とつながって、福島と関わる人の輪が広がっていけばよいと思います。

福島との関わり方5:現地法人に転職し、まちづくりに携わる
森雄一朗さん|一般社団法人ならはみらい 移住促進係
2015年に全町避難が解除された楢葉町で、まちづくりに携わる群馬県出身の26歳。大学の授業がきっかけで楢葉町を初めて訪れる。その後、学生団体「そよ風届け隊」として、町民と協働した情報誌製作や小学生向けキャンプの企画、住民の声を記録する活動等を行う。大学卒業後は銀行に就職するが、熱量を持って生活・仕事ができる環境を考え直し銀行を退職。楢葉町のまちづくり会社である「一般社団法人ならはみらい」に転職し、現在は大学の研究誘致や観光事業等を担当する。

森雄一朗さん 大学の授業がきっかけで楢葉町を訪れ、その後月1回、現地でいろいろな活動をしてきました。今は、例えば子ども向けのキャンプを楢葉町で開催し、地元を知ってもらうきっかけをつくり、人と人、人と地域をつなぐような仕事をしています。心がけているのは、町の人と一緒に活動することと、一過性のつながりではなく、ながく継続していく関係性を作ることです。町民の声に即した活動を意識しています。

パネルディスカッション

――福島と関わってよかったと思うことや、ご自身の中で変化したことはありますか?

小林さん 私は都会の生活に疲れて体を壊してしまったのですが、福島と関わるようになってから「頑張りすぎなくてもいい」ことに気づき、心に余裕を持てるようになりました。今は感謝の気持ちで福島と関わっています。

森禎行さん ポジティブ、幸せ、ワクワクするような気持ちが湧くことが増えました。おいしいナスやトマト、トウモロコシなどの土地の恵みに「ありがとう」という気持ちでいっぱいです。

赤澤さん 12市町村で暮らす人々は、土地との結びつきを強く持って暮らしていて、そういう生き方を見るうちに、土地に根を張る生き方もいいなと思うようになりました。

佐々木さん 地元の方が果物や野菜を持ってきてくれたり、世話を焼いてくれたり、福島にいる時のほうが『生かされている』という実感が湧きますし、そういう支え合いが日常にあることの豊かさを実感します。東京から福島に帰ると、東京にいる時よりも心の余裕が感じられるような気がします。

森雄一朗さん ずっと人と関わるのが苦手で避けてきたのですが、楢葉町と出会い、人生に丁寧に真剣に向き合っている人と関わるうちに人が好きになりました。人に関心が向くようになったのが一番の変化だと思います。

――苦労したこと、大変なことはありましたか?

小林さん 自分の場合はいきなり移住して起業したので最初は稼げなかったですし、東京と福島を頻繁に行き来していましたので、貯金が底を尽きたこともありました。経済的には大変でしたね。

森禎行さん 毎週東京から福島まで通勤していますので、交通費が結構かかります。交通費を稼ぐために副業しているところもありますね。

赤澤さん 特にないです。東京でも福島でも、大変なことはありますし、批判もあれば応援もあります。どこにいても苦労はありますし、よい面も悪い面もあると思います。

佐々木さん 大変というか、地域の人と接する上で相手のことを思いやって接することは大事かなと思います。前向きな人もいればそうでない人もいるので、そこを念頭に置いて向き合わないと齟齬が生じるかもしれません。

 森雄一朗さん 同年代が少ないことが苦労というか寂しい点ですね。地域に若い世代が少なく同年代としゃべる機会があまりないので、たまに都会にくると『たくさん若い人がいる!』と驚きます。

――福島12市町村の魅力は?

森禎行さん とにかく人がいいです。チャレンジがしやすい土壌があって、そこにパッションがある人が次々に入ってきているので、『一緒に働いてみたい、活動したい』と思わせるような心を動かすような人が多いと思います。

佐々木さん 新しいことに挑戦することに対して前向きに背中を押してくれる、ポジティブに捉えてくれる人が多いと思います。一緒に取り組める人が一定数いるので、革新的なことが生まれやすい地域だと思います。

赤澤さん ほかの被災地は復興活動を行っている人=元住民のケースが多いと思うのですが、12市町村ではそれが復興活動を通して新しいことをやりたい外から来た人というケースが多いので、日本でも稀有な地域だと思います。あとはお酒好きが多いところも好きですね。

森雄一朗さん 12市町村の中には震災後に全町避難を経験した地域もあり、地元住民も含めて一度は全員が町外に出たことで、「みんな移住者」のような感覚があります。そのことも、皆さんがおっしゃるような、新しいことを受け入れやすい風土につながっているのかもしれませんね。成長の可能性がある地域だと思います。

第2部:ゲストとの座談会 / 個別相談会

第2部では、参加者が話を聞きたいゲストの周りに集まって直接質問したり、個別相談ブースで直接担当者に相談したり、有意義な時間を過ごしました。

例えば、両親が福島に住んでいたことがきっかけでイベントに参加した方からの、「都心に住みながら福島と関われる仕事はありますか」という質問には、楢葉町の担当者から「人材不足は地域全体の課題となっているため、今後そのような関わり方ができるように町でも検討していきます」という回答が出ました。 

情報収集しに来たという参加者は、次のステップとして「ふくしま12市町村移住支援センター」が毎月開催している移住体験ツアーに参加したいという方も。そのほか、お試し住宅や移住支援金のこと、仕事や起業についてのさまざまな不安や質問にも、担当者が丁寧に答える姿が見られました。

各市町村の移住担当者とオンラインでも即席面談

自分らしく福島と関わるきっかけに

今回のイベントでは、東京にいながら福島と関わっているゲストのお話から、「移住」だけではない福島との関わり方とその可能性を知ることができました。参加者のアンケート回答でも「ゲストの『福島愛』、熱い思いやワクワク感が伝わった」「新しいコトに、チャレンジできるフィールドだと感じた」「個別相談会で話せたことで、移住がより具体化した」といった感想が寄せられました。

福島の復興に貢献したい、地域活性化に携わる仕事がしたい、でも移住するのはちょっと……という方も、まずは今いる場所からできること、現地に通いながらできることを探してみると、自分らしい地域との関わり方が見えてくるかもしれません。

 ▼第1回セミナーのダイジェスト・全編動画を公開しています(YouTube)

※ダイジェスト版。全編動画は動画右上の(i)マークからご覧ください

■2022年度開催のセミナー詳細はこちら(全6回)
https://mirai-work.life/lp/seminar2022/

福島12市町村の移住支援制度

福島12市町村では、移住検討段階から使える交通費補助や、移住後に受け取れる移住支援金、起業する人向けの起業支援金など生活や移住スタイルに合わせた多様な支援制度で、新しいチャレンジを応援しています。

■福島県12市町村移住支援金制度
福島12市町村において、新しい地域を作り出すなどチャレンジを行う意欲のある県外からの移住者に対して、最大200万円の移住支援金を交付しています。
https://mirai-work.life/support/relocation/

■ふくしま12市町村移住支援交通費等補助金
福島12市町村内を訪れ、移住する際に必要な現地調査・現地活動を行った場合に、その交通費及び現地での宿泊費の一部を補助します。1年度につき交通費利用は5回まで、宿泊費利用は5泊まで可能!移住準備の現地調査や物件・仕事探しにぜひご活用ください!
https://mirai-work.life/support/transportation/

※所属や内容、支援制度は当時のものです。最新の支援制度については各自治体のホームページをご確認いただくか移住相談窓口にお問い合わせください。
取材・文:老伽真由美